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ハラスメント防止措置義務とは|セクハラ・パワハラ・マタハラ・カスハラの事業者義務を一覧整理【2026年版】

「どのハラスメント対策が自社に義務として課されているのか、整理しきれていない」――そう感じている人事担当者や管理職の方は少なくありません。職場のハラスメント対策は、2020年代に入って急速に法整備が進み、2026年10月にはカスタマーハラスメント対策の義務化も予定されています。しかし、セクシュアルハラスメント・パワーハラスメント・妊娠育児関連ハラスメント・カスタマーハラスメントと複数の類型が異なる法令に分散しているため、体系的に把握することが難しい状況です。この記事では、各類型の根拠法令・義務の内容・対象事業者・行政指導の仕組みを一覧で整理し、2026年時点の最新論点と実務上の課題を解説します。ハラスメント相談窓口を担当する人事マネージャーの方、コンプライアンス体制を整えたい経営者・管理職の方、または法的な枠組みを体系的に把握したい方に向けた内容です。

ハラスメント防止措置義務とは|セクハラ・パワハラ・マタハラ・カスハラの事業者義務を一覧整理【2026年版】 - 解説

目次

ハラスメント防止措置義務とは|法的根拠と全体像

なぜ事業者に防止措置義務が課されるか

日本において職場のハラスメント対策を事業者に義務づける根拠は、職場環境配慮義務(民法第415条・第709条)および個別のハラスメント対策法令の双方にあります。最高裁判所は、使用者が労働者に対して安全かつ健康に働ける環境を確保すべき義務(職場環境配慮義務)を負うと繰り返し示してきました。この義務を具体化したのが、各ハラスメント類型に関する個別法令の防止措置規定です。事業者がこれらの措置を怠った場合、行政指導・勧告・公表の対象となるほか、民事上の使用者責任(民法第715条)として損害賠償責任を問われる可能性があります。防止措置義務は「努力義務」から「法的義務」へと段階的に強化されており、2026年時点では主要4類型すべてが何らかの法的義務の対象となっています。

主要4類型と根拠法令

職場のハラスメント防止措置義務は、現在以下の4類型を中心に構成されています。第一は、セクシュアルハラスメント(セクハラ)で、男女雇用機会均等法(最終改正:令和7年法律第63号・2025年6月11日施行)第11条および第11条の4に根拠を置きます。第二は、パワーハラスメント(パワハラ)で、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)(最終改正:令和7年法律第63号・2026年4月1日施行)第30条の2が根拠となります。第三は、妊娠・出産・育児・介護関連ハラスメント(マタハラ・パタハラ)で、均等法第11条の4および育児・介護休業法(最終改正:令和6年法律第42号・2025年10月1日施行)第25条が根拠です。第四は、2026年に新たな義務化が予定されるカスタマーハラスメント(カスハラ)で、労働施策総合推進法改正に基づく対策義務が2026年10月に施行されます。

義務の対象事業者と規模要件

セクハラ防止措置義務は、雇用する労働者数にかかわらずすべての事業者に適用されます。パワハラ防止措置義務は、大企業に2020年6月から、中小企業(常時使用する労働者数が300人以下の事業主)には2022年4月から義務化されました。妊娠・育児関連ハラスメント防止措置義務も、規模要件なくすべての事業者が対象です。カスタマーハラスメント対策義務は2026年10月施行予定で、現時点では詳細な規模要件が施行令・指針で定められる予定です。なお、パート・アルバイト・派遣労働者など雇用形態を問わず、事業主が雇用するすべての労働者が保護の対象となる点に注意が必要です。また、取引先や顧客など社外の行為者によるハラスメントについても、事業者は相談対応などの配慮が求められます。

セクシュアルハラスメント防止措置義務|均等法第11条・第11条の4

10項目の必須措置(厚生労働省指針)

厚生労働省が定める「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第6号)は、セクハラ防止のために事業者が講じるべき措置を定めています。大別すると、①事業主の方針等の明確化・周知啓発、②相談(苦情を含む)に応じ適切に対処するための体制の整備、③職場においてセクハラに係る事後の迅速かつ適切な対応、の3分野に整理できます。具体的には、就業規則への禁止規定明記、管理職への研修実施、社内相談窓口の設置、事実確認のための調査実施、行為者への適切な措置、被害者のプライバシー保護、相談を理由とした不利益取扱いの禁止などが含まれます。これらはセクハラ防止指針で「事業主が雇用管理上講ずべき措置」として列挙されており、措置を怠った場合は都道府県労働局長による助言・指導・勧告の対象となります。

職場外・取引先からのセクハラも対象

均等法第11条の「職場」は、通常の勤務場所に限定されません。業務上必要な場所(出張先・接待の場・取引先の会社など)で性的な言動が行われた場合も「職場」に該当するとされています。また、均等法第11条の4は、他の事業主が雇用する労働者が職場においてセクハラを受けた場合に、当該事業主も配慮義務を負う旨を定めており、取引先の社員からのセクハラ被害にも対応が求められます。さらに、2019年の均等法改正により、事業主は自社の労働者が他社の職場でセクハラを行った場合も協力対応することが努力義務として規定されました。この「他社間連携」は、就活セクハラ(OB・OG訪問時の被害など)や派遣先によるハラスメントへの対応において特に重要です。

行政指導・公表制度の概要

均等法違反に対しては、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)による行政指導(助言・指導・勧告)が行われます。均等法第29条(2026年10月1日以降は第35条)は、事業主が勧告に従わなかった場合に厚生労働大臣が企業名を公表できる旨を定めており、実際に企業名が公表された事例も報告されています。公表は企業ブランドへの打撃となるため、行政指導を受けた時点での迅速な是正が実務上重要です。なお、均等法の適用については、正規雇用・非正規雇用を問わない「雇用する労働者」全員が対象であり、適用除外はありません。

パワーハラスメント防止措置義務|労働施策総合推進法第30条の2(2026年10月1日以降は第31条)

中小企業への義務化(2022年4月施行)と6類型の定義

パワーハラスメント防止措置義務は、2019年の労働施策総合推進法改正により法制化され、大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から義務化されました。パワハラ(パワーハラスメント)は、①優越的な関係を背景とした言動であること、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること、③労働者の就業環境が害されること、という3要件を満たすものと定義されます(同法第30条の2第1項、2026年10月1日以降は第31条第1項)。厚生労働省は、パワハラを「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」の6類型に整理しており、この類型は企業研修・社内規程整備の基準として広く活用されています。なお、上司から部下への行為に限らず、部下から上司への行為(同僚関係や職場内の優位性に基づく行為を含む)も対象となります。

事業者が講じるべき4分野の措置

「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)は、事業者が講じるべき措置を4分野に整理しています。第一に、事業主の方針等の明確化・周知(就業規則・ハラスメント方針文書の整備・公表)、第二に、相談体制の整備(社内外の相談窓口設置・担当者への研修)、第三に、事後の迅速・適切な対応(事実確認→行為者への措置→被害者へのケア→再発防止策の実施)、第四に、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止です。これらの4分野はセクハラ防止指針とほぼ同じ枠組みであり、企業の実務では「ハラスメント対策の一体的整備」として3類型(セクハラ・パワハラ・育児等ハラスメント)を統合して整備することが推奨されています。

労働者への周知・啓発と相談体制の実質的要件

事業者は、全労働者がハラスメントの定義・相談窓口・行為者に対する措置などを認識できるよう周知する義務を負います。周知の方法は就業規則・社内LANへの掲載・研修の実施・パンフレット配布など多様ですが、「実際に労働者が認識できる状態」に置くことが要件です。相談窓口については、①窓口担当者を明確にする、②担当者が適切な研修を受けている、③相談しやすい環境を整える(匿名相談の可否・外部EAP(従業員支援プログラム)の活用など)といった実質的な整備が求められます。形式的に「相談窓口を設置した」だけでは不十分であり、実際に相談対応ができる体制でなければ措置義務を果たしたとはみなされません。

妊娠・育児関連ハラスメント防止措置義務|均等法・育介法

マタニティハラスメント・パタニティハラスメント防止義務の根拠

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタニティハラスメント・マタハラ)の防止措置義務は、男女雇用機会均等法第11条の4(女性労働者の妊娠・出産等を理由とするハラスメント)および育児・介護休業法第25条(育児休業等に関するハラスメント)に基づきます。均等法第11条の4は、妊娠・出産・産前産後休業の取得等を理由とする言動で就業環境が害される行為を防止するための措置を事業者に義務づけています。育介法第25条は、育児休業・介護休業の申出・取得を理由とするハラスメントを防止するための措置義務を定めており、父親の育児休業(産後パパ育休を含む)の取得を理由とするいわゆる「パタニティハラスメント(パタハラ)」も対象となります。2022年に創設された産後パパ育休(出生時育児休業)制度の普及に伴い、パタハラの防止措置も一層重要になっています。

育介法に基づく育児休業等ハラスメントの範囲

育介法第25条が対象とする「育児休業等に関するハラスメント」には、①育児休業・介護休業等の申出・取得を理由とする不利益示唆や嫌がらせ(制度利用への妨害)、②育児短時間勤務・所定外労働免除等の制度利用を理由とする言動が含まれます。2025年4月施行の育介法改正(令和6年改正)では、3歳未満の子を養育する労働者に対する「柔軟な働き方確保措置」の義務化が盛り込まれ、事業者がテレワーク・フレックスタイム・短時間勤務などの選択肢を提供する義務が新設されました。この改正に伴い、新たな制度利用に関するハラスメントの防止措置も事業者の対応課題となっています。行為類型の典型例としては、「もう育休から戻ってこなくていい」「時短勤務なのだから昇格は無理」といった言動が示されています。

不利益取扱い禁止との違いと相互補完関係

妊娠・育児に関する「ハラスメント防止措置義務」と「不利益取扱い禁止」は混同されがちですが、根拠規定と対象が異なります。不利益取扱い禁止(均等法第9条・育介法第10条)は、妊娠・出産・育休取得等を理由とする解雇・降格・賃金カット・雇い止めなどの具体的な不利益措置を直接禁止するものです。一方、ハラスメント防止措置義務(均等法第11条の4・育介法第25条)は、不利益取扱いに至らない言動(嫌がらせ・無視・精神的圧力)が継続して行われ就業環境が害される状態を防止することを目的とします。実際の事案では、不利益取扱いとハラスメントが並行して生じることも多く、企業の対応においては両者の規制を一体的に踏まえた対応が求められます。

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現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

職場のハラスメント法制は、2007年以降に大きく発展しました。主な法改正・新法の流れを以下に整理します。

  • 2007年:男女雇用機会均等法改正 セクハラ防止措置義務の対象を「女性労働者」から「すべての労働者」に拡大し、男性へのセクハラも対象となりました。また、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い禁止規定が明確化されました。
  • 2017年:育児・介護休業法・均等法改正 マタニティハラスメント・パタニティハラスメント防止措置義務が新設(均等法第11条の4・育介法第25条)。上司・同僚からの言動による就業環境の害を対象とする規定が初めて法定化されました。
  • 2020年:労働施策総合推進法改正(いわゆるパワハラ防止法)施行 パワーハラスメントを初めて法令上の概念として定義し、大企業への防止措置義務が2020年6月から施行。
  • 2022年:各法改正の全面義務化 パワハラ防止措置義務が中小企業にも適用(4月施行)。均等法改正によりセクハラの相談対応に関する事業者の他社との協力義務が強化。男性育休(産後パパ育休)の創設と育休取得率公表義務の新設。
  • 2025年:育児・介護休業法大幅改正 「柔軟な働き方確保措置」(テレワーク・短時間勤務等の選択肢提供義務)が4月施行。育休取得率の公表義務が常時雇用者数100人超企業にも適用開始。
  • 2026年10月(予定):カスタマーハラスメント対策義務化 労働施策総合推進法改正により、顧客・取引先等の第三者による著しい迷惑行為(カスハラ)への対策を事業者に義務づける規定が施行予定。

議論の現在地

2026年時点のハラスメント法制をめぐる主な議論は以下の点に集約されます。

まず、カスタマーハラスメント対策義務化の実効性については、義務の具体的な内容(どのような言動がカスハラに該当するかの明確化)や、中小企業・小規模事業者の対応コスト負担について懸念が示されています。一方で、飲食・小売・医療・介護等の業種でカスハラ被害が深刻化しており、法的義務化によって従業員保護が強化されることを歓迎する声も多くあります。

次に、ハラスメント規定の刑事罰化については、現行法が行政指導・勧告・公表を中心とした仕組みであり、刑事罰がないことの実効性不足を指摘する意見があります。一方、刑事罰の導入は職場での意思疎通に過度の萎縮的効果を生む可能性があり、慎重な検討が必要との見解も示されています。国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)の2024年対日審査においても、ハラスメント規制の強化が勧告事項として盛り込まれています。

また、SOGIハラスメントの明示的規定化については、パワハラ防止指針が「性的指向・性自認に関する侮辱的な言動(SOGIハラ)」をパワハラの例示の一つとして列挙しているものの、均等法等の明文規定には独立した類型として反映されていません。LGBT理解増進法(2023年成立)との整合性も含め、立法的対応を求める意見が高まっています。

残された課題

現行制度の課題として、以下の点が指摘されています。

第一に、フリーランス・業務委託労働者の保護です。フリーランス保護法(2024年11月施行)はハラスメントへの配慮義務を定めていますが、労働者に準じた防止措置義務の適用は限定的です。個人で業務委託契約を締結して働く方が増加する中、ハラスメント対策の実効性を確保するための制度整備が求められます。

第二に、5人以下の小規模事業者への対応です。現行法はすべての事業者が対象とされているものの、個人事業主が少数名を雇用する小規模事業者では、社内相談窓口の設置が現実的に困難な場合があります。自治体・商工会議所等を活用した外部窓口の整備など、支援策の拡充が課題とされています。

第三に、ハラスメント相談件数の増加と行政対応能力の問題があります。厚生労働省「個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、いじめ・嫌がらせに関する相談件数は2011年以降一貫して増加傾向にあり、都道府県労働局の対応能力と相談件数のギャップが課題とされています。

ハラスメント防止措置の実施ステップ|相談窓口から是正措置まで

相談窓口(苦情処理窓口)の設置と運営要件

ハラスメント防止措置の中核となるのが相談窓口の整備です。厚生労働省の各指針は、相談窓口について①窓口担当者の明確化、②担当者が相談内容や相談者・行為者等のプライバシーを保護するための措置の実施、③相談者が不利益取扱いを受けることのないよう明確にすること、を求めています。相談窓口は社内に設ける内部窓口と、外部の法律事務所・EAP(Employee Assistance Program=従業員支援プログラム)サービス事業者等に委託する外部窓口の二種類があります。規模の小さな企業では社員間の顔見知り関係から「身近すぎて相談しにくい」という問題が生じることもあり、外部窓口の活用が推奨されるケースがあります。

相談受付から調査・事実確認の手順

相談を受けた後の手順は、①相談者からの詳細なヒアリング、②行為者からのヒアリング(必要に応じて第三者への聴取)、③事実の認定、④適切な措置の決定・実施、という流れが一般的です。事実調査の際には、相談者・行為者双方のプライバシー保護(ヒアリング内容の非公開等)が法的義務として求められます。また、相談者が「相談したことで不利益な扱いを受けるのではないか」と懸念を感じることがないよう、相談窓口への申し出を理由とする解雇・降格・嫌がらせを禁止する旨を事前に全労働者へ周知しておくことが重要です。事実認定に困難を伴う場合は、外部の弁護士・社会保険労務士等の専門家を調査に関与させることも選択肢の一つです。

是正措置・フォローアップの実施

ハラスメントの事実が認定された場合、事業者は行為者への懲戒処分(戒告・減給・出勤停止・降格・解雇など)と被害者へのケア(配置転換・メンタルヘルス支援等)を実施する必要があります。懲戒処分の内容は就業規則に定められた基準に基づいて決定されますが、行為の重大性・継続性・被害者の意向等を総合的に勘案することが求められます。加えて、再発防止策として①再度の研修実施、②社内規程の見直し、③ハラスメント対策の実施状況の定期的な確認(PDCA)が重要です。措置後も被害者の状況をフォローアップし、問題が再燃していないかを確認することが、各指針が求める「迅速かつ適切な事後対応」の一部です。

4類型の防止措置義務比較表

類型 根拠法令(条文) 義務化時期 対象事業者 主な措置内容 違反時の対応
セクシュアルハラスメント 男女雇用機会均等法
第11条・第11条の4
2007年4月(全面改正) 規模問わず全事業者 方針明確化・周知啓発、相談窓口整備、事後対応、プライバシー保護 助言・指導・勧告・企業名公表(第29条、2026年10月1日以降は第35条)
パワーハラスメント 労働施策総合推進法
第30条の2(2026年10月1日以降は第31条)
大企業:2020年6月
中小企業:2022年4月
規模問わず全事業者 方針明確化、相談体制整備、事後対応、プライバシー・不利益取扱い禁止 助言・指導・勧告(第35条)
妊娠・育児関連ハラスメント(マタハラ・パタハラ) 均等法第11条の4
育介法第25条
2017年1月(新設) 規模問わず全事業者 方針明確化、相談体制整備、事後対応、プライバシー保護 均等法・育介法:助言・指導・勧告
カスタマーハラスメント 労働施策総合推進法
改正(2026年10月施行予定)
2026年10月(予定) 詳細は施行令・指針で決定見込み 対策方針の策定・周知、相談体制整備、顧客対応マニュアル、従業員保護措置 施行令・指針に基づく対応が予定される

類型横断の共通チェックポイント

4類型に共通する実務チェックポイントを整理します。①就業規則・ハラスメント対策規程に各類型の禁止規定が明記されているか、②相談窓口が実際に機能しているか(形式的設置にとどまっていないか)、③管理職・従業員向けの研修が定期的に実施されているか、④相談者・行為者のプライバシー保護の仕組みが文書化されているか、⑤相談を理由とした不利益取扱い禁止が全労働者に周知されているか、⑥是正措置のPDCAが回っているか(年次確認・記録保存)の各点です。これらの記録は、都道府県労働局の調査や民事訴訟において「措置を講じていた」ことの証拠として機能します。文書化・記録化は、法的な防御手段として不可欠です。

公的相談窓口とまとめ

職場のハラスメントに関する主要公的相談窓口

職場のハラスメント被害に関するご相談や、企業のハラスメント対策に関する問い合わせは、以下の公的窓口をご活用ください。

  • 都道府県労働局(雇用環境・均等部・室):セクハラ・マタハラ・育介ハラスメントに関する相談・行政指導の窓口。厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/danjokintou/index.html)から各都道府県の連絡先を確認できます。
  • 総合労働相談コーナー(都道府県労働局・ハローワーク等設置):パワーハラスメントを含む職場のトラブル全般について、無料で相談できます。都道府県労働局長による「あっせん」制度の利用も可能です。
  • 法テラス(日本司法支援センター):電話番号0120-078-374(おなやみなし)。経済的な理由で弁護士費用の負担が困難な方への法律相談費用の立替制度があります。
  • みんなの人権110番:電話番号0570-003-110。法務省人権擁護機関による相談窓口。職場の差別・ハラスメントに関する相談も受け付けています。

具体的な事案については、弁護士・社会保険労務士など専門家への相談をご検討ください。

まとめ|ハラスメント防止措置義務を体系的に整備する視点

職場のハラスメント防止措置義務は、セクシュアルハラスメント・パワーハラスメント・妊娠育児関連ハラスメント・カスタマーハラスメントの4類型について、それぞれ異なる法令・指針に基づいて課されています。一方で、各類型に共通して求められる要素(方針の明確化・相談窓口・事後対応・プライバシー保護)は基本的に同じ枠組みであり、企業実務では統一したハラスメント対策体制を構築することが効率的です。2026年10月のカスタマーハラスメント対策義務化に向け、現在の体制を見直すよい機会といえます。各法令の最新情報は、厚生労働省・内閣府男女共同参画局の公式サイトで随時確認することをお勧めします。

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よくある質問(FAQ)

Q1. ハラスメント防止措置義務はどの規模の会社にも適用されますか?

A. セクシュアルハラスメント・妊娠育児関連ハラスメントの防止措置義務は、雇用する労働者数にかかわらずすべての事業者に適用されます。パワーハラスメントの防止措置義務は大企業に2020年6月から、中小企業にも2022年4月から義務化されており、現在は規模を問わず全事業者が対象です。カスタマーハラスメント対策義務は2026年10月施行予定で、対象事業者の規模要件は施行令・指針で詳細が定められる予定です。

Q2. 相談窓口を設置するだけで義務を果たしたことになりますか?

A. 相談窓口の設置は必要条件の一つですが、それだけでは十分ではありません。厚生労働省の各ハラスメント防止指針は、相談窓口に加えて、方針の明確化・周知、担当者の研修、プライバシー保護の仕組み、不利益取扱い禁止の周知、適切な事後対応(調査・是正措置)といった一連の体制整備を求めています。窓口が形式的に設置されているだけで実際の相談対応ができない状態では、措置義務を履行したとはみなされません。

Q3. パート・アルバイト・派遣労働者もハラスメント防止措置の保護対象ですか?

A. はい、雇用形態を問わずすべての労働者がハラスメント防止措置の保護対象です。正規・非正規・派遣・契約・パートタイムのいずれであっても、均等法・労働施策総合推進法・育介法に基づくハラスメント防止措置の適用を受けます。派遣労働者については、派遣元と派遣先の双方に措置義務が課される点(均等法第11条第3項等)に注意が必要です。

Q4. 顧客・取引先からのハラスメントにも会社は対応する義務がありますか?

A. セクシュアルハラスメントについては、均等法・厚労省指針により顧客・取引先等社外の行為者からの行為も防止措置の対象に含まれます。また、2026年10月施行予定のカスタマーハラスメント対策義務化により、顧客等第三者による著しい迷惑行為への対策が明文上の義務となる見込みです。現行でも、事業者は労働者の就業環境を維持する職場環境配慮義務を負っており、社外起因のハラスメントについても相談対応・実態調査・再発防止策の実施が求められます。

Q5. ハラスメント防止措置を怠った場合、会社はどのような責任を負いますか?

A. 法令上の責任としては、均等法・労働施策総合推進法・育介法に基づく都道府県労働局長による助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性があります。民事上の責任としては、ハラスメント被害者が使用者(会社)に対して不法行為(民法第709条・第715条)または債務不履行(民法第415条)を根拠に損害賠償を請求するケースがあります。措置義務違反は、裁判において「使用者としての注意義務懈怠」の一事情として考慮される可能性があります(個別事案により判断は異なります)。

Q6. SOGIハラスメントは現行法でどのように位置づけられていますか?

A. 性的指向・性自認に関するハラスメント(SOGIハラスメント)は、2020年のパワーハラスメント防止指針において、パワハラの例示の一つとして「性的指向・性自認に関する侮辱的な言動」が列挙されています。ただし、均等法等の明文規定にSOGIハラスメントが独立した類型として明記されているわけではなく、LGBT理解増進法(2023年成立)との整合性も含め、立法的対応を求める動きがあります。2026年時点では立法的対応は未確定の状態です。

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