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育児短時間勤務(時短勤務)とは|育介法第23条の要件・給与への影響と2026年の実態

職場復帰後も保育園の送迎や子どもの急な体調不良で、これまでと同じフルタイム勤務を続けることが難しいと感じる方は少なくありません。そのような状況で活用できるのが「育児短時間勤務制度(時短勤務)」です。育児・介護休業法(以下「育介法」)第23条に基づき、事業主には3歳未満の子を養育する労働者から申出があった場合、所定労働時間を短縮する措置を講じる義務が課されています。男性の育児休業取得率が50.9%(令和7年度・厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」・2026年7月31日公表)に達した現在、育休後の職場復帰を長期的に支える仕組みの整備が、企業と社会の双方に求められています。本記事では、時短勤務の法的根拠・申請要件・給与への影響と、2025年10月1日施行の新制度(育介法第23条の3「柔軟な働き方を実現するための措置」)との関係を整理します。人事担当者・育休からの復帰を検討中の方・職場の制度設計に取り組む実務担当者の方に参考にしていただける内容です。

育児短時間勤務(時短勤務)とは|育介法第23条の要件・給与への影響と2026年の実態 - 解説

目次

育児短時間勤務(時短勤務)とは — 定義と法的根拠

「所定労働時間の短縮」が意味すること

「所定労働時間(しょていろうどうじかん)」とは、雇用契約や就業規則で定められた、1日・1週間あたりの通常の労働時間のことです。時短勤務制度は、この所定労働時間を一定期間にわたって短縮することを事業主に義務付ける制度であり、欠勤・遅刻・早退とは法的に区別されます。子育て中の労働者が育児の負担を調整しながら就業を継続できるよう、育介法は事業主に対して措置の整備を求めています。

なお、「時短勤務」は法令上の正式名称ではなく、「所定労働時間の短縮措置」の通称として職場・メディアで広く使われている言葉です。法令の条文には「所定労働時間の短縮措置」と記載されており、会社の就業規則や労使協定でもこの名称が使われることがあります。

育介法第23条の規定概要

育児・介護休業法(正式名称: 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)第23条(所定労働時間の短縮措置等)は、3歳未満の子を養育する労働者が申出を行った場合、事業主が所定労働時間を短縮する措置を講じなければならないと定めています。この義務は、常時雇用する労働者の人数に関わらず、すべての事業主に適用されます。

短縮後の労働時間の具体的な基準は厚生労働省令(育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則)で定められています。条文の詳細はe-Gov法令検索または厚生労働省の「育児・介護休業法のあらまし」でご確認ください。

時短勤務が認められる期間

育介法第23条に基づく時短勤務は、対象となる子が3歳に達するまでの期間、労働者の申出によって取得できます。育児休業が終了した直後から3歳到達まで継続して利用することも、育休とは別に就業しながら申出ることも可能です。

申出方法や申出時期については、会社ごとに育児・介護休業規程を整備することが義務付けられています。育休復帰前に人事部門へ申出の流れを確認することが実務上のポイントです。制度の全体的な流れについては育児・介護休業法 2025年改正|4月・10月の2段階施行をわかりやすく解説も参照してください。

時短勤務の申請要件と事業主の義務

対象となる労働者

育介法第23条に基づく時短勤務の申出が認められる対象は、3歳未満の子を養育する労働者です。雇用形態は問わず、雇用期間の定めのない正規労働者だけでなく、一定要件を満たす有期雇用労働者も対象となります。

有期雇用労働者については、申出時点での雇用継続見込みなど、育介法の定める要件を満たすことが必要です。日々雇用の方については対象外となる場合があります。要件の詳細は就業規則や厚生労働省の公式資料、あるいは都道府県労働局の相談窓口でご確認ください。

事業主が措置を講じなくてよいケース(労使協定による除外)

育介法は、以下のいずれかに該当する労働者を、労使協定(会社と労働組合または過半数代表者との書面による協定)によって所定労働時間の短縮措置の対象から除外できると定めています。

  • 1日の所定労働時間が省令で定める時間数以下である労働者
  • 勤続1年未満の労働者
  • 業務の性質または業務の実施体制に照らして、所定労働時間を短縮する措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者

ただし、労使協定で対象から除外した労働者に対しても、事業主はフレックスタイム制・始業終業時刻の繰上げ繰下げ・保育施設の設置・育休の代替手段など他の措置を講ずるよう努める義務が課されています。

不利益取り扱いの禁止と相談の流れ

正当な申出に対して時短勤務を拒否したり、時短勤務の取得を理由として解雇・降格・減給などの不利益な取り扱いを行うことは、育介法の趣旨に照らして問題があるとされる可能性があります。また、時短勤務の取得を申出したことを理由とした嫌がらせや過度な業務縮減も、ハラスメント(マタハラ・パタハラ)の観点から問題視されます。

不利益取り扱いが疑われる場合、都道府県労働局への相談・あっせん申請が利用できます。育休後の職場復帰に伴うキャリア問題についてはマミートラックとは|育休復帰後のキャリア断絶・時短勤務の壁と法的対応【2026年版】も参照してください。

時短勤務中の給与・社会保険・給付金

給与の考え方

時短勤務中の給与は、原則として「実際に働いた時間に応じた賃金」となります。フルタイム時の基本給から時間比例で控除する方法が広く採用されていますが、固定給・手当・賞与の扱いは就業規則によって異なります。

時短勤務を理由に就業規則・労働契約に定めのない一方的な減給を行った場合、労働契約法上の問題が生じる可能性があります(断定ではなく、個別事案ごとの判断が必要です)。給与計算の具体的な仕組みに疑問がある場合は、会社の人事部門または都道府県労働局の総合労働相談コーナーへご相談ください。

社会保険料と将来の年金への影響

時短勤務によって月給が下がると、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額が低下する場合があります。標準報酬月額は毎年4月~6月の報酬平均で定時決定されるほか、3か月平均で2等級以上変動した場合の随時改定(月変)で見直される仕組みがあります(詳細はe-Gov法令検索で健康保険法・厚生年金保険法をご確認ください)。

標準報酬月額が下がると、老齢厚生年金の報酬比例部分の計算基礎が低くなるため、将来の年金受給額に影響します。これは女性が時短勤務を長期にわたって利用する場合に特に注意が必要な点です。老齢年金の男女格差については老齢年金の男女格差統計|第3号被保険者と受給額データ【2026年版】も参照してください。

育児時短就業給付金(2025年新設)との組み合わせ

2025年施行の雇用保険法改正により、育児休業から職場復帰した後に時短勤務を行う場合に「育児時短就業給付金」が支給される制度が新設されました。本給付金は、時短勤務によって生じる賃金の減少分の一部を雇用保険から補塡するものです。時短勤務中の給与水準を底上げし、職場復帰を促進することが制度の目的の一つです。

給付率・受給要件・申請方法の詳細は、ハローワークまたは厚生労働省の公式資料をご確認ください。育休中の給付金全般については育児休業給付金とは|受給要件・支給額の計算と2025年新設の育児時短就業給付金【2026年版】に詳しく解説しています。

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育児中の働き方調整制度を比較する

制度名(通称) 根拠条文(育介法) 対象となる子の年齢 内容の概要 申出の義務
時短勤務(所定労働時間の短縮措置) 第23条 3歳未満 事業主が所定労働時間を短縮する措置を設ける義務 事業主に義務
柔軟な働き方確保措置 第23条の3(2025-10-01施行) 3歳以上・小学校就学前まで 5つの選択肢から2つ以上を整備する義務。時短・フレックス・テレワーク等 事業主に義務(選択肢の整備)
残業免除(所定外労働の制限) 第16条の8 小学校就学の始期に達するまで 労働者の申出により所定外労働(残業)を免除 労働者が申出
時間外労働の制限 第17条 小学校就学の始期に達するまで 1月24時間・1年150時間を超える時間外労働の制限 労働者が申出
深夜業の制限 第19条 小学校就学の始期に達するまで 午後10時から午前5時までの労働を制限 労働者が申出
子の看護等休暇 第16条の2・第16条の3 9歳に達する日以後の最初の3月31日まで 子の病気・けが・予防接種等のための休暇(2025年改正で対象拡大) 労働者が申出

各制度は目的・対象期間が異なります。残業免除(育介法第16条の8)について詳しくは育児中の残業免除(所定外労働の制限)とは|育介法第16条の8の要件・申請と2025年改正ポイント【2026年版】を、子の看護等休暇については子の看護等休暇とは|2025年育介法改正で変わった対象年齢・取得事由と職場実態【2026年版】をご参照ください。

2025年改正で新設された「柔軟な働き方確保措置」(育介法第23条の3)

改正の背景と「3歳の壁」

従来の時短勤務(育介法第23条)は、対象が3歳未満の子に限られていたため、子が3歳になると制度の適用が終わり、それ以降は事業主の任意対応となっていました。しかし、幼稚園・保育所の保育時間や小学校入学後の学童保育との兼ね合いから、3歳以降も親が働き続けるうえでの調整が必要な時期が続きます。

このような「3歳の壁」の問題に対応するため、令和6年の育介法改正(2025年10月1日施行)により、育介法第23条の3として「柔軟な働き方を実現するための措置」が新設されました。

5つの措置の選択肢と事業主の義務

育介法第23条の3は、3歳以上・小学校就学前の子を養育する労働者を対象に、事業主が以下の5つの措置のうち2つ以上を選択して整備することを義務付けています。

  1. 所定労働時間の短縮措置(時短勤務)
  2. フレックスタイム制
  3. 始業・終業時刻の繰上げまたは繰下げ(時差出勤)
  4. 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
  5. テレワーク等(就業の場所についての制約を受けないことを可能にする措置)

対象労働者は、事業主が整備した2つ以上の選択肢の中から希望する措置を申出ることができます。5つの選択肢の詳細な要件については、e-Gov法令検索(育介法第23条の3)または厚生労働省の公式資料をご確認ください。

既存の時短勤務(第23条)との選択関係

育介法第23条の3は、第23条(3歳未満対象)とは独立した制度として規定されています。子が3歳になった後も第23条の3の枠組みで引き続き就労調整が可能ですが、重要な注意点があります。

事業主は5つの選択肢から2つ以上を選んで整備すればよく、必ずしも「時短勤務」を整備する義務はありません。たとえば「フレックスタイム制」と「時差出勤」の2つを整備した場合、労働者が時短勤務を希望しても事業主は応じる義務を負いません。整備された選択肢が自分のニーズに合うかどうかを確認することが必要です。詳細な解説は柔軟な働き方確保措置とは|育介法2025年改正で義務化した時短・テレワーク・フレックス活用【2026年版】をご覧ください。

現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

  • 2010年育介法改正施行: 3歳未満の子への時短勤務措置の義務化(それ以前は「努力義務」)。父親の育休特例(パパ・ママ育休プラス)も同時新設。
  • 2022年10月施行・産後パパ育休(出生時育児休業)新設: 育介法第9条の2~第9条の5として、子の出生後8週間以内に最大4週間取得できる男性向け制度が創設された(産後パパ育休とは【2026年版】参照)。
  • 2025年4月施行: 育介法第22条の2(育休取得状況の公表義務)の対象が常時雇用1,000人超から常時雇用300人超に拡大。
  • 2025年10月施行: 育介法第23条の3(柔軟な働き方確保措置)新設。3歳以上・小学校就学前を対象に、5つの措置から2以上を整備する義務が事業主に課された。

議論の現在地

時短勤務制度をめぐっては、「育児中の就業継続を可能にする不可欠な制度である」という評価と、「活用が女性に偏るため、結果としてキャリア格差を固定化している」という批判的な見方の両面が示されています。

女性の育児休業取得率が88.3%(令和7年度・厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」・2026年7月31日公表)に対し、男性は50.9%(同調査)という格差がある現在、育休後に時短勤務を利用するのも女性が多い傾向があります。これにより、時短勤務取得者が評価や昇進において不利に置かれる状況が生じているという指摘は継続しています。

一方、男性の時短勤務取得は依然として少なく、「父親が時短を使うと職場で評価が下がる」という職場文化の根強さも報告されています。第6次男女共同参画基本計画(令和8年3月13日閣議決定)は民間企業の男性育児休業取得率を2030年に85%とする目標を掲げており、育休後の時短勤務も含めた男性の育児参画の拡大が今後の政策的な焦点の一つとなっています。

ジェンダー・ギャップ指数(GGI)では日本は118位(148か国中・スコア0.666、世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2025」2025年6月12日発表)と低迷しており、経済参画分野の格差是正には職場における育児支援制度の実効的な活用が不可欠とされています。

残された課題

いくつかの構造的課題が残されています。

第一に、時短勤務中の人事評価の扱いの不透明さです。育介法は不利益取り扱いを禁じていますが、成果評価の指標が変わらないまま「短い時間で同等の成果」を求められる状況は、フルタイムと同一基準での評価が困難なことから紛争につながりやすいとされています。

第二に、非正規雇用労働者への適用の不均等です。有期雇用・パートタイム労働者が時短勤務を申出た場合の要件や処遇は正規労働者と異なる面があり、育休の利用においても雇用形態間の格差が残っています。

第三に、第23条の3(柔軟な働き方確保措置)における選択肢の偏りです。事業主が整備する2つ以上の選択肢に時短勤務が含まれない場合、時短を希望する労働者はその選択肢を使えません。労働者の実際のニーズと事業主が整備する選択肢のミスマッチが生じる可能性は、制度設計上の課題として指摘されています。

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公的相談窓口

  • 都道府県労働局・ハローワーク(育児・介護休業に関する相談): 育介法の適用・時短勤務の申出対応・不利益取り扱いに関する無料相談。最寄りの都道府県労働局または労働基準監督署で受け付けています。
  • 総合労働相談コーナー(厚生労働省設置・全国約380か所): 労働問題全般の電話・来所相談。受付時間など詳細は厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/)でご確認ください。
  • 法テラス(日本司法支援センター) 電話: 0570-078374: 不利益取り扱いや賃金トラブルについて法律相談が必要な場合にご利用ください。経済的に困難な状況にある方は無料法律相談制度を利用できます。

まとめ

育児短時間勤務(時短勤務)は、育介法第23条に基づき事業主が3歳未満の子を養育する労働者に対して整備しなければならない制度です。2025年10月に施行された育介法第23条の3(柔軟な働き方確保措置)により、3歳以上・小学校就学前の子についても事業主に整備義務が課されました。

一方で、時短勤務の利用が女性に偏ることによるキャリア格差の固定化・非正規労働者への適用の不均等・評価基準の不透明さという課題も残っています。制度の権利を正確に把握し、必要な場合は公的相談窓口を活用することが、職場でのよりよい活用につながります。

具体的な事案については、都道府県労働局・法テラスなど専門家への相談をご検討ください。

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育児短時間勤務(時短勤務)とは|育介法第23条の要件・給与への影響と2026年の実態 - まとめ

よくある質問

時短勤務はいつまで取ることができますか?
育介法第23条に基づく時短勤務は、対象となる子が3歳に達するまでの期間取得できます。3歳以降・小学校就学前については、2025年10月施行の育介法第23条の3(柔軟な働き方確保措置)に基づき、事業主が整備した5種類の措置の中から申出ることができます。措置の内容は事業主によって異なるため、自社の育児・介護休業規程を確認してください。
時短勤務を理由に評価を下げることは許されますか?
育介法は、育休・時短勤務の取得を理由とした不利益取り扱いを禁じています。評価指標が変わらないまま時間が短縮されることで実質的に不利になる場合も、育介法の趣旨に照らして問題があるとされる可能性があります(個別事案ごとの判断が必要です)。不利益取り扱いが疑われる場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーへご相談ください。
会社が時短勤務の申出を拒否できる場合はありますか?
育介法は、労使協定を締結している場合に限り、一定の労働者(1日の所定労働時間が省令所定の時間数以下の方・勤続1年未満の方・業務の性質上措置が困難な方)を対象外とすることを認めています。ただし、対象外とした場合も事業主は代替措置を講ずる努力義務を負います。詳細はe-Gov法令検索(育介法第23条)または都道府県労働局でご確認ください。
男性も時短勤務を取ることができますか?
はい、取ることができます。育介法第23条は男女を問わず、3歳未満の子を養育するすべての労働者を対象としています。男性の育児休業取得率は50.9%(令和7年度・厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」・2026年7月31日公表)まで上昇していますが、時短勤務の利用はまだ女性に集中しているのが現状です。
時短勤務中に育児時短就業給付金はもらえますか?
2025年施行の雇用保険法改正により、育児休業から復帰した後に時短勤務を行う方を対象とした「育児時短就業給付金」が新設されました。育休後の時短勤務中に要件を満たせば受給できる可能性があります。受給要件・支給額の詳細は、ハローワークまたは厚生労働省の公式資料でご確認ください。

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