離婚・死別・未婚などの理由でひとりで子どもを育てる家庭は、日本社会に多数存在します。厚生労働省が2021年に実施した「全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯は推計約119.5万世帯、父子世帯は同約14.9万世帯に上ります。就労率は母子・父子ともに高い水準にあるものの、特に母子世帯では年間就労収入の中央値が低位にとどまっており、子どもの相対的貧困率の高さが長年の統計的課題として指摘されています。
こうした現実は、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)第11条が掲げる「家族を構成する男女が、相互の協力と社会の支援のもとに、子の養育、家族の介護等を行いながら、職業生活その他の社会生活を営むことができる社会の形成」が、いまだ実現途上にあることを示しています。ひとり親家庭への実効的な支援は、男女共同参画社会の実現と切り離して考えることのできない政策課題です。
本記事では、ひとり親家庭を支える法律・公的制度の全体像を体系的に解説します。経済的支援(児童扶養手当・医療費助成・母子父子福祉資金)、就労・職業能力開発支援(マザーズハローワーク・高等職業訓練促進給付金等)、養育費確保(2024年民法改正による法定養育費制度の創設)の3本柱を中心に、2026年時点の最新情報を整理します。
人事・福祉担当として支援制度を体系的に把握したい方、ひとり親家庭の当事者として利用できる制度を確認したい方、男女共同参画・社会保障の学習者を対象としています。個別事案の法的判断や申請手続きの詳細については、各自治体窓口や専門家にご相談ください。
ひとり親家庭とは|統計で見る現状と課題
ひとり親家庭の定義と法的位置づけ
ひとり親家庭とは、父親または母親のいずれか一方が子どもを養育している家庭の総称です。法律上の定義は制度ごとに異なりますが、代表的な児童扶養手当法(昭和36年法律第238号、最終改正:令和5年)では、父母が婚姻を解消した場合、父または母が死亡した場合、父または母が重度障害の状態にある場合など、さまざまな事由によって一方の親のみが子を養育している状態を対象としています(第4条第1項)。
母子家庭・父子家庭に加え、父母に代わって祖父母など親族が養育者となる「養育者家庭」も制度上の対象となる場合があります。これらをまとめて「ひとり親家庭」と総称し、後述する母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和39年法律第129号、最終改正:令和4年)が福祉基盤法として位置づけられています。寡婦(かふ)とは、かつて婚姻し子を養育していた女性で、現在は子の養育を終えた者を指す法律上の概念です。
統計で見るひとり親家庭の実態(2026年時点)
厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査」(2021年実施)のデータをもとに、ひとり親家庭の実態を整理します。直近の実態調査として同調査が広く参照されており、2026年時点においても政策立案の基礎資料として活用されています。
主な数値は以下のとおりです。母子世帯の就労率は86.3%にのぼりますが、そのうち正規雇用は48.8%にとどまり、残りはパートタイム・派遣・アルバイトといった非正規雇用です。年間就労収入の中央値は約236万円で、父子世帯の約496万円と比べると大きな格差があります。
父子世帯は母子世帯より少数であるものの、正規雇用率69.4%と相対的に高く、収入水準も高い傾向があります。一方で、父子世帯は情報へのアクセスや相談行動において課題があるとも指摘されており、支援制度の利用率の低さが懸念されています。
貧困リスクとジェンダー格差の構造
ひとり親家庭、とりわけ母子世帯の相対的貧困率は、経済協力開発機構(OECD)の国際比較において日本が高水準にあることが繰り返し指摘されています。OECDの統計では、日本のひとり親家庭の相対的貧困率(可処分所得が中央値の50%未満の割合)は加盟国の中でも上位に位置しており、就労しているにもかかわらず貧困状態にある「ワーキングプア」のひとり親世帯が多いことが特徴とされています。
この格差の背景には、「ジェンダー賃金格差」と「ケア労働の非対称性」の組み合わせがあるとする分析が多くの研究者から示されています。短時間勤務や育児休業取得が女性に偏る構造、職場における「マミートラック」(育児を理由にキャリアが停滞する現象)の存在が、離婚後の女性の収入水準に直接影響するとの指摘もあります。男女共同参画の観点からは、ひとり親家庭の貧困問題は労働市場の構造的なジェンダー格差と不可分の関係にあります。
母子及び父子並びに寡婦福祉法の概要
法律の成立経緯と主な改正の歩み
「母子及び父子並びに寡婦福祉法」は、昭和39年(1964年)に「母子福祉法」として制定されました。制定当初は、戦争未亡人への支援を主な目的としていましたが、その後の社会変化に応じて対象・内容とも段階的に拡充されてきました。
主な改正の経緯は以下のとおりです。1981年(昭和56年)には「母子及び寡婦福祉法」に改称し、かつて配偶者のあった女性で子の養育を終えた「寡婦」を対象に追加しました。2002年(平成14年)には就業支援策を強化し、自立支援教育訓練給付金・高等職業訓練促進給付金等事業が創設されました。そして2014年(平成26年)の改正で現在の名称となり、父子家庭を正式に対象として追加し、福祉資金貸付の適用範囲も拡大しました。この改正は「父子家庭も母子家庭と同様に法的支援を受ける」という政策転換として評価されています。
対象者と提供される支援の種類
同法第6条第1項は「配偶者のない女子であって、現に児童を扶養しているもの」を、第6条第2項は同様の男子を対象として定義し(父子家庭)、さまざまな支援を提供しています。都道府県・政令指定都市・中核市が実施主体となり、各自治体の福祉事務所や子育て支援センター、母子・父子自立支援員が支援の窓口となっています。
提供される主な支援は以下のとおりです。①福祉資金の貸付(事業開始・就学・医療等の目的に応じた低利または無利子の貸付)、②就業支援(公共職業安定所との連携、職業紹介・相談)、③母子・父子自立支援員による総合相談・指導、④母子生活支援施設への入所支援(主に配偶者からの暴力がある場合)、⑤自立促進計画に基づく就業訓練・資格取得支援、があります。
母子・父子・寡婦福祉資金貸付金制度
同法第13条以下に規定される「母子・父子・寡婦福祉資金貸付金制度」は、ひとり親家庭の経済的自立と生活安定を目的とした公的貸付制度です。一般の金融機関より有利な低利・無利子の条件で利用できます。
貸付の種類は多岐にわたります。事業開始・継続のための「事業開始資金」「事業継続資金」、子どもの進学に対応する「就学支度資金」「修学資金」、医療・介護に必要な費用を対象とする「医療介護資金」、技能習得中の生活費を支援する「生活資金(技能習得中)」などが代表的です。貸付利率は原則無利子(連帯保証人なしの場合は年1.0%)であり、申請は居住地の都道府県・政令指定都市・中核市の担当窓口で行います。自治体によって上乗せ支援や独自の給付金が設けられている場合もあるため、居住地の窓口に確認することが有効です。
児童扶養手当と経済的支援制度
児童扶養手当の支給額と所得制限
児童扶養手当は、児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)に基づき、ひとり親家庭の生活安定と自立を支援するための国の現金給付制度です。父子家庭も2010年(平成22年)の法改正以降、母子家庭と同様に受給対象となっています。
2024年度(令和6年度)の支給額(月額)の目安は以下のとおりです。全部支給の場合、子1人につき月額4万4,140円(第2子加算:1万430円、第3子以降加算:6,250円)が支給されます。所得に応じた一部支給の場合は月額1万410円から4万4,130円の範囲で段階的に支給額が決まります。支給額は物価変動に応じて毎年額改定が行われます。
所得制限については、受給者本人・扶養義務者・配偶者の前年所得に基づいて判定されます。一定の所得を超えると全部または一部が支給停止となります。2016年の法改正では支給回数が年3回から年6回(隔月支給)に変更され、受給者の資金繰りが改善されました(第7条第2項)。また、同改正で第2子・第3子以降の加算額も大幅に引き上げられています。
ひとり親家庭等医療費助成制度
ひとり親家庭等医療費助成制度(自治体によって「マル親」「ひとり親医療証」などと呼称される)は、都道府県・市区町村が独自に運営する医療費の助成制度です。おおむね児童扶養手当の受給要件に準じた対象者に対し、医療機関での保険診療自己負担額の全部または一部を助成します。
制度の詳細(助成の範囲・対象年齢の上限・所得制限の有無・自己負担額の設定)は自治体ごとに大きく異なります。医療機関の窓口で所定の医療証を提示することで自己負担が軽減される仕組みが一般的ですが、市区町村をまたがって転居した場合は再申請が必要です。居住地の市区町村の子育て支援課・福祉課等に制度内容を確認することが必要です。
主要な経済的支援制度の比較
| 制度名 | 主な対象 | 給付・貸付の内容 | 所管・実施主体 | 申請先の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 児童扶養手当 | 18歳未満の子を養育するひとり親等 | 月額最大約4.4万円(子1人、全部支給時) | 国(厚生労働省)・市区町村 | 市区町村の福祉・子育て窓口 |
| ひとり親家庭等医療費助成 | 概ね18歳未満の子を養育するひとり親等 | 医療費自己負担の全部または一部を助成 | 都道府県・市区町村(独自) | 市区町村の窓口 |
| 母子・父子・寡婦福祉資金 | ひとり親家庭・寡婦等 | 事業・就学・修学・生活・技能習得等の低利または無利子貸付 | 都道府県・政令市・中核市 | 都道府県等の福祉担当窓口 |
| 自立支援教育訓練給付金 | 母子・父子家庭の親 | 教育訓練費用の60%(上限20万円)を事後支給 | 市区町村(国庫補助) | 市区町村の窓口 |
| 高等職業訓練促進給付金 | 母子・父子家庭の親 | 資格取得中の生活費(月額最大10~14万円・最長4年) | 市区町村(国庫補助) | 市区町村の窓口 |
| 就学援助 | 就学困難な児童・生徒の保護者 | 学用品費・給食費・修学旅行費等の補助 | 市区町村教育委員会 | 在籍校または教育委員会 |
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就労支援と職業能力開発
マザーズハローワークと就業支援センター
ひとり親家庭の就労支援を行う公的機関として、「マザーズハローワーク(マザーズコーナー)」が全国各地に設置されています。子育て中の女性を主な利用対象としていますが、父子家庭の父も利用可能です。保育所・学童保育情報の提供、短時間勤務・時間外労働のない求人のマッチング、就業から入職後のフォローアップまで一体的に支援を行っています。
また、各都道府県の「母子家庭等就業・自立支援センター」では、就業相談・面接対策・職業訓練情報の提供に加え、養育費に関する法律相談(弁護士・司法書士)、家庭生活支援員(ヘルパー)派遣の紹介なども行っています。相談は無料で利用できます。
さらに、市区町村に配置される「母子・父子自立支援員」(母子及び父子並びに寡婦福祉法第8条に基づく法定の相談員)は、就業支援から住居・生活資金・福祉資金の申請手続きまで幅広いニーズへの対応窓口となっています。住んでいる市区町村の福祉事務所・子育て支援課への来所または電話相談が起点となります。
高等職業訓練促進給付金等事業
「高等職業訓練促進給付金等事業」は、ひとり親家庭の親が看護師・准看護師・介護福祉士・保育士・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・歯科衛生士など一定の国家資格を取得するために養成機関(専門学校・大学等)に通学する際、修学期間中の生活費を公的に支援する制度です(母子及び父子並びに寡婦福祉法第31条の5・第31条の12)。
2024年度時点の給付額(月額)は、住民税非課税世帯で月額10万円(最終学年は14万円)、住民税課税世帯で月額7万5,000円(最終学年は11万5,000円)です。支給期間は養成機関に在学する全期間(上限4年)にわたります。資格取得により就職・収入向上につなげることを想定した制度設計であり、看護系・福祉系の資格取得を検討するひとり親に広く活用されています。支援対象の資格は自治体によって追加・変更されることがあるため、居住地の市区町村に確認することが推奨されます。
自立支援教育訓練給付金との違い
「自立支援教育訓練給付金」は、ひとり親家庭の親が厚生労働大臣指定の教育訓練講座を受講した場合に、受講費用の60%(上限20万円、下限1万2,000円)を受講修了後に支給する制度です(母子及び父子並びに寡婦福祉法第31条の4・第31条の11)。
高等職業訓練促進給付金との主な違いは、対象コースの性格と給付の形態にあります。高等職業訓練促進給付金は長期の国家資格養成課程を対象として「在学中の生活費」を毎月継続支給するのに対し、自立支援教育訓練給付金は比較的短期・多様な職業訓練講座を対象として「受講費用の事後払い戻し」を行います。どちらが適しているかは個人の状況・目標資格によって異なるため、母子・父子自立支援員への事前相談が有効です。条件を満たせば両制度を組み合わせて活用できる場合もあります。
養育費の確保と2024年民法改正
養育費不払い問題の実態
養育費(ようごひ)とは、子を監護しない親(非監護親)が、子どもを育てる親(監護親)に対して支払う、子どもの生活・教育・医療等に必要な費用です。民法第766条第1項は「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める」と規定しています。
しかし現実には、養育費の不払い・未払いが深刻な問題として長年指摘されてきました。法務省・厚生労働省「養育費等の実態調査」(2021年)によると、母子世帯で養育費を「現在も受けている」割合は28.1%にとどまり、約7割の母子世帯が養育費を受け取れていない状況でした。不払いの主な理由として「相手と関わりたくない」「相手に支払う能力がないと思った」などが挙げられており、取り決め自体を行わないケースも多いとされています。
この養育費不払い問題は子どもの貧困と直結しており、制度的な解決策の構築が急務とされてきました。2019年(令和元年)には民事執行法改正により財産開示手続きが強化され、第三者からの情報取得手続き(給与支払先・預貯金情報の照会)が新設されましたが、強制執行の実効性向上は依然として課題の一つとされています。
法定養育費制度の創設(2024年民法改正)
2024年(令和6年)5月に成立した民法等一部改正法(令和6年法律第33号)は、離婚時の養育費確保に関する抜本的な制度変更を導入しました。同法は2026年(令和8年)4月に施行されており、2026年時点では新制度のもとでの運用が始まっています。
主な改正内容は以下のとおりです。第一に、「法定養育費制度」の創設です(改正民法第766条の2ほか)。離婚後、父母間で養育費の金額について合意がない場合でも、法令で定める算定基準に従った「法定養育費」の請求が可能となる仕組みが設けられました。これにより、協議が難航している段階においても、子どもの生活費として一定額の請求根拠が法律上明確化されました。第二に、養育費債権について法律上の優先弁済権(先取特権)が明文化され、給与・財産への差押えがより行いやすい環境が整備されました。第三に、公正証書等による合意形成が促進されるよう、制度的な誘導が強化されています。
強制執行・行政による養育費確保支援
養育費が不払いとなった場合、法的な対処方法として主に以下が利用できます。まず、家庭裁判所の調停・審判または公正証書に養育費の取り決めがある場合は、相手方の給与の2分の1まで差し押さえる「給与差押え」が可能です(民事執行法第152条第3項。養育費は一般債権より広い差押えが認められています)。また、相手方が財産を隠している疑いがある場合には、「財産開示手続き」(民事執行法第196条以下)を利用して財産情報の開示を命じることができ、虚偽陳述には刑事罰が規定されています。
行政による支援としては、一部の自治体が「養育費立替払い事業」(国のモデル事業を活用)として、支払われない養育費を自治体が立替えたうえで非監護親に求償する取り組みを実施しています。2026年時点では全国一律の公的立替払い制度の整備に向けた議論が続けられており、今後の制度拡充が注目されます。
現代的論点|2026年時点の到達点
2007年以降の主な法改正・新法
2007年以降、ひとり親家庭の支援をめぐる法制度は段階的に整備・拡充されてきました。主な動きを時系列で整理します。
2010年(平成22年):児童扶養手当法改正で父子家庭が支給対象に追加されました。それまで母子家庭のみ対象だった児童扶養手当が父子家庭にも適用されるようになり、支援の性中立化が図られました。2014年(平成26年):「母子及び父子並びに寡婦福祉法」への改称と父子家庭への福祉資金適用拡大。2016年(平成28年):児童扶養手当の支給回数を年3回から年6回(隔月)に変更し、第2子・第3子加算額を大幅引き上げ。2019年(令和元年):民事執行法改正による養育費強制執行の実効性強化(財産開示手続きの厳格化、第三者情報取得手続きの新設)。2024年(令和6年):民法等改正による法定養育費制度の創設・先取特権の明文化・離婚後共同親権制度の導入(2026年4月施行)。あわせて育児・介護休業法の2025年改正(育児・介護休業法 2025年改正参照)により、ひとり親が活用できる柔軟な育児・看護休業が拡充されました。
議論の現在地
ひとり親支援をめぐる現在の主な論点について、賛否両論を整理します。
養育費の公的債権化・立替払いの全国展開:推進する立場は、養育費不払いを「子どもの権利侵害」と位置づけ、国が立替払いをしてから非監護親に求償する仕組み(フランスのPASや北欧の制度に類似)が子どもの貧困根絶に最も効果的と主張します。慎重な立場からは、求償率が低い場合の財政負担、行政が私的扶養関係に介入することの是非、当事者間の自立的解決が後退するリスクが指摘されています。
共同親権とひとり親家庭の関係:2024年の民法改正で導入された離婚後共同親権制度(離婚後共同親権とは参照)については、子どもが両親とのつながりを維持できるとする支持の声がある一方、DVや支配的関係がある事案では被害を受けた親に新たな負担が生じるリスク、学校・医療での合意形成の困難化への懸念が示されており、制度運用上の課題として議論が続いています。
ジェンダー視点からの構造改革論:母子世帯の貧困は個人的な事情の結果に留まらず、女性が非正規雇用に集中しやすい労働市場構造・無償ケア労働のジェンダー非対称性に起因するとする分析が研究者の間で広く共有されています。この立場からは、ひとり親への直接給付と並行して、同一労働同一賃金の徹底・保育インフラの拡充・男性育休の実質化が不可欠とされます(産後パパ育休とは、待機児童問題とは参照)。
残された課題
2026年時点においても、以下の課題が未解決または十分な進展に至っていないとされています。
第一に、養育費立替払いの全国均一化です。自治体独自事業や国のモデル事業は一部で実施されていますが、利用者が居住地によって支援の有無・規模に大きな差があります。第二に、就労収入の底上げです。高等職業訓練促進給付金により資格取得を支援する制度は拡充されてきましたが、資格取得後の賃金が低い職種・業種では効果が限定的との指摘があります。第三に、父子家庭への実態的サポートの格差です。制度上は並列化されたものの、相談体制や情報発信において母子家庭向けと比べて充実度に差があると指摘されています。第四に、外国籍のひとり親家庭への対応です。言語・文化的障壁によって制度情報にアクセスしにくいケースがあり、多言語対応窓口の整備が課題とされています。
公的相談窓口・支援機関
主な相談窓口の一覧
ひとり親家庭に関する相談・支援については、以下の公的機関を利用できます。
市区町村の子育て支援窓口・福祉事務所:児童扶養手当の申請受付・ひとり親家庭等医療費助成の申請・母子父子自立支援員への相談の起点となります。まず居住地の市区町村の担当窓口に問い合わせることが、支援制度全体を把握するうえで有効です。
都道府県・政令市の母子家庭等就業・自立支援センター:就労・養育費・法律問題に関する総合相談を無料で提供しています。弁護士・司法書士・ファイナンシャルプランナーによる専門家相談を実施しているセンターもあります。
法テラス(日本司法支援センター):電話相談(0570-078374)にて、養育費・離婚・DV・財産分与など法律問題の情報提供と弁護士・司法書士の紹介を無料で行っています。収入・資産が一定基準以下の方には弁護士費用の立替制度(審査あり)も用意されています。
DV相談ナビ(#8008):配偶者や元配偶者からの暴力に悩む場合は、このナビダイヤルで最寄りの配偶者暴力相談支援センターに自動的につながります。相談員が対応し、緊急時は一時保護の手配も行われます。
性犯罪被害相談電話(#8103):性的被害を受けた場合は、最寄りの性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターに接続されます。医療・法的支援・心理ケアを一か所で受けられます。
法的支援と専門家への相談
養育費の取り決め・不払い対応・離婚協議・財産分与など、法的判断を要する事項については、弁護士や家庭裁判所の調停制度の活用が有効とされています。家庭裁判所の調停は申立手数料が比較的少額であり、養育費の取り決めや変更を中立的な調停員のもとで行う場を提供しています。具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。
まとめ
ひとり親家庭への支援は、「母子及び父子並びに寡婦福祉法」「児童扶養手当法」を柱とする経済的給付、就労支援(マザーズハローワーク・高等職業訓練促進給付金等)、そして2024年民法改正による養育費確保の新制度という3本柱で構成されています。2026年時点では、法定養育費制度の施行(2026年4月)、育児・介護休業法改正の段階的施行など、複数の制度が相次いで動き出しており、最新情報の把握が重要です。
一方で、養育費立替払いの全国均一な制度整備、就労収入の底上げ、父子家庭への実態的なサービス充実など、残された課題も少なくありません。男女共同参画社会基本法が掲げる「子の養育を行いながら職業生活を営むことができる社会」の実現には、ひとり親家庭を取り巻く構造的課題への継続的な取り組みが不可欠です。
制度の利用にあたっては、まず居住地の市区町村窓口や母子家庭等就業・自立支援センターに相談することが、個別状況に合った支援を受けるための最初の一歩となります。法的な問題については法テラスや弁護士への相談を早期に検討することが推奨されます。
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よくある質問(FAQ)
- Q. ひとり親家庭が受けられる主な経済的支援には何がありますか?
- A. 主な経済的支援として、児童扶養手当(月額最大約4.4万円、子1人全部支給時)、ひとり親家庭等医療費助成(自治体独自)、母子・父子・寡婦福祉資金の低利貸付(事業・就学・修学・生活・技能習得等)、自立支援教育訓練給付金(受講費の60%、上限20万円)、高等職業訓練促進給付金(月額最大10~14万円・最長4年)などがあります。申請窓口は市区町村の福祉・子育て支援担当窓口が起点となります。
- Q. 児童扶養手当はいつまで受給できますか?
- A. 原則として、対象となる子どもが18歳に達した後の最初の3月31日まで受給できます。ただし、子どもが一定の障害の状態にある場合は20歳未満まで対象が延長されます(児童扶養手当法第4条)。また、受給者の所得が一定額を超えると全部または一部が支給停止となるため、毎年8月に現況届の提出が必要です。
- Q. 離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合、後から請求できますか?
- A. 離婚後であっても、父母間の協議または家庭裁判所の調停・審判手続きによって養育費の取り決めを行うことは可能とされています。また、2026年4月施行の改正民法では「法定養育費」制度が創設されており、合意がない場合でも一定の基準に基づく請求ができる仕組みが整備されました。具体的な手続きや金額については弁護士や家庭裁判所への相談が有効です。
- Q. 父子家庭も母子家庭と同じ支援制度を利用できますか?
- A. 2010年の児童扶養手当法改正、2014年の母子及び父子並びに寡婦福祉法改正により、父子家庭も母子家庭とおおむね同様の支援制度を利用できるようになっています。児童扶養手当・ひとり親家庭等医療費助成・福祉資金貸付・自立支援教育訓練給付金・高等職業訓練促進給付金等が対象です。ただし、自治体独自の事業によって対象範囲に差がある場合があります。
- Q. 就労支援はどこに相談すればよいですか?
- A. 居住地の市区町村窓口に配置されている「母子・父子自立支援員」への相談が起点となります。また、都道府県・政令市の「母子家庭等就業・自立支援センター」では就業相談・職業訓練情報・面接支援・専門家相談(弁護士・FP)を無料で提供しています。マザーズハローワーク(マザーズコーナー)では保育情報と求人マッチングを組み合わせた支援を受けられます。
