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「育てながら働きたいのに、保育所が見つからない」「一度職場を離れると正規雇用には戻れない」「就業率は改善されたはずなのに、なぜ賃金格差は縮まらないのか」——女性の就労をめぐるこうした問いの背景には、長年にわたる就業構造の歪みがあります。その構造をグラフで視覚化したものが「M字カーブ」です。20代後半に向けて上昇した女性就業率が、結婚・出産期の30代前後に急落し、40代以降に再び上昇する形がアルファベットの「M」に似ていることから、こう呼ばれてきました。
かつて日本のM字カーブは国際的に突出して深かったものの、2020年代に入って著しく改善し、グラフの形は台形に近づいています。しかし、代わりに「L字カーブ」と呼ばれる新たな課題が浮上しています。就業率は上昇したものの、就業している女性のうち非正規雇用にとどまる割合が30代以降も高止まりするという、就業の「量的改善・質的停滞」の構造です。
本記事では、労働力調査(総務省)・男女共同参画白書(令和7年版)・OECD雇用見通し等の公的データをもとに、女性就業率の変化を時系列で整理し、M字カーブ改善の実態とL字カーブ問題の内実を解説します。国際比較・政策の到達点・残された課題についても詳しく説明するため、データから男女共同参画の現在地を把握したい人事担当者・研究者・行政担当者・学生の方々の参考になることを目指しています。
M字カーブとは何か|女性就業率のグラフが示す構造的問題
M字カーブの定義と形成メカニズム
M字カーブとは、女性の年齢別就業率をグラフで示したときに、25~29歳をピークとして30代前半に低下し、45歳前後で再び上昇するM字型の曲線を指します。総務省統計局が毎年実施する「労働力調査」の年齢階級別就業率データをもとに描かれ、日本特有の就業構造として長年注目されてきました。
M字の底が形成される主な要因は三つです。第一に、結婚・出産を機とした離職慣行(いわゆる「育児退職」)。第二に、産後の保育所不足や長時間労働文化による「育児との両立困難」。第三に、離職後の再就職が非正規雇用中心となるため、正規雇用のまま育児と仕事を両立しにくい構造です。これらが複合的に作用することで、特に30~34歳の就業率が他の年代と比べて大きく落ち込む形が生まれてきました。
M字カーブが生じる社会的・制度的背景
M字カーブは単なる個人の選択の結果ではなく、社会制度とジェンダー規範(ジェンダー:社会的・文化的に形成された性別。生物学的性別=セックスとは区別される概念)が複合した構造問題です。日本では1985年の男女雇用機会均等法(最終改正:2019年施行)制定以前から、女性は「若年期の補充的労働力」として位置づけられる傾向が強く、結婚・出産による退職が慣行とされてきた歴史があります。
配偶者控除や社会保険の「第3号被保険者制度」(専業主婦・夫の保険料負担なし)といった税・社会保障制度が、「一定の範囲内に収入を抑えて働く」行動を経済合理的にしてきた側面も指摘されています。また、男性が長時間労働で家計を支え、女性が家事・育児を主として担うという性別役割分業に基づく職場文化が根強く、育休・時短勤務を使いにくい環境が存在し続けてきました。
2007年時点のM字カーブの状況
男女共同参画白書のデータによれば、2007年(平成19年)時点の女性就業率は25~29歳で約72%、30~34歳で約61%、35~39歳で約62%程度でした。30代前半での落ち込みがM字の「底」を形成しており、男性の就業率と比べてこの年代の格差が顕著でした。当時の日本はOECD加盟国の中でもM字が深く、女性就業率全体(15~64歳)も先進国の中では相対的に低い水準にありました。
この状況を改善しようと、第2次男女共同参画基本計画(2005年)では「M字カーブの解消」が政策目標として明記され、保育所の整備拡充・育児休業制度の改善・女性の継続就業支援が重点施策として位置づけられました。しかし2007年当時は、改善はまだ緒に就いたばかりの状況でした。
M字カーブの推移(2007年~2026年)
就業率改善を示す主要統計
総務省「労働力調査」の最新データ(2024年)によると、30~34歳の女性就業率は79%台に達し、2007年比で18ポイント以上の改善が見られます。25~29歳は86%超、35~39歳は79%超と、かつてのM字の「底」の部分が大きく底上げされました。グラフの形は2020年代に入ってM字からほぼ台形に変化しており、政策的には「M字の解消」と評価される段階に入っています。
女性全体(15~64歳)の就業率も2007年比で大きく改善し、2024年時点で74%前後と報告されています(出典:総務省「労働力調査 詳細集計」2024年)。保育の受け皿拡充・育児介護休業法の累次改正・女性活躍推進法の整備・コロナ禍以降の働き方改革の加速などが複合的に作用した結果と分析されています。
改善の要因分析
M字カーブ改善の主な要因として、研究者・政策担当者は以下の三点を挙げています。
第一に、保育所の受け皿拡充です。2017年時点で約26万人いた保育所待機児童は、2024年には2,567人まで減少しました(厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ」2024年4月時点)。子どもを預けやすい環境が整ったことで、産後の職場復帰を選ぶ女性が増えました。
第二に、育児・介護休業法(最終改正:2022年施行)の充実です。2022年改正で「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設(同法第9条の2)され、男性の育休取得を後押しする仕組みが強化されました。育休中の給付金充実(雇用保険法に基づく育児休業給付)も、育休取得後の職場復帰を経済的に支えています。
第三に、女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律、最終改正:2022年7月施行)の行動計画義務化です。101人以上の企業に採用・継続就業等に関する数値目標の設定と公表が義務づけられ、企業の「女性が継続就業しやすい職場環境」への取り組みが促されました。
主要年齢階級の女性就業率の変化
| 年齢階級 | 2007年(概算) | 2015年(概算) | 2024年(概算) | 変化(2007→2024) |
|---|---|---|---|---|
| 25~29歳 | 約72% | 約79% | 約86% | +14ポイント |
| 30~34歳(旧M字底) | 約61% | 約71% | 約80% | +19ポイント |
| 35~39歳 | 約63% | 約70% | 約79% | +16ポイント |
| 45~49歳 | 約72% | 約76% | 約82% | +10ポイント |
| 全体(15~64歳) | 約58% | 約65% | 約74% | +16ポイント |
L字カーブとは何か|M字改善後に浮上した就業の質の問題
L字カーブの定義
L字カーブとは、女性の年齢別「正規雇用就業率」だけをグラフ化したときに、20代後半をピークとして30代前半以降に急落し、その後は低位横ばいを続けるL字型の曲線を指します。男女共同参画白書(令和4年版、2022年)が特集テーマとして取り上げ、広く知られるようになりました。
M字カーブは就業率の「量」を示すのに対し、L字カーブは正規雇用就業率という「質」の指標です。女性の就業率全体が改善しても、増加分の多くが非正規雇用への移行によるものであれば、就業の実質的な質は改善していません。これがL字カーブが問題視される本質的な理由です。内閣府男女共同参画白書では「M字カーブの解消が進む一方で、正規雇用比率のL字カーブは依然として残っている」と指摘しています。
非正規雇用比率とジェンダー格差の統計
総務省「労働力調査」(2024年年平均)によると、雇用者全体に占める非正規雇用の割合は男性で約22%であるのに対し、女性では約53%に上ります。特に35~44歳の育児・介護期と重なる年代では、女性の非正規比率がさらに高まる傾向があります。
非正規雇用は正規雇用と比べて時間当たり賃金が低く、賞与・退職金・各種福利厚生でも格差があります。また雇用が不安定で、厚生年金の適用要件(週20時間以上・月額8.8万円以上等、2022年10月改正施行以降は100人超の企業に拡大)を満たさない場合、将来の年金受給額にも影響します。L字カーブが示す正規雇用からの「すり落ち」は、現在の生活水準と将来の経済的安定の双方に影響するため、政策的な優先課題とされています。
L字カーブがもたらす生涯賃金・年金への影響
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」等を参照すると、正規雇用と非正規雇用の賃金格差は大きく、フルタイムの正規社員と短時間非正規社員の時間当たり賃金を比較した場合、非正規は正規の6割前後にとどまるとの分析もあります。
生涯賃金(学校卒業後から定年まで同一形態で就業した場合の試算)では、正規雇用と非正規雇用の差は数千万円規模に達する可能性が指摘されており(労働政策研究・研修機構等の推計による)、老後の年金受給額にも大きな差が生じます。L字カーブは、育児期を非正規で乗り越えた女性が正規に戻れないまま定年を迎えるという「就業の質の固定化」とも接続しています。経済的自立と老後保障の両面で、L字カーブは男女間格差を継続的に生み出す構造的な問題といえます。
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国際比較|OECD加盟国と日本の女性就業・管理職の実態
女性就業率の国際比較(2024年OECD統計)
OECD(経済協力開発機構)の雇用統計によると、加盟国の女性就業率(15~64歳)の平均は65%前後です。上位にはアイスランド(約83%)、スウェーデン(約78%)、ドイツ(約73%)、オランダ(約77%)などが名を連ねます。日本の74%前後はOECD平均を超えており、量的指標としては「中位上」の水準に達しています。
しかし、量的な就業率の改善が「質的な改善」を意味しないことがL字カーブ問題の示すところです。女性就業率が高い北欧諸国では、就業者に占める正規雇用比率や管理職・政治分野への参画率も同時に高く、質と量の両面が改善されています。一方、日本の場合は就業率の上昇が非正規雇用の拡大を伴っており、就業の「量」の改善が就業の「質」の改善に直結していないという点が国際比較での課題として残っています。
管理職・政治分野の女性参画率の国際比較
世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表するジェンダーギャップ指数(GGI:Gender Gap Index)2024年版では、日本は146カ国中118位でした(出典:WEF Global Gender Gap Report 2024)。特に「経済参加・機会」(女性管理職・専門職比率等)と「政治参画」(議員・閣僚比率)の二分野でスコアが低く、全体順位を押し下げています。
管理職の女性比率を見ると、日本は13.2%(厚生労働省「雇用均等基本調査」2023年度)であり、米国(約41%)、英国(約36%)、カナダ(約36%)、フランス(約34%)と比べると顕著な差があります。衆議院議員に占める女性比率も2024年10月の衆議院選挙後で約15.7%にとどまり、世界平均(約26%、IPU統計2024年)を大幅に下回っています。
量的改善と質的課題の乖離——日本固有の構造
国際比較で浮き彫りになる日本の特徴は、女性就業率という「量」の指標は改善が進んでいるにもかかわらず、正規雇用比率・管理職比率・政治参画率という「質」の指標との間に大きな乖離がある点です。
この乖離を説明する仮説として、「M字カーブ解消=L字カーブ顕在化」の構造が挙げられています。育児期に離職せず就業を継続する女性が増えたものの、正規雇用からパートタイム・非正規への移行を介して就業を続けるケースが多く、管理職・正規雇用としての継続就業率は伸びていないという分析です。また、無償ケア労働(アンペイドワーク:家事・育児・介護など市場で評価されない労働)の負担が女性に偏ることで、正規雇用継続・管理職への昇進に必要なフルタイム就業が難しくなっているとの指摘もあります。
| 指標 | 日本(2024年前後) | OECD平均(概算) | 上位国の例 |
|---|---|---|---|
| 女性就業率(15~64歳) | 約74% | 約65% | スウェーデン約78% |
| 女性の非正規雇用比率 | 約53% | 30%前後 | 北欧諸国:20%前後 |
| 女性管理職比率 | 約13% | 約35% | 米国約41% |
| 女性国会議員比率 | 約16% | 約31%(IPU平均) | スウェーデン約46% |
| GGI順位(2024年) | 118位/146カ国 | — | アイスランド1位 |
現代的論点|2026年時点の到達点
2007年以降の主な法改正・新法
M字カーブ・L字カーブをめぐる就業構造改革に関連した主な法改正・新法の動向は以下のとおりです。
- 女性活躍推進法(2015年成立・2019年改正・2022年改正):2019年改正で義務対象が301人以上から101人以上の企業に拡大。2022年改正で男女の賃金差異の情報公表が義務付けられました(女性活躍推進法)。
- 育児・介護休業法(2021年・2022年改正):2022年4月から段階的に施行された改正で、育休を取得しやすくするための個別周知・意向確認の義務化(同法第21条第1項)、産後パパ育休(出生時育児休業、同法第9条の2)の創設、育休取得率の公表義務化(従業員1,000人超の企業、2023年4月施行)が導入されました(育児・介護休業法)。さらに2025年4月・10月の2段階で追加改正が施行されています。
- パートタイム・有期雇用労働法(2019年):同一企業内での正規・非正規の不合理な待遇差を禁止(同法第8条・第9条)し、非正規雇用の処遇改善を図っています(パートタイム・有期雇用労働法)。中小企業への適用は2021年4月。
- 第5次男女共同参画基本計画(2020年):就業分野で「管理職に占める女性の割合30%」「非正規雇用で働く女性の正規化・処遇改善」等の数値目標が明記されました。
- こども家庭庁発足(2023年):少子化対策・子育て支援を総合的に推進する専担組織として設置。保育の受け皿拡充と男性育休取得促進を重要課題として位置づけています。
議論の現在地
女性就業率の量的改善については、政府・経済界・研究者のいずれからも一定の評価が得られています。一方で、L字カーブ問題の解決策については多角的な議論が続いています。
論点の一つは「税・社会保障制度の見直し」です。配偶者控除・第3号被保険者制度が女性の就労抑制に作用しているという見方は多くの研究者・有識者が共有する一方、「専業主婦世帯への配慮として維持すべき」「性急な廃止は生活保障の後退を招く」という意見もあり、政策対応の速度と方法をめぐる議論が続いています。
もう一つの論点は「男性の長時間労働の是正と家事・育児分担の見直し」です。男性の育休取得率は2023年度に30.1%(厚生労働省「雇用均等基本調査」2023年度速報)に達し、前年度(17.1%)から大幅に上昇しましたが、取得日数の短さ(数日程度にとどまるケースが多数)という課題が残っています。家事・育児の時間配分における男女格差が解消されない限り、女性の正規就業継続は困難だという指摘は強く、「制度整備」から「職場文化の変革」へのシフトを求める声が高まっています。
また、正規・非正規の賃金格差是正については、同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)の施行後も基本給格差が解消されていないとの評価が多く、実効性を高める制度改正を求める議論が続いています。雇用形態間の格差是正が「賃金」にとどまらず「キャリア形成・昇進機会」にまで及ぶべきとの主張も、研究者・労働団体から示されています。
残された課題
2026年時点での主な残課題は以下のとおりです。
第一に、非正規雇用から正規雇用への移行支援の強化です。L字カーブを解消するためには、育児期に非正規化した女性が正規雇用に戻れるルートの整備が不可欠です。現行制度では一度非正規雇用に移行した後の正規転換は個々の企業の判断に委ねられており、制度的な保障が薄い状態が続いています。
第二に、男性育休の実質化(取得期間の長期化と職場文化の変革)です。取得率が向上しても、数日程度の取得では家事・育児分担の構造変化につながりません。取得率という「量」の指標から「実質的な育児参加率」「取得日数」という「質」の指標への評価軸の転換が求められています。
第三に、ケア労働の評価と賃金底上げです。介護・保育・家事代行など女性が多数を占めるケア職種の賃金水準は全産業平均を大きく下回っています。ケア職種の賃金底上げは、女性の労働市場全体の底上げにもつながるとされており、職業間格差の是正が課題です。
第四に、育児期以降の年代(50代以降)への対策です。M字・L字の議論は育児期に焦点が当たりがちですが、高齢女性の貧困(単身高齢女性の相対的貧困率の高さ)は育児期の就業形態が年金水準にまで影響を及ぼす「長期蓄積の問題」でもあります。就業構造の改善は若年・育児期だけでなく、ライフステージ全体を視野に入れた設計が必要です。
就業統計が示す政策課題と関連制度
女性活躍推進法と数値目標の達成状況
女性活躍推進法の下で各企業が策定する「行動計画」には、採用・継続就業・管理職比率などに関する数値目標が含まれます。厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース(両立支援のひろば)」では企業ごとの目標と実績が公表されており、求職者・投資家が参照できる仕組みが整えられています。
ただし、企業が設定する目標値は「前年比での改善」を示すものが多く、国際比較上の目標水準(管理職30%等)と乖離していることも少なくありません。また、女性活躍推進法に基づく義務は大企業・中堅企業を中心としており、101人未満の企業は現行制度上、努力義務にとどまっています。中小企業への実効的な普及が残課題の一つです。
非正規雇用改善に向けた取り組み(同一労働同一賃金等)
パートタイム・有期雇用労働法(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)は、正規・非正規の「不合理な待遇差の禁止」(同法第8条)と「差別的取扱いの禁止」(同法第9条)を規定しています。2020年4月(中小企業は2021年4月)から施行されたこの規制により、同一企業内での賞与・手当の格差是正は一定程度進んだとされます。
しかし、基本給の格差については「職務内容の違い」を根拠に差をつけることが依然として認められており、最高裁判例(ハマキョウレックス事件・2018年、大阪医科大学事件・2020年等)においても個別の手当・賞与については判断が事案ごとに異なります。L字カーブ解消のためには雇用形態間の待遇格差そのものの縮小が不可欠ですが、現行の同一労働同一賃金の実効性には限界があるとの評価も少なくありません。
公的相談窓口・就労支援
就労や職場における男女格差・不当待遇に関して相談できる主な公的窓口を紹介します。
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室):男女雇用機会均等法・育児介護休業法・パートタイム労働法等に関する労使双方からの相談窓口です。各都道府県のハローワーク等で電話番号を案内しています。
- マザーズハローワーク・ハローワーク専門窓口:育児と仕事を両立したい方や再就職を目指す方向けの専門相談窓口です。全国に設置されており、保育所情報との連携も行っています。
- 女性相談センター(各都道府県):DV・生活困窮・就労問題など女性が抱える複合的な問題に対応する総合窓口です。
- 法テラス(日本司法支援センター):電話番号 0570-078374(サポートダイヤル)。雇用差別・解雇・不当な処遇等について法的観点から情報提供を行います。具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。
まとめ|M字からL字へ——就業の量から質へのシフトが問われる時代
日本の女性就業率は2007年から2026年にかけて着実に改善し、M字カーブはほぼ解消されたといえる水準に達しています。保育所整備・育休制度の充実・女性活躍推進法の整備という三つの政策的取り組みが、量的な改善をもたらしました。
しかし改善の内実を問うと、L字カーブが示す非正規就業の構造的問題が浮かび上がります。就業を継続しても非正規雇用にとどまり、賃金・将来の年金・キャリア形成の面で正規雇用者と大きな格差が生じている現実は、M字の「解消」という数字が語る以上に複雑な状況です。
国際比較では、就業率という量の指標では先進国水準に迫っているものの、管理職比率・政治参画率・非正規比率という質の指標での課題が際立ちます。就業の量から質へのシフトが、今後の男女共同参画政策の中心的な課題といえます。税・社会保障制度の見直し、男性育休の実質化、ケア職種の賃金底上げ、非正規から正規への移行支援といった多面的な取り組みが求められており、データに基づく政策評価(EBPM:Evidence-Based Policy Making)の重要性が高まっています。
就業上の不利益や差別的取扱いについては、都道府県労働局や法テラスへの相談をご検討ください。
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よくある質問
- Q1. M字カーブとはどのようなグラフですか?
- A. 女性の年齢別就業率を折れ線グラフで示したとき、20代後半の高就業率から30代前半に就業率が落ち込み、40代以降に再び上昇するM字型の曲線です。結婚・出産・育児を機に離職する女性が多かったことを示す日本特有の就業構造として長年注目されてきました。2020年代には大きく改善し、台形に近い形に変化しています。
- Q2. L字カーブとはM字カーブとどう違いますか?
- A. L字カーブは、就業者に占める「正規雇用就業率」だけを取り出してグラフ化したときに現れる曲線です。女性の就業率全体は回復していても、就業している女性の多くが非正規雇用にとどまっているため、正規雇用就業率だけで見るとL字型になります。M字カーブは就業の「量」の問題、L字カーブは就業の「質」の問題を示しています。
- Q3. 現在の日本の女性就業率はOECD平均と比べてどうですか?
- A. 2024年時点で日本の女性就業率(15~64歳)は74%前後であり、OECD平均(約65%)を上回っています。かつてはOECD下位に位置していましたが、近年は改善が進んでいます。一方で管理職比率(日本約13%・OECD平均約35%)や政治参画率(GGI2024年で118位)には依然大きな差があり、就業の質や意思決定への参加の面では課題が残っています。
- Q4. 女性の非正規雇用比率が高いことで、どのような問題が生じますか?
- A. 主に三つの問題が指摘されています。第一に、賃金の低さ(非正規は正規より時間当たり賃金が低く、生涯賃金の差が数千万円規模に及ぶ可能性)。第二に、年金の低さ(短時間就労で厚生年金の適用要件を満たさない場合は老後の所得保障が薄くなる)。第三に、雇用の不安定さ(景気後退時に解雇・雇い止めリスクが相対的に高い)です。
- Q5. 政府の女性就業・管理職に関する数値目標にはどのようなものがありますか?
- A. 第5次男女共同参画基本計画(2020年)では「管理職に占める女性の割合を2025年までに30%以上にする」という目標が設定されましたが、達成は困難な状況が続いています。「202030(にーまるにーまるさんまる)」目標(指導的地位の女性を30%以上とする)は、2020年の達成が断念されたのち2030年を目標年に改定されており、現状(約13%)との差が大きい状態が続いています。
