父親が育児休業を取得するとき、子どもや家族にとってどのような効果があるのでしょうか。日本では2022年の産後パパ育休(出生時育児休業)創設以降、男性の育休取得率は急速に上昇し、2023年度には初めて30%を超えました。しかし、主要先進国の多くが男性育休取得率50%以上を達成している中で、日本の現状は依然として低水準にとどまっています。
男女共同参画社会基本法(1999年施行)が掲げる「男女が対等なパートナーとして責任を分かち合う社会」を実現するためには、男性の家庭参画——とりわけ育児への関与——を統計データで正確に把握し、課題を直視することが欠かせません。
この記事では、厚生労働省「雇用均等基本調査」や内閣府「男女共同参画白書」のデータをもとに、日本の男性育休取得率の推移と現状を解説します。さらに、スウェーデン・ドイツ・韓国など主要国との国際比較を通じて、取得率向上を阻む構造的要因と残された課題を整理します。企業の人事担当者、行政の男女共同参画推進員、育休取得を検討している当事者、政策・現場の両面から理解を深めたい方を対象とした解説です。
男性育休取得率の基礎知識|法的定義と調査の仕組み
育児休業制度の法的根拠と取得資格
育児休業は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育介法、最終改正:2024年5月成立)に基づく制度です。同法第5条第1項によれば、労働者は事業主に申し出ることにより、子が1歳になるまでの間(保育所等に入所できない場合は最長2歳)、育児休業を取得できます。
取得資格は、日雇い労働者や所定労働日数が極端に少ない労働者を除く、雇用保険被保険者です。2022年の育介法改正(2022年4月施行)により、有期雇用労働者の取得要件から「引き続き雇用された期間が1年以上」という条件が撤廃され、労使協定がない限り誰でも取得できるようになりました(第5条第1項)。
2022年10月には「出生時育児休業(産後パパ育休)」が新設されました(育介法第9条の2)。子の出生後8週間以内に最大4週間を2回に分けて取得できる制度で、労使協定を締結することで休業期間中の一部就業も可能です(同法第9条の5)。
取得率の定義と公的調査の仕組み
「男性育休取得率」は、厚生労働省「雇用均等基本調査」(毎年実施)において次の式で算出されます。
取得率 =(前年10月1日から今年9月30日に育休を終了した男性労働者数)÷(配偶者が出産した男性労働者数)× 100
この調査は常時雇用する労働者が5人以上の民間事業所を対象とした標本調査であり、産業別・企業規模別の内訳も公表されています。国家公務員については人事院が別途調査を行っており、2023年度の男性国家公務員育休取得率は85.4%と民間を大きく上回る水準です。
「取得率」と「取得日数」の乖離
取得率が向上しても、取得日数が極端に短ければ実態としての育児参画は限定的です。厚生労働省の2023年度調査では、育休を取得した男性労働者の約55%が取得期間2週間未満にとどまっています。
女性の平均育休取得日数が約10カ月(約300日)であるのに対し、男性は平均44日と大きな開きがあります。「取得率」の数値が改善しても「取得日数」や「実際の家事・育児関与度」が追いついていないという構造的課題は、2026年時点においても継続する重要な論点の一つです。
日本の男性育休取得率の推移|2007年から2026年まで
2007年時点の現状
2007年、男性の育休取得率はわずか1.56%(厚生労働省「雇用均等基本調査」)でした。男女共同参画社会基本法施行から約8年が経過した時点でも、父親の育休取得は社会的にほとんど定着していない状況でした。
当時の育介法(1991年制定)は男女どちらも育休を取得できる権利を定めていましたが、職場における固定的な性別役割分担意識(「男は仕事、女は育児」)や、代替要員の不整備・賃金補填の不安が、男性の実質的な取得を阻んでいました。2007年版男女共同参画白書でもこの状況を「危機的な水準」として問題視しています。
2015年から2022年の緩やかな上昇
2010年代に入ると政府は「イクメンプロジェクト」(2010年~)を推進し、男性育休取得促進のための啓発活動を展開しました。育介法改正(2010年)では父子の同時取得を可能にする「パパ・ママ育休プラス」(育介法第9条の2(旧)相当の特例)が導入されました。
取得率は2013年に2.03%、2016年に3.16%、2019年に7.48%と緩やかに上昇しました。しかし、政府が設定した「2020年に13%達成」という数値目標は、コロナ禍の影響も重なり2020年度に12.65%と未達に終わりました。2021年度には13.97%となり、ようやく目標水準に近づきましたが、先進国の平均を大きく下回る状況は変わりませんでした。
2022年産後パパ育休創設後の急増
転機となったのは2022年の育介法大改正です。2022年4月に①妊娠・出産申出への個別周知と意向確認の義務化(全事業主)および②有期雇用労働者の取得要件緩和が施行され、同年10月に③産後パパ育休(出生時育児休業)の新設と④育休の分割取得(2回)が施行されました。
この改正を受け、2022年度の取得率は17.13%と急増し、2023年度には30.1%を記録しました。政府は第6次男女共同参画基本計画(2025年~)において「2025年度に男性育休取得率50%・2030年度に85%」の目標を掲げています。2024年度の調査結果は2025年末から2026年初頭に公表される見通しです。
国際比較|主要国の男性育休取得率データ
北欧諸国の高い取得率とその背景
北欧諸国は、男性の育休取得において世界的な先進事例とされています。スウェーデンでは1995年に「パパクォータ」(父親専用育休枠)が導入されました。両親合計480日の育児休業のうち90日が父親専用に割り当てられており、使わなければ権利が失効します(use-it-or-lose-it方式)。この強制割当により、スウェーデンの父親育休取得率は約90%に達しています。
ノルウェーも同様のパパクォータ(15週)を設け、父親の育休取得率は約70%(2022年)です。フィンランドは2022年の制度改革で父親に160日の専用休業日を付与しており、取得率の上昇が続いています。
北欧モデルの核心は「制度設計による強制」にあります。個人の選択に任せると職場文化の壁が立ちはだかる——その問題を政策で解決するアプローチは、OECD「Dare to Share」(2016年)レポートでも高く評価されています。
ドイツ・フランス・イギリス
ドイツは2007年に「両親手当(Elterngeld)」制度を改革し、育休取得期間に応じた給付金(休業前収入の65~67%)を両親に支給するようになりました。父親の育休取得率は約40%(2022年)ですが、平均取得期間は2カ月前後と比較的短い傾向があります。「ボーナス月」を選ぶことで給付期間を延長できる仕組みが父親取得を促しています。
フランスは2021年から「出産後強制休業」を父親・第2親(配偶者等)に対して28日(うち7日は義務取得)に拡大しました。義務部分は強制取得・全額給付のため、実質的な取得率は義務部分で約80%台に達しています。
イギリスは2週間の法定父親育休(Statutory Paternity Leave)を設けていますが、給付額が週156.66ポンドと低水準なため長期取得が難しく、取得率は約44%(2021年)にとどまっています。
韓国・アジア諸国との比較
韓国は日本と同様に男性稼ぎ主規範が根強い社会ですが、育休給付率を所得の80%(上限あり)に引き上げ、政府が積極的な取得促進キャンペーンを展開した結果、男性育休取得率は2022年時点で約28%まで上昇しています(韓国雇用労働部統計)。さらに義務化議論が進んでいます。
中国は「陪産休暇(配偶者出産休暇)」として各省独自に5~15日間の短期休暇を設けているにとどまり、男性の実質的な育児参画は制度・統計ともに限定的です。
| 国 | 主な制度の特徴 | 父親育休取得率(目安) | 平均取得日数(目安) |
|---|---|---|---|
| 日本 | 産後パパ育休(28日・2回分割可)、2025年から300人超企業に公表義務 | 約30%(2023年度) | 約44日 |
| スウェーデン | パパクォータ90日(use-it-or-lose-it方式) | 約90% | 90日以上 |
| ノルウェー | パパクォータ15週(強制型) | 約70% | 約75日 |
| ドイツ | 両親手当(収入の65~67%)、最大14カ月(夫婦合計) | 約40% | 約60日 |
| フランス | 28日(うち7日義務)・義務分は強制取得・全額給付 | 約80%(義務部分) | 約28日 |
| イギリス | 2週間法定育休・給付額は低水準 | 約44% | 約14日 |
| 韓国 | 所得の80%給付(上限あり)、積極的取得促進中 | 約28% | 約55日 |
取得率向上を阻む構造的要因
職場文化とアンコンシャスバイアス
アンコンシャスバイアス(unconscious bias:無意識の偏見)とは、本人が意識しないまま持つ先入観や思い込みを指します。職場における男性育休をめぐっては「育休を取る男性は出世意欲がない」「会社への貢献度が低い」といった根拠のない評価が流通しやすい環境が指摘されています。
内閣府「男女共同参画白書(令和6年版)」の意識調査では、「職場で育休を取りにくい雰囲気がある」と感じる男性労働者が一定数存在しており、上司・同僚からの無言のプレッシャーや「業務への影響を心配する」という回答が多く挙げられています。こうした無形の圧力が、制度的には取得可能な男性を実際の申請から遠ざける構造的障壁となっています。
経済的要因|給付率と収入減の不安
育休中は「育児休業給付金」(雇用保険)が支給されます。給付率は育休開始後180日間は休業前賃金の67%、以降は50%です。社会保険料(健康保険・厚生年金)は育休期間中は免除されるため、手取りベースでは概ね休業前の約80%程度になると試算されますが、個人の賃金水準や保険料率によって差があります。
問題はむしろ「賞与・昇進評価への影響」への不安です。育休取得が人事評価に不利に働くと感じる労働者がいまだに少なくなく、特に成果主義・年功序列の混在する日本の職場では、育休期間が「ブランク」と見なされるリスクへの懸念が根強く存在しています。2025年の育介法改正(2024年5月成立)では育休中の社会保険料免除要件の一部が見直されましたが、評価・賞与への影響の透明化は企業の自主努力にゆだねられたままです。
中小企業における代替人材確保の壁
育休取得率の公表義務(2023年4月施行)は従業員1000人超の企業が対象であり、2025年4月から300人超企業に拡大されました。しかし日本の雇用の約70%を占める中小企業(300人以下)には依然として適用されていません。
中小企業では代替人材の確保・育成コスト、業務の分担調整の困難さが育休取得を阻む実態的障壁となっています。厚生労働省は「両立支援等助成金(育児休業等支援コース)」を設けて中小企業の取得促進を支援していますが、制度の認知度や活用率は依然として低水準にとどまっています。
※本記事はアフィリエイトリンクを含みます(PR)
【PR】育休・子育てと経済政策の交差点を実証的に解説した一冊:
山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学:世界標準の研究が示す、本当に子育てにいいことはなにか』(光文社新書、2019年)
現代的論点|2026年時点の到達点
2007年以降の主な法改正・新法
| 施行年 | 改正内容の概要 | 根拠条文(育介法) |
|---|---|---|
| 2010年 | パパ・ママ育休プラス導入(子1歳2カ月まで延長可) | 第9条の2(当時) |
| 2017年 | 育休期間の最長2年への延長(保育所等未入所の場合) | 第5条第3項・第4項 |
| 2022年4月 | 個別周知・意向確認の義務化(全事業主)、有期雇用要件撤廃 | 第21条、第5条第1項 |
| 2022年10月 | 出生時育児休業(産後パパ育休)新設、育休の2回分割取得 | 第9条の2~第9条の5 |
| 2023年4月 | 1000人超企業の育休取得率等の公表義務化 | 第22条の2 |
| 2025年4月 | 300人超企業の育休取得率公表義務化、柔軟な働き方確保措置の義務化 | 第22条の2、第23条(改正後) |
| 2025年10月 | 子の看護等休暇の拡充、3歳以降小学校就学前の柔軟就業措置義務化 | 第16条の2(改正後) |
議論の現在地
2026年時点における男性育休をめぐる議論は、「取得義務化・クォータ制的アプローチの是非」と「取得率の目標水準の妥当性」の2軸で展開しています。
取得義務化を支持する立場は、北欧のパパクォータ制が実証するように「使わなければ消える(use-it-or-lose-it)」型の強制的割当が、職場文化の壁を崩すうえで最も効果的であると主張します。OECDレポート「Dare to Share」(2016年)でも、任意取得方式に依存する限り職場のプレッシャーが取得率を押し下げるという知見が示されています。
これに対し、任意取得堅持・企業の自主努力を重視する立場は、義務化が中小企業への過度な負担になること、家庭の事情に公権力が介入することへの懸念、医療・介護・建設など代替人材確保が困難な職種への影響を指摘します。
政府は第6次男女共同参画基本計画(2025~2030年)において「2025年度に男性育休取得率50%・2030年度に85%」を数値目標として設定しており、義務化は見送られた形ですが、目標未達の場合の政策的対応については引き続き議論が続いています。
残された課題
第一に「取得日数の短さ」の問題があります。取得率が30%を超えた一方、大多数が2週間未満であるという現実は、育児の実質的な男女分担が変わっていない可能性を示しています。スウェーデンやノルウェーでは「日数の短さ」を是正するためにクォータの日数自体を延伸してきた経緯があります。
第二に「中小企業・非正規雇用の空白」があります。300人以下の中小企業には公表義務が及ばず、有期雇用・短時間労働者の取得実態は統計上把握しにくい状況が続いています。
第三に「職場評価の可視化」の問題があります。育休取得が昇進・賞与に与える影響について企業が自社データを公表する仕組みは現時点では任意にとどまっており、アンコンシャスバイアスの測定・是正には限界があります。
第四に「農業・自営業・フリーランスの制度的空白」があります。農業従事者や個人事業主は育介法の適用外であり、育休に相当する公的給付が整備されていない領域が残っています。フリーランス保護法(2024年施行)はハラスメント規定を設けましたが、育休相当の保障には踏み込んでいません。
企業の公表義務化と先進事例
1000人超企業の取得率公表が示すもの
2023年4月から施行された1000人超企業の育休取得率等の公表義務(育介法第22条の2)により、厚生労働省の「両立支援のひろば」ポータルサイトで各企業の数値が公開されています。大手企業では90%以上を達成する事例も登場し始め、企業間の取得率の可視化が競争的な改善を促す効果が現れています。
特に情報通信業・金融業・製造業(一部)において取得率の上昇が顕著です。2026年現在では「育休取得率の高さを採用競争力として積極的に訴求する企業」も増加しており、取得率公表が採用・ブランディングの観点からも経営上の意味を持つようになっています。
取得率向上を実現した企業の施策
厚生労働省「両立支援好事例集」(2024年版)によると、取得率50%以上を達成した企業に共通する施策として以下が挙げられています。
- 上司・同僚向けの「アンコンシャスバイアス研修」の実施
- 育休中の業務引き継ぎ計画書の標準フォーマット化と組織的バックアップ体制
- 管理職が育休を取得したロールモデルの社内発信(社内報・ウェビナー等)
- 法定給付以上の独自賃金補填制度の導入(休業前賃金の80~100%給付)
- 育休取得期間の人事評価への不算入を明文化した社内規程の整備
中小企業への波及状況と支援制度
厚生労働省の中小企業向け実態調査(2023年度)によると、従業員30人以上100人未満の中小企業における男性育休取得率は約22%と、大企業(40%台)と比べて低い水準です。両立支援等助成金(育児休業等支援コース)は代替要員確保費用の一部を助成する制度ですが、申請手続きの煩雑さや制度の認知不足が課題として継続しています。
男性の育休取得が生む社会的効果
子どもの発達と母親のメンタルヘルスへの影響
研究の蓄積によれば、父親が生後早期(特に最初の3カ月)に育児に積極的に関与した家庭では、子どもの認知発達・情緒的安定に正の影響が見られることが報告されています(OECDレポート「Dare to Share」2016年等)。
また、父親が一定期間以上育休を取得した家庭では、母親の産後うつリスクが統計的に低下する可能性があるとする研究知見も蓄積されています(山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学』光文社新書、2019年等)。育児の孤立化が母親のメンタルヘルスに深刻な影響を与えることが知られており、父親の早期関与はその緩和要因の一つとして注目されています。心身の不調を感じる場合は、医療機関・精神保健福祉センター・専門相談窓口へのご相談をご検討ください。
女性のキャリア継続への効果
OECD諸国のデータを分析した研究によると、父親が長期育休を取得した家庭では、母親の職場復帰時期が早まり、キャリアの断絶が緩和される傾向があります。日本特有の「L字カーブ問題」(出産後に女性の賃金・役職水準が長期的に低下し続ける構造)の解消においても、父親の育児参画が鍵を握るとされています。
M字カーブ(女性就業率の出産期における落ち込み)は近年改善しつつありますが、管理職比率・賃金水準の男女格差は依然として大きく、育児分担の変革なしに解消は困難とされています。詳細は「女性就業率・M字カーブの変化|統計データとL字カーブ問題」を参照してください。
ジェンダーギャップ指数への影響
世界経済フォーラム(WEF)が発表するジェンダーギャップ指数(GGI)の「経済参加・機会」分野では、女性の就業率・管理職比率・賃金格差が評価されます。これらの指標を改善するためには、無償ケア労働(育児・家事・介護)の男女分担是正が前提として不可欠です。
日本のGGI順位は2007年の91位から2024年には118位(146カ国中)に低下しており、「経済参加・機会」分野での課題が主因とされています。男性育休取得率の実質的向上——「取得率」だけでなく「取得日数」と「育児への実質関与度」の双方で——は、この分野のスコア改善に直結する施策の一つとして位置づけられています。詳細は「ジェンダーギャップ指数とは|日本の順位・4分野スコアと国際比較」を参照してください。
相談窓口・まとめ
育休取得に関する公的相談窓口
育休制度に関する疑問や職場でのトラブルについては、以下の公的窓口に相談できます。
-
総合労働相談コーナー(全国の労働局・労働基準監督署内)
育休取得を理由とする不利益取扱い・ハラスメント(パタハラ)などに関する無料相談を受け付けています。予約不要・当日相談可能な窓口も多くあります。 -
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
マタハラ・パタハラ、育休取得に際した不利益取扱いについての申告・相談に対応しています(男女雇用機会均等法・育介法に基づく)。 -
法テラス(日本司法支援センター) TEL: 0570-078374
法的問題について弁護士・司法書士等の情報提供・紹介を行っています。経済的に余裕のない方には、審査の上で無料法律相談や弁護士費用立替制度が利用できます。 -
よりそいホットライン TEL: 0120-279-338(24時間)
職場の悩みや生活困難など幅広い相談に対応しています。
まとめ|統計が示す到達点と次の課題
日本の男性育休取得率は、2007年の1.56%から2023年度の30.1%へと約20倍に拡大しました。育介法の累次改正、産後パパ育休の創設、1000人超企業への公表義務化が相乗的に機能した結果です。
しかし国際比較では、スウェーデン約90%・ノルウェー約70%といった北欧諸国の水準と大きな差があります。さらに「取得率」の上昇が、取得日数の短さや中小企業・非正規雇用の空白を覆い隠すリスクがあります。
男女共同参画社会基本法が掲げる「対等なパートナーとして責任を分かち合う社会」を統計の上でも実現するためには、取得率の数値改善にとどまらず、育児分担の実態変化——父親が日常的に育児に関わる社会——を見据えた継続的な政策・職場文化の変革が求められます。具体的な事案や法的な問題については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。
※本記事はアフィリエイトリンクを含みます(PR)
【PR】家事・育児を「無償労働」の視点で問い直した先駆的論考:
竹信三恵子『家事労働ハラスメント——生活を支える仕事の見えない化に抗して』(岩波新書、2013年)
よくある質問(FAQ)
- Q1. 日本の男性育休取得率は現在何%ですか?
- 厚生労働省「雇用均等基本調査」(2023年度)によると、30.1%と初めて30%を超えました。政府は2025年度に50%、2030年度に85%の達成を目標としています。ただし取得者の約55%が取得期間2週間未満であるため、「取得率」と「育児参画の実態」の乖離が課題として指摘されています。
- Q2. なぜ日本の男性育休取得率は国際的に低いのですか?
- 職場における「育休を取りにくい雰囲気」(アンコンシャスバイアス)、賞与・昇進評価への影響への不安、代替人材確保が困難な中小企業の環境など、複合的な要因が指摘されています。制度設計の面では、スウェーデン・ノルウェーのような「使わなければ失効する」強制型割当(パパクォータ)が日本には存在しないことも、北欧と取得率が大きく異なる一因とされています。
- Q3. 産後パパ育休(出生時育児休業)と通常の育児休業は何が違いますか?
- 産後パパ育休(育介法第9条の2)は子の出生後8週間以内に最大4週間を2回に分けて取得できる制度です。通常の育児休業(子が1歳まで等)とは別途取得でき、労使協定が整備されれば休業期間中に一部就業することも可能です(同法第9条の5)。両制度を組み合わせると、最長で子が2歳になるまで育休を取得できます。
- Q4. 育休取得率の公表義務はどの企業に課されていますか?
- 2023年4月から常時雇用する労働者が1000人を超える企業、2025年4月から300人を超える企業に対し、育休取得率等の公表が義務付けられています(育介法第22条の2)。公表先は厚生労働省の「両立支援のひろば」ポータルサイトです。300人以下の中小企業には現時点で義務は課されていません。
- Q5. 育休中の収入はどのくらいになりますか?
- 育児休業給付金として、育休開始後180日間は休業前賃金の67%、以降は50%が雇用保険から支給されます。社会保険料(健康保険・厚生年金)は育休期間中免除されるため、手取りベースでは概ね休業前の約80%程度になると試算されています(個人の賃金水準・保険料率により異なります)。育休取得を理由とした不利益取扱いや解雇は育介法第10条・第16条の4等で禁じられています。
- Q6. 父親が育休を取得すると、母親や子どもにどのような効果がありますか?
- 研究知見によれば、父親が育児に早期から積極的に関与した家庭では、子どもの認知発達・情緒的安定への正の影響や、母親の産後うつリスクの低下が報告されています。また、父親が育休を取得した家庭では母親の職場復帰時期が早まる傾向があり、女性のキャリア継続に寄与するとされています。心身に不調を感じる場合は専門医・専門相談窓口へご相談ください。
