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こども家庭庁とは|2023年設置の目的・組織と男女共同参画政策への影響【2026年版】

「保育所の申込先はどこに相談すればよいのか」「育児休業の制度は厚生労働省と内閣府のどちらが管轄しているのか」——子育てにまつわる行政手続きは、かつて複数の省庁に分散しており、保護者や担当者を困惑させてきました。2023年4月1日、こうした縦割り行政の弊害を解消するために「こども家庭庁(こどもかていちょう)」が設置されました。子どもや家庭に関する政策を一元的に担い、「こどもまんなか社会」の実現を目指す独立の外局機関です。本記事では、こども家庭庁の設置目的・組織・権限を解説するとともに、男女共同参画政策や仕事と育児の両立支援との関係を2026年時点の最新情報で整理します。子育て中の保護者、企業の人事・ダイバーシティ推進担当者、自治体の子育て支援・男女共同参画担当者を主な対象読者として想定しています。

目次

こども家庭庁とは何か|発足の経緯と基本理念

縦割り行政の弊害が設置を後押しした

日本の子ども政策はこれまで、保育所・認定こども園が内閣府と厚生労働省の共同管轄、幼稚園が文部科学省の管轄、児童虐待対応が厚生労働省、子どもの貧困対策が内閣府と、複数の省庁に分散していました。窓口の分散は情報の断絶を生み、支援が必要な子どもへの対応が省庁間の調整不足で遅れる事態も報告されていました。

2021年秋の衆院選を経て政権を維持した岸田内閣は、子ども政策の統合を主要公約として掲げ、2022年6月に「こども家庭庁設置法」と「こども基本法」を成立させました。両法律は2023年4月1日に同時施行され、こども家庭庁が正式に発足しました。

こども基本法との一体的施行

こども基本法(令和4年法律第77号)は、日本国憲法および児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)の精神にのっとり、全てのこどもが将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目的とした基本法です(第1条)。同法第3条第5号は「こどもの意見の尊重」を基本理念として明記しており、施策の策定・実施に際して当事者であるこどもの意見を反映させる仕組みを義務化しています。

こども家庭庁はこども基本法の「実施機関」として位置づけられ、こども大綱の策定・推進、こども政策の総合調整、関係省庁への資料提出要求などを担います。設置根拠となるこども家庭庁設置法(令和4年法律第75号)は同日施行されました。

「こどもまんなか社会」の理念

こども家庭庁が掲げるスローガン「こどもまんなか社会」は、こどもの視点に立ち、こどもの利益を第一に考えた政策立案を意味します。行政のあり方を「大人目線から子ども目線へ」転換するという理念であり、保育・教育・医療・相談支援・貧困対策を縦断する横串機能を担います。

「こどもまんなか社会」の実現と男女共同参画社会の実現は補完的な関係にあります。親が安心して働き続けられる社会環境の整備なしに、子育て支援制度は十分に機能しません。こども家庭庁は内閣府男女共同参画局と連携しながら政策を推進することが求められています。

こども家庭庁の組織体制と所管業務

3部門体制(長官官房・成育局・支援局)

こども家庭庁は内閣府の外局として設置され、長官官房・成育局・支援局の3部門で構成されています。

「成育局」は、妊娠・出産・乳幼児期から学童期にかけての切れ目ない支援を担当し、保育所・認定こども園・幼保連携型の認定こども園に関する政策を一元的に所管します。「支援局」は、児童虐待防止・社会的養護・障害児支援・こどもの貧困対策・ひとり親家庭支援など、要保護状態にあるこどもへの支援を担当します。長官官房は予算・法令・広報・調査統計などの管理部門を担います。

内閣府・厚生労働省・文部科学省からの移管業務

こども家庭庁設置に伴い、以下の業務が各省庁から移管されました。

  • 内閣府から: 子ども・子育て支援に関する政策の企画・立案・調整、少子化対策の企画・立案(推進本部事務局)、こどもの貧困対策
  • 厚生労働省から: 保育所の設備・運営基準の策定、児童虐待防止対策、社会的養護、障害児支援、ひとり親家庭支援
  • 文部科学省との関係: 幼稚園は引き続き文部科学省が所管。認定こども園については、こども家庭庁と文部科学省の共同所管という形が継続しています。

なお、義務教育・高等教育に関する政策は引き続き文部科学省が所管しています。育児・介護休業法(雇用継続の観点)や育児休業給付金(雇用保険法に基づく)は引き続き厚生労働省が担当するため、完全な一元化ではない点に留意が必要です。

こども大綱と総合調整機能

こども基本法第9条に基づき、政府は「こども大綱」を策定する義務を負います。こども大綱は少子化社会対策基本法・子ども・若者育成支援推進法・子どもの貧困対策の推進に関する法律に基づく3つの大綱を一体化したもので、2023年12月に初版が閣議決定されました。

こども政策担当大臣はこども家庭庁設置法第4条第1項に基づき、他省庁の長に対して必要な資料の提出や説明を求める権限を持ちます。この「総合調整権限」の実効性については、関係省庁との調整力が問われる場面もあり、発足後の運用実績を継続的に検証することが重要です。

男女共同参画政策との関係

内閣府男女共同参画局との役割分担

内閣府には引き続き男女共同参画局が置かれており、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)に基づく政策の企画・立案・調整を担当しています。こども家庭庁との関係では、仕事と子育ての両立支援という共通テーマをめぐって役割が重なる部分があります。

整理すると、男女共同参画局が「職場における性差別の是正・働き方改革・ジェンダーギャップ解消」を担い、こども家庭庁が「子育て支援サービスの質・量の確保」を担う形で機能分担が図られています。どちらが欠けても、仕事と育児の真の両立は実現しません。

第6次男女共同参画基本計画との接続

2025年度を目途に策定が進む第6次男女共同参画基本計画では、「女性活躍の推進」と「育児・介護との両立」が引き続き重点項目に位置づけられる見通しです。こども家庭庁が推進する保育所整備・育児休業取得促進と、男女共同参画局が推進する女性活躍推進法の義務拡大は、相互補完的な施策として連携が期待されています。

内閣府が毎年公表する「男女共同参画白書」においても、こども家庭庁との連携による総合的な子育て支援体制の強化が論じられており、両組織の政策的統合が今後の重要課題として位置づけられています。

少子化対策における男女共同参画の視点

こども家庭庁が主導する少子化対策(2023年6月閣議決定「こども未来戦略方針」)では、「男女ともに育児に参加できる社会」が基本軸として明記されています。具体的には、男性育児休業取得率の向上、保育所待機児童ゼロの継続、学童保育の拡充が盛り込まれています。

ただし、少子化の要因は複合的であり、育児サービスを充実させるだけで解決するものではないという指摘があります。非正規雇用の増加・賃金水準・ジェンダー規範の変容など、構造的要因への対応も不可欠です。専門家からは「少子化を女性の問題として矮小化せず、男女ともに生きやすい社会づくりの文脈で論じることが重要」との意見が広く示されています。

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現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

こども家庭庁の設置に至るまでには、以下の主要な法改正・新法の蓄積があります。

  • 子ども・子育て支援法(2012年成立、2015年完全施行): 認定こども園・保育所・幼稚園を通じた「子ども・子育て支援新制度」を創設。市町村が保育の必要性を認定する仕組みへ移行し、給付の一元化が図られました。
  • 育児・介護休業法(2021年改正、2022年4月・10月段階施行): 男性向け「産後パパ育休(出生時育児休業)」を新設。子が生後8週間以内に最長28日間取得可能となりました(育児・介護休業法(最終改正: 令和6年法律第42号)第9条の2)。
  • 育児・介護休業法(2023年改正施行): 常時雇用労働者1,000人超の企業に育児休業取得率の公表を義務化(第21条の2)。
  • こども基本法・こども家庭庁設置法(2022年成立、2023年4月施行): 子ども政策の一元化と「こどもの権利」の基本法への明記。こども大綱の策定義務化。
  • 不妊治療の保険適用(2022年4月): 体外受精・顕微授精・人工授精等が保険診療の対象に。年齢・回数制限あり。ジェンダー視点では、治療の身体的負担が主として女性に集中することへの職場支援が課題として指摘されています。
  • 育児・介護休業法(2025年改正): 子の看護休暇の拡充(対象範囲拡大)、テレワーク・短時間勤務の選択肢整備、保育所に入れなかった場合の育休延長特例の手続き明確化が盛り込まれました。

議論の現在地

こども家庭庁の設置・運営をめぐっては、複数の立場から論点が提起されています。

評価する立場からの意見: 縦割り行政の弊害(保護者の窓口分散・被虐待児の支援断絶等)を解消するための組織統合は不可欠であり、こども基本法による「子どもの権利」の法制化は国際基準(子どもの権利条約)への対応として評価できるという見解があります。子どもの意見表明権を明示した点も、これまでの日本の子ども政策に欠けていた視点として積極的に評価されています。

課題を指摘する立場からの意見: 文部科学省が幼稚園を引き続き所管することで完全な一元化が実現していない点、厚生労働省が育児休業給付や雇用環境整備を引き続き担うことで「保育と雇用の分断」が残る点、こども家庭庁の予算規模が政策の野心に対して不十分ではないかという点が指摘されています。また一部の研究者・論者からは、「こどもまんなか」の名目のもとで女性の育児負担が再強化されないかという懸念も示されています。

男女共同参画の視点からは、子育て支援の充実が「女性が育児を担う前提」で設計されているのか、それとも「男女が対等に担う環境の整備」を目指しているのかが問われています。政府は後者を方針として明言していますが、制度の実際の運用実態については継続的な検証が必要とされています。

残された課題

2026年時点においても、以下の課題が指摘されています。

  • 男性育休の実質的取得推進: 厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」では男性の育児休業取得率は30.1%と過去最高を更新しました。しかし取得日数が数日以内にとどまる事例が多く、育休の「取得率」と「取得期間・実質的関与度」の両方を改善する施策が求められています。
  • 待機児童問題の地域格差: 全国的には待機児童数は減少傾向にある一方、都市部の特定地域では依然として深刻な状況が続いています。「こども誰でも通園制度」の全国展開が推進されていますが、運用面での課題も残っています。
  • ひとり親家庭・非正規雇用への対応: 少子化対策の施策が主として正規雇用の二親世帯を想定しているとの批判があります。非正規雇用のひとり親世帯(女性が多数を占める)への支援強化が引き続き課題です。
  • こども政策と男女共同参画政策の統合的推進体制: こども家庭庁と男女共同参画局の政策調整を制度的に担保する仕組みが不十分との指摘があります。

仕事と育児の両立支援策|こども家庭庁が推進する制度

保育所・認定こども園の整備状況

こども家庭庁は保育所等の利用定員の確保・拡大を継続して推進しています。厚生労働省(現こども家庭庁所管)の調査によれば、待機児童数(保育所等入所待ち)は2023年4月1日時点で2,680人と、2000年代の数万人規模から大幅に減少しています。ただし、入所希望の意向を示さず保留となっている「隠れ待機児童」は依然として相当数存在するとされています。

認定こども園(幼保連携型・幼稚園型・保育所型・地方裁量型)は子ども・子育て支援新制度(2015年)の下で普及が進んでいます。2024年4月時点の施設数は増加傾向にあり、幼保の一体的提供を通じた保護者の利便性向上が図られています。

育児休業と職場復帰支援

育児・介護休業法は、原則として子が1歳になるまで育児休業を取得できると定めており(第5条第1項)、保育所に入れない場合は最長2歳まで延長が可能です(第5条第3項)。2025年改正では、延長申請に際して市区町村の入所不承諾通知の提出が求められるなど手続きの明確化が図られました。

職場復帰支援については、雇用保険法に基づく育児休業給付金との連携が重要です。育児休業給付金は休業開始から6か月間は休業前賃金の67%(それ以降は50%)が支給されます(雇用保険法第61条の7)。なお、育児休業給付の水準・拡充については政府内での検討が継続しており、最新情報は厚生労働省の公式サイトで確認することをお勧めします。

放課後児童クラブ(学童保育)の拡充と「小1の壁」

小学生の放課後の受け皿となる放課後児童クラブ(学童保育)は、こども家庭庁が所管しています。文部科学省の「放課後子供教室」との一体化による「放課後子ども総合プラン」が推進されており、2023年度の登録児童数は約146万人(概数)です。

いわゆる「小1の壁」——小学校入学後に利用できる保育サービスが急減し、保護者(特に女性)が職場復帰を断念または就労時間を短縮せざるを得ない問題——は依然として重大な課題です。こども家庭庁は放課後児童クラブの定員拡大と支援員の処遇改善を推進していますが、財源確保や支援員不足の問題も抱えています。この「小1の壁」問題の解消は、男女共同参画推進の観点からも重要な政策課題とされています。

関連機関との業務比較

機関名 主な所管事項 根拠法(主なもの) こども家庭庁との関係
こども家庭庁 保育・認定こども園、児童虐待防止、社会的養護、こどもの貧困、少子化対策の企画・立案 こども家庭庁設置法、こども基本法 主管機関
内閣府 男女共同参画局 男女共同参画基本計画策定・調整、女性活躍推進法所管、DV対策調整 男女共同参画社会基本法 連携・補完。仕事と育児の両立支援で政策が重なる
厚生労働省 育児・介護休業法(雇用継続)、育児休業給付金(雇用保険法)、職場環境整備 育児・介護休業法、雇用保険法 育休・給付金は厚労省が所管継続
文部科学省 幼稚園、義務教育・高等教育、放課後子供教室 学校教育法、子ども・子育て支援法(一部) 認定こども園は共同所管
市区町村 保育所利用認定、放課後児童クラブ運営、こども家庭センター運営 子ども・子育て支援法 直接の実施主体。こども家庭庁から交付金・指針の提示を受ける
こども家庭庁・関連機関の業務比較(2026年時点)

公的相談窓口

子育てや仕事との両立に関わる困りごとは、以下の公的窓口に相談できます。

  • こども家庭センター(旧: 子育て世代包括支援センター): 妊娠期から子育て期にかけての総合相談窓口。2024年度より「こども家庭センター」として機能強化され、妊産婦・乳幼児から18歳までの子どもと家族を包括的に支援します。市区町村窓口に設置されています。
  • 女性相談支援センター: 配偶者暴力・生活困窮・ひとり親家族の相談に対応。各都道府県に設置されており、就労・生活・住居などの複合的な相談にも応じます。
  • 法テラス(日本司法支援センター)電話: 0570-078374: 収入要件を満たす方への無料法律相談・弁護士費用立替制度。育休取得拒否・マタニティハラスメント等の法的問題に関する相談が可能です。
  • こどもの人権110番(法務省)電話: 0120-007-110(無料): いじめ・虐待・体罰等、子どもに関する人権問題の相談窓口。

具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

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まとめ

こども家庭庁は2023年4月に設置された内閣府外局であり、縦割り行政の弊害を解消して子ども政策を一元化することを目的としています。こども基本法と一体的に施行され、「こどもまんなか社会」の実現を目指します。

男女共同参画政策との関係では、内閣府男女共同参画局と補完的な役割分担を図りながら、仕事と育児の両立支援・育児休業取得促進・保育所整備等を推進しています。一方で、男性育休の取得日数の短さ、都市部の待機児童問題、非正規雇用・ひとり親家庭への支援不足、「小1の壁」の解消といった課題は2026年時点でも進行中です。

子ども政策の充実が「女性が育児を担う前提」にならないよう、施策の設計・評価においてジェンダー視点を組み込み続けることが、男女共同参画社会の実現につながります。関連する制度・予算の動向については継続的にウォッチすることを推奨します。

よくある質問

こども家庭庁はいつ設置されましたか?
2023年4月1日に設置されました。こども家庭庁設置法およびこども基本法(いずれも令和4年成立)の施行と同時に発足しました。内閣府の外局として位置づけられています。
こども家庭庁と厚生労働省の違いは何ですか?
保育所の設置・運営基準に関する業務の多くはこども家庭庁に移管されましたが、育児・介護休業法(雇用継続の観点)や育児休業給付金(雇用保険法に基づく給付)は引き続き厚生労働省が所管しています。保育政策と雇用政策が2省庁にまたがる状態は継続しています。
男性育休取得率の現状はどうですか?
厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」によると、2023年度の男性育児休業取得率は30.1%と過去最高を更新しました。ただし、取得日数が数日以内にとどまる「形式的取得」が多いとの指摘があり、実質的な育児参加に向けた取り組みが引き続き求められています。
「こどもまんなか社会」と男女共同参画はどう関係しますか?
「こどもまんなか社会」は子どもの権利・利益を政策の中心に置く理念です。これを実現するには親が安心して働き続けられる環境整備が不可欠であり、男女共同参画社会の実現と表裏一体の関係にあります。子育て支援の充実と職場のジェンダー平等を同時に進めることが重要です。
保育所の待機児童問題は解消されましたか?
2023年4月1日時点の公式待機児童数は2,680人(厚生労働省調査)と大幅に減少しています。ただし、入所を希望しながら保留となっている「隠れ待機児童」を加えると実態は異なるとされており、都市部を中心に保育需要が高い地域では依然として課題が残っています。
不妊治療の保険適用はジェンダー平等とどう関連しますか?
2022年4月から体外受精・顕微授精等が保険適用となり、経済的負担が軽減されました。ジェンダー視点からは、治療の身体的・時間的負担が主として女性に集中しやすい点、治療中の就労継続を支援する職場環境の整備が十分でないという課題が専門家から指摘されています。

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