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事実婚(内縁関係)とは|法律婚との違い・法的保護と2026年の現状【2026年版】

「婚姻届を出していないけれど、長年一緒に暮らしているパートナーがいる。もしものときに財産はどうなるのだろう」「事実婚を選んでいるが、子どもが生まれたら法律上どう扱われるのか」——こうした疑問は、パートナーシップのあり方が多様化する現代社会において切実な問題です。

事実婚(内縁関係)とは、婚姻届を提出しないままに夫婦同然の生活を送る関係を指します。法律婚と同様の生活実態がありながら、民法上は「婚姻」と認められないため、相続権や税制上の配偶者控除など、法律婚では当然得られる保護を受けられない場面が少なくありません。

一方で、判例の積み重ねと近年の法改正により、事実婚カップルへの法的保護は徐々に拡充されてきています。2024年のDV防止法改正で精神的暴力が保護命令の対象に加わり、2022年の民法改正では嫡出推定制度が見直されました。事実婚を取り巻く法的環境は静止していません。

この記事では、事実婚の法的定義・成立要件・法律婚との比較から、子どもの地位、DV対応、そして2026年時点の現代的論点まで、法令・判例・統計を根拠に体系的に解説します。法学部出身の社会人・企業人事担当者・自治体の男女共同参画推進員・当事者として基礎から整理したい方を主な対象としています。

目次

事実婚(内縁関係)とは何か|定義と成立要件

事実婚・内縁関係の定義

「事実婚」と「内縁関係」は、日常語ではほぼ同義で使われます。法律学では主に「内縁(ないえん)」と呼ばれ、「婚姻意思のある当事者が婚姻届を提出せずに夫婦共同生活を営む関係」と定義されます。

民法上の婚姻は、民法(明治29年法律第89号、最終改正: 2024年)第739条第1項において「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」と規定されています。この届出が存在しないため、内縁は民法上の「婚姻」とは認められません。しかし社会的には夫婦として扱われる実態があり、判例は「婚姻に準ずる関係」として一定の法的保護を与えてきました。

最高裁判所は1958年(昭和33年)以降の複数の判決において、内縁関係の不当破棄を不法行為として損害賠償を認める判断を積み重ねています。この「婚姻準拠論」が事実婚保護の法的根拠となっています。

法的な成立要件

内縁関係が法的保護を受けるには、一般的に以下の3要件を満たすことが必要とされています。

  • 婚姻意思の合致: 双方が将来的にも夫婦として生活を継続する意思を持っていること。一時的な同居や性的関係のみでは足りません。
  • 実質的な夫婦共同生活: 同居・家計の共有・相互扶養など、婚姻に準じた生活実態があること。
  • 婚姻障害がないこと: 現に有効な法律婚が存在しない(重婚状態ではない)こと。近親者間の関係でないこと。

「婚姻意思」の有無は、当事者の主観だけでなく、住所の変更・生活費の共有・親族への紹介・住民票への記載(「未届の妻・夫」)などの客観的事実から総合的に判断されます。単なる同棲・友人関係と区別されるのは、この婚姻意思の有無が分水嶺です。

法律婚・単なる同棲との位置づけの違い

事実婚・内縁関係は、法律婚と単なる同棲の中間に位置する関係です。以下の表は三者の主な差異を整理したものです。

項目 法律婚 事実婚(内縁) 単なる同棲
婚姻届の提出 あり なし なし
婚姻意思 あり あり 必ずしも不要
戸籍上の記載 夫・妻として記載 記載なし(住民票に「未届の妻/夫」と記載可) 記載なし
夫婦同氏原則(民法第750条) 適用あり(いずれかの氏に統一) 適用なし(各自の姓を維持できる) 適用なし
相互扶養義務(民法第752条) あり 類似の義務が判例で認められる 原則なし
不当破棄の損害賠償 あり(離婚慰謝料) 判例上認められる(不法行為) 原則なし
相続権(民法第890条) あり なし(遺言による遺贈が必要) なし
DV防止法の保護 あり あり(同法第1条第2項) 同居中・元交際相手も一定の範囲で準用あり
遺族年金の受給資格 あり あり(厚生年金保険法第3条第2項) 原則なし
税制上の配偶者控除 あり なし なし
表1: 法律婚・事実婚・単なる同棲の主な法的差異(2026年現在)

事実婚で認められる法的保護と認められない権利

事実婚で認められる主な法的効果

判例・法令の積み重ねにより、内縁関係にも以下の法的保護が認められています。

不当破棄に対する損害賠償: 正当な理由なく一方的に内縁を解消した場合、民法第709条・第710条の不法行為責任に基づく損害賠償が生じる可能性があります。過去の判例では慰謝料や財産的損害が認容された事案が複数存在します。

財産の清算的調整: 内縁解消時には、共同生活中に形成した財産について清算的調整(法律婚の財産分与に準ずる処理)が認められるとした判例があります(最高裁昭和16年2月3日判決等)。ただし、これは法律婚の財産分与とは異なり、個別の事案ごとに判断されます。

DV防止法の適用: 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法、平成13年法律第31号)第1条第2項において「配偶者」には「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と明記されており、事実婚パートナーからの暴力も同法の保護対象です。

遺族年金・健康保険の被扶養者認定: 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第3条第2項は「配偶者」に「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と定めており、事実婚の配偶者も遺族厚生年金の受給権者となります。健康保険法(大正11年法律第70号)第3条第7項も同様です。

住居の明渡請求への抗弁: 内縁の一方が死亡した後、居住建物の相続人が明渡しを求めた場合、内縁の他方は一定期間の居住継続が認められる場合があるとした判例も存在します(最高裁昭和39年10月13日判決等)。

事実婚で認められない主な権利(法律婚との主な差異)

一方、以下の権利・効果は法律婚には認められますが、内縁関係では原則として認められません。

  • 相続権: 内縁の配偶者は法定相続人にはなりません。民法第890条は「婚姻した配偶者」を相続人と定めており、婚姻届のない事実婚パートナーは含まれません。遺産を引き継ぐためには生前の遺言書(遺贈)が必要です。
  • 税制上の配偶者控除・配偶者特別控除: 所得税法上の「配偶者」は法律婚の配偶者に限られており、事実婚のパートナーは対象外です。年間数十万円単位の税負担差が生じる場合があります。
  • 相続税の配偶者控除(最大1億6,000万円): 法律婚の配偶者のみに認められる優遇措置です。内縁の配偶者への遺贈には通常の相続税(最高55%)が課されます。
  • 子の嫡出推定: 法律婚の夫婦の子は「嫡出子」と推定されますが(民法第772条)、内縁の子は「嫡出でない子(非嫡出子)」となり、父の認知が必要です(民法第779条)。
  • 姻族関係の発生: 法律婚では配偶者の親族との間に姻族関係が生じますが、内縁では生じません。介護義務や扶養義務も原則として発生しません。
  • 公正証書による離婚給付の強制執行: 法律婚の離婚では離婚給付等を公正証書に定めることで強制執行を可能にできますが、事実婚解消では同様の制度的担保がありません。

事実婚が選ばれる背景と社会的文脈

事実婚が選ばれる主な理由

事実婚・内縁を選ぶ理由は個人によって多様です。主に以下の類型が挙げられます。

姓(氏)の維持: 民法第750条は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定めており、婚姻届の提出がいずれかの氏の変更を意味します。仕事上のキャリア・学術的業績・個人のアイデンティティを守るために、あえて婚姻届を提出しないカップルが一定数存在します。この背景には、各自の氏を維持したまま婚姻できる「選択的夫婦別姓制度」の未整備という制度的要因があります。

再婚への慎重な姿勢と複雑な家族事情: 離婚経験者が、前婚の子どもの養育・親権・扶養など複雑な事情を抱えながら新たなパートナーと生活を共にする際、法律婚を回避するケースがあります。

婚姻制度そのものへの距離感: 国家・制度への関与を最小限にしたいという価値観から、法律婚ではなく事実婚を選ぶカップルもいます。

同性カップルの法的状況: 2026年時点の日本の民法では、同性間の婚姻は認められていません。同性パートナーとして共同生活を送る場合、法律婚の選択肢がないため実態上は事実婚的な関係性となります。自治体のパートナーシップ宣誓制度を利用することで一定の社会的承認を得るカップルも増加しています。

統計データ:事実婚の現状

国立社会保障・人口問題研究所の「第16回出生動向基本調査」(2021年)では、「婚姻届を出していない(事実婚)」という関係形態が一定数確認されています。ただし、日本の公的統計では法律婚と事実婚を明確に区別したデータが限られており、その正確な実態把握は困難な状況が続いています。

内閣府の「令和3年度 人生100年時代の結婚と家族に関する意識調査」では、「法律婚でなくても事実婚でよい」と考える層が一定程度存在することが示されています。特に価値観の多様化が顕著な若年層において、婚姻形態そのものへの問い直しが起きています。

欧州諸国では、フランスのPACS(民事連帯契約、1999年)やスウェーデンの「サンボ(sambo)法」のように、婚外の共同生活に対して包括的な法的保護を付与する制度が整備されています。日本との制度的差異は大きく、「いかなる関係形態でも生活実態が保護される制度設計」の観点から、国際比較の文脈での議論が増えています。

住民票への記載と行政手続き上の対応

事実婚のカップルは、住民票において続柄を「未届の妻」「未届の夫」と記載することができます。これにより、行政手続きや医療機関での緊急連絡先確認の際に関係性を証明しやすくなります。ただし、この記載は法的な婚姻を証明するものではなく、社会的・行政的な便宜として機能するにとどまります。

なお、会社員の健康保険では「未届の妻・夫」も被扶養者として認定申請が可能であり、社会保険制度では一定の実態認定が行われています。

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事実婚と子どもの法的地位

認知制度と嫡出子・非嫡出子

事実婚カップルの間に生まれた子どもは、法律上「嫡出でない子(非嫡出子)」となります。嫡出推定(民法第772条)は法律婚の夫婦にのみ適用されるため、事実婚の父親は法的な父子関係を確立するために「認知(にんち)」という手続きが必要です。

認知には、任意認知(父親が自発的に役所に届け出る方法)と強制認知(家庭裁判所への調停・審判・訴訟)があります(民法第779条・第787条)。認知により、父と子の間に法律上の親子関係が発生し、養育費請求権・相続権・扶養義務が双方向に生じます。

なお、2022年の民法改正(令和4年法律第102号、2024年4月1日施行)では、嫡出推定制度の見直しが行われました。改正の主眼は、離婚後300日問題(離婚後300日以内に生まれた子が前夫の子と推定される問題)による無戸籍者を解消することにあります。女性が離婚後に再婚した場合、再婚後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定されるよう改正されました(改正民法第772条第2項・第3項)。事実婚の子には直接適用されませんが、親子法制全体の考え方に関わる重要な改正として位置づけられます。

親権と養育費

事実婚の父親が認知を行った後も、子の親権は原則として母親のみに帰属します(民法第819条第1項「父母が婚姻していないときは、子の親権者は、母とする」)。父親が親権者となるためには、認知後に父母の協議または家庭裁判所の審判によって親権者を父に変更する手続きが必要です(民法第819条第4項)。

養育費については、認知により父子関係が確立された後、父は養育費を負担する義務を負います。事実婚カップルが別れた場合の養育費取り決めは、法律婚の離婚と同様に、父母間の協議・調停・審判によって決定されます。2024年の民法改正により、養育費の取り決めがない場合でも法定養育費として扱う新制度が整備されています(詳細は「養育費とは|不払い問題・2024年民法改正と強制執行の活用」参照)。

非嫡出子の相続権(2013年民法改正の意義)

認知された子(嫡出でない子)の相続権については、2013年の民法改正が画期的な意味を持ちます。最高裁平成25年9月4日決定が「嫡出子と非嫡出子の相続分を異なるものとする民法第900条第4号ただし書きは違憲である」と判断したことを受け、同規定のただし書きが削除されました。これにより、嫡出子と非嫡出子の相続分は同等となり、相続の場面での差別的扱いが実質的に解消されています。

事実婚カップルの子であっても、父から認知を受けていれば、相続上は法律婚カップルの子と同等の権利を持ちます。

事実婚とDV被害への法的対応・解消時の留意点

DV防止法の事実婚への適用

前述のとおり、DV防止法は、法律婚の配偶者だけでなく「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」を保護対象に含めています(同法第1条第2項)。

2024年のDV防止法改正(令和6年法律第33号、2024年4月施行)では、保護命令の対象となる暴力の範囲が大幅に拡張されました。改正前は主に「身体的暴力」が中心でしたが、改正後は「精神的な暴力(脅迫・監視・罵倒・経済的支配等)」も保護命令の対象に加わりました。事実婚パートナーから精神的暴力を受けている場合も、保護命令の申立てが可能となっています。詳しくは「DV保護命令とは|2024年改正で精神的暴力も対象に・申立て手続きの全体像」をご参照ください。

事実婚解消時の法的リスクと予防措置

事実婚には法律婚と異なり、財産分与・年金分割・公正証書による強制執行力の自動付与などが制度的に保障されていません。そのため、事実婚を継続する際には以下の私的な合意・書類整備が実務上重要とされています。

  • 事実婚・パートナーシップ契約書(公正証書): 財産管理・生活費の負担割合・解消時の清算方法・子の養育などについて合意内容を公正証書に残しておくことで、紛争リスクを軽減できます。公正証書は公証役場で作成でき、一定の内容については強制執行力を持たせることも可能です。
  • 遺言書の作成: 相続権がない事実婚パートナーに財産を残したい場合は、遺言書(特に公正証書遺言が望ましい)の作成が不可欠です。
  • 任意後見契約: 一方が意思能力を失った場合に備え、任意後見契約に関する法律(平成11年法律第150号)を活用して他方に代理権を付与することができます。これにより、医療同意・財産管理・施設入所等の手続きを任意後見人として行うことが可能となります。

これらの手続きの詳細および個別の事案への対応については、弁護士や公証人への相談が推奨されます。

現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

事実婚・内縁関係をめぐる法的環境は、2007年以降に以下の重要な改正・新法の影響を受けています。

  • DV防止法の累次改正(2013年・2019年・2023年・2024年): 2013年改正で生活の本拠を共にする交際相手(元交際相手を含む)への準用が拡大。2024年改正(令和6年法律第33号)で精神的暴力が保護命令の対象に追加され、事実婚を含む幅広い親密関係への保護が強化されました。
  • 非嫡出子相続差別の解消(2013年民法改正): 最高裁平成25年9月4日決定を受け、民法第900条第4号ただし書きが削除されました。嫡出子と非嫡出子の相続分が同等となり、事実婚カップルの子が相続上差別される状況が解消されました。
  • 嫡出推定制度の見直し(2022年民法改正、2024年4月施行): 女性の再婚禁止期間の廃止(民法第733条削除)と嫡出推定の例外規定が整備されました。無戸籍問題の解消を主眼とした改正ですが、親子法制全体の考え方に影響します。
  • 離婚後共同親権制度の創設(2024年民法改正、2026年5月施行): 改正民法により、離婚後も父母双方が親権を持つ共同親権が選択可能になりました。事実婚カップルが認知後に別れた場合の親権調整においても、同様の考え方が議論に影響を与えています。詳細は「離婚後共同親権とは|2024年民法改正・2026年施行の要点」をご参照ください。
  • パートナーシップ宣誓制度の全国普及(2015年~2026年): 2015年に渋谷区・世田谷区で始まったパートナーシップ宣誓制度は、2026年時点で300を超える自治体に普及しています。法律上の婚姻効果はないものの、同性カップルや事実婚カップルが公的に関係を宣誓できる社会インフラとして機能しています。
  • 生殖補助医療法(2020年成立、2021年3月施行): 生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律(令和2年法律第76号)が成立し、夫の同意を得て妻が第三者の精子提供を受けて出産した場合、夫の子と推定することが明定されました(第10条)。事実婚カップルへの適用については同法の「夫婦」概念の解釈が論点となっており、2026年時点でも立法的整備が求められています。

議論の現在地

事実婚・内縁関係の法的地位をめぐる議論は、「婚姻制度の意義との整合性」と「生活実態に基づく保護」という二つの軸を中心に展開されています。

保護拡充を求める立場からは、「法律婚を選択できない人や、様々な事情から選ばない人が現実に多く存在する以上、その生活実態・経済的依存関係・子どもの権利を法律婚と同等に保護すべきである」という議論があります。2026年時点で日本の法律婚は同性間に認められていないという現状も踏まえ、事実婚に幅広い法的保護を与えることで実質的な平等を実現すべきとする見解があります。また、フランスのPACSやスウェーデンのサンボ法のように、共同生活の実態を登録制度で把握し、一定期間経過後に自動的に権利保護が発生する仕組みの導入を求める意見もあります。

慎重な立場からは、「法律婚と事実婚を同等に扱うことは、婚姻制度の届出主義(公示機能・法律関係の明確化)を損なう恐れがある」「当事者が意図的に法律婚を選ばなかった以上、法律婚と同等の効果を自動付与することは本人の意思と乖離する可能性がある」という指摘があります。また、「遺族(子・兄弟姉妹)の法定相続分との調整という技術的課題が大きい」という見解も根強くあります。

学説上は、内縁保護の法理として「婚姻準拠説」(婚姻の効果をそのまま準用する)と「類推適用説」(個々の規定を類推適用する)が対立しており、最高裁判例は後者に近い立場で個別の場面ごとに保護範囲を判断してきました。

残された課題

2026年時点において、以下の課題が未解決として残されています。

相続権の不在: 事実婚の配偶者には法定相続権がなく、遺言がない場合は被相続人の血族(子・親・兄弟姉妹)が法律上の相続人となります。高齢化社会において、長年連れ添った事実婚パートナーが相続上無権利となるリスクは現実的な問題であり、遺言による手当てが不可欠な現状が続いています。

税制上の不利益: 配偶者控除・相続税の配偶者控除(最大1億6,000万円)などの税制優遇が法律婚のみに適用されるため、事実婚を選択した場合の経済的不利益は依然として大きく、是正の必要性が指摘されています。

生殖補助医療における事実婚カップルの扱い: 2020年成立の生殖補助医療法は「夫婦」を対象としており、事実婚カップルへの適用解釈が明確でない点が課題として残っています。不妊治療を受ける事実婚カップルが増加するなか、生まれた子の法的な親子関係の確定に関する立法的整備が求められています。

パートナーシップ宣誓制度の法的効力の限界: 自治体のパートナーシップ宣誓制度は法的拘束力を持たず、宣誓を行っても相続・税制・社会保険上の地位は変わりません。国レベルでの制度整備(登録パートナーシップ制度の創設など)が引き続き立法的課題となっています。

「事実婚」の定義・立証の困難さ: 内縁関係が法的保護を受けるためには、その実態を当事者が証明する必要があります。特に遺族年金の受給申請や相続争いの文脈で、内縁関係の立証が争点となる事案が生じており、婚姻届という明確な公示手段がない事実婚特有の困難が残されています。

相談窓口・サポート

事実婚・内縁関係に関する法的な問題(財産・子どもの権利・DV・関係解消等)について、以下の公的窓口が相談に応じています。

  • DV相談ナビ(#8008): 事実婚関係を含むDV被害の相談窓口。電話すると最寄りの配偶者暴力相談支援センターや女性相談センターに繋がります(24時間対応の窓口も多い)。
  • DV相談+(プラス)(0120-279-889): 内閣府が設置するDV相談窓口。電話・メール・チャットで24時間対応しています。事実婚を含む幅広い関係の被害に対応します。
  • 法テラス(日本司法支援センター): 電話番号0570-078374(サポートダイヤル)。法的問題の総合案内窓口。収入・資産の条件を満たせば弁護士・司法書士との無料法律相談の利用が可能です。相続・養育費・契約書作成など幅広い相談に対応しています。
  • 子どもの人権110番(法務省): 0120-007-110(無料)。子どもに関する問題の相談窓口。認知・親権に関する子どもの権利問題にも対応しています。

事実婚に関する財産管理・遺言・公正証書作成・任意後見契約については、公証役場(全国各地に設置)、弁護士、または司法書士への相談が推奨されます。具体的な事案については、専門家への相談をご検討ください。

まとめ|事実婚の法的位置づけと今後の展望

事実婚(内縁関係)は、法律婚と同様の生活実態を持ちながら婚姻届を提出しない関係です。判例・法令の積み重ねにより、DV防止法の適用・遺族年金の受給・不当破棄への損害賠償・財産の清算的調整など、一定の法的保護が認められています。

一方で、相続権・税制優遇・子の嫡出推定など、法律婚との差は依然として大きく残っています。事実婚を継続する場合は、遺言書・公正証書による契約・任意後見契約などの私的な手当てが実務上不可欠です。

2013年の非嫡出子相続差別の解消、2022年の嫡出推定制度見直し、2024年のDV防止法改正・離婚後共同親権創設など、2007年以降の法改正は事実婚カップルを取り巻く環境に重要な変化をもたらしています。今後は生殖補助医療法の事実婚カップルへの適用明確化、パートナーシップ宣誓制度の法的強化、登録パートナーシップ制度の創設論議など、立法的な検討が続く領域です。

具体的な法的問題については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 事実婚のパートナーが死亡した場合、遺産を受け取ることはできますか?
法律上、事実婚のパートナーには法定相続権がありません。遺産を受け取るためには、亡くなったパートナーが生前に公正証書遺言等で遺贈の意思を示しておくことが必要です。遺言がない場合は血族(子・親・兄弟姉妹)のみが相続人となります。遺言書の作成については公証役場や弁護士にご相談ください。
Q2. 事実婚でも遺族年金を受け取ることができますか?
厚生年金保険法第3条第2項は「配偶者」に「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と定めており、事実婚の配偶者も遺族厚生年金・遺族基礎年金の受給権者となる場合があります。ただし、生計維持関係・内縁関係の立証に関する審査があります。詳細は年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。
Q3. 事実婚の子どもの戸籍はどうなりますか?
事実婚カップルの間に生まれた子どもは、母親の戸籍に「嫡出でない子」として記載されます。父親との法的な親子関係を確立するためには、父親による「認知(にんち)」が必要です(民法第779条)。認知後は父子間に養育費・相続権・扶養義務が発生します。
Q4. 事実婚でもDV被害者として保護命令を申し立てることができますか?
はい、DV防止法第1条第2項は「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」も保護対象としており、事実婚パートナーからの暴力も同法の適用対象です。2024年の改正により精神的暴力も保護命令の対象となりました。被害を受けている場合は、まずDV相談ナビ(#8008)または配偶者暴力相談支援センターへご相談ください。
Q5. 事実婚を解消する際、財産の清算を求めることはできますか?
事実婚の解消は法律婚の「離婚」とは異なるため、家庭裁判所の審判による「財産分与」は直接的には認められません。ただし、判例上、共同生活中に形成した財産については清算的調整が認められる場合があります(不当利得・不法行為・契約の清算等の法理による)。紛争を予防するために、事前に公正証書で清算方法を合意しておくことが有効です。具体的な判断については弁護士への相談をご検討ください。
Q6. パートナーシップ宣誓制度を利用すれば、事実婚の法的効果が生まれますか?
自治体のパートナーシップ宣誓制度は、自治体がパートナー関係を宣誓書の受領により証明するものであり、国の法律上の効力(相続権・税制優遇・遺族年金等)は生じません。事実婚(内縁関係)は判例・法令上の概念であり、要件を満たせば遺族年金等の法的効果が生じますが、パートナーシップ宣誓制度の利用が直接これらの法的効果をもたらすわけではありません。両者は異なる概念です。

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