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テレワーク・在宅勤務とジェンダー格差|コロナ後の働き方変革と女性への影響【2026年版】

コロナ禍を契機に急速に普及したテレワーク(在宅勤務)は、育児や介護を担う人々の働き方を大きく変えました。通勤時間の削減や場所を選ばない勤務スタイルは、とりわけ育児中の女性の就業継続を後押しする面があるとされています。一方で、「家にいるのだから家事・育児もこなして」という周囲の期待が強まり、在宅勤務者の無償ケア労働(アンペイドワーク)が増加したという調査結果も報告されています。さらに、オフィスへの出社機会が減ることで成果の可視化が難しくなり、昇進・昇給において在宅勤務者が不利になるという新たな格差も指摘されています。

本記事では、テレワークとジェンダー格差の関係を、男女雇用機会均等法育児・介護休業法女性活躍推進法などの法的枠組みと内閣府の統計データをもとに整理します。職場のハラスメント窓口担当者や人事マネージャー、育休復帰後の働き方を模索している方、男女共同参画政策に関心のある市民の方に向けて、2026年時点の現状と課題を解説します。

目次

テレワーク(在宅勤務)とはどのような働き方か

テレワークの定義と法令上の位置づけ

テレワーク(Telework)は、情報通信技術(ICT)を活用し、時間や場所を柔軟に選択できる働き方の総称です。厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021年改定)では、①在宅勤務、②モバイルワーク、③サテライトオフィス勤務の3形態に整理されています。

労働基準法(最終改正:2023年施行)の労働時間規制は原則として在宅勤務にも適用されます。ただし、第38条の2「事業場外みなし労働時間制」を採用する企業も多く、適用の範囲や条件は個別の就業規則・労使協定によって異なります。テレワーク勤務者の労働時間管理を適切に行うための記録義務や安全衛生面での配慮は、同ガイドラインにおいて事業主に求められています。

テレワーク普及の経緯と2026年時点の状況

2020年のコロナ禍以前、日本のテレワーク導入率は欧米諸国と比較して低水準にとどまっていました。緊急事態宣言を契機に導入が急拡大しましたが、内閣府「テレワーク人口実態調査(2023年)」によると、2023年時点の就業者全体のテレワーク実施率は約15~20%程度まで低下し、コロナ収束後の「出社回帰」の動きが顕著になっています。業種別では情報通信業・金融・保険業で継続率が高い一方、介護・医療・製造業の現場部門では実施が構造的に困難であり、テレワーク恩恵を受けられる職種には明確な偏りがあります。

男女共同参画との法的接点

男女共同参画社会基本法(1999年施行)第13条は「雇用等の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保」を基本施策として位置づけています。テレワークはこの文脈で「女性の就業継続を支援する柔軟な働き方」として政策的に推進される一方、「テレワーク=女性のための働き方」という固定的な位置づけが、かえってジェンダー(社会的・文化的に形成された性別。生物学的性別=セックスと区別される概念)規範を温存するという批判もあります。

テレワークがジェンダー平等にもたらしたプラスの変化

育児・介護との両立しやすさ

通勤時間の削減は、子育てや介護を担う就業者の時間的余裕を生みます。独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査では、在宅勤務導入後に「仕事と家庭の両立がしやすくなった」と感じた女性の割合が男性を上回る傾向が示されています。

育児・介護休業法(最終改正:令和6年法律第42号・2025年10月1日施行)第23条は、3歳未満の子を養育する労働者が所定外労働の免除を請求できると定めています。この制度とテレワークを組み合わせることで、育休復帰後の就業継続率が高まるという企業事例も複数報告されています。また、2025年4月施行の同法改正により、子が3歳以降小学校就学前まで「柔軟な働き方確保措置」(テレワーク・時短・フレックス等から選択)の提供が事業主に義務づけられたことで、テレワークの制度的位置づけはさらに明確になりました。

就業継続率への影響

女性が育児・介護を理由に離職する「M字カーブ(女性の年齢別就業率がアルファベットのMに似た形状を描く現象)」問題は、テレワーク普及によって一定程度緩和されたとする研究があります。厚生労働省「令和6年版働く女性の実情」では、女性の就業率はM字型から台形型に移行しつつあると指摘されており、テレワーク可能な職種での就業継続率向上がその要因の一つとされています。

地理的制約の緩和と多様な就業機会

配偶者の転勤に伴ってU・Iターンを余儀なくされる場合でも、テレワーク可能な職種であれば同一企業・同一職務での勤務を継続できる環境が整いつつあります。これまで「転勤に同行するために離職した」女性が経験してきたキャリア断絶を回避できる可能性が生まれており、地方在住者や障害のある方の就業機会拡大にもつながっています。

テレワークが生んだ新たなジェンダー格差

無償ケア労働(アンペイドワーク)の増加

在宅勤務により「家にいる時間」が増えると、家事・育児・介護への関与を周囲から期待されやすくなるという問題があります。無償ケア労働(アンペイドワーク:家事・育児・介護など市場で評価されない労働)の担い手は依然として女性に偏っており、内閣府「社会生活基本調査(2021年)」によると、1日あたりの家事・育児時間は女性が男性の約5倍に上ります。テレワーク中に断続的に家事を頼まれる状況が積み重なり、実質的な就業時間が削られるという実態は、在宅勤務者のウェルビーイング(心理的・身体的な充足状態)調査でも繰り返し報告されています。

「見えない評価格差」とキャリアへの影響

テレワーク環境では、上司や同僚の目に触れる機会が減るため、成果の可視化が難しくなります。対面での雑談・相談・会議への参加頻度が評価に影響しやすい日本型職場では、在宅勤務者が「存在感が薄い」として昇進・昇給で不利になるリスクがあります。育休取得後や時短勤務中にテレワークを活用する人の多くが女性であるため、この評価格差はジェンダー格差として現れやすい構造を持っています。内閣府「男女共同参画白書(2024年版)」でも、女性管理職比率の伸び悩みと在宅勤務の評価制度整備の遅れが同時に課題として指摘されています。

テレワーク・ハラスメント(テレハラ)の発生

「なぜ在宅勤務なのに育児の音が聞こえるのか」「自宅の様子をカメラで見せろ」「オンライン会議中は常にカメラをオンにしておけ」といった言動は、「テレワーク・ハラスメント(テレハラ)」として問題視されています。労働施策総合推進法(パワーハラスメント防止法。最終改正:令和7年法律第63号・2026年4月1日施行)第30条の2(2026年10月1日以降は第31条)は、すべての事業主にパワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置を義務づけており、テレワーク環境でのハラスメントもその対象となります。テレハラに特化した法令上の定義は現時点では存在しませんが、既存のパワハラ6類型(精神的な攻撃・過大な要求・個の侵害等)や均等法上のセクシュアルハラスメント規定を適用して対応することになります。

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現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

テレワークとジェンダー格差に関連する主な法改正の流れは以下のとおりです。

  • 2007年 男女雇用機会均等法・育介法改正:間接差別規制の明確化、マタハラ防止措置の指針整備
  • 2015年 女性活躍推進法(最終改正:令和7年法律第63号・2026年4月1日施行)成立:従業員101人以上の企業に行動計画策定・情報公表の義務
  • 2019年 働き方改革関連法施行:時間外労働上限規制・フレックスタイム制拡充・高度プロフェッショナル制度創設
  • 2020年 労働施策総合推進法改正(パワハラ防止法):大企業から義務化、2022年に中小企業も対象
  • 2021年 厚生労働省「テレワークガイドライン」改定:適切な労務管理・健康確保の手法を整理
  • 2022年 育介法改正:産後パパ育休(出生時育児休業)新設、男性育休取得率の公表義務化
  • 2025年4月・10月 育介法改正施行:子が3歳以降小学校就学前までの「柔軟な働き方確保措置」(テレワーク・フレックス・時短・保育施設の設置・始業時刻等変更から選択)の提供を事業主に義務化

議論の現在地

テレワークとジェンダー格差をめぐる議論は、大きく「テレワーク拡大推進派」と「テレワーク依存の危うさを指摘する立場」に分かれます。前者は、育児・介護との両立や地方在住者の就業機会拡大に有効として積極的な導入を求めます。後者は、テレワークが「女性の役割は家庭」というジェンダー規範を温存・強化するリスクや、男性の育休・家事参加を同時に促さない限り根本的な格差は縮小しないと指摘します。

国内の研究では、テレワーク導入企業でも女性の昇進速度に統計的な差が残るケースが報告されており、「テレワーク=女性活躍」という単純な図式への批判が高まっています。政府の第6次男女共同参画基本計画(令和8年3月13日閣議決定)においても、テレワーク活用と男性の家事・育児参加の両輪を同時に推進する方針が示されており、一方に偏った施策では効果が限定的になるとの認識が共有されつつあります。

残された課題

第一に、テレワーク非適用職種(医療・介護・製造業の現場等)で働く女性には恩恵が届かない「デジタル格差×ジェンダー格差」の重複問題があります。日本の雇用者に占める非正規雇用者の割合は約37%(令和6年版労働経済白書)であり、その多くが女性です。非正規雇用者はテレワーク適用外とされるケースが多く、政策的な手当てが必要です。

第二に、在宅勤務中の労働時間とアンペイドワーク時間を切り分ける法的基準が未整備のままです。家事・育児に起因する業務集中力の低下や時間損失は、現行法では「個人の問題」として処理されることが多く、企業・社会が担うべきコストとして再定義する議論は途上にあります。第三に、テレワーク下での人事評価制度の透明化・客観化が進んでいないため、成果主義を形式的に導入しても運用が属人的になりがちです。

テレワーク普及とジェンダー影響の比較整理

観点 プラスの影響 マイナスの影響・課題
就業継続 育児・介護との両立しやすさ向上、M字カーブの緩和 テレワーク非適用職種(介護・製造現場等)には恩恵が届かない
時間管理 通勤時間の削減で可処分時間が増加 アンペイドワークへの割り込みが増え実質就業時間が減少
キャリア形成 地方在住者・転勤帯同者のキャリア継続が可能に 「見えない評価格差」で昇進・昇給が不利になるリスク
ハラスメント 対面でのセクハラ・パワハラリスクの一部が低減 テレハラ(カメラ強制・家庭事情への言及等)が新たに発生
ジェンダー規範 男性の家事・育児参加の機会が増える可能性 「在宅=主たる家事担当者」という規範を強化するリスク
雇用形態 正規雇用者を中心に柔軟な勤務が拡大 非正規雇用者・現場職はテレワーク対象外で格差が拡大
法制度 育介法2025年改正で柔軟な働き方確保措置が義務化 テレハラの法的定義未整備、評価制度の透明化基準が未策定
表:テレワーク普及がジェンダー格差に与えるプラス面とマイナス面の整理(2026年時点)

企業・個人・政策それぞれの対応

企業に求められる取り組み

まず、テレワーク勤務者も含めた公平な人事評価制度の整備が求められます。プロセスではなく成果・貢献度を可視化する評価指標の設計、定期的な1on1ミーティングによる状況把握が有効です。また、女性活躍推進法第8条に基づく一般事業主行動計画の中に、テレワーク下での女性管理職育成目標を明示している企業は増えつつありますが、数値目標の実効性を検証する仕組みが必要です。

テレハラについては、労働施策総合推進法第30条の2(2026年10月1日以降は第31条)に基づくパワハラ防止措置の一環として、テレワーク特有の禁止行為をハラスメント防止方針に明記し、相談窓口へのアクセスをオンラインでも保証することが求められます。

個人・家庭でできること

テレワーク環境では、就業時間と生活時間の境界を自ら設定する必要があります。パートナーとの間で家事・育児の役割分担を可視化・言語化し、「在宅勤務者が家事をやる」という暗黙の前提を積極的に見直すことが、家庭内ジェンダー格差の是正につながります。具体的には、家事分担表の作成、保育・家事サービスの活用、管理者との業務量の明示的なすり合わせなどが挙げられます。

ハラスメントを受けた場合は、証拠(メール・チャット・録音等)を保存したうえで、社内ハラスメント相談窓口または外部の相談機関(後述)に相談することを検討してください。具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

政策・法制度の方向性

2025年10月施行の育介法改正(柔軟な働き方確保措置)は、テレワークを法制度に組み込む重要な一歩です。今後の課題としては、①テレワーク非適用職種への代替的柔軟化措置の拡充、②テレワーク下の労働時間管理基準の明確化、③男性の育休・家事参加促進との一体的推進、の3点が政策的ウォッチポイントとなります。なお、内閣府の第6次男女共同参画基本計画(令和8年3月13日閣議決定)では「男性の家庭生活への参画促進」が重点分野として位置づけられており、テレワーク政策との統合が期待されています。

公的相談窓口

職場の権利・ハラスメント相談

  • 総合労働相談コーナー(厚生労働省):都道府県労働局に設置。解雇・ハラスメント・労働条件等の相談を無料で受け付けています。電話:各都道府県労働局代表番号(厚生労働省ウェブサイトで検索可能)
  • 女性の労働相談(都道府県労働局雇用環境・均等部(室)):マタハラ・パタハラ・セクハラ等、均等法・育介法に関する相談窓口。
  • 法テラス(日本司法支援センター):電話0570-078374。弁護士費用の立替制度(審査あり)や法的問題の総合案内。

育児・介護・ワークライフバランス相談

  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応)。育児不安・介護疲れ・働き方の悩みなど広く対応。
  • 都道府県・市区町村の男女共同参画センター:生き方・働き方・ハラスメント等の面談相談。各自治体ウェブサイトで検索可能。

まとめ

テレワーク(在宅勤務)は、育児・介護との両立や地理的制約の緩和という点でジェンダー平等に貢献する可能性を持つ一方、アンペイドワークの増加・評価格差・テレハラという新たな課題も生んでいます。2025年施行の育児・介護休業法改正により、テレワークは柔軟な働き方確保措置として法制化された重要な選択肢となりましたが、制度の存在だけでは職場・家庭のジェンダー構造は変わりません。

男女ともに働きやすい職場環境を実現するためには、企業による評価制度の透明化とハラスメント防止の徹底、家庭内での役割分担の見直し、そして「テレワークは特定の性別のための制度ではない」という認識の共有が不可欠です。テレワーク政策と男性の育休・家事参加促進を一体で進めることが、2026年以降の男女共同参画の鍵となります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. テレワーク中のハラスメントはパワハラ防止法の対象になりますか?

テレワーク環境で発生するハラスメントも、労働施策総合推進法(パワーハラスメント防止法)第30条の2(2026年10月1日以降は第31条)に基づく事業主の防止措置義務の対象となります。「カメラを常時オンにすることを強要する」「自宅の様子を詮索する」「育児中であることを理由に不利益な言動をする」などはパワハラ6類型(特に「個の侵害」「精神的な攻撃」)に該当する可能性があるとされています。具体的な判断は個別事案によるため、専門家への相談をご検討ください。

Q2. 育休復帰後にテレワークを希望する場合、会社は必ず認めなければなりませんか?

2025年10月施行の育児・介護休業法改正により、3歳以降小学校就学前の子を養育する労働者を対象に、事業主は「柔軟な働き方確保措置」(テレワーク・時短・フレックス・保育施設の設置等から選択)を講じる義務を負います。ただし、これは事業主が「制度として設ける義務」であり、労働者個人の申請に対して必ず認可する義務を一律に定めたものではなく、業務上の必要性等を踏まえた運用が想定されています。詳細は各都道府県労働局へご確認ください。

Q3. テレワーク中に家事・育児を優先させることで業務が遅れた場合、どのような扱いになりますか?

労働基準法が適用される就業者については、テレワーク中であっても労働時間の管理義務は事業主にあります。業務時間中に家事・育児に時間を要した場合の取り扱い(みなし時間・実働時間のカウント方法等)は、就業規則・労使協定の定めに基づきます。業務の遅延が継続する場合は、業務量・スケジュールについて上司や人事担当者と相談することが推奨されます。

Q4. 男性がテレワーク中に積極的に家事・育児をすることは法律で支援されていますか?

育児・介護休業法の産後パパ育休(出生時育児休業)は、子の出生後8週間以内に最大4週間(2回に分割可)の休業を男性が取得できる制度として2022年10月に新設されました。また、2025年改正で3歳未満の子を養育する男性労働者に対しても柔軟な働き方確保措置が適用されるようになっており、男性のテレワーク活用と家事・育児参加を後押しする制度的環境は整備されつつあります。

Q5. テレワークの普及は日本のジェンダーギャップ指数改善につながっていますか?

世界経済フォーラム(WEF)のジェンダーギャップ指数(GGI)において日本は2025年に118位(148か国中)と低位にあります。テレワーク普及は「経済参加・機会」分野の改善に貢献しうる要素ですが、管理職・役員比率の低さや賃金格差が根強く、テレワーク単体での指数改善効果は限定的とみられています。GGIの改善には、政治・教育分野も含めた複合的な施策が必要です。

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