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LGBTQ+と家族形成|里親・特別養子縁組・生殖補助医療と2026年の法的課題【2026年版】

「子どもを持ちたいが、自分たちのような家族の形は法律に認められているのだろうか」——同性カップルや性的マイノリティ(LGBTQ+)当事者の多くが、こうした問いを抱えています。日本では婚姻の平等が法律上認められていない現状において、里親制度・特別養子縁組・生殖補助医療といった複数の経路が存在しますが、いずれも課題を伴います。本記事では、LGBTQ+当事者が家族を形成する主要な手段を法令に基づいて整理し、2026年時点の論点と残された課題を解説します。企業のダイバーシティ担当者・福祉や教育の関係者・当事者やその支援者を主な対象としています。里親制度の現状、養子縁組の法的要件、生殖補助医療をめぐる議論、国際比較まで、体系的に把握することができます。

目次

LGBTQ+カップルの家族形成とは

「家族形成」の意味と多様な選択肢

「家族形成」とは、子どもを迎えるなど新たな家族単位を構築することを指します。異性カップルの場合、自然妊娠・生殖補助医療・養子縁組などの選択肢がありますが、LGBTQ+当事者、とりわけ同性カップルにとっては、生物学的な制約に加えて法的な制約が重なります。現行の民法(明治29年法律第89号、最終改正令和8年法律第45号・2026年6月24日施行)は婚姻を男女間に限定しており(第739条)、同性婚は2026年時点で法律上認められていません。このため、同性カップルが「法律上の夫婦」として子どもを共同で迎える経路は、現行法の枠組みでは限られています。

主な家族形成の経路

LGBTQ+当事者が家族を形成する主な経路には、①里親登録、②特別養子縁組・普通養子縁組、③生殖補助医療(精子提供・卵子提供・代理出産)の3つがあります。それぞれ要件・手続き・法的効果が大きく異なります。また、自治体のパートナーシップ宣誓制度を活用することで、一部の行政手続きにおいて一定の便宜が図られる場合もありますが、これは法律上の親子関係を創設するものではありません。各経路にはそれぞれ利点と制約があり、どの手段を選ぶかは当事者の状況・居住地・希望に応じて異なります。

パートナーシップ宣誓制度と家族形成の関係

パートナーシップ宣誓制度(パートナーシップ・ファミリーシップ制度)は、2015年の渋谷区・世田谷区を先駆けとして全国の自治体に広がり、2026年時点では400以上の自治体が導入しています。一部の自治体では「ファミリーシップ制度」を設け、子どもも含めた家族単位としての登録を可能にしています。ただし、これらは自治体の行政サービス上の取り扱いを定めるものであり、民法上の親子関係・相続権・親権を発生させるものではありません。里親申請の際に審査上考慮される自治体も一部ありますが、法的根拠があるわけではなく、自治体ごとに対応が大きく異なります。

里親制度とLGBTQ+当事者

里親制度の概要と根拠法令

里親制度は、児童福祉法(昭和22年法律第164号、最終改正令和4年)第6条の4および第27条第1項第3号に規定されます。里親とは、保護を必要とする子どもを自宅で養育する個人または家庭を指し、①養育里親、②専門里親、③養子縁組里親、④親族里親の4種に分類されます。里親認定は都道府県知事が行い、研修修了・家庭調査・里親認定審議会の審議を経て認定が決まります。里親手当や委託児童への生活費は公費で支給されます。

同性カップルへの里親認定の動向

里親の申請要件は都道府県・政令指定都市ごとのガイドラインに委ねられており、児童福祉法および関連省令上「異性婚カップルに限る」という明文規定は存在しません。2017年、大阪市が同性カップルを里親として認定した事例が報告され、その後2020年には東京都が同性カップルの里親申請を受け付ける方針を明確にしました。2026年時点では、東京都・大阪市・那覇市などの一部自治体が同性カップルの申請を実質的に受け入れています。一方、全都道府県での受け入れには至っておらず、居住地によって家族形成の機会に大きな差があるのが現状です。

里親申請の流れと同性カップル特有の課題

里親申請の一般的な流れは、①説明会参加→②研修受講(養育里親研修等)→③家庭調査(児童相談所職員による訪問)→④里親認定審議会での審議→⑤認定→⑥子どもとのマッチングという段階を踏みます。同性カップルの場合、「夫婦」としてではなく「同居人」の一方が単独申請する形式となるケースや、二人での申請を受け付けるケースがあり、審査担当者の判断・自治体の方針によって対応が分かれます。申請を検討する際は、事前に居住地の児童相談所や都道府県の子育て支援担当部局に問い合わせることが有益とされています。具体的な手続きについては、各自治体窓口や法律専門家にご確認ください。

特別養子縁組・普通養子縁組とLGBTQ+当事者

特別養子縁組制度の概要

特別養子縁組は、民法(最終改正令和8年法律第45号・2026年6月24日施行)第817条の2以下に定められます。特別養子縁組は、実親子関係を原則消滅させ、養親子間に嫡出親子と同等の関係を創設する制度です。2020年施行の民法改正(令和元年法律第34号)により、対象となる子どもの年齢上限が原則6歳未満から原則15歳未満へと引き上げられました(民法第817条の5)。申立権者については民法第817条の3第1項で「夫婦」と規定されており、2026年時点では法律婚による異性婚の夫婦に限られます。

普通養子縁組との違いとLGBTQ+への影響

普通養子縁組(民法第792条以下)は、実親子関係を存続させたまま養親子関係を追加する制度です。単独の個人でも申請可能であるため、同性カップルの一方が単独で子どもの養親となることは、現行法上で明示的に禁じられていません。ただし、パートナーは法律上の親にはならないため、もう一方のパートナーと子どもの間には法的な親子関係が生じません。この非対称性は、パートナーが死亡・入院・別離した際に子どもの監護・相続・医療同意に深刻な法的問題を引き起こす可能性があります。

2020年改正後の動向と立法的課題

2020年の民法改正は特別養子縁組の対象年齢を拡大しましたが、申立権者を「夫婦」とする要件は変更されていません。同性カップルを「夫婦」として特別養子縁組の申立権者に含める立法措置については、国会審議段階での実質的な議論がなく、2026年時点では法改正の具体的な見通しは示されていません。一方、海外では同性婚を法制化した国や地域において同性カップルが共同養親となれる制度が確立されており、日本との制度的落差が指摘されています。

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生殖補助医療とLGBTQ+当事者

生殖補助医療特例法の概要と適用範囲

2020年に「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」(令和2年法律第76号)が成立しました。同法は、生殖補助医療を受けた夫婦について、妻が妊娠・出産した場合の法的親子関係の明確化や、精子・卵子提供により生まれた子の親子関係について民法の特例を定めることを主な目的としています。ただし、適用対象は明文上「夫婦」とされており、異性婚の法律婚カップルを前提とした設計となっています。同性カップルへの適用は想定されておらず、法的空白が残っています。

女性同性カップルの精子提供をめぐる現状

女性同性カップルが第三者から精子提供を受けて子をもうける場合、生まれた子と妊娠・出産した方の間に親子関係(母子関係)は発生しますが、もう一方のパートナーとの法的親子関係は生じません。精子提供を実施する国内の医療機関は限られており、日本産科婦人科学会(日産婦)のガイドラインは従来、第三者提供を法律婚の夫婦に限定する運用方針を示してきました。このため、女性同性カップルへの対応は医療機関によって異なり、一部では実施するケースが報告されています。法整備がなく、生まれた子の権利保護が不十分であるとの指摘があります。

男性同性カップルと代理出産の法的問題

男性同性カップルが子どもをもうける場合、代理出産(代理懐胎)という手段が考えられますが、日本では代理出産を明示的に規制する法律は存在しない一方、日産婦のガイドラインは原則として禁止の立場を示しており、国内での実施例は極めて少数です。海外(米国カリフォルニア州・カナダ・ウクライナ等)で代理出産を経て生まれた子どもについては、出生国での法的親子関係確立後に日本での養子縁組手続きが別途必要となるなど、複雑な法的課題が伴います。最高裁判所は代理出産による親子関係について慎重な立場を示した決定(平成19年3月23日最高裁第二小法廷決定)を有しており、国内での法整備の遅れが継続的に指摘されています。

現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

LGBTQ+の家族形成に関連する2007年以降の主な法改正・動向は以下の通りです。

  • 2011年: 里親認定に関する省令改正——虐待歴を有する者の排除規定が明確化されたが、性的指向・性自認に関する条項は設けられなかった
  • 2017年: 大阪市が同性カップルの里親認定を実施(行政実務上の重要な先例として注目を集めた)
  • 2019年: 特別養子縁組年齢上限引き上げに関する民法改正成立(令和元年法律第34号、2020年施行)
  • 2020年: 生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律(令和2年法律第76号)成立
  • 2020年: 東京都が同性カップルの里親申請受付を表明
  • 2023年: 性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(LGBT理解増進法、令和5年法律第68号)成立——家族形成への直接の規定はないが、多様な家族形態の理解促進に寄与するとされる
  • 2024年: 離婚後共同親権を導入する民法改正成立(令和6年法律第33号、2026年施行)——同性カップルへの直接的適用はないが、婚外の親の権利拡大の文脈で影響が議論されている

議論の現在地

LGBTQ+の家族形成をめぐる議論は、「子どもの最善の利益」「多様な家族形態の承認」「法的安定性の確保」という複数の軸を横断しています。制度拡大を求める立場からは、養育能力は性的指向・性自認とは無関係であり、すべての子どもが安定した家族環境を持つ権利を有するという国連子どもの権利条約(昭和59年条約第2号)の観点から、同性カップルへの里親・養子縁組の全国的な開放を求める声が上がっています。一方、段階的な検討を求める立場からは、婚姻制度の根幹に関わる問題であり国会での丁寧な審議が必要との意見や、子どもの発達に関する長期的な調査・研究の充実を求める声もあります。政府は2026年時点において、同性カップルの共同養親を認める立法措置について「関係省庁で検討中」とする公式見解を示すにとどまっています。

残された課題

2026年時点で解決されていない主な課題は以下の通りです。第一に、里親認定の地域格差の解消です。自治体によって受け入れ状況が大きく異なり、居住地によって家族形成の機会が不均等になっています。第二に、特別養子縁組の申立権者要件の見直しです。現行の「夫婦」要件のままでは、同性カップルが共同養親として子どもを迎える法的手段がありません。第三に、生殖補助医療法の適用範囲の整理です。現行の生殖補助医療特例法が「夫婦」を前提に設計されており、同性カップルの取り扱いが明確でありません。第四に、代理出産の法整備です。国内に明文の規制・許可法がなく、生まれた子の権利保護の観点からも法的空白の解消が求められています。これらは立法府・司法・行政の各分野で今後の動向が注目される論点です。

国際比較|主要国のLGBTQ+家族形成制度

国・地域 同性カップルの里親 同性カップルの共同養子縁組 女性同性カップルへの精子提供 代理出産の法的位置づけ
日本 一部自治体のみ可(東京都・大阪市等) 不可(法律婚夫婦に限定) 医療機関による(ガイドラインは限定的) 法的空白(禁止・許可とも明文なし)
フランス 可(全国共通) 可(2013年同性婚法制化以降) 可(2021年生命倫理法改正) 原則禁止(民法に明文規定)
ドイツ 可(全国共通) 可(2017年同性婚法制化以降) 医師の判断による(禁止の明文なし) 代理母契約無効(代理母法により原則禁止)
米国(州による) 可(多くの州で認められている) 可(多くの州で認められている) 可(医師・精子バンクを通じて実施) 可(カリフォルニア州等、商業的代理出産を含む)
台湾 可(全国共通) 可(2019年同性婚法制化以降) 限定的(制度整備途上) 法的整備途上
韓国 不可(法令上根拠なし) 不可 限定的 法的空白

(各国法令・国連人権高等弁務官事務所資料等をもとに整理。2026年時点の概況。各国の詳細は現地法令および専門機関の情報をご確認ください。)

当事者・支援者向け相談窓口

法的手続きに関する相談先

家族形成に関連する法的課題(養子縁組・里親申請・遺言・生前契約・パートナーシップ宣誓等)については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

  • 法テラス(日本司法支援センター): 電話 0570-078374(平日9:00~21:00、土曜9:00~17:00)。資力が乏しい方向けの無料法律相談制度(審査あり)
  • よりそいホットライン(性的マイノリティ専用ダイヤル): 電話 0120-279-338(24時間対応)。LGBTQ+当事者の悩みに専門のオペレーターが対応
  • 子どもの権利110番(日弁連): 電話 0120-007-110(平日12:00~17:00)。里親・養子縁組等に関する法的相談も受付

具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。心身の不調を感じる場合は、医療機関・精神保健福祉センター・専門相談窓口へご相談ください。

まとめ

現状の整理

日本では、LGBTQ+当事者の家族形成は法律上明確に保障されているわけではありませんが、一部自治体での里親制度の開放、普通養子縁組の個人申請、生殖補助医療の利用(医療機関・ガイドライン次第)など、いくつかの経路が実態として存在します。いずれの方法も、法的不確実性や地域格差という課題を伴っており、居住地・家族構成・希望する家族の形によって選択肢が異なります。パートナーシップ宣誓制度は一定の社会的承認をもたらすものの、法律上の親子関係・相続権の創設には直結しません。

今後の動向と社会的示唆

LGBTQ+の家族形成をめぐる法整備は、婚姻制度・親子法・生殖補助医療法の複数分野にまたがる複合的な課題です。立法的解決は国会での審議を必要とするため、市民がジェンダー平等政策に関心を持ち、議会や行政への政策提言に参画することが、制度改善への一歩とされています。企業のダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)施策においても、多様な家族形態の従業員が育休・介護休業・慶弔休暇等を利用しやすい環境整備が求められており、人事制度の見直しを検討する企業が増えています。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 日本で同性カップルが里親になることはできますか?
一部の自治体(東京都・大阪市・那覇市など)では同性カップルの里親申請を受け付けていますが、全国共通の制度ではありません。法令上は明示的に禁止されていないものの、認定の可否は居住する自治体の方針によって大きく異なります。事前に居住地の児童相談所にご相談ください。
Q2. 同性カップルが養子縁組をすることはできますか?
普通養子縁組(民法第792条以下)は個人での申請が可能であり、同性カップルの一方が単独で養親になることは法令上否定されていません。ただし、特別養子縁組の申立権者は「夫婦」(民法第817条の3第1項)と定められているため、同性カップルが共同で申し立てることは現行法上認められていません。
Q3. 女性同性カップルが精子提供を受けることはできますか?
日本では精子提供の実施は医療機関のガイドラインに委ねられており、女性同性カップルへの対応は医療機関によって異なります。日産婦のガイドラインは従来法律婚夫婦を対象とする運用方針を示していましたが、実際の対応には幅があります。国内での実施可能な機関は限られており、事前の問い合わせが必要です。
Q4. パートナーシップ宣誓制度は子どもの養育に法的効果をもたらしますか?
パートナーシップ宣誓制度は自治体の行政サービス上の取り扱いを定めるものであり、民法上の親子関係・相続権・親権を創設するものではありません。里親申請の審査で考慮する自治体もありますが、法的効果は限定的であり、登録しているだけでは子どもとの法的親子関係は生じません。
Q5. LGBTQ+当事者の家族形成に関する法整備は今後どうなりますか?
里親制度の全国的な開放や生殖補助医療法の適用範囲の見直しについては、2026年時点で政府内の検討段階にとどまっています。立法的解決には国会での議論が必要であり、司法・行政・市民社会それぞれの動向を継続的に注視することが重要です。
Q6. 海外で代理出産を行った場合、日本での親子関係はどうなりますか?
出生国で法的に認められた親子関係が日本国内で当然に認められるわけではありません。最高裁判所は代理出産による親子関係について慎重な立場を示した決定(平成19年3月23日最高裁第二小法廷決定)を有しており、帰国後に日本の法律に基づく手続きが必要となる場合があります。具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

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