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コロナ禍と男女共同参画|感染症危機が浮き彫りにしたジェンダー格差と政策の対応【2026年版】

2020年初頭に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、日本社会が長年抱えてきたジェンダー(社会的・文化的に形成された性別。生物学的性別=セックスと区別される概念)格差を、これまでになく鮮明に浮き彫りにしました。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返されるなか、雇用の喪失は非正規労働者に集中し、その多くが女性でした。一方、在宅勤務の普及は家事・育児・介護などの無償ケア労働(アンペイドワーク:市場での報酬が発生しない家庭内の労働)を可視化し、その担い手がいかに女性に偏っているかを改めて示すことになりました。

男女共同参画社会基本法(1999年制定、最終改正令和7年法律第80号・2026年4月1日施行)第3条は「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」の実現を基本理念として掲げています。感染症という社会的危機に際してこそ、この理念の達成度合いが問われました。コロナ禍は「非常時の例外」ではなく、平時の構造的なジェンダー格差が危機的状況下で凝縮して現れた「構造の鏡」として機能したといえます。

本記事では、コロナ禍が日本のジェンダー格差にどのような影響を与えたか、統計データと法政策の両面から解説します。第5次男女共同参画基本計画(2020年12月閣議決定)がどのようにコロナ対応を位置づけたか、そして育児・介護休業法改正やDV防止法改正などの後続施策との連動についても整理します。また、2026年時点での達成状況と残された課題、さらに国際比較の観点から日本の立ち位置を検討します。企業の人事担当者や自治体の男女共同参画推進員、そして感染症と社会政策の関係に関心をもつすべての方に向けた解説記事です。

目次

コロナ禍が「可視化」したジェンダー格差とは

雇用喪失は女性に偏った

コロナ禍の雇用影響は、すべての労働者に均等に及んだわけではありませんでした。感染症の拡大で最も深刻な打撃を受けたのは、飲食・宿泊・小売・医療・福祉などの対人サービス業であり、これらの産業は女性就業者の割合が特に高い分野です。

総務省「労働力調査」の年次データをみると、2020年に非正規雇用の就業者数は前年比75万人減少し、そのうち女性が約54万人(約72%)を占めました。男性の非正規就業者の減少が約21万人であったことと比較すると、雇用喪失の女性偏在は明白です。この背景には、日本の非正規雇用者全体に占める女性比率が約7割と高い水準にあるという構造的な問題があります。

非正規雇用は雇用調整が行われやすく、景気悪化・需要急減の局面において最初に削減対象となる雇用形態です。コロナ禍以前から指摘されていた「女性の非正規偏在」という課題が、感染症という外生的ショックによって一気に現実の雇用喪失として現れました。

無償ケア労働(アンペイドワーク)の増大

学校・保育施設の一斉休業(2020年3月)や緊急事態宣言下での在宅勤務の普及は、家庭内の無償ケア労働に大きな変化をもたらしました。子どもの見守り・家事・介護が増大するなか、その多くを担ったのは女性であるという実態が、複数の調査から明らかになっています。

NHK放送文化研究所「2020年国民生活時間調査」によれば、コロナ禍において在宅時間が増えた世帯でも、家事・育児の時間増加は女性に偏りがちで、男性の家事参加時間の増加は限定的であったことが示されています。また内閣府「男女共同参画白書 令和3年版(2021年)」は「感染症の拡大が、家庭内での性別役割分担の固定化を強化した側面がある」と指摘しました。

こうした状況は、2006年以降定期的に調査されてきた内閣府「生活時間調査(社会生活基本調査)」が長年指摘してきた「家事関連時間の男女格差」の延長線上にあります。コロナ禍は新たな格差を生み出したというよりも、既存の構造が危機的状況下で鋭く表れた局面であったといえます。無償ケア労働の市場価値換算については、内閣府が「無償ケア労働の金額換算値」を公表しており、2016年度実績でGDP比約16%に相当するとの試算もあります。

統計データで見るコロナ禍の女性への影響(2020-2022年)

非正規雇用と女性雇用者数の急減

総務省「労働力調査」の月次データをみると、2020年4月~6月期(第1回緊急事態宣言期間)における女性の非正規就業者数は、前年同期比で約100万人規模の減少を記録しました。この傾向は2021年にかけてゆるやかに回復しましたが、コロナ前の水準への回帰は遅く、特に飲食・宿泊業では2022年末時点でも回復しきれない事業者が多く残りました。

また、雇用保険の対象とならない短時間就労者(週20時間未満のパートタイム)が雇い止めにあった場合、失業等給付を受けられないという問題も浮上しました。コロナ特例の雇用調整助成金は正規・非正規を問わず対象としましたが、申請手続きの煩雑さから、小規模事業者や非正規労働者が多い業態では活用が限られたとの指摘もあります。

女性の就業継続率に着目すると、コロナ禍を経た2021年以降もいわゆるL字カーブ(30歳代以降に就業率が低下し、その後も正規就業率が回復しないパターン)の解消には至っておらず、コロナ禍がその固定化を助長した可能性が複数の研究者から指摘されています。

DV・性暴力相談件数の増加

感染症の拡大は、配偶者や交際相手からの暴力(DV:ドメスティック・バイオレンス)にも深刻な影響をもたらしました。内閣府の集計によれば、全国の配偶者暴力相談支援センターへの相談件数は2020年度に約18万2000件(前年度比約7%増)を記録しました。なお、配偶者暴力防止法(最終改正令和8年法律第46号・2026年6月24日公布)に基づく相談件数は2019年度が約17.0万件であり、増加傾向は複数年度にわたって確認されています。

外出自粛による「閉じ込め」効果が加害者と被害者を同居空間に密閉したこと、経済的ストレスの増大、DV支援施設へのアクセス制限などが複合的に作用したと考えられています。国連人口基金(UNFPA)は2020年の報告書で、感染症の流行がDVの「シャドーパンデミック(陰の大流行)」を引き起こしうると警告していました。

性暴力相談については、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターへの相談件数も2020年度以降増加傾向にあります(内閣府「男女共同参画白書 令和4年版」参照)。ただし、相談件数の増加が実際の被害増加を意味するのか、それとも相談しやすい環境整備の成果であるのかは、慎重に解釈する必要があります。

指標 コロナ前(2019年) コロナ禍(2020年) 傾向
女性非正規就業者数(前年比増減) +33万人程度 -54万人程度 大幅減少
DV相談件数(配偶者暴力相談支援センター) 約17.0万件 約18.2万件 増加
テレワーク実施率(全産業平均・概算) 約13% 約30%(緊急事態宣言時ピーク) 急拡大
育児・家事の主な担い手(女性の割合・意識調査) 約73%前後(内閣府調査) コロナ後も同水準 変化乏しい
出典: 総務省「労働力調査」、内閣府「男女共同参画白書」各年版をもとに作成(数値は概数)

第5次男女共同参画基本計画(2020年)とコロナ対応

コロナ禍と基本計画策定の重なり

第5次男女共同参画基本計画は、2020年12月25日に閣議決定されました。感染症の本格的な拡大と政策立案作業が同時進行したため、計画の随所にコロナ禍への言及と対応方針が盛り込まれています。

計画は冒頭部分で「新型コロナウイルス感染症の拡大が、女性への影響を深刻化させていることを踏まえ」と明記し、以下の4点を喫緊課題として位置づけました。

  • 女性の就業継続・経済的自立: 雇い止め・休業・収入減少に直面した女性の支援強化
  • DV・性暴力被害者への迅速な対応: DV相談のオンライン化・アウトリーチ体制の整備
  • 子育て・介護の両立支援: 感染症対策を踏まえた保育・介護施設の継続的運営支援
  • 意思決定の場への女性参画: 感染症対策会議・専門家諮問機関への女性専門家の積極的登用

特に意思決定への参画は、感染症専門家会議(2020年2月設置)の委員14名中女性が2名のみであったことへの批判を受けて論点化されました。第5次基本計画はこれを受け、「科学技術・学術分野」における女性参画拡大を具体的な数値目標とともに盛り込んでいます。

計画に盛り込まれた感染症対応の方針

第5次基本計画は、コロナ禍での課題を「横断的な視点から取り組むべき重要事項」として位置づけました。具体的には、ジェンダー統計(性別・年齢・就業形態別の細分化データ)の整備強化、女性活躍推進とウィメンズヘルス(女性の健康)の改善を明示しました。

また「あらゆる分野における女性の参画拡大」という従来の方針に加え、「男性も含めた働き方改革の加速」と「ケア労働の社会的評価・再評価」が重点事項として追記されています。この政策的方向付けは、2022年施行の育児・介護休業法改正(産後パパ育休の創設)、2023年からの男性育休取得率公表義務化、2024年のDV防止法改正(精神的暴力の保護命令対象化)といった後続の法整備と連動しています。

なお、内閣府のEBPM(証拠に基づく政策立案)推進の一環として、コロナ禍を経て「性別分類した公衆衛生統計の整備」が提言されました。感染者・死亡者統計が当初、年齢や性別で十分に分類されていなかったことは、ジェンダー視点での政策立案を困難にしたという批判も生じています。

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現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

コロナ禍を直接の背景・契機として、以下の法改正・新施策が展開されました。

  • 育児・介護休業法改正(2022年4月・10月・2025年4月段階施行): 産後パパ育休(出生時育児休業、子の出生後8週間以内に4週間取得可能)の新設、育休取得の意向確認の事業主への義務付け、1000人超企業の男性育休取得率公表義務化(2023年)。2025年改正ではさらに柔軟な働き方確保措置が義務化されました。
  • 女性活躍推進法改正(2022年4月1日施行): 情報公表・行動計画策定の対象を301人以上から101人以上の事業者に拡大。同年7月8日には男女間賃金差異の公表が義務化(301人以上の企業)。
  • 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)改正(2024年4月施行): 保護命令の発令要件を拡大(第10条第1項)。脅迫の対象が「生命・身体」から「生命、身体、自由、名誉若しくは財産」に広がり、被害要件も「生命又は身体に重大な危害」から「生命又は心身に重大な危害」に改められ、精神的被害が対象に含まれることになりました。接近禁止命令の期間延長(6か月→1年)。コロナ禍でのDV相談急増が立法の社会的背景の一つとして論じられています。
  • こども家庭庁発足(2023年4月): 少子化対策・子育て支援を一元化。子ども・子育て支援法改正(2024年)により「異次元の少子化対策」として児童手当拡充・保育施設整備が加速。
  • フリーランス・事業者間取引適正化等法(2024年11月施行): 業務委託先(フリーランス)へのハラスメント対策措置義務を明定。コロナ禍で増加した個人事業者を取り巻く雇用類似の問題に対応。

議論の現在地

コロナ禍のジェンダー影響をめぐっては、2026年時点においても評価が分かれています。

【前進として評価する見方】 コロナ禍が「ウェイクアップコール(警鐘)」となり、政府・企業・社会全体が男性育休推進やDV支援体制強化に本腰を入れる契機になったという評価があります。男性育休取得率は2021年度の13.97%から2023年度には30.1%(厚生労働省「雇用均等基本調査」)へ倍増し、DV防止法改正では被害者保護の範囲が拡大されました。こうした前進はコロナ禍が社会的問題を可視化した成果であるという見解があります。

【課題を指摘する見方】 一方で、施策の実効性を疑問視する声も根強くあります。男性育休取得率は改善しているものの、取得期間が2週間未満の「短期取得」が多く、家事・育児の実質的な分担変化には至っていないとする研究もあります。コロナ禍で雇い止めにあった女性の多くが正規雇用へ転換できないまま非正規として就労を継続しているという分析もあり、構造的課題の解消には至っていないとの指摘があります。

【意思決定参画の改善と限界】 感染症対策専門家会議・分科会の構成における女性比率は、批判を受けた2020年当初の低水準から改善が図られました。しかし医学・公衆衛生・理工系の研究者全体における女性比率の低さという根本的課題は、短期的な登用努力だけでは解消できず、大学・大学院段階からの女性研究者育成が長期的な政策課題として残されています。

残された課題

2026年時点において、以下の課題が未解決のまま残されています。

非正規雇用の構造的是正: コロナ禍で明確になった「非正規雇用=経済ショック時の調整弁」という構造は、雇用形態の抜本的な見直しなしには解消されません。同一労働同一賃金原則の実効性向上と、育児休業給付(育児・介護休業法第5条以下および雇用保険法の関連規定)の非正規労働者への適切な適用拡大が引き続き課題です。

緊急時ジェンダー視点の制度化: 感染症・自然災害などの非常時に、ジェンダー視点を政策立案の「デフォルト条件」として組み込む制度的仕組みが、日本では法律上義務付けられていません。内閣府男女共同参画局と危機管理・防災部局の連携強化や、緊急事態対応マニュアルへのジェンダー視点の組み込みが研究者・NGO双方から求められています。

ジェンダー統計の整備: 公衆衛生統計・社会保障統計の性別分類の標準化が不完全なまま残されています。EBPM(証拠に基づく政策立案)の観点から、データ収集段階でのジェンダー・年齢・雇用形態の細分類を義務付ける統計法上の措置が議論されています。

DVサポート体制の継続的整備: コロナ禍で顕在化したDV相談件数の増加傾向は、感染症収束後も継続しています(内閣府「男女共同参画白書 令和5年版(2023年)」)。配偶者暴力相談支援センターとオンライン相談(DV相談プラス)の連携強化、被害者の住居確保支援の拡充が求められています。

国際比較|他国はコロナとジェンダーにどう対応したか

北欧諸国とカナダの取り組み

コロナ禍のジェンダー影響に対する各国の対応には顕著な差異がありました。

カナダは2020年のコロナ対策パッケージに「ジェンダー・多様性影響分析(GBA+:Gender-Based Analysis Plus)」を義務づけ、財政支出のジェンダー影響を政策立案の前段階で評価するフレームワークを運用しました。スウェーデン・ノルウェーなど北欧諸国は、感染症対策会議に女性専門家を積極的に登用したほか、育児施設の「エッセンシャルサービス」認定(非常時も継続営業)を早期に行い、子育て中の就労者(特に女性)の就業継続を支援しました。

ニュージーランドでは、当時のジャシンダ・アーダーン首相(女性)がジェンダー・家族への影響を前面に据えた記者会見を継続的に行い、国内外でジェンダー包摂的なコミュニケーションの好例として評価されました。

国連女性機関(UN Women)は2020年の報告書「COVID-19 and Gender Equality: Prioritizing the Routes to Recovery」で、各国に対してジェンダーに配慮したコロナ対策の策定、女性雇用の保護、DV被害者への支援強化、意思決定への女性参画を求める勧告を出しています。

日本の対応と課題

日本は2020年4月の経済対策として「特別定額給付金」(1人10万円)を実施しましたが、給付の際に世帯主への一括給付方式が採用されたことで、DV被害者が加害者(世帯主)を通じてしか給付を受け取れないケースが生じるという問題が指摘されました。後に配偶者からの暴力の被害者が個別申請できる特例措置が設けられましたが、申請手続きの煩雑さや周知不足から、実際に活用できた被害者は限定的であったとの報告もあります。

この事例は「中立に見える政策設計も、ジェンダー視点なしには意図せず既存の格差を強化しうる」という教訓として、政策評価の文脈で繰り返し引用されています。

比較軸 日本の対応 北欧・カナダ等の事例
政策立案へのジェンダー視点の組み込み 第5次基本計画に感染症対応を事後的に追記 GBA+義務化(カナダ)、事前影響分析の標準化(北欧)
専門家会議への女性参画 当初委員14名中女性2名、批判後改善 意識的に女性専門家・多様なバックグラウンドの人材を登用
DV被害者支援 給付金特例申請・DV相談プラス(オンライン相談)の拡充 DV支援施設の「エッセンシャルサービス」認定・継続営業義務(北欧)
非正規雇用者への所得補償 雇用調整助成金の拡大(申請手続き煩雑) 就労形態に関わらず所得補償(カナダ・CERB)、迅速な給付
子育て支援 保育施設の感染対策補助・特例での継続開設 育児施設のエッセンシャルサービス認定・育児費用補助の拡充(フィンランド等)
出典: UN Women報告書、内閣府男女共同参画局資料、カナダ・北欧各国政府発表をもとに整理(概要)

コロナ後の男女共同参画に向けた課題

基本法が前提とした「社会構造」の問題

男女共同参画社会基本法(第3条)は「性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現」を基本理念として掲げています。しかしコロナ禍が明らかにしたのは、この理念と現実との間に依然として大きな乖離があるという事実です。

雇用・家事育児・意思決定のすべての場面で、女性が「社会的な変動の緩衝材」として機能してきた構造は、基本法制定から25年以上が経過した2026年においても根本から変わってはいません。「景気後退期に非正規の女性が最初に雇い止めにあい、緊急時に家事育児の負担が女性に集中し、危機対応の意思決定から女性が排除される」という三重構造は、コロナ禍において同時かつ連動して現れました。

この構造の根底には、労働市場における正規・非正規の二層構造(ジェンダー化された雇用形態の分断)と、性別役割分担意識(ケア労働は女性の役割とする社会規範)の根強さ、そして意思決定の場に女性が少ない現実の三つが絡み合っています。基本法が「理念法」として制定された意義は大きいですが、具体的な実効性の担保には個別法による強制力の裏付けが不可欠であるという議論は、コロナ禍を経てさらに強まっています。

次の危機に備えるために

感染症の流行、自然災害、経済危機——こうした社会的危機は今後も繰り返し訪れると考えられます。次の危機において同様のジェンダー格差が生じないためには、平時からの制度的備えが不可欠です。

研究者・NGO・行政の間で共通して提言されている方向性は以下のとおりです。

  • ジェンダー視点の緊急事態対応計画への組み込み: 感染症対策・防災計画の立案段階で、性別・年齢・就業形態別の影響評価を義務付ける制度設計。
  • 給付設計へのジェンダー配慮: 世帯単位の一括給付ではなく、個人単位で直接給付する設計原則の採用(DV被害者・経済的DV被害者の保護に直結)。
  • ケア労働の社会化と報酬評価の向上: 保育・介護・医療補助職などのケアワーカー(その多くが女性)の処遇改善を継続的に推進。非常時においても「エッセンシャルワーカー」として位置付け、支援を継続する制度的保障。
  • 公衆衛生統計の性別分類の標準化: 感染症発生報告・社会保障給付統計において、性別・年齢・就業形態・世帯構成の細分類をデフォルト条件とする。

第6次男女共同参画基本計画(2025年度閣議決定予定)においても、感染症・気候変動等の複合リスクへのジェンダー対応が論点の一つとなることが見込まれています。コロナ禍を「終わった出来事」ではなく、平時の制度設計を問い直す契機として活かすことが、2026年以降の男女共同参画政策に求められています。

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公的相談窓口

コロナ禍の影響や生活上の困難・人間関係の問題でお悩みの場合は、以下の公的窓口をご利用ください。いずれも無料で利用できます。

  • DV相談ナビ(#8008): 電話番号をプッシュするだけで、最寄りの配偶者暴力相談支援センターに自動転送されます(全国・都道府県・指定市が設置)。
  • DV相談プラス: 24時間365日、電話・メール・チャット・多言語に対応。内閣府が運営する総合相談窓口です(https://soudanplus.jp/)。
  • 法テラス(0570-078374): 法的問題全般の相談窓口。収入・資産が一定以下の場合、弁護士費用の立替制度(審査要)を利用できます。
  • よりそいホットライン(0120-279-338): 24時間対応の総合相談窓口。生活・こころ・性暴力など幅広い相談に対応しています。

心身の不調を感じる場合は、医療機関・精神保健福祉センター・専門相談窓口へご相談ください。具体的な法的問題については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

まとめ

コロナ禍は、日本社会が長年抱えてきたジェンダー格差——非正規雇用への女性の偏在、無償ケア労働の不均等な分担、DV被害の構造的問題、意思決定の場からの女性の排除——を一度に浮き彫りにしました。感染症という「非常時」は、男女共同参画社会基本法が掲げる理念の達成度合いを測る鏡の役割を果たしました。

第5次男女共同参画基本計画(2020年)はコロナ対応を明示的に取り込み、育児・介護休業法の累次改正(産後パパ育休の新設)、女性活躍推進法改正(男女賃金格差の公表義務化)、DV防止法改正(精神的暴力の保護命令対象化)といった後続の法整備を通じて、政策的な前進がみられます。男性育休取得率も2023年度に30%台へと倍増しています。

一方で、非正規雇用構造の抜本的な是正、緊急時のジェンダー視点の制度的組み込み、DVサポート体制の充実、ジェンダー統計の整備は引き続き未解決の課題として残されています。次の危機に備えるためにも、「ケア労働の社会的評価」「ジェンダーに配慮した政策設計の標準化」「データの性別分類の義務化」を平時から着実に進めることが、男女共同参画社会の実現に向けた不可欠な土台となります。

よくある質問

Q1. コロナ禍で女性の雇用が男性より大きく影響を受けた理由は何ですか?
A1. 日本では非正規雇用(パートタイム・アルバイト・派遣など)に女性が多く就労しており、コロナ禍で打撃を受けた飲食・宿泊・小売・医療・福祉などの対人サービス業にも女性就業者の割合が高い傾向があります。非正規雇用は景気悪化・需要急減の局面において最初に削減対象となりやすい雇用形態であり、この構造的脆弱性が感染症危機の局面で一気に顕在化しました。
Q2. 第5次男女共同参画基本計画はコロナ禍にどう対応していますか?
A2. 2020年12月に閣議決定された第5次基本計画は、コロナ禍で顕在化した課題として女性の雇用喪失・DV相談件数の増加・意思決定の場への女性参画不足を横断的課題に位置づけています。非正規雇用女性への支援強化、DV相談のオンライン化・アウトリーチ体制整備、感染症対策会議へのジェンダー視点の導入などが方針として明記されました。
Q3. コロナ禍でDV被害が増加したとされるのはなぜですか?
A3. 外出自粛・在宅勤務により加害者と被害者が同居空間に長時間とどまる状況が生じたこと、経済的ストレスの増大、相談機関へのアクセス制限などが複合的に影響したとされています。国連人口基金(UNFPA)はこの現象を「シャドーパンデミック」と呼び、各国政府に対して支援の強化を求める報告書を2020年に発表しました。
Q4. コロナ禍の特別定額給付金でDV被害者が困難に直面した理由は何ですか?
A4. 2020年の特別定額給付金は当初、世帯主への一括給付方式が採用されました。DV被害者が加害者(世帯主)と別居している場合や、給付金を加害者に管理・横取りされる恐れがある場合に、被害者が給付を受け取りにくいという問題が指摘されました。後に被害者が個別申請できる特例措置が設けられましたが、周知・手続きの面で課題が残りました。この事例は、ジェンダー視点を欠いた政策設計が意図せず格差を強化しうることを示す典型として論じられています。
Q5. 日本と北欧・カナダのコロナ対応におけるジェンダー政策の主な違いは何ですか?
A5. カナダや北欧諸国では、コロナ対策の立案段階でジェンダー影響分析(GBA+等)を義務づけ、DV支援施設を「エッセンシャルサービス」として継続営業させるなど、ジェンダー視点を政策の「前提条件」として制度的に組み込みました。日本は第5次基本計画にコロナ対応を追記しましたが、政策設計段階からのジェンダー事前評価の義務化という制度的仕組みの構築では差異があるとされています。

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