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出産後の就業継続とは|第一子出産後の継続就業率・法制度と課題【2026年版】

妊娠・出産を機に「仕事を続けられるだろうか」という不安を抱く方は少なくありません。育児・介護休業法や男女雇用機会均等法など、就業継続を支える法制度は2022年以降も相次いで改正・拡充され、父親を含む多くの労働者が育休を取得しやすい環境が整いつつあります。しかし、第6次男女共同参画基本計画(令和8年3月13日閣議決定)が示す現状値では、第一子出産前後の女性の継続就業率は2021年時点で69.5%にとどまっており、政府は2030年までに80%へ引き上げることを目標として掲げています。

本記事では、継続就業率の現状と背景にある構造的な課題、就業継続を支える法制度の骨格、そして2026年時点での到達点と残された論点を整理します。企業の人事担当者、妊娠・出産を見据えているすべての方、および男女共同参画政策に関心を持つ方を主な対象としています。

出産後の就業継続とは|第一子出産後の継続就業率・法制度と課題【2026年版】 - 解説

目次

出産後の就業継続とはどういうことか

就業継続の意味と重要性

就業継続とは、女性(または育児を担うすべての労働者)が妊娠・出産・育休を経た後も、それ以前と同等またはそれに近い形で労働を続けることを意味します。広義には「雇用状態の維持(特に正規雇用)」や「キャリアの断絶を最小化すること」も含みます。

就業継続が社会的に重視される背景には二つの側面があります。一つは個人の経済的自立とキャリアへの影響です。出産を機に離職すると、再就職まで一定のブランクが生じ、正規雇用への復帰が難しくなる場合があります。もう一つは、少子化対策と男女共同参画の観点から、子どもを産みながら働き続けられる環境整備が社会全体の課題とされているためです。男女が互いに育児を担いながらキャリアを積める社会の実現が、政策の核心に置かれています。

出産がもたらすキャリアの転換点

産前・産後休業(産休)および育児休業(育休)は法律が保障する権利です。しかし職場復帰後に業務内容が大幅に変わったり、昇進・昇給の機会が実質的に失われたりすること(マミートラック)が報告されています。保育所が確保できずに育休を延長せざるを得ないケースや、時短勤務に切り替えた結果として昇格ラインから外れるケースも存在します。法律が保障する権利と職場の実態との間には、いまだギャップが残っている状況です。

第一子出産前後の継続就業率の現状

69.5%が示す現状と政府目標

第6次男女共同参画基本計画(令和8年3月13日閣議決定)が示す現状値によれば、第一子出産前後の女性の継続就業率は2021年時点で69.5%です。これは、第一子を出産した女性のうち約7割が出産後も就業を継続している状況を示しています。

この数値は2000年代初頭と比べると大幅に上昇しています。育介法の累次改正や保育所整備の拡充が寄与したと評価されています。政府は第6次計画において2030年までに80%の継続就業率を目指すとしており、現状の69.5%からは約10ポイント以上の改善が必要です。

就業率と雇用の質 ─ L字カーブ問題

25~44歳の女性就業率は2025年時点で83.6%に達しており(総務省「労働力調査」2026年8月更新)、かつての「M字カーブ」(出産・育児期に就業率が落ち込む形状)は大幅に解消されつつあります。しかし「就業率の向上」が「雇用の質の維持」を意味するとは限りません。

女性の正規雇用比率は25-29歳のピーク時で62.8%(令和7年(2025年)総務省「労働力調査」2026年8月更新)ですが、30歳以降に下降する傾向が見られます。これはL字カーブ(グラフ上で正規就業率が右肩下がりになる形状)と呼ばれ、出産後に非正規へ移行したり、時短勤務で管理職昇進が遅れたりする実態を反映しています。「量」の改善と「質」の改善が必ずしも連動していないという指摘が続いています。

雇用形態・産業・企業規模による差

正規雇用者と非正規雇用者とでは就業継続率に大きな差があります。非正規労働者は育児休業の取得要件(後述)を満たさない場合が多く、有期雇用者は育休中に雇用期間が満了するリスクもあります。

産業別・企業規模別にも差異があります。大企業の金融・保険業や製造業では両立支援制度の整備が進んでいる一方、中小企業の小売・飲食・介護分野では代替要員の確保が難しく、就業継続の環境整備が遅れがちな傾向があります。企業規模の大小による格差は、就業継続率の課題の一側面として継続的に指摘されている論点です。

就業継続を支える法制度の骨格

育児・介護休業法が保障する権利体系

育児・介護休業法(以下「育介法」)は、出産後の就業継続を支える中核的な法律です。子の誕生直後を支える制度として、育介法第5条が育児休業の申出を保障し、子が1歳に達するまで(要件を満たせば最長2歳まで)取得できます。

2022年10月1日に施行された出生時育児休業(産後パパ育休)は育介法第9条の2から第9条の5に規定されており、父親が子の出生後8週間以内に最大4週間取得できる仕組みです。これにより、母親の産後直後からパートナーが育児に参加しやすくなりました。

職場復帰後の継続を支える制度として、育介法第23条が3歳未満の子を持つ労働者への所定労働時間の短縮措置(時短勤務)を事業主に義務づけています。さらに2025年10月1日に施行された育介法第23条の3(新設)では、3歳から就学前の子を持つ労働者に対して、テレワーク・フレックスタイム制・時差出勤・短時間勤務・保育施設運営等の5つの選択肢から2以上を措置することが企業に義務づけられました。

長時間労働からの保護については、育介法第16条の8が小学校就学前までの子を持つ労働者の所定外労働(残業)の免除を認めています。育介法第17条は時間外労働を1か月24時間・1年150時間以内に制限し、育介法第19条は午後10時から午前5時の深夜業を制限します。

男女雇用機会均等法による職場環境整備

男女雇用機会均等法(以下「均等法」)は、妊娠・出産を理由にした不利益取扱いを禁止し、職場環境の整備を定める法律です。

現行の均等法第11条の3は、妊娠・出産・育休等に関する言動によるハラスメント(マタニティハラスメント、マタハラ)の防止措置を事業主に義務づけています。育休取得を理由とした降格・解雇・雇い止めなど、妊娠・出産・育休等を理由とした不利益取扱いは同法の下で禁止されており、違反した場合は行政指導の対象となります。

なお、令和7年法律第63号(2026年10月1日施行)により均等法の条番号が一部移動します。施行後の条番号については、最新の条文をe-Gov法令検索でご確認ください。

女性活躍推進法の情報公表義務

女性活躍推進法は、就業継続に関連する指標を企業に公表させることで職場の実態を可視化する役割を担っています。同法第20条第1項に基づく情報公表義務は段階的に拡大されてきました。

2022年4月1日から、常時雇用する労働者が100人を超える企業への行動計画策定・届出・情報公表義務が拡大しました(令和元年法律第24号)。さらに2026年4月1日からは、令和7年法律第63号の施行により、100人を超える企業に男女の賃金の差異と女性管理職比率の公表が義務づけられました(経過措置あり。実際の公表は2026年4月1日以後に終了する事業年度の翌事業年度から)。公開されたデータは、就職・転職時に就業継続しやすい職場を見極める際の参考情報として活用できます。

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就労と出生の国際比較を論じた参考書として、以下の書籍があります。仕事と家族 – 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか (中公新書)

現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

出産後の就業継続を取り巻く法制度は、2007年以降も継続的に改正されてきました。確定した施行済みの主な改正を以下に示します(3~5項目)。

  • 2022年10月1日: 育介法改正施行。出生時育児休業(産後パパ育休)が新設されました(育介法第9条の2)。子の出生後8週間以内に父親が最大4週間取得できる制度が始まり、母親の産後直後からの就業継続を支援する仕組みが強化されました。
  • 2025年4月1日: 育介法改正施行。所定外労働の制限の対象が「小学校就学前」まで拡大しました(育介法第16条の8)。また、育休取得状況の公表義務の対象企業が常時雇用1,000人超から300人超に引き下げられました(育介法第22条の2)。
  • 2025年10月1日: 育介法改正施行。3歳から就学前の子を持つ労働者への「柔軟な働き方を実現するための措置」が義務化されました(育介法第23条の3)。テレワーク等5つの選択肢から2以上を措置することが企業に求められます。
  • 2026年4月1日: 女性活躍推進法改正施行(令和7年法律第63号)。100人を超える企業への男女賃金差異・女性管理職比率の公表義務が拡大されました(同法第20条第1項第1号・第2号)。

議論の現在地

継続就業率の向上をめぐっては、法制度の整備を評価する見方と、雇用の「質」の課題を重視する見方が交錯しています。

就業継続率の上昇を評価する立場からは、「育介法の整備・普及により、出産を機に離職を余儀なくされる女性が大幅に減った」という評価があります。厚労省「令和7年度雇用均等基本調査」(2026年7月31日公表)によれば、民間企業の男性育休取得率は50.9%に達しました。女性の育休取得率も88.3%(同調査)です。父親が積極的に育休を取ることが母親の就業継続を支える構造をつくりつつあるとされています。

一方、雇用の質に課題があるとする立場からは、「就業継続率は上がったが、正規雇用を維持しながら管理職へ昇進するルートはまだ狭い」という指摘があります。育休後のマミートラックや非正規移行が残っており、「就業継続率」という数値が実質的なキャリア継続を示しているかを問い直す必要があるとの意見もあります。

また、育休中の育児休業給付金や社会保険料免除が就業継続の経済的ハードルを下げてきた点を評価する声がある一方、有期雇用労働者・フリーランス等への適用範囲の限界を指摘する声もあります。

残された課題

就業継続に関する主な残課題として以下の点が挙げられます。

非正規労働者の就業継続支援の不十分さ:有期雇用者は育休取得要件が正規雇用者と異なるうえ、育休中に雇用期間が満了となるリスクがあります。フリーランスは育介法の適用外であり、独立して働く女性の出産後支援は課題として残されています。

育休復帰後の不利益取扱いへの実効的な対応:均等法や育介法は降格・賞与カット等を禁止していますが、「評価制度上の問題」として処理されるグレーゾーンが依然として存在します。行政指導や紛争解決手続きの活用促進が課題です。

地域格差のある保育インフラ:都市部では待機児童が解消されつつある地域も増えてきましたが、地方では保育所の定員割れや廃園も起きており、地域によって就業継続の環境に差が生じています。小学校入学後の学童保育不足(小1の壁)も引き続き課題です。

育介法が定める就業継続支援制度の一覧

制度体系を表で整理する

育介法が規定する主な就業継続支援制度をまとめると以下のようになります。子どもの成長段階に応じた制度が段階的に設計されている点が特徴です。

制度名 根拠条文(育介法) 主な内容
育児休業 第5条 子が1歳に達するまで(要件により最長2歳まで)取得できる
出生時育児休業(産後パパ育休) 第9条の2~第9条の5 父親が子の出生後8週間以内に最大4週間取得可能(2022年10月1日施行)
子の看護等休暇 第16条の2・第16条の3 9歳に達する日以後の最初の3月31日までの子について取得可能
所定外労働の制限(残業免除) 第16条の8 小学校就学前の子を養育する労働者が残業の免除を請求可(2025年4月1日対象拡大)
時間外労働の制限 第17条 1か月24時間・1年150時間を超える時間外労働を制限できる
深夜業の制限 第19条 午後10時から午前5時の深夜業を制限できる
所定労働時間の短縮措置(時短勤務) 第23条 3歳未満の子を養育する労働者に1日6時間への短縮措置を義務づけ
柔軟な働き方を実現するための措置 第23条の3 3歳から就学前の子を持つ労働者に、5択の措置から2以上を義務づけ(2025年10月1日施行)

雇用形態と育休取得要件の違い

正規雇用者と有期雇用労働者とでは、育休取得要件が異なります。正規雇用者は原則として育介法第5条に基づき育休を申出ることができます。有期雇用労働者が育休を取得するには、申出時点で同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であることが要件の一つとされています。

育休中の経済的保障として、雇用保険から育児休業給付金が支給されます(詳細は育児休業給付金とはを参照)。育休中の社会保険料は一定の要件の下で免除される仕組みもあり、就業継続の経済的ハードルを下げています。雇用形態による制度上の差異は、非正規労働者の就業継続が難しい構造的要因の一つとして指摘されています。

就業継続を阻む構造的な壁

職場環境と無意識の壁

法制度が整備されている一方、職場環境面での壁は依然として存在します。

代替要員の確保難:特に中小企業では、育休取得者の業務を誰がカバーするかという問題が解決されないまま残り、取得者が周囲への「迷惑をかける」という心理的プレッシャーを感じることがあります。このプレッシャーが、マタニティハラスメント(マタハラ)やパタニティハラスメント(パタハラ)の温床になるケースがあります。

管理職登用からの実質的排除:時短勤務中は「残業ができない」という理由で管理職候補から外れるケースがあります。育介法第23条の時短勤務は権利として保障されていますが、キャリア形成との両立を企業がどのように制度設計するかは、各職場の課題として残っています。

アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)も就業継続の妨げになる場合があります。「育休を取った人は仕事へのコミットメントが低い」「母親は長時間働けない」といった固定観念が、評価や昇進判断に影響することがあるとされています。

保育・地域インフラの課題

子どもの預け先となる保育インフラも就業継続に直接影響します。待機児童数は全国的に減少傾向にあるものの、都市部の一部地域や0歳児・1歳児クラスでは入所倍率が高く、育休の延長を余儀なくされる場合があります。

小学校入学後の「小1の壁」(放課後の学童保育不足や、小学校の短い放課後時間とのミスマッチ)も、就業継続を妨げる要因の一つです。育介法の保護は主として就学前を対象としており、小学校入学後の継続就業を支援する制度は相対的に手薄とされています。2025年4月1日施行の育介法改正で子の看護等休暇の対象が9歳まで拡大されましたが(第16条の2)、構造的な解決には至っていないとの指摘もあります。

公的相談窓口

行政機関(労働・雇用関係)

出産後の就業継続に関して、不利益取扱いやハラスメントを受けたと感じたとき、または制度活用にあたって疑問が生じたときは、以下の公的窓口に相談することが選択肢のひとつとなります。

都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):均等法・育介法に関する相談・紛争調整を担当しています。マタハラやパタハラ、育休後の不利益取扱いについて相談できます。各都道府県の窓口は厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/)から確認できます。

法律・人権関係の相談窓口

法テラス(日本司法支援センター):経済的に余裕のない方を対象に、法律相談を無料または低費用で提供しています。電話番号: 0570-078374。

女性の人権ホットライン:法務省が運営する相談窓口で、職場や家庭における人権問題について相談できます。電話番号: 0570-070-810。

具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

まとめ

法制度整備の到達点

出産後の就業継続を支える法制度は、育介法・均等法・女性活躍推進法の累次改正を通じて着実に拡充されてきました。2022年の産後パパ育休導入、2025年の柔軟な働き方確保措置の義務化など、父母ともに育児に参加しながら働き続けられる環境整備は前進しています。第6次男女共同参画基本計画(令和8年3月13日閣議決定)は2030年までに継続就業率80%という目標を掲げており、政策的な推進が続いています。

職場・社会への働きかけ

法制度の整備だけでは就業継続率の向上には限界があります。職場文化の変革(代替要員の確保・管理職昇進ルートの多様化)、地域の保育インフラの充実、そして非正規労働者やフリーランスへの支援拡充が、今後の重点課題として挙げられています。女性活躍推進法の情報公表義務の拡充により、就業継続しやすい企業かどうかをデータで確認する環境も整いつつあります。

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育介法の実務について体系的に解説した参考書として、以下の書籍があります。改訂版 育児・介護休業のすべて

よくある質問

育児休業は産休(産前・産後休業)とどう違いますか?

産前・産後休業(産休)は労働基準法に基づく制度で、出産予定日の6週間前から産後8週間まで取得できます。育児休業は育介法第5条に基づき、子が1歳になるまで(最長2歳まで)申出ることができる制度です。産休は産前産後の母体保護を目的とし、育休は子の養育を目的としている点が異なります。

有期雇用(パート・派遣)でも育児休業は取れますか?

育介法上、有期雇用労働者も一定の要件を満たせば育児休業を取得できます。申出時点で同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であることが主な要件の一つです。ただし取得要件の詳細は雇用形態や契約内容により異なりますので、雇用先の就業規則や都道府県労働局に確認することをお勧めします。

第一子出産後の継続就業率はどのくらいですか?

第6次男女共同参画基本計画(令和8年3月13日閣議決定)が現状値として示したところでは、第一子出産前後の女性の継続就業率は2021年時点で69.5%でした。政府はこれを2030年までに80%へ引き上げることを目標としています。

育休後に降格や賞与カットをされた場合、どこに相談できますか?

妊娠・出産・育休等を理由とした不利益取扱いは均等法や育介法で禁止されています。都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談すると、行政による助言・指導・調停等の支援を受けられる可能性があります。法的な対応を検討する場合は、法テラスや弁護士への相談もご検討ください。なお、具体的な事案への判断は専門家にお問い合わせください。

産後パパ育休と通常の育児休業はどう違いますか?

産後パパ育休(出生時育児休業)は育介法第9条の2に規定されており、子の出生後8週間以内に父親が最大4週間取得できる制度で、2022年10月1日に施行されました。通常の育児休業(育介法第5条)は子が1歳になるまで(最長2歳まで)父母ともに利用できる制度です。産後パパ育休は分割取得(2回まで)も可能で、労使協定を締結した場合に育休中の一定の就業も認められる点が特徴です。

出産後の就業継続とは|第一子出産後の継続就業率・法制度と課題【2026年版】 - まとめ

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