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生理休暇とは|労働基準法第68条の権利・取得率の実態と職場改善【2026年版】

「生理休暇を申請したいが、上司に言い出しにくい」「そもそも生理休暇に給与が出るのか分からない」——そのような疑問や不安を抱えながら、権利を行使できずにいる方は少なくありません。生理休暇は1947年の労働基準法制定時から存在する法定の権利ですが、2026年現在も取得率は約1%前後という低水準にとどまっています。制度の存在を知らない、あるいは知っていても申請できない構造的な課題が長年指摘されてきました。

本記事では、労働基準法第68条の条文と解釈・取得手続き・給与の扱い・取得率の現状・月経困難症との関係・企業の制度改善の動向まで、生理休暇をめぐる法的知識と2026年時点の議論を体系的に解説します。企業の人事担当者として制度運用の根拠を知りたい方、自身の権利を確認したい労働者の方、制度のあり方に関心を持つ方を対象に、公的資料と統計データに基づいて中立的に説明します。

目次

生理休暇とは何か|労働基準法が定める権利の概要

定義と法的根拠

生理休暇とは、月経(生理)によって就業することが著しく困難な女性労働者が、使用者(雇用主)に対して請求できる法定休暇の一種です。根拠法は労働基準法(昭和22年法律第49号、最終改正: 令和4年6月17日)第68条であり、「生理日の就業が著しく困難な女性」に付与される権利として位置づけられています。

生理休暇は、年次有給休暇(第39条)や産前産後休業(第65条)とは異なる独立した法定休暇です。年次有給休暇の残日数には影響せず、別枠の権利として行使できます。1947年の労働基準法制定時から設けられた歴史ある制度であり、国際的に見ても比較的早期に導入された女性保護規定のひとつです。

対象となる労働者の範囲

生理休暇を請求できるのは、月経によって就業が著しく困難な女性労働者です。正社員のみならず、パートタイム労働者・派遣労働者・有期雇用労働者なども含まれます。雇用形態に関係なく、月経に伴う身体的困難があれば請求権が認められます。

ただし、労働基準法上の「労働者」に該当することが前提です。業務委託契約(フリーランス)の場合は、労働基準法の適用対象外となるため、生理休暇の法的な請求権はありません。2024年に施行されたフリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)はハラスメント対策義務を規定していますが、生理休暇に相当する休暇付与義務は含まれていません。

労働基準法第68条の条文と解釈

条文の全文と要旨

労働基準法第68条の条文は以下のとおりです。

使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。

(労働基準法第68条)

条文は短いですが、重要な要素が含まれています。第一に、休暇は労働者が「請求」することで発生します。使用者が自動的に付与するのではなく、労働者側から申し出る必要があります。第二に、「生理日の就業が著しく困難な女性」という要件があります。月経中であることに加え、就業継続が著しく困難な状態にあることが前提です。第三に、請求があった場合、使用者は「就業させてはならない」という義務を負います。これに違反した場合、同法第119条により6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。

「著しく困難」の解釈と証明書類の要否

「生理日の就業が著しく困難」という要件について、厚生労働省の行政解釈によれば本人の自己申告で足りるとされています。使用者が医師の診断書や証明書類の提出を強制的に求めることは許されないと解釈されています。ただし、就業規則で「証明書類の提出を求めることができる」と定めている企業もあり、実務上は企業によって対応が異なります。

「著しく困難」の範囲としては、月経痛(月経困難症)・頭痛・腰痛・吐き気などの身体的症状により通常の業務遂行が困難な状態が典型例として挙げられます。医学的な診断が必要な状態かどうかは問われておらず、本人の状況判断が尊重されます。また、生理初日に特に症状が強い場合が多いことから、「生理日」の解釈は月経開始から症状が続く期間中を指すとされています。

取得手続きと給与の扱い

取得方法と手続きの実際

生理休暇の取得手続きは、企業の就業規則によって異なります。一般的には、上司や人事部門への申し出を行い、会社所定の休暇申請書等に「生理休暇」として記載する形をとります。急な体調悪化等で事前申請が難しい場合は事後申請を認める企業も多く、運用は各社の裁量に委ねられています。

取得単位については、法律上は「生理日」を単位とする定めがあるため原則は1日単位です。ただし、就業規則で半日単位・時間単位の取得を認めている企業もあり、柔軟な運用が広がっています。半日や時間単位での取得を認めることは、「著しく困難」な状態が一日中続かない場合でも活用しやすくなるという観点から有用な制度設計とされています。

有給か無給か|法律の規定と企業実務

生理休暇が有給(給与が支払われる)か無給かについて、労働基準法第68条は規定していません。法律上は有給か無給かは企業の任意とされており、就業規則での定め方によって異なります。多くの企業では無給(ノーペイ)の扱いとなっており、これが取得率の低さの一因として指摘されています。

有給の生理休暇制度を設けている企業では、年次有給休暇とは別に「生理有給休暇」として一定日数を保障するケースがあります。これは法律上の義務ではなく、企業の福利厚生制度として位置づけられます。「生理休暇を取ると給与が減る」という状況が取得抑制につながっているとの指摘があり、有給化を求める声が高まっています。また、生理休暇取得日については出勤率の計算において「出勤したものとみなす」扱いをする企業が多く、年次有給休暇の付与基準(8割出勤要件)への影響を避ける措置がとられています。

生理休暇の取得率の現状|統計データで見る低迷の背景

低水準が続く取得率の推移

厚生労働省「就労条件総合調査」によれば、生理休暇の取得率は1965年の26.2%をピークに低下傾向が続いており、近年では1%前後という極めて低い水準で推移しています。年次有給休暇の取得率(60%台)と比較しても著しく低い状況です。

取得率低下の背景には複数の要因が指摘されています。まず、生理休暇という制度自体の認知度の低さがあります。自身に生理休暇の権利があることを知らない労働者が一定数存在するという調査結果もあります。次に、「生理」という身体的事象を職場で申告することへの心理的な抵抗感があります。上司や同僚に自身の月経状況を説明することへの恥ずかしさや、詮索されることへの不安が、申請のハードルを高めている可能性が指摘されています。

申請しづらい職場文化の構造的問題

取得率が低い背景には「言い出しにくい職場文化」の問題も大きいとされています。管理職が男性中心である職場では、月経に伴う身体的困難に対する理解が得られにくい状況が生じやすいという意見があります。また、「その程度のことで休むのか」「代わりの人員がいない」「チームに迷惑をかけたくない」といった心理的・組織的プレッシャーが取得を妨げる要因として挙げられています。

無給であることが実質的な取得抑制につながっている点も見逃せません。給与への影響を懸念して有給休暇で代替する労働者が多いことも、生理休暇の取得統計に現れにくい実態として指摘されています。こうした多重の障壁が重なることで、法定の権利が実質的に機能しにくい状況が生じています。

比較項目 生理休暇(第68条) 年次有給休暇(第39条) 産前産後休業(第65条)
法的根拠 労働基準法第68条 労働基準法第39条 労働基準法第65条
給与の扱い 法定なし(企業裁量で有給・無給) 有給(平均賃金等) 健康保険給付(産前産後休業手当金)
取得単位 1日(就業規則で短縮可) 半日・時間単位も可 産前6週・産後8週
申請者の範囲 月経のある女性労働者 全労働者(6か月以上勤続) 妊娠・出産した女性労働者
証明書類 原則不要(本人申告) 取得理由の説明不要 出産予定日の証明等
2026年の取得状況 約1%前後(統計上の公式数値は低水準) 約60~65%(厚労省統計) 該当者のほぼ100%

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現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

生理休暇の規定である労働基準法第68条の条文そのものは2007年以降も改正されておらず、1947年制定時の表現が維持されています。一方、生理休暇に関連する周辺法制・政策は複数にわたって変化しています。

2015年に成立した女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、企業に対して女性活躍に関する行動計画の策定や情報公表を義務づけるものです。2019年改正(2022年4月1日施行)では従業員101人以上の企業への拡大が図られ、職場環境整備の観点から生理休暇を含む制度整備への意識が高まりました。

2022年の育児・介護休業法改正(育児・介護休業法、2023年4月・2025年4月・10月の2段階施行)により、柔軟な働き方確保措置が拡充されました。テレワーク・フレックスタイム・時短勤務の選択肢が増えたことで、月経による体調不良への対応がしやすい環境整備が進んでいます。

また、2023年の刑法改正では不同意性交等罪が新設され、職場における性的暴力の法的位置づけが明確化されました。さらに2024年施行のフリーランス保護法では、ハラスメント対策義務がフリーランスへの発注事業者に課されましたが、生理休暇の適用は依然として雇用労働者に限られています。

議論の現在地

2026年時点で、生理休暇制度をめぐる議論は複数の方向から展開されています。

第一に、制度の「有給化義務化」をめぐる論点があります。法定化から約80年が経過した現在、取得率が極めて低い状況を踏まえ、有給化を義務づけることで実質的な権利保障につながるとする意見があります。一方で、「有給化によって企業コストが増大し、女性採用を忌避する誘因につながりかねない」「プライバシーの観点から取得申告に抵抗感がある状況は変わらない」という指摘もあり、単純な有給化義務化が取得率の改善に直結するかは慎重な検討が必要とされています。

第二に、「ジェンダーニュートラルな体調不良休暇」への転換論があります。生理休暇を「女性のみが取る特別休暇」として位置づけるのではなく、誰もが取得できる体調管理休暇・傷病休暇として再設計することで、スティグマ(烙印)を軽減し実際の活用につながるのではないかという考え方です。一部の企業では「体調休暇」「ウェルネス休暇」として生理休暇を包摂した制度を導入するケースが見られます。

第三に、月経困難症・子宮内膜症の観点からのアプローチです。月経時の症状が疾患に起因する場合、医療的対応と職場の制度的支援の両立が必要とされます。2022年に低用量ピルの保険適用が月経困難症へも拡大されたことで、治療選択肢が広がっています。

残された課題

2026年時点で解決が求められる主な課題を整理します。まず、制度認知の徹底です。労働基準法第68条の権利が広く周知されていないため、企業・労働者双方への教育機会の拡充が求められています。

次に、無給問題の解決策の検討です。現行法では有給義務化がなく、多くの企業が無給扱いとしています。経済的不利を被らずに制度を活用できる仕組みのあり方について、政策論議が継続しています。

さらに、トランスジェンダー男性やノンバイナリーの当事者への対応も新たな課題となっています。月経のある労働者が全員「女性」という前提での現行規定では、性別移行後のトランスジェンダー男性が生理休暇を申請する際の運用が不明確な場合があります。インクルーシブな制度設計の議論が始まっています。

加えて、フリーランス・ギグワーカーへの制度適用の問題もあります。労働基準法の適用対象外となる非雇用型就労者が増える中で、従来の「労働者」概念を前提とした生理休暇の保障が届かない層が拡大しつつあることも、今後の制度論議の焦点のひとつです。

月経困難症・子宮内膜症と職場の対応

月経困難症・子宮内膜症とは

月経困難症(げっけいこんなんしょう)とは、月経期間中に日常生活に支障をきたすほどの痛みや体調不良を伴う状態の総称です。症状には月経痛(下腹部痛・腰痛)・嘔吐・吐き気・頭痛・倦怠感などが含まれます。「機能性月経困難症」(器質的原因のないもの)と「器質性月経困難症」(子宮内膜症・子宮筋腫などの病変に伴うもの)に分類されます。

子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)は、子宮内膜に類似した組織が子宮以外の場所(卵巣・腹膜等)に発生する疾患で、強い月経痛の原因となります。日本では生殖可能年齢の女性の一定割合に存在するとされており、診断の遅れが課題とされています。これらの疾患を抱える労働者にとって、生理休暇は重要なセーフティネットとなり得ます。

疾患と職場制度の連携

厚生労働省は「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(平成28年策定、逐次改訂)を公表しており、慢性疾患を抱える労働者への職場での配慮として、勤務時間の調整・在宅勤務・休暇の柔軟な取得などを推奨しています。月経困難症もこのガイドラインが想定する疾患の一例として位置づけられる場合があります。

疾患に起因する症状が重い場合、生理休暇だけでは対応しきれないことがあります。その場合、年次有給休暇・病気休暇(就業規則で定める場合)・傷病手当金(健康保険)の活用も選択肢となります。産業医や医療機関への相談を通じて職場との調整を図ることが推奨されています。具体的な事案については、弁護士や社会保険労務士など専門家への相談もご検討ください。

企業の先進的取り組みと制度改善の方向性

有給化・制度改善に取り組む企業の動向

一部の企業では、法定生理休暇に加えて独自の生理有給休暇制度を設けたり、体調不良に応じた柔軟な勤務制度を整備したりする動きが見られます。テレワーク・フレックスタイムの全社導入によって、体調に合わせた働き方を選べる環境が整うことで、生理休暇の申請に頼らずとも体調管理が可能になるという考え方もあります。

「ウェルネス休暇」「コンディション休暇」として性別を問わず体調不良時に使える有給休暇枠を新設し、その中に生理由来の不調も包含する制度設計を採用する企業も増えています。これは、生理休暇特有のスティグマを軽減し、実際の取得を促す効果があるとされています。2025年施行の育介法改正では、育児・介護に関する柔軟な働き方確保措置が義務化されており、こうした動きがより広い文脈での職場環境整備を後押ししています。

ジェンダーインクルーシブな制度設計の必要性

「生理休暇」という名称や「女性のみ」という前提が制度活用のハードルになっているとの指摘があり、より包括的な制度設計を模索する動きがあります。月経のある全ての人(トランスジェンダー男性・ノンバイナリー当事者を含む)が利用しやすい名称・申請方式・運用ルールへの見直しが、インクルーシブな職場環境整備の一環として論じられています。

管理職・上司を対象とした月経健康教育の実施や、社内相談窓口での対応マニュアル整備を行う企業も増えており、制度の「知ってもらう」「使いやすくする」両面からのアプローチが求められています。企業の取り組み事例は厚生労働省が公表する「女性活躍推進法に基づく認定制度(えるぼし認定)」に関連する情報の中にも散見されます。

公的相談窓口と関連機関

労働問題・権利侵害に関する公的相談先

生理休暇に関する権利が侵害されたり、取得を妨げられたりした場合は、以下の公的窓口への相談が考えられます。

  • 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署内): 労働条件・ハラスメント・解雇等に関する相談を無料で受け付けています。
  • 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室): 男女雇用機会均等法に関する問題(不利益取扱い等)の相談窓口です。
  • 女性の人権ホットライン(法務省人権擁護機関): 電話 0570-070-810(平日8:30~17:15)。女性の人権問題に関する相談に対応しています。
  • 法テラス(日本司法支援センター): 電話 0570-078374(平日9:00~21:00、土曜9:00~17:00)。弁護士等の専門家紹介や費用立替制度を利用できます。

職場での不当な扱いを受けたと感じる場合は、具体的な事案の性質に応じて弁護士・社会保険労務士への相談もご検討ください。

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まとめ

生理休暇は1947年の労働基準法制定以来、約80年にわたって存在する法定の権利です。しかし取得率は長期にわたって低迷しており、2026年現在も制度の実質的な活用にはさまざまな障壁が残っています。申告しにくい職場文化・無給運用が多い実態・制度認知の低さという三重の課題が絡み合っています。

一方で、育介法改正によるテレワーク・フレックス活用の拡大や、ウェルネス休暇等の独自制度を設ける企業の増加など、働き方の柔軟化を通じた体調管理環境の整備は着実に進んでいます。制度の有給化・インクルーシブな運用設計・月経健康教育の推進など、今後の政策・企業対応の動向が注目されています。具体的な権利侵害や疾患に伴う問題については、弁護士や社会保険労務士など専門家への相談をご検討ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 生理休暇を申請したら給与はどうなりますか?

労働基準法第68条は給与についての規定を設けておらず、有給か無給かは各企業の就業規則によって定まります。無給の企業では給与控除が生じる場合があり、有給の年次休暇で代替するケースも多く見られます。自社の就業規則の確認、または人事部門への問い合わせをお勧めします。

Q2. 医師の診断書がないと生理休暇は取れませんか?

厚生労働省の行政解釈によれば、生理休暇の申請に医師の診断書等の提出は原則として必要ありません。本人の申告で足りるとされています。ただし、企業が独自のルールで証明書類を求めている場合もあるため、就業規則の確認が必要です。

Q3. パートタイム・派遣労働者でも生理休暇を申請できますか?

はい。労働基準法が適用されるすべての「労働者」に生理休暇の権利があります。雇用形態(パートタイム・有期雇用・派遣)は問いません。ただし、業務委託契約(フリーランス)は労働基準法の適用対象外となります。

Q4. 生理休暇の取得を会社に拒否された場合はどうすればよいですか?

使用者が生理休暇の請求を拒否することは、労働基準法第68条違反となる可能性があります。まず社内の人事・コンプライアンス窓口に相談し、改善されない場合は各都道府県の総合労働相談コーナー(労働局)への相談も選択肢のひとつです。具体的な法的対応については弁護士への相談をご検討ください。

Q5. 生理休暇を取ると査定・人事評価に影響しますか?

法定休暇の取得を理由に不利益な評価・処遇を行うことは、男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)第9条が定める不利益取扱いの禁止に抵触する可能性があります。取得を理由とした人事上の不利益を受けた場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)への相談が考えられます。

Q6. 生理休暇と年次有給休暇はどちらを使うべきですか?

どちらを使用するかは労働者が選択できます。生理休暇が無給の企業では、有給の年次休暇で代替することが実態として多く見られます。有給の生理休暇制度がある企業では、年次有給休暇を温存しながら生理休暇を活用することも可能です。

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