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デジタル性暴力とは|撮影罪・リベンジポルノ防止法・AI悪用と被害対応【2026年版】

スマートフォンの普及とSNSの浸透により、性的な画像・動画を使った嫌がらせ・脅迫・暴力行為が急増しています。盗撮、無断での性的画像のネット投稿、AIによるフェイク性的画像の生成など、デジタル技術を悪用した性暴力は、被害が瞬時に拡散し削除が困難なため、長期にわたって被害者の生活と尊厳を傷つける深刻な人権侵害です。日本では2022年から2023年にかけて「AV出演被害防止・救済法」「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」が相次いで施行され、法整備が大きく前進しました。しかし、ディープフェイクポルノや匿名アカウントを使った脅迫など、技術の進化に法律が追いついていない領域も残っています。この記事では、デジタル性暴力の定義と類型、各関連法の内容と罰則、被害に遭った場合の相談先と対応フロー、そして市民として予防に関わる方法までを体系的に解説します。企業の人事担当者、教育関係者、当事者支援に携わる方、そして法律の知識を持ちたい一般市民の方に向けた解説です。

目次

デジタル性暴力とは|定義・類型・被害の広がり

デジタル性暴力の定義と国際的な概念整理

デジタル性暴力(Image-based Sexual Abuse、またはTechnology-facilitated Sexual Violence:TFSV)とは、デジタル技術・インターネットを悪用して行われる性的な人権侵害の総称です。国連女性機関(UN Women)は、TFSVを「テクノロジーを介して行われる性的な目的での嫌がらせ・監視・強制・暴力行為」と定義しており、身体的な接触の有無にかかわらず、精神的・社会的・経済的に深刻な被害をもたらすとしています。

日本においても内閣府男女共同参画局は「デジタル性暴力」の概念を用い始めており、2022年施行のAV出演被害防止・救済法、同年の改正リベンジポルノ防止法、2023年施行の撮影罪がその対応として位置づけられています。デジタル性暴力の特徴として、①拡散の即時性と永続性(一度流出した画像は短時間で複製される)、②被害者の匿名性の剥奪(本名・住所・性的画像が紐づけられるドクシング)、③加害者の追跡困難性(匿名アカウントによる隠蔽)の3点が指摘されています。

デジタル性暴力の主な類型

デジタル性暴力は多様な形態をとります。現在日本で問題となっている主な類型は次のとおりです。

①性的な盗撮・無断撮影:本人の同意なく性的な姿態・映像を撮影する行為。公共交通機関・トイレ・更衣室などでの盗撮が典型例です。2023年施行の撮影罪(性的姿態等撮影罪)が主たる規制法となっています。

②リベンジポルノ・性的画像の無断投稿:別れた交際相手やパートナーの性的画像をインターネットに無断投稿したり第三者に送りつけたりする行為です。「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(リベンジポルノ防止法)が対応します。

③AV出演強要・無断公開:嘘の甘言(かんげん)や脅迫によってAV出演契約を結ばせ、本人の真意に反した映像を公開する行為です。2022年施行のAV出演被害防止・救済法が規制します。

④ディープフェイクポルノ・AI生成性的画像:実在する人物の顔画像をAI技術で性的画像・動画に合成する行為です。2026年時点では現行法の適用範囲が限定的であり、立法的対応が課題となっています。

⑤性的なネットハラスメント・脅迫:性的な嫌がらせメッセージの送りつけ、性的画像の送付、「裸の画像を拡散する」という脅し(セクスティオン脅迫)などが含まれます。

被害の実態と拡大の背景

警察庁の統計によると、リベンジポルノ防止法に基づく相談件数は法施行後から増加傾向にあり、2023年には年間2,000件を超える相談が寄せられています。ただし、被害者の多くが「恥ずかしさ」「証拠がない」「加害者が身近な人物」などの理由から相談に踏み切れないため、実際の被害数はこの数字を大幅に上回るとみられています。

被害が拡大した背景には、スマートフォンの高性能カメラの普及、SNSプラットフォームの拡大、生成AI技術の急速な発展が重なっています。特に2023年以降は、無料または低価格のAIツールを使って一般人の顔写真から性的画像を生成することが容易になっており、芸能人だけでなく一般市民も被害を受けるリスクが高まっています。

撮影罪(性的姿態等撮影罪)|2023年7月施行の法律概要

撮影罪の成立経緯と目的

撮影罪の正式名称は「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に係る没収の特例等に関する法律」(令和5年法律第67号)です。e-Gov法令検索から条文全文を確認できます(2023年7月13日施行)。

この法律が制定される以前、盗撮への対応は都道府県の迷惑防止条例が中心でした。しかし条例は地域ごとに規定が異なり、「公共の場所」のみを対象とするケースが多かったため、トイレ・更衣室・住居内などプライベートな場所での撮影には対応が手薄でした。スマートフォンカメラの高度化で被害件数が急増した一方、全国統一の刑事規制が存在しなかったことが問題視され、2023年の性犯罪刑法改正と同時に統一的な撮影罪が制定されました。

処罰対象となる行為と刑罰

撮影罪第2条は、次の行為を処罰対象としています。

第2条(要旨):正当な理由がないのに、ひそかに、①人の性器等の性的な部位を撮影すること、②わいせつな行為または性交等を行う人物を撮影すること、③衣服の下から性的な部位を撮影すること(スカート内盗撮等)のいずれかを行った者は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処する。

さらに、撮影した性的画像を「性的姿態等影像記録」として所持・提供・公表する行為も処罰対象です(第5条~第7条)。提供・公表は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金、所持は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と段階的に規定されています。

旧制度との比較と変化した主な点

撮影罪の施行により従来の迷惑防止条例による対応から大きく変わった点は主に3つです。第一に、場所の限定がなくなったこと。従来の条例は「公共の場所」または「公共の乗り物」に限定するケースが多く、住居・職場・学校等は対象外になりがちでしたが、撮影罪は場所を問わず適用されます。第二に、全国統一の規定となったことです。第三に、撮影後の所持・流通も規制するようになったことで、被害画像の二次拡散への対応も強化されました。

具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

リベンジポルノ防止法|制定の経緯と2022年改正のポイント

法律の目的と「私事性的画像」の定義

「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(平成26年法律第126号。以下「リベンジポルノ防止法」)は2014年に制定されました。e-Gov法令検索で条文を参照できます(最終改正:2022年)。

同法第2条は、規制対象となる「私事性的画像記録」を「撮影対象者が特定でき、性器等の露出・性的な行為・衣服の下の性的部位が映った画像・動画の記録」と定義しています。制定当初は「本人の意思に基づき撮影された画像」のみが対象でしたが、盗撮画像は対象外とされており、この点が批判を受けていました。2022年改正でこの要件が見直されています。

禁止行為と罰則

リベンジポルノ防止法が禁止する主な行為は次の2つです。

第3条第1項:正当な理由がないのに、私事性的画像記録を不特定または多数の者に提供すること(インターネット投稿を含む)。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

第3条第3項:特定の者のみへの提供については、1年以下の懲役または30万円以下の罰金(軽微な提供に対する対応)とされています。

2022年改正の主要3ポイント

2022年の改正による主な変更点は次のとおりです。①盗撮画像の追加:改正前は「本人の意思に基づき撮影された画像」のみが対象でしたが、改正後は盗撮画像も対象に含まれるようになりました。②拡散要求行為の規制:第三者に送りつけて拡散を依頼する行為が新たに規制対象となりました。③取得・保管の禁止強化:「流出させる目的」での私事性的画像の取得・保管行為について規制が強化されました。

AV出演被害防止・救済法(2022年)の概要

制定の背景とAV出演強要問題

「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」(令和4年法律第78号。以下「AV出演被害防止・救済法」)は、2022年6月に成立・施行されました。e-Gov法令検索で条文を確認できます。

この法律が制定された背景には、2010年代から継続的に問題視されていた「AV出演強要」があります。「モデルになれる」「芸能人デビューできる」といった嘘の甘言や、借金の肩代わりを条件とした誘い込み、脅迫・監禁による出演強制など、被害者が真意に反してAV出演契約を結ばされるケースが多数報告されていました。支援団体・超党派議員連盟の働きかけにより特例法として立法化されました。

契約取消権と撮影停止・廃棄請求の特則

AV出演被害防止・救済法の核心は、民法の一般原則を上回る特別な取消権・解除権を被害者に付与している点です。第3条は制作・販売業者などに対し、撮影日の4週間以上前に書面で契約内容を告知する義務を課しています。この事前告知義務違反があった場合、出演者は契約を取り消すことができます(第5条)。また、第6条は映像の公開日から1年間、出演者が撮影行為の義務履行を拒絶できるとし、第7条では公開後1年以内の解除通知により制作業者への映像廃棄請求を認めています。消費者契約法の特例として、制作時から最長2年間、出演契約等を解除できる権利も付与されています(第9条)。

救済機関と支援体制

AV出演被害の相談窓口として、内閣府が指定する民間サポートステーション(NPO等)が設置されています。法テラス(0570-078374)や性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)が一次相談先として機能しています。契約解除や廃棄請求の手続きの詳細については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

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ディープフェイクポルノとAI悪用|現行法の対応と課題

ディープフェイクポルノとは何か

ディープフェイクポルノとは、機械学習(ディープラーニング)技術を使い、実在する人物の顔写真を性的な動画・画像に合成する行為、またはその生成物を指します。「ディープフェイク(deepfake)」とは「ディープラーニング」と「フェイク(偽物)」を組み合わせた造語で、2017年ごろから海外で問題視され始め、日本でも2020年代以降に急速に拡大しました。被害の深刻さは、①SNSの顔写真があれば誰でも容易に生成できる、②本人が一切関与していないのに性的コンテンツが作られる精神的苦痛が大きい、③リアルに見えるため周囲の誤解を生む、という3点に集約されます。

現行法での対応と限界(法令別比較)

ディープフェイクポルノに対して日本の現行法がどこまで対応できているかを整理します。

行為類型 適用されうる主な法律 主な罰則 2026年現在の課題
盗撮・無断撮影 撮影罪(令和5年法律第67号) 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 AI生成(実際の撮影なし)には適用不可
性的画像の無断投稿(リベンジポルノ) リベンジポルノ防止法(平成26年法律第126号) 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 「実際に撮影された画像」が主な対象。AI合成画像への適用は解釈が争点となりうる
ディープフェイク性的画像の生成 わいせつ物頒布等罪(刑法第175条)・名誉毀損罪(刑法第230条)が検討対象 刑法第175条:2年以下の懲役等(頒布・販売の場合) 「生成行為」自体を直接罰する専門立法が存在しない
ディープフェイク動画の配布・拡散 リベンジポルノ防止法(改正後)/わいせつ物頒布等罪(刑法第175条) 条件によって上記に準じる 「実在の性的姿態を映した」という要件への該当性が争点となりうる
AV映像のAI加工・無断公開 わいせつ物頒布等罪(刑法第175条)/不正競争防止法 2年以下の懲役等(刑法第175条) 実在人物の同意なき使用への明確な規制が未整備

国際的な規制動向と日本の立法課題

海外ではディープフェイクポルノへの規制が進んでいます。イギリスでは2024年に「Online Safety Act」の一部として同意なきディープフェイクポルノの配布を犯罪とする規定が施行されました。韓国では2020年に「性暴力犯罪の処罰等に関する特例法」を改正し、ディープフェイクポルノの製作・配布に最高7年の懲役を設けています。米国では連邦レベルの統一立法は未成立ですが、多くの州が独自の規制法を施行しています。日本では2025年時点で内閣府・法務省・総務省が連携した検討会が設置されており、2026年以降の立法化が注目されています。

現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

デジタル性暴力に関する法整備は、特に2014年以降に急速に進みました。主な立法・改正の経緯は以下のとおりです。

  • 2014年(平成26年):リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)制定。インターネット上の性的画像投稿への初の専門立法。
  • 2022年(令和4年):AV出演被害防止・救済法施行。出演強要の特例取消権・廃棄請求権を初めて法定化。
  • 2022年(令和4年):リベンジポルノ防止法改正。盗撮画像の追加、拡散要求行為の規制強化。
  • 2023年(令和5年)7月:撮影罪(性的姿態等撮影罪)施行。全国統一の盗撮規制、住居・職場等にも適用拡大。
  • 2023年(令和5年):刑法改正による不同意性交等罪の新設。被害者の意思(不同意)を明確に要件化し、性犯罪刑法を抜本的に見直し。

議論の現在地

現在の主な論点は次の3点です。

ディープフェイクポルノへの専門立法の必要性:規制推進側は「実在人物への名誉・尊厳侵害は明白であり、専門立法が急務」と主張します。一方、慎重な立場からは「AI技術の広汎な規制は表現の自由や技術革新を阻害しかねない」という意見もあり、賛否が対立しています。

プラットフォームへの削除義務化の範囲:SNS・ポルノサイトに対して通報後の迅速な削除を義務づけるべきかについて、「プラットフォームへの規制強化は必要」という意見と、「過度な規制は検閲につながる」という懸念が対立しています。2022年のプロバイダ責任制限法改正(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)で手続きが整備されましたが、対応の迅速性には課題が残るとされています。

被害者支援の公的財政基盤:デジタル性暴力の被害者支援は現状では主にNPO・ボランティア団体に依存しており、公的財政の充実を求める声が継続的に上がっています。

残された課題

2026年時点で未解決の主な課題は以下のとおりです。

①ディープフェイク専門立法の未整備:AI生成性的画像の製作・配布・保有を個別類型ごとに規制する専門立法が未完成です。

②国際的な取締り協力の不足:加害者が海外サーバーや匿名ネットワークを利用する場合、国内法の執行に限界があります。国際刑事司法互助条約(MLAT)の活用やプラットフォーム企業との情報共有協定の強化が課題です。

③男性・LGBTQ+被害者への支援不足:デジタル性暴力の被害者は女性に多いとされますが、男性やLGBTQ+(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クィアなどの性的マイノリティ)の当事者も被害を受けています。相談窓口や支援制度が女性向けに偏りがちであり、すべての性別・性的指向の被害者が利用しやすい制度設計が求められています。

④二次被害の防止:被害者が相談機関に申し出た際、「なぜそんな写真を撮ったのか」と被害者側の行動を問うような不適切な対応(二次被害)が起きるケースが指摘されています。2023年の性犯罪刑法改正に伴い捜査手続きの改善指針が示されていますが、現場への徹底には継続的な取組みが必要です。

被害に遭ったときの相談先と対応フロー

相談の第一歩|証拠保全と心構え

デジタル性暴力の被害に遭ったとき、まず重要なのは証拠の保全です。投稿やメッセージのURLのスクリーンショット、送信者のアカウント情報など、できる限り多くの情報を保存してください。サイトが削除されると証拠が失われます。

次に、一人で抱え込まないことが大切です。デジタル性暴力の被害者には強い羞恥心や自責感が生じることがありますが、加害行為の責任は加害者にあります。相談することで、専門家によるサポートを受けながら削除申請・被害届の提出を進めることができます。心身の不調を感じる場合は、医療機関・精神保健福祉センター・専門相談窓口へご相談ください。

主な公的相談窓口

以下の公的機関・支援窓口が利用できます。

性犯罪被害相談電話(#8103「ハートさん」):全国共通の短縮番号で最寄りの都道府県警察の性犯罪被害相談窓口に繋がります。一部都道府県では24時間対応(時間外は録音対応)。

DV相談ナビ(#8008):配偶者・パートナーからの性的被害(デジタル性暴力を含む)については、DV相談ナビも利用できます。24時間対応。

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891):「ハートフルホン(#8891)」で全国のワンストップ支援センターに繋がります。心理・法律・医療の総合的な支援を受けられます。

法テラス(0570-078374):法的問題について弁護士の紹介・費用立替制度(審査あり)が利用できます。平日9:00~21:00、土曜日9:00~17:00。

インターネット・ホットラインセンター(IHC):インターネット上の違法・有害情報について通報・削除依頼ができます。https://ihc.internet-hotline.org/

削除申請と被害届の流れ

デジタル性暴力の画像・動画がオンライン上に公開されている場合、次の2つを並行して進めることが重要です。

①プラットフォームへの削除申請:各SNSプラットフォーム(X〔旧Twitter〕・Meta社サービス・LINEなど)には性的画像の削除申請フォームが設けられています。プロバイダ責任制限法の枠組みで、申請後の対応が原則として求められています。

②警察への相談・被害届の提出:撮影罪・リベンジポルノ防止法などの適用が考えられる場合、最寄りの警察署または#8103に相談します。被害届の提出は任意ですが、捜査を求める意思表示として重要です。弁護士に相談したうえで被害届提出と民事(損害賠償請求)を組み合わせて進めることも選択肢のひとつとされています。

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上野千鶴子「女たちのサバイバル作戦」(文春文庫) ― メディア・性暴力・ジェンダーの関係を鋭く分析したロングセラー。社会構造がいかにして被害者を沈黙させるかを知るための基本書です。

デジタル性暴力防止のために市民ができること

デジタルリテラシーと予防行動

デジタル性暴力を防ぐために、まず重要なのは自身のデジタル行動の見直しです。SNSに投稿する画像の背景情報(位置情報・場所の特定につながる情報)の管理や、パートナーとの間で作成した親密な画像を「万が一」に備えてクラウドや第三者に共有しないことなど、一人ひとりの判断が被害リスクを下げる可能性があります。

一方で、「被害に遭う人が不用心だった」という発想は被害者への責任転嫁につながるため、注意が必要です。デジタル空間での行動が原因でデジタル性暴力が正当化されることはなく、予防行動はあくまで自己防衛の一手段として位置づけるべきものです。職場・学校でのデジタルリテラシー教育(撮影罪・リベンジポルノ防止法の周知を含む)は、潜在的な加害行動の抑止にも効果があるとされており、文部科学省・総務省が推進する「デジタル市民教育」の中でデジタル性暴力の学習が組み込まれつつあります。

第三者として傍観者にならないために

デジタル性暴力の投稿を目にしたとき、「自分には関係ない」と傍観することは、被害の拡大に間接的に加担する可能性があります。具体的にできることは次のとおりです。

通報・報告機能の活用:各プラットフォームに設けられた違法・有害コンテンツの通報機能を積極的に使いましょう。「自分一人が通報しても意味がない」と感じる場合でも、複数の通報が迅速な削除につながります。

二次拡散しない:性的な画像・動画をシェア・リポストすることはそれ自体が被害の拡大に直結します。「有名人の○○らしい」という情報であっても、拡散行為が加害に加担する可能性があります。

当事者への配慮ある声かけ:被害に遭った人が周囲にいる場合、「なぜそんな写真を撮ったのか」「なぜ今まで言わなかったのか」などの言葉は二次被害につながります。「どうすれば助けになれるか」という姿勢で関わることが大切です。

法制度の形成に参加する市民の役割

デジタル性暴力をめぐる法整備は、市民の声によって動かされてきた側面があります。AV出演被害防止・救済法は、支援団体・被害当事者の組織的な活動と超党派議員連盟の協力によって実現しました。以下の形で市民も政策形成に参加できます。

パブリックコメントへの参加:内閣府・法務省などが行う意見募集(パブリックコメント)は、電子政府の総合窓口(e-Gov)から誰でも意見を提出できます。デジタル性暴力関連の規制強化に向けた検討会のパブリックコメントが実施された際に参加することが、政策形成への直接的な関与となります。

支援団体・啓発活動への参画:全国各地の男女共同参画センターや、ぱっぷす(特定非営利活動法人ポルノグラフィー被害と性暴力を考える会)などのNPOは、ボランティアや寄付による支援を受け付けていることがあります。参加方法は各団体の公式ウェブサイトをご確認ください。


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よくある質問(FAQ)

Q1. スマートフォンで無断に撮影された場合、警察に相談できますか?
撮影罪(2023年施行)により、公共の場所のみならず住居・職場・学校等でも正当な理由のない無断撮影が刑事罰の対象となっています。撮影・発覚後できるだけ早く#8103(性犯罪被害相談電話)または最寄りの警察署に相談することが推奨されます。捜査の開始や逮捕は個別の事案により異なりますので、弁護士への相談も合わせてご検討ください。
Q2. 交際相手に送った親密な画像をネットに無断投稿された場合、リベンジポルノ防止法は適用されますか?
本人の同意のもとで撮影・送付した性的画像が第三者に無断で公開・提供された場合、リベンジポルノ防止法が適用される可能性があります。3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。ただし個別の事案によって要件への該当性が異なるため、まず#8103または法テラス(0570-078374)にご相談ください。
Q3. ディープフェイクポルノを作成・拡散された場合、現行法で対応できますか?
2026年時点の日本では、ディープフェイクポルノの「生成行為」を直接規制する専門立法はまだ整備されていません。ただし生成・配布された画像の内容によっては、わいせつ物頒布等罪(刑法第175条)・名誉毀損罪(刑法第230条)・侮辱罪などが適用される可能性があります。プロバイダ責任制限法に基づくプラットフォームへの削除申請は行うことができます。具体的な対応については弁護士への相談をお勧めします。
Q4. AV出演被害防止・救済法は、すでに映像が公開されている場合にも使えますか?
AV出演被害防止・救済法(令和4年法律第78号)は、映像の公開後1年以内であれば制作業者への解除通知により映像の廃棄を求める権利を被害者に付与しています。また出演契約については制作時から最長2年間解除できる特例もあります。公開後に被害に気づいた場合でも、法テラス(0570-078374)やワンストップ支援センター(#8891)に相談することで手続きの流れを確認できます。
Q5. 相談した際に二次被害を受けるリスクはありますか?
デジタル性暴力の被害者が相談機関や捜査機関で不適切な対応(二次被害)を受ける事例は報告されています。2023年の性犯罪刑法改正に伴い、捜査機関・支援機関への被害者配慮指針が示されています。もし相談先での対応に問題を感じた場合は、別の支援団体(NPO・弁護士)への相談も選択肢となります。
Q6. デジタル性暴力の問題を知った一般市民は何か行動できますか?
SNSで性的画像の投稿を見かけた場合は、通報・報告機能を使って削除申請を促すことが一つの行動です。また内閣府などが実施するパブリックコメントへの意見提出、支援団体への寄付・ボランティア参加、職場や学校でのデジタルリテラシー教育の推進を求める声をあげることも、社会全体でデジタル性暴力を減らしていくための市民的行動となります。

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