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介護離職とは|仕事と介護の両立を阻む構造的課題と育介法の仕組み【2026年版】

※本記事には広告(PR)が含まれます

「親が倒れた。仕事はどうすればいい」——この問いに、日本の就労世代の多くがいつかぶつかります。介護を理由に仕事を辞めること(介護離職)は、年間10万人規模で起きているとされ、特定の世代や職種だけの問題ではありません。とりわけ40代・50代の管理職世代が介護と仕事の板挟みになる「ビジネスケアラー(ビジネスケアラー:仕事を持ちながら家族の介護を担う人)」の問題は、2020年代に入って急速に社会的認知を得てきました。

育児・介護休業法(以下、育介法)は、介護休業・介護休暇・勤務時間の短縮などの制度を定め、仕事と介護の両立を法的に保障しています。しかし制度の存在と、実際に職場で安心して使えるかどうかは別問題です。「介護休業を取ると評価が下がるのでは」「上司に言い出せない雰囲気がある」——そうした職場文化が離職を誘発するケースは後を絶ちません。

本記事では、介護離職の現状と原因、育介法が定める主な制度の仕組み、2025年段階施行の最新改正内容、そして「なぜ制度があっても離職が減らないのか」という構造的な問いについて、法令・統計・現代論点を交えながら解説します。これから介護が始まりそうな方、職場の制度整備を担う人事・総務担当者、男女共同参画の観点から介護問題を学ぶ方を主な対象としています。介護は「誰にでも起こりうること」として、早めに制度を知っておくことが、離職を防ぐ最初の一歩です。

目次

介護離職とは何か|定義・現状・ジェンダー視点

介護離職の定義と統計的実態

介護離職とは、家族・親族の介護を主な理由として離職することを指します。育児・介護休業法などの法律上の定義ではなく、統計調査や政策文書において用いられている概念です。

総務省「就業構造基本調査」(2022年)によれば、過去5年間(2017年~2022年)に介護・看護を理由として離職した人は全国で約56万人にのぼります。単純換算で年間約11万人が介護を機に仕事を辞めていることになります。この数字には、介護施設への入所等で「介護が落ち着いた」後に離職するケースは含まれないため、広義の介護関連離職はさらに多いとみられています。

政府は2016年の「一億総活躍社会の実現に向けた緊急対策」で「介護離職ゼロ」を政策目標として掲げました。しかし離職者数の大幅な減少には至っておらず、政策目標と現実のギャップが問題となっています。経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」(2023年)は、介護による生産性低下や離職に伴う経済的損失を試算し、企業側の対応強化を促しています。

誰が介護を担っているのか——ジェンダー視点

介護離職を語るうえで、ジェンダー(社会的・文化的に形成された性別。生物学的性別=セックスと区別される概念)の視点は欠かせません。

同調査(2022年)では、介護・看護を理由とした離職者のうち、女性が約8割を占めています。これは日本社会における「介護は女性が担うもの」という性別役割分業意識の反映とみられており、内閣府「男女共同参画白書」(2024年版)でも繰り返し指摘されています。

男女共同参画社会基本法(平成十一年法律第七十八号、e-Gov 法令検索)は、第3条で「男女が社会の対等な構成員として……社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保される」ことを基本理念に掲げています。介護の担い手が女性に偏り、それが離職につながる構造は、この理念と整合しない状態です。

一方、近年は男性介護者・男性ビジネスケアラーの問題も可視化されています。男性は「介護している」と周囲に申告しにくい職場文化があること、男性介護経験者にうつ状態のリスクが高いとする研究があること(国立社会保障・人口問題研究所 調査研究報告書等)なども報告されています。介護の問題は、女性だけに向けられるべきではなく、働くすべての人の課題として位置付けることが重要です。

介護離職後のリスク

介護離職後には、さまざまなリスクが生じます。主なものを以下に整理します。

  • 収入の激減: 失業給付の受給期間は通常3~6か月。介護が終わった後に再就職しても、以前の収入水準に戻れないケースが多いとされます。特に女性の場合、非正規雇用への移行が起きやすい傾向があります。
  • キャリアの断絶: 年齢・業種によっては、再就職市場で著しく不利になります。40代後半以降の管理職歴は、ブランクがあると評価されにくい傾向があります。
  • 介護費用と収入の「二重苦」: 離職によって介護費用の捻出がかえって困難になるという逆説的な状況が生じます。在職のまま介護サービスを活用するほうが、経済的にも持続可能なケースが多いとされます。
  • 社会的孤立: 職場コミュニティから切り離されることで、精神的サポートを失うリスクがあります。介護者自身のメンタルヘルスに影響が出ることも報告されています。心身の不調を感じる場合は、医療機関・精神保健福祉センター・専門相談窓口へのご相談をご検討ください。

厚生労働省は「介護は離職せずに続けるほうが、本人にとっても有利なケースが多い」との立場をとっており、育介法に基づく両立支援制度の整備・周知を事業主に求めています。

育児・介護休業法が定める介護関連制度

介護休業(最大93日・3回まで分割取得可)

育児・介護休業法(最終改正: 2024年5月、e-Gov 法令検索)は、仕事と介護の両立支援の法的根拠を定める主要な法律です。

第11条・第12条は、要介護状態(負傷・疾病・身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族1人につき、通算93日まで、3回を上限として分割して介護休業を取得できると定めています。

対象家族の範囲は、配偶者(事実婚含む)・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫(祖父母・兄弟姉妹・孫については同居・扶養要件あり)です(第2条第4号)。

介護休業中の賃金について法律上の規定はありませんが、雇用保険から「介護休業給付金」が支給されます。支給額は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です(雇用保険法第61条の6)。育児休業給付金(2025年改正後の最初の28日間は最大80%)と比べると水準が低く、これが経済的なハードルとなっている点は課題として指摘されています。

介護休暇・勤務時間短縮・所定外労働免除

93日の介護休業は「制度の核」ですが、日常的な介護との両立には、より細かい支援制度の組み合わせが重要です。

第16条の5・第16条の6では、介護休暇として、要介護状態の対象家族が1人の場合は年間5日(2人以上は年間10日)の休暇を、1日または時間単位で取得できることを定めています。

第23条第3項では、介護のための所定労働時間の短縮等の措置(短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護サービス費用の助成のいずれか)を、要介護状態の対象家族1人につき利用開始から3年以上・2回以上利用できるようにすることを事業主の義務として定めています。

第16条の9では、要介護状態の対象家族を介護する労働者が請求した場合の所定外労働の免除(残業免除)を事業主の義務としています。また、深夜業(午後10時~午前5時)の制限(第20条の2)、時間外労働の制限(第18条の2:月24時間・年150時間以内)も定められています。

2025年施行改正の介護関連ポイント

2024年5月に成立した育介法改正には、介護に関して以下の重要な改正が含まれています(2025年4月・10月の段階施行。詳細は育児・介護休業法 2025年改正もご参照ください)。

  • 介護直面時の個別周知・意向確認の義務化: 労働者が家族の介護に直面したことを申出た際、事業主は育介法上の制度の概要・利用方法を個別に周知し、利用意向を確認することが義務付けられました。
  • 節目の情報提供義務(40歳等): 労働者が一定年齢(40歳など)に達した節目に、事業主が介護に関する制度・相談窓口の情報を提供することが義務化されました。「介護に直面してから知る」のではなく「直面する前に準備する」文化の醸成を目指しています。
  • テレワークの選択肢明示(努力義務): 介護を行う労働者がテレワークを選択できる環境整備について、事業主の努力義務として新たに規定されました。

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介護離職が起きる構造的背景

「突然やってくる介護」と準備不足

育児は「子どもが生まれる前から準備できる」のに対し、介護は多くの場合「突然始まる」という特徴があります。親の転倒・骨折・脳卒中の発症・認知症の症状悪化——これらは予告なく訪れ、その日から介護対応が始まります。

厚生労働省「介護保険事業状況報告」(2023年度)によれば、要介護・要支援認定者数は約740万人(2023年度末)。高齢化率の上昇に伴い、今後も増加が見込まれます。40代・50代の就労者にとって、親の介護は「遠い将来の話」ではなく「5~10年以内の現実」として想定する必要があります。

企業・行政ともに「知っていれば使えた制度」の周知不足が指摘されており、突然の事態に際して「介護休業という制度があること」を知らないまま離職を選択するケースが一定数存在しています。2025年施行の「40歳節目の情報提供義務」はこの問題への直接的な対応策です。

職場での制度利用しにくさ——「ケアハラスメント」問題

育介法上の権利として介護休業等の取得は保障されていますが、実際の職場では利用を阻む文化的・組織的障壁が存在します。研究者の一部は、これを「介護ハラスメント(ケアハラスメント)」と呼んでいます(明確な法律上の定義はありませんが、パワーハラスメントの一形態として問題化されています)。

主な障壁として、①業務多忙を理由とした取得の困難、②上司の無理解・否定的反応、③職場内での代替要員不足、④復帰後の処遇不利益懸念、が挙げられます。

男女雇用機会均等法(昭和四十七年法律第百十三号)第11条の3および育介法第25条は、妊娠・出産・育児・介護を理由とした不利益取扱いを禁止しています。しかし、「正式に申請する前の段階での圧力や排除」は証明が難しく、実態把握が困難な課題です。マタニティハラスメント(マタハラ)・パタニティハラスメント(パタハラ)と同様に、介護を理由とした不利益取扱いについても社会的な問題意識の醸成が求められています(マタハラ・パタハラの法的論点もご参照ください)。

介護保険サービスとの連携不足

介護保険法(平成九年法律第百二十三号、e-Gov 法令検索)に基づく介護サービスが十分に機能していれば、在職のまま介護を続けることは多くの場合可能です。しかし、以下の障壁が指摘されています。

  • 地域差: 介護サービスの種類・量・質は地域によって大きく異なります。特に地方では送迎を伴うデイサービスの利用にも時間的制約が生じることがあります。
  • 費用負担: 介護保険の自己負担(原則1割、収入によって2~3割)に加え、保険外サービスの費用が累積します。介護離職後に収入が減ると、このコストがさらに重くのしかかります。
  • 介護人材不足: 介護職員の不足により、利用したいサービスが利用できない・待機が発生するケースがあります。
  • 手続きの複雑さ: 要介護認定申請・サービス計画(ケアプラン)策定・事業者との契約など、仕事を続けながら複数の手続きをこなす負担が大きいとされます。

こうした「介護保険サービスの壁」が、育介法の制度を活用しても介護と仕事の両立を困難にさせる要因の一つです。

育介法の主な介護関連制度 一覧と比較

育児・介護休業法が定める介護関連の主要制度を以下の比較表に整理します。状況に応じてこれらを組み合わせて活用することが重要です。

制度名 根拠条文 対象・要件 取得上限・期間 給付・賃金
介護休業 第11条~第15条 要介護状態の対象家族がいる労働者(有期雇用は継続勤務要件あり) 対象家族1人につき通算93日・3回まで分割可 雇用保険から休業開始時賃金の67%(介護休業給付金)
介護休暇 第16条の5 要介護状態の対象家族がいる労働者(日雇を除く) 年間5日(対象家族2人以上は10日)・時間単位取得可 法律上の賃金保障なし(会社規定による)
所定外労働の免除 第16条の9 要介護状態の対象家族を介護する労働者(請求期間中) 請求した期間中(上限なし) 免除時間分の賃金は発生しない
時間外労働の制限 第18条の2 要介護状態の対象家族を介護する労働者 月24時間・年150時間以内に制限 制限時間内の賃金は支払われる
深夜業の制限 第20条の2 要介護状態の対象家族を介護する労働者 請求した6か月の期間中 深夜割増賃金は発生しない
短時間勤務等の措置 第23条第3項 要介護状態の対象家族を介護する労働者 利用開始から3年以上・2回以上利用可 短縮時間分は原則無給(会社規定による)
出典: 育児・介護休業法(令和6年改正)を基に作成

これらは単独ではなく、状況に応じた組み合わせが有効です。たとえば、親が急に倒れた初期段階で介護休業(最大93日)を取得してサービス体制を整え、職場復帰後は短時間勤務・介護休暇・所定外労働免除を組み合わせるというケースが一般的です。

現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

育児・介護休業法は制定(1991年)から数次の改正を経て拡充されてきました。介護に関わる主な改正は以下のとおりです。

  • 2009年改正(2010年6月施行): 介護休暇(年5日)の新設・短時間勤務の義務化・フレックスタイム等の選択肢追加。これ以前は介護休暇という制度自体が存在せず、大きな前進となりました。
  • 2016年改正(2017年1月施行): 介護休業の分割取得(3回・通算93日)の実現。従来は1回・最大93日のみでしたが、介護が断続的に続く実態に対応できるよう改正されました。また、介護休暇の半日単位取得も可能になりました。
  • 2021年改正(2022年4月~段階施行): 育児関連改正が中心でしたが、介護については介護直面時の個別周知・意向確認が盛り込まれました。また、産後パパ育休(出生時育児休業)の新設により、男性の育休取得促進が強化されました。
  • 2024年改正(2025年4月・10月段階施行): 介護に関する40歳節目の情報提供義務化・テレワーク努力義務化・個別周知・意向確認の一層の強化。「介護を知る機会」を職場と社会の双方で設ける方向へ進化しました。
  • こども家庭庁発足(2023年4月): 子育て支援行政の一元化を目的に設置されました。直接的に介護は管轄外ですが、「ケアを担う人を社会で支える」という観点から、育児と介護を横断的に支援する仕組みの整備が議論されています。
  • 「加速化プラン」(2024年~): こども未来戦略に盛り込まれた少子化対策強化策。児童手当の拡充・育休給付の引き上げが中心ですが、「男女ともに育児・介護に携わりやすい社会」というビジョンは介護政策とも接続しています。

議論の現在地

仕事と介護の両立をめぐる議論は、2020年代に入って急速に深まっています。主な論点は以下のとおりです。

①「介護離職ゼロ」政策目標の達成困難と再設定の議論

2016年に掲げられた「介護離職ゼロ」の目標は、法整備・給付拡充にもかかわらず統計上の離職者数が大幅に減少していないことから、目標設定のあり方そのものを問い直す声があります。「ゼロ」という数値目標ではなく、「離職を余儀なくされない環境整備」という質的目標への転換を求める意見があります。一方で、数値目標の存在が制度改正を促す政治的圧力になっているという評価もあります。

②介護の女性集中とジェンダー平等

介護離職者の約8割が女性であることは、女性の経済的自立・キャリア継続に対する構造的障壁として問題視されています。「介護のために女性が職を辞す」構造は、男女共同参画社会基本法の理念と相容れないという指摘は多くの研究者・政策立案者から出ています。一方で、「男性が介護に参加するよう職場側が促す視点が育介法の改正趣旨に欠けている」という批判もあり、男性ケアラー支援の強化が求められています。

③テレワークと介護の関係

コロナ禍以降に普及したテレワークは、介護との両立に資するとする見方がある一方で、「テレワーク可能な職種・職域に限定される」という問題もあります。2024年改正でテレワークが努力義務となったことは肯定的に評価される一方、非正規雇用・製造業・対人サービス業など、テレワークになじまない職種での対応策が引き続き課題です。

④介護保険の持続可能性と「支援する側」の支援

介護保険制度(2000年施行)は、給付費の増大と担い手不足という双方の課題を抱えています。「仕事との両立」を支えるサービス基盤が財政的に揺らぐリスクについては、介護報酬改定・外国人介護人材受入・ロボット・ICT活用などの対応策が継続的に実施されています。仕事と介護の両立支援は、当事者への直接支援だけでなく、介護サービス基盤の整備なしには実現しないという認識が広まっています。

残された課題

制度整備が進む一方で、以下の課題が残されています。

  • 介護休業給付の水準: 育児休業給付(2025年改正後は最初の28日間は最大80%)と比べて、介護休業給付(67%)の水準は低いまま据え置かれており、経済的ハードルが依然として高い状態です。給付水準の引き上げを求める声がありますが、財源問題から議論が進んでいません。
  • 中小企業での形骸化リスク: 育介法上の義務は事業規模を問いませんが、代替要員確保が困難な中小企業では制度が有名無実化するリスクが指摘されています。
  • 「介護ハラスメント」の法的明確化: マタニティハラスメントと異なり、介護を理由とした不利益取扱いを「ハラスメント」として明確に定義・禁止した条文はなく、実効的な防止策と事業主への義務強化が求められています。
  • ダブルケア(育児と介護の同時進行)への対応: 子どもの育児と親の介護が同時進行する「ダブルケア」状態の支援は、育児・介護それぞれの窓口が分散しており、ワンストップ支援体制の構築が課題です。
  • 男性ケアラーの可視化と支援: 男性介護者・男性ビジネスケアラーの実態調査・支援策は、女性介護者支援と比べて遅れており、男女共同参画の観点からもアプローチの強化が求められています。

仕事と介護を両立するための実践的な流れ

STEP1: 「介護が始まる前」の準備

2025年施行の育介法改正により、事業主は40歳等の節目に介護制度の情報を提供することが義務付けられました。これを機に、職場の制度・社内窓口・ハローワークの「介護離職防止支援」などを事前に確認しておくことが有効です。

また、親・家族と「介護が必要になったらどうするか」を事前に話し合っておくことが、突然の事態への備えになります。この対話を促す「人生会議(ACP: アドバンス・ケア・プランニング)」は、厚生労働省も推奨しています。親の意思・希望・資産状況・連絡先の確認をしておくことで、いざという時の意思決定が円滑になります。

STEP2: 要介護認定申請と介護サービスの利用開始

介護保険サービスを利用するには、市区町村への要介護認定申請が必要です。認定まで通常1~2か月かかるため、介護の必要性が生じた時点で速やかに申請することが重要です。要介護認定結果に基づき、担当ケアマネジャー(介護支援専門員)がケアプランを作成し、具体的なサービス利用が始まります。

地域包括支援センター(各市区町村に設置)は、介護保険の相談・ケアマネジャーへの橋渡しを行う窓口です。「どこに相談すればいいかわからない」という段階でも、まずここに連絡することで適切な支援につながることが多いとされています。

STEP3: 職場への相談と制度の申請

介護休業・介護休暇・短時間勤務等を利用する際には、事業主への申出が必要です。育介法では、介護休業については休業開始日の2週間前までに申出ることが原則とされています(第11条第3項)。

上司・人事担当者への相談に際しては、「いつから」「どのくらいの期間」「どの制度を利用したいか」という見通しを可能な範囲で伝えることが、職場側の理解と協力を得やすくします。

公的相談窓口・支援機関

介護や仕事の両立に関して困ったとき、以下の窓口を利用できます。

  • 地域包括支援センター: 各市区町村に設置。介護保険の相談・ケアマネジャーへの橋渡し・地域の介護サービス情報提供を行います。市区町村の福祉担当窓口や厚生労働省ウェブサイト(「地域包括支援センター 探し方」)で検索できます。
  • 都道府県労働局・ハローワーク(雇用均等室): 育介法に関する相談・不利益取扱いの申告・介護離職防止に関する情報提供を受け付けています。事業主への指導・助言も行っています。
  • 法テラス(日本司法支援センター): 電話 0570-078374(平日9:00~21:00、土9:00~17:00)。経済的に余裕がない場合も無料法律相談の利用可能性があります。介護に関連した法的問題(成年後見・財産管理・相続等)の相談先として活用できます。
  • 男女共同参画センター・女性相談センター: 女性ケアラーが直面する複合問題(介護+DV・ハラスメント等)の相談窓口として機能する場合があります。都道府県・市区町村に設置状況を確認してください。

まとめ|制度を知り、早めに動くことが離職を防ぐ

介護離職は、当事者の努力不足や覚悟の問題ではなく、制度的・文化的・社会的な構造の問題として理解することが重要です。育児・介護休業法は介護休業(通算93日・3回分割)・介護休暇・短時間勤務等の複数の両立支援制度を定めており、2025年施行改正では「直面する前から知る・準備する」ことを支援する義務規定が強化されました。

一方で、介護休業給付の水準・中小企業での制度活用・介護ハラスメントの法的未定義・男性ケアラーの不可視化・ダブルケアへの対応など、残された課題は少なくありません。制度の整備が「使われる制度」となるかどうかは、企業文化・職場風土・上司の意識によるところが大きく、ここに改革の余地があります。

男女共同参画社会基本法が目指す「社会のあらゆる分野への平等な参画」の実現には、介護の担い手がジェンダーを問わず職業生活を継続できる環境の整備が不可欠です(男女共同参画白書とは|統計データで見る日本の現状と課題もご参照ください)。

具体的な事案については、弁護士・社会保険労務士など専門家への相談をご検討ください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 介護休業は何日取れますか?
育児・介護休業法第11条・第12条に基づき、要介護状態の対象家族1人につき、通算93日まで、3回を上限として分割取得できます。同一の対象家族について、3回の分割で合計93日が上限です。
Q2. 介護休業中の収入はどうなりますか?
雇用保険から「介護休業給付金」が支給されます。支給額は休業開始時の賃金日額×支給日数×67%です(雇用保険法第61条の6)。育児休業給付(最大80%)と比べて水準が低い点は課題として指摘されています。
Q3. 介護を理由に解雇・降格を示唆されました。どうすればよいですか?
介護を理由とした不利益取扱い(解雇・降格・賃金カット等)は、育児・介護休業法第16条(準用規定)および男女雇用機会均等法で禁止されています。都道府県労働局・ハローワーク(雇用均等室)または法テラス(0570-078374)にご相談ください。具体的な対応については弁護士・社会保険労務士への相談が有効です。
Q4. 介護休業の申出はいつまでにすればよいですか?
育介法第11条第3項に基づき、休業開始日の2週間前までに書面等で事業主に申出ることが原則です。急な事態では、まず口頭で申出たうえで後日書面を提出する対応が多く用いられます。詳細は勤務先の規程や所轄労働局にご確認ください。
Q5. 介護と育児が重なっています(ダブルケア)。使える制度はありますか?
育介法上の介護関連制度(介護休業・介護休暇・短時間勤務等)は育児中の労働者も利用できます。介護休業と育児休業を同時取得する場合の条件は会社規程によって異なります。ダブルケアの相談には、地域包括支援センター(介護担当)と市区町村の保育担当窓口の双方への相談が有効です。
Q6. 企業が介護支援制度を整備しない場合、何か対処できますか?
育介法上定められた措置(短時間勤務等・所定外労働の免除等)を講じない事業主は、厚生労働大臣による指導・助言・勧告の対象となる可能性があります(第56条)。ただし直ちに「刑事罰あり」となるかは具体的な状況によります。都道府県労働局への相談・申告が選択肢の一つです。

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