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パンセクシュアルとは|全性愛の定義・バイセクシュアルとの違いと2026年のSOGI法的保護

「好きになる相手の性別は、自分にとって関係がない」という感覚を持つ方がいます。パンセクシュアル(全性愛、英語: pansexual)とは、相手の性別や性自認(ジェンダーアイデンティティ)にかかわらず恋愛感情や性的な惹きつけを経験しうるセクシュアリティの一形態です。男性・女性のほか、ノンバイナリー(非二元的な性自認を持つ方)やジェンダーフルイド(流動する性自認を持つ方)、インターセックス(身体的な性の多様性を持つ方)など、あらゆる性自認の方が惹かれる対象となりうる点が特徴とされ、「性別盲目(ジェンダー・ブラインド)」と表現されることもあります。

近年は若年層を中心に認知が広まり、職場や学校でカミングアウトする当事者も増えています。しかし、バイセクシュアルとの概念上の違い、2023年に成立した性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(通称: LGBT理解増進法)が及ぼす法的影響、SOGIハラスメント(SOGI=性的指向・性自認に関するハラスメント)への対処法は、まだ十分には知られていないのが実情です。

この記事では、パンセクシュアルの定義と概念整理から始め、バイセクシュアル・オムニセクシュアルとの違い、法令・制度の現状、そして2026年時点で残されている課題までを、法令・統計・公式資料にもとづいて解説します。当事者の方はもちろん、職場の人事担当者・学校関係者・政策立案に携わる方にとっても参考となる内容を目指します。

パンセクシュアルとは|全性愛の定義・バイセクシュアルとの違いと2026年のSOGI法的保護 - 解説

目次

パンセクシュアルの定義と基本概念

「全性愛」という言葉の意味と語源

パンセクシュアル(全性愛)の「パン(pan)」はギリシャ語で「すべて」を意味します。すべての性自認を持つ方に対して恋愛感情や性的指向を経験しうるセクシュアリティを指し、「性別に関係なく、人として惹かれる」という表現が広く使われています。

重要なのは、パンセクシュアルは「誰に対してでも恋愛感情を持つ」という意味ではない点です。惹かれる相手を決定する要因が性別ではないということであり、個人の性格・価値観・人柄など、性別以外の要素によって惹かれる対象が決まるという感覚を持つ方が多いとされています。セクシュアリティは個人の内面的な経験であり、自己定義に委ねられるものです。

英語圏では1990年代から用語として普及し、日本では2010年代後半にSNSを中心に認知が広まりました。内閣府男女共同参画局も多様な性的指向・性自認(SOGI=Sexual Orientation and Gender Identity)の一形態として位置づけており、公的な文書でも使用されるようになっています。パンセクシュアルという言葉を選ぶ当事者は、「バイセクシュアル」よりも性別の枠組みを超えた自分の感覚をよりよく表現できると感じるケースが多いとされています。

性的指向とロマンティック指向の区別

セクシュアリティを理解するうえで、性的指向(セクシュアル・オリエンテーション)とロマンティック指向(ロマンティック・オリエンテーション)を区別することが重要です。性的指向は性的な惹きつけに関する概念であり、ロマンティック指向は恋愛感情(好きになる相手)に関する概念です。多くの場合、両者は一致しますが、必ずしも同一ではありません。

たとえば、パンロマンティック(性別に関わらず恋愛感情を抱く)でありながら性的指向は別の形を持つ方や、その逆のパターンも存在します。パンセクシュアルという言葉は性的指向・ロマンティック指向の両方を包括する形で使われることが多いですが、当事者が自分のセクシュアリティをどのように定義するかは個人によって異なります。こうした概念の多様性は、SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)という包括的な枠組みで捉えられており、LGBT理解増進法においても「性的指向及びジェンダーアイデンティティ」として法令上の位置づけが与えられています。

ロマンティック指向と性的指向の区別は、アセクシュアル(性的な惹きつけを経験しない)やデミセクシュアル(強い感情的絆を持つ相手に対してのみ性的惹きつけを経験する)などの概念とも密接に関わります。こうした複層的な理解がLGBTQ+コミュニティで広まっており、より細やかな自己定義を可能にしています。

バイセクシュアル・オムニセクシュアルとの違い

バイセクシュアルとの概念的差異

バイセクシュアル(両性愛)とパンセクシュアルは、どちらも複数の性に対して惹かれうるという点で共通しており、しばしば混同されます。しかし、主な概念的差異があります。バイセクシュアルは「bi(2つ)」を語源とし、歴史的には「男性と女性に惹かれる」という意味で使われてきましたが、現代では「自分と同じ性・異なる性」など「2つ以上の性」に対して惹かれるという広い解釈が主流となっています。著名なバイセクシュアル活動家ロビン・オクスは「自分と同じ性別の人にも異なる性別の人にも惹かれる可能性を持つ」という定義を提唱しており、この定義はノンバイナリーの方も対象に含みます。

パンセクシュアルとの主な違いは、性別への意識の有無にあるとされています。バイセクシュアルの方は惹かれる際に相手の性別を意識する場合があるのに対し、パンセクシュアルの方は性別を惹かれる要因として意識しない(性別盲目的)と表現する方が多いとされています。ただし、これは個人の自己認識によって異なるため、明確な境界線を引くことは難しく、「どちらの言葉が自分に合うか」は当事者が自分で選び取るものとされています。バイセクシュアル・パンセクシュアルのどちらに自己定義するかで、その方の感じ方や経験が「正しい」かどうかが変わるわけではありません。

オムニセクシュアルとの違い

オムニセクシュアル(英語: omnisexual)もパンセクシュアルと混同されることがあります。語源はラテン語の「omni(すべて)」で、すべての性別・性自認に対して惹かれうるという点でパンセクシュアルと類似していますが、相手の性別を認識した上で惹かれる(性別の差異を意識しながらも、どんな性別であっても惹かれる可能性がある)という感覚として区別されることがあります。パンセクシュアルが「性別盲目的」とされるのに対し、オムニセクシュアルは「性別を見えていながらも、それにかかわらず惹かれる」というニュアンスを持つとされています。

ただし、パンセクシュアルとオムニセクシュアルの違いは非常に微細であり、両方の言葉を同義として使う方も多くいます。コミュニティによって定義の解釈が異なる場合もあり、どちらの言葉を使うかは当事者の自己定義に依存します。重要なのは、どちらも性別に限定されない惹かれ方を持つセクシュアリティとして、LGBTQ+の多様性の一部を構成しているという点です。

3つの概念の比較

比較項目 パンセクシュアル バイセクシュアル オムニセクシュアル
語源 ギリシャ語「pan(すべて)」 ラテン語「bi(2つ)」 ラテン語「omni(すべて)」
性別への意識 性別を惹かれる要因として意識しない(性別盲目的) 2つ以上の性に惹かれる(性別を意識する場合あり) 性別の違いを認識しつつ、あらゆる性別に惹かれうる
対象の範囲 あらゆる性自認(性別の枠組みを超える) 自分と同じ性・異なる性(現代的定義はノンバイナリー含む) すべての性別・性自認(性別を認識したうえで惹かれる)
主な普及時期 1990年代後半~(英語圏)・2010年代後半(日本) 1950年代以降(キンゼイ尺度の時代から)・最も認知度が高い 2000年代以降(比較的新しい語)・2020年代に日本で普及
自己定義の傾向 「性別は関係ない」という感覚を重視する方が多い 複数の性への惹かれを明示したい方が選ぶ傾向がある 性別の多様性を認識しつつ全てに開かれていることを表したい方が選ぶ傾向がある

上記の比較はあくまでも一般的・概念的な整理であり、当事者が自分自身のセクシュアリティをどのように定義するかは個人に委ねられます。どのラベルも、その方の実際の経験を完全に表現するものでも、互いに排他的なものでもありません。

LGBTQ+のスペクトラムとパンセクシュアルの位置づけ

セクシュアリティは多様なスペクトラム

セクシュアリティ(性的指向)は二者択一ではなく、多様なスペクトラム(連続体)として理解されています。アメリカの性科学者アルフレッド・キンゼイが1940年代に提唱した「キンゼイ尺度」(0=完全な異性愛~6=完全な同性愛の7段階)は、性的指向が二項対立でないことを早期に示した研究として知られています。現代のセクシュアリティ研究では、さらに多次元的な理解が広まっており、同性への惹かれ度と異性への惹かれ度を独立した軸で測定するストームスの二次元モデルや、クラインの性的指向グリッド(7つの変数で性的指向を評価)なども参照されています。

パンセクシュアルは、こうした多様なスペクトラムの中で「性別の軸を超えた惹かれ方」を表す概念として位置づけられます。LGBTQ+という包括的な表現の中では、B(バイセクシュアル)に相当するバイセクシュアルと隣接する概念として捉えられることが多く、「LGBTQIA+(Intersex・Asexualを含む)」や「LGBTQ+」など、より多様な性的指向を包括する表記が国際的にも広まっています。日本でも2023年のLGBT理解増進法の審議過程で、多様なセクシュアリティへの認識が高まりました。

パンロマンティックとの関係

パンロマンティックとは、性別に関わらず恋愛感情を抱きうるロマンティック指向を指す言葉です。パンセクシュアルが性的指向(性的な惹きつけ)に着目するのに対し、パンロマンティックは恋愛感情の方向性(ロマンティック指向)に着目する概念です。たとえば、アセクシュアル(無性愛:性的な惹きつけを経験しない)でありながらパンロマンティックという方は、恋愛感情は性別に関係なく経験するが、性的な惹きつけは経験しないということを意味します。

こうしたロマンティック指向と性的指向の区別は、アセクシュアル・スペクトラムのコミュニティで特に重視されており、LGBTQ+全体の多様性理解においても重要な視点を提供しています。パンセクシュアルの方の中にも、ロマンティック指向と性的指向を分けて理解している方は多く、自己理解・他者への説明に際してこの区別が役立つことがあります。セクシュアリティを二項対立や単純なラベルで表現しきれないという感覚を持つ方にとって、これらの概念は自分を表現するための手がかりとなります。

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現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

パンセクシュアルを含む多様な性的指向・性自認に関連する、2007年以降の主な法的動向は以下のとおりです。

  • 2015年: 渋谷区・世田谷区でのパートナーシップ宣誓制度導入 — 日本初の自治体によるパートナーシップ宣誓制度が開始されました。法的拘束力はないものの、同性・性別多様なカップルへの公的な承認を行う画期的な取り組みであり、2026年時点では多数の自治体が同様の制度を導入しています。
  • 2020年(大企業)・2022年(中小企業): 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(パワハラ防止法)改正施行 — 全事業者に職場のハラスメント防止措置が義務化されました。SOGIハラスメントはパワハラ類型の一形態として厚生労働省の指針に明示されています(第30条の2、2026年10月1日以降は第31条)。
  • 2023年: 性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(LGBT理解増進法)成立 — 日本で初めてLGBTQ+の多様性を正面から扱った法律。パンセクシュアルは「性的指向」の多様性の一形態として包含されます。差別禁止条項ではなく「理解増進」にとどまる内容として賛否両論を呼んでいます(後述)。
  • 2023年: 性犯罪刑法改正(不同意性交等罪の新設) — 「強制性交等罪」が「不同意性交等罪」に改称され、地位・関係性を利用した行為も要件に追加されました。性別・性的指向に関係なく適用される中立的な規定です。
  • 2023年: 最高裁判所による性別変更手術要件の違憲判断性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(平成15年法律第111号)第4条第1項の「生殖能力喪失要件」について違憲とする最高裁大法廷決定(令和5年10月25日)が下されました。トランスジェンダーの権利拡大に関連し、パンセクシュアルを含むLGBTQ+全体の権利議論に影響を与えています。

議論の現在地

LGBT理解増進法の成立を巡っては、支持と懸念の両方の声があります。

前進と評価する意見: 2023年の法成立は「日本で初めてLGBTQ+の多様性が国会で議論され、法律として制定された歴史的な一歩」と評価されています。特に「性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならない」という文言が条文に盛り込まれたことは、一定の意義があるとされています。学校教育や職場での理解増進施策が法的根拠を持つことになり、啓発活動のベースラインが確立されたという評価があります。

不十分・後退と評価する意見: 一方で、当初の法案から「差別は許されない」という文言が「不当な差別はあってはならない」に修正されたこと、性的指向・性自認に基づく差別を明確に禁止する規定がないこと、「すべての国民が安心して生活できるよう留意する」という条文が既存の権利との調整に利用される可能性を懸念する声もあります。実効性のある差別禁止法の制定を求める意見は根強く残っています。

パンセクシュアル当事者からは、「バイセクシュアルとの違いを説明しても理解されにくい」「そもそも言葉が知られていない」という声が多く聞かれます。バイセクシュアルと比較してもさらに認知度が低い現状があり、当事者が職場や学校で適切なサポートを受けにくい状況が続いています。

残された課題

2026年時点で、パンセクシュアルを含む多様な性的指向に関して以下の課題が残されています。

  • 差別禁止規定の不在: LGBT理解増進法は「理解増進」を目的とするものであり、性的指向・性自認に基づく雇用・サービス等での差別を明確に禁止する包括的な法律は2026年時点で存在しません。国連のCEDAW委員会(女性差別撤廃委員会)も日本に対して差別禁止法の制定を勧告しています。
  • パートナーシップの法的効果の限界: 自治体のパートナーシップ宣誓制度は法的拘束力を持たず、相続・扶養・医療同意・入院時の意思決定などに法的保護が及ばないケースがあります。パンセクシュアルの方が同性または性別多様なパートナーと関係を持つ場合、こうした制度的空白が生活上のリスクとなります。
  • 学校教育における多様な性的指向の取り扱い: 性教育の現場でパンセクシュアルを含む多様なセクシュアリティが取り上げられる機会は限られており、当事者の若者が自分の性的指向を表す言葉を知る機会が少ない状況があります。
  • 公的データの不足: パンセクシュアル当事者の生活実態に関する公的統計は乏しく、EBPMに活用できるデータが不足しています。民間調査(認定NPO法人虹色ダイバーシティ等)がその空白を補っているものの、政策立案に反映されるには至っていません。
  • 国際的差異: カナダ・オーストラリア・多くのEU加盟国では性的指向に基づく差別禁止が法制化されており、日本との格差が指摘されています。G7諸国の中で包括的差別禁止法を持たないのは日本のみとされています(2026年時点)。

SOGIハラスメントとパンセクシュアル当事者

SOGIハラスメントの定義と類型

SOGIハラスメント(SOGIハラ)とは、SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity: 性的指向・性自認)に関連するハラスメントを指します。厚生労働省は、労働施策総合推進法第30条の2(2026年10月1日以降は第31条)に基づくパワーハラスメント防止指針において、職場で行われる性的指向・性自認に関するハラスメントを防止措置の対象として明示しています。

SOGIハラの主な類型は次のとおりです。

  • アウティング: 本人の同意なく性的指向・性自認を第三者に暴露する行為。パンセクシュアルであることを職場・学校で無断で広められるケースが含まれます。アウティングは精神的苦痛を与えるだけでなく、プライバシー権の侵害として不法行為責任(民法第709条)を問われる可能性があります。
  • 否定的な言動: 「パンセクシュアルなんておかしい」「そんな性的指向は普通ではない」など、性的指向を否定・軽視・嘲笑する発言。
  • プライバシー侵害的な詮索: 「恋人はいるの?異性?同性?」「結婚はしないの?」など、性的指向を前提とした過度な詮索や圧力。
  • 業務上の不利益取り扱い: 性的指向を理由に昇進・配置転換・解雇等の不利益な人事上の扱いをすること。雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)が定める不利益取り扱い禁止規定の趣旨とも関連します。

職場・学校での実態と対処法

厚生労働省「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、SOGIハラスメントに関する認知度が他のハラスメント類型と比べて低いことが示されています。また、LGBTQ+当事者を対象とした認定NPO法人虹色ダイバーシティの調査では、バイセクシュアル・パンセクシュアルなど「複数の性への惹かれ」を持つ方が、同性愛者よりも職場でのカミングアウトに慎重になる傾向が報告されています。その背景には、「どうせ理解されない」「バイセクシュアルとも混同される」という経験的な懸念があると指摘されています。

学校の現場でも、多様な性的指向・性自認を持つ生徒が安心して自己表現できる環境の整備は発展途上です。文部科学省は2015年から性的マイノリティの生徒への配慮を求める通知を学校に発出していますが、パンセクシュアルなど認知度の低い概念については、教職員の理解・対応が追いついていないケースも見受けられます。SOGIハラスメントの被害を受けた場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や、後述の相談窓口への相談をご検討ください。

職場・学校・地域でできること

職場でのアライシップと制度整備

アライ(Ally)とは、LGBTQ+の権利や尊厳を支持し、行動する人を指します。アライシップ(アライとしての実践)は、特定の立場や権限がなくても始められるものです。職場でパンセクシュアルを含む多様なセクシュアリティへの理解を深めるために、以下のような取り組みが考えられます。

  • ハラスメント防止研修にSOGIの多様性(バイセクシュアル・パンセクシュアル・オムニセクシュアル等の概念説明を含む)を組み込む
  • 就業規則・ハラスメント防止規程に「性的指向及び性自認」を明記し、差別・不利益取り扱いを禁止する
  • 相談窓口の案内に「性的指向・性自認に関する悩みも受け付けている」旨を明示する
  • 福利厚生においてパートナーシップ関係を法律婚と同様に取り扱う(慶弔休暇・家族手当の対象拡大等)
  • LGBT理解増進法の趣旨に沿った社内啓発資料を作成し、管理職を対象とした研修を実施する

これらは必ずしも法的義務ではないものの、多様な人材が安心して働ける環境の整備は、企業の持続的な発展にもつながると考えられています。具体的な施策の設計については、社会保険労務士や専門支援機関への相談もご検討ください。

学校・地域コミュニティでの理解促進

学校では、道徳・人権教育や保健の授業で多様なセクシュアリティを扱う機会を設けることが、当事者の生徒にとって安心感につながります。文部科学省の指針でも、教職員が個々の状況に応じた支援を行うことが求められており、養護教諭やスクールカウンセラーとの連携が重要とされています。パンセクシュアルを含むセクシュアリティの多様性について、正確で偏りのない情報提供が求められます。

地域コミュニティでは、男女共同参画センターや自治体のLGBT相談窓口を活用することが考えられます。パートナーシップ宣誓制度を導入している自治体では、パンセクシュアルを含む多様なカップルが利用できる場合があります。制度の対象要件は各自治体の規定によりますので、窓口への問い合わせをご検討ください。また、Pride Parade(プライドパレード)やLGBTQ+関連イベントは、当事者が社会的なつながりを持つ機会となっています。

公的相談窓口・支援機関

利用できる主な相談先

パンセクシュアルに関連する差別・ハラスメント・生活上の困難について、以下の公的相談窓口が利用できます。

  • よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター 運営、厚生労働省補助事業)
    電話: 0120-279-338(24時間対応)。性的マイノリティの方向けの専門オペレーターにつながる番号として、同ホットラインの性的マイノリティ専用ダイヤルが設けられています(詳細は公式サイトでご確認ください)。性的指向・性自認に関わる悩みや差別被害の相談に対応しています。
  • 法テラス(日本司法支援センター)
    電話: 0570-078374(平日9時~21時、土曜9時~17時)。SOGIハラスメントを含む法的問題の相談先として、弁護士費用の立替制度(民事法律扶助)も利用できます。収入要件がありますので、詳細は法テラスの公式サイトをご確認ください。
  • 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
    職場でのSOGIハラスメントに関する相談を受け付けています。管轄の都道府県労働局(厚生労働省が全国に設置)へお問い合わせください。

民間・オンライン相談窓口

  • 各都道府県・市区町村の男女共同参画センター・LGBT相談窓口
    地域によって設置状況・相談体制が異なります。自治体の公式ウェブサイトでご確認ください。
  • にじいろカフェ・LGBT法連合会等の民間支援団体
    全国各地にLGBTQ+当事者・支援者向けのコミュニティやオンライン相談を提供する団体が活動しています。インターネット検索で最新情報をご確認ください。

具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

まとめ

パンセクシュアル(全性愛)は、相手の性別や性自認を惹かれる要因として意識しないセクシュアリティの一形態であり、バイセクシュアル・オムニセクシュアルと概念的に隣接しながらも独自の定義を持ちます。どのラベルで自己を定義するかは当事者の自由であり、セクシュアリティはスペクトラムとして理解することが、多様な当事者の実態に沿った見方です。

法的な観点では、2023年のLGBT理解増進法の成立によって性的指向の多様性が法令上の位置づけを得ましたが、差別禁止規定の整備やパートナーシップの法的効果など、残された課題は少なくありません。職場ではSOGIハラスメントの防止が事業者に求められており、企業・自治体・学校が多様なセクシュアリティへの理解を深める取り組みが引き続き求められています。パンセクシュアル当事者の方が安心して生活・就労できる社会環境の整備に向けて、制度・認知の両面での継続的な議論と実践が重要です。

よくある質問(FAQ)

Q. パンセクシュアルとバイセクシュアルは同じですか?
同じではありません。バイセクシュアルは「2つ以上の性に惹かれうる」性的指向であり、現代的には男性・女性・ノンバイナリーなど複数の性を対象とします。パンセクシュアルは「性別を惹かれる要因として意識しない(性別盲目的)」という点が特徴とされています。ただし、両概念の境界は明確ではなく、当事者が自分に合う言葉を選ぶものとされています。
Q. パンセクシュアルは日本の法律で保護されていますか?
2023年に成立したLGBT理解増進法は「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性」に関する国民の理解増進を定めており、パンセクシュアルはこの「性的指向」の多様性に含まれます。また、職場ではパワーハラスメント防止法に基づく厚生労働省の指針でSOGIハラスメントの防止が事業者に求められています。ただし、性的指向・性自認に基づく差別を明確に禁止する包括的な法律は2026年時点では存在しません。
Q. SOGIハラスメントとはどういうものですか?
SOGIハラスメント(SOGIハラ)とは、SOGI(性的指向・性自認)に関連するハラスメントです。パンセクシュアルであることを本人の同意なく暴露するアウティング、性的指向を否定・軽視する発言、性的指向を理由にした業務上の不利益取り扱いなどが含まれます。厚生労働省のパワーハラスメント防止指針でSOGIハラの防止が事業者に求められています。被害を受けた場合は、都道府県労働局やよりそいホットライン(0120-279-338)へ相談できます。
Q. パンセクシュアルであることを職場でカミングアウトする必要はありますか?
カミングアウト(自己開示)は当事者の自由な選択であり、義務はありません。職場にカミングアウトするかどうかは、その環境の安全性・信頼性を踏まえて各自が判断するものとされています。開示した場合に職場が適切に対応できる体制(ハラスメント防止規程・相談窓口等)が整っているかが重要な判断材料となります。本人の同意のないアウティングはプライバシー権の侵害として問題となる可能性があります。
Q. パンセクシュアル当事者が利用できる公的な相談窓口はありますか?
利用できる相談窓口があります。よりそいホットライン(0120-279-338)は24時間対応で、性的マイノリティの方への専門対応も行っています。法的問題については法テラス(0570-078374)が利用できます。職場でのSOGIハラスメントについては、各都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)に相談できます。また、自治体によってはLGBT相談窓口を設置しているところもありますので、お住まいの自治体の公式ウェブサイトをご確認ください。

パンセクシュアルとは|全性愛の定義・バイセクシュアルとの違いと2026年のSOGI法的保護 - まとめ

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