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移住・外国籍女性の権利と男女共同参画|入管制度・DV支援と2026年の課題

日本に暮らす外国籍女性の数は年々増加しており、2024年末の在留外国人総数は約370万7,000人と過去最多を更新しました。そのうち女性は全体の約44%にあたる約163万人前後と推計され、配偶者・育成就労(旧技能実習)・特定技能・留学など多様な在留資格で日本社会で生活しています。しかし、移住女性が直面する困難は日本人女性のそれとは質的に異なる側面を持ちます。在留資格と婚姻継続が連動するケース、言語バリア、「相談したら強制帰国になるかもしれない」という恐れからDV相談をためらう構造……。これらは、男女共同参画社会基本法(1999年制定)が第3条で掲げる「男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮できる」社会と現実との大きなギャップを示しています。

本記事では、日本に暮らす外国籍・移住女性が直面するジェンダー課題を、在留外国人制度・DV防止法・育成就労制度・男女共同参画施策の枠組みから整理します。2007年時点から2026年現在への制度変化、国連女性差別撤廃条約(CEDAW: Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination Against Women)が日本政府に求める課題、支援制度の現状までを体系的に解説します。企業の人事・多文化共生担当者、支援団体スタッフ、行政の男女共同参画推進員、外国籍パートナーを持つ方の参考としてお役立てください。

目次

日本に暮らす外国籍・移住女性の現状

在留外国人女性の規模と在留資格構成

法務省「在留外国人統計」(2024年末)によると、在留外国人総数は約370万7,000人で前年比約15万人増となりました。女性の割合は全体の約44%で、国籍別ではベトナム、中国、フィリピン、韓国・朝鮮、ブラジル、インドネシアが上位を占め、近年はミャンマー・ネパール・インドからの増加が顕著です。

在留資格別の女性構成を見ると、「永住者」「日本人の配偶者等」「定住者」の割合が相対的に高い点が特徴的です。配偶者資格は本質的に配偶者となる日本人(または永住者)との婚姻継続を前提とするため、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害を受けても「離婚すれば在留資格を失う」という恐れが被害女性のSOSを遅らせる構造的要因となっています。内閣府のDV相談窓口への相談記録においても、外国籍女性からの相談では在留資格への不安が相談遅延の主因として繰り返し報告されています。

主な在留資格と女性が直面しやすいリスク

在留資格ごとに女性が直面しやすいリスクは異なります。配偶者ビザ(日本人の配偶者等・永住者の配偶者等)では、配偶者関係の継続が在留条件に直結するため、DVからの離脱をためらいやすい構造があります。パスポートや在留カードを配偶者に管理されるケースもあり、情報アクセス格差が相談へのアクセスをさらに阻みます。

育成就労資格(2024年施行前は技能実習)では、雇用主・監理団体への強い依存関係のなかで、妊娠・出産による「強制帰国」圧力や寮管理などの行動統制が問題視されてきました。法務省の調査では、技能実習生への人権侵害事案のなかに性的被害が含まれていたことも記録されています。留学生については、アルバイト依存の生活実態が性的サービス業への誘引リスクを高めるケースが指摘されており、AV出演被害防止・救済法(2022年成立)の立法過程でも外国籍留学生の被害事例が参照されました。

男女共同参画社会基本法と外国籍居住者の関係

法の「国民」概念と外国籍者への適用

男女共同参画社会基本法(最終改正令和7年法律第80号・2026年4月1日施行)の第10条は「国民の責務」を規定し、「国民は……男女共同参画社会の形成に寄与するよう努めなければならない」としています。法文は「国民」を主語に用いていますが、第3条(男女の人権の尊重)・第7条(国際的協調)において人権尊重と国際基準への協調を明記しており、外国籍居住者を明示的に排除する規定は存在しません。

内閣府男女共同参画局は第5次・第6次男女共同参画基本計画において「困難を抱える女性への支援」分野に外国籍女性を位置づけており、基本法の精神は在留外国人にも及ぶと解されています。第6次基本計画は令和8年3月13日に閣議決定されており、「多文化共生と男女共同参画の連携強化」の扱いは計画本文(第2部 政策編)で確認できます。

地方自治体の多文化共生施策との連携

都道府県・市区町村が制定する男女共同参画条例の中には、「すべての人が」「すべての市民が」という表現を採用し、外国籍居住者を実質的に包含する形で規定するものが増えています。多文化共生と男女共同参画の連携モデルとして、外国籍女性向けの多言語対応DV相談窓口を男女共同参画センターと一体運営する自治体(浜松市・豊田市・大阪市等)の実践が他自治体への参考事例として挙げられています。

2006年に総務省が策定した「地域における多文化共生推進プラン」(2020年改訂)は、外国人住民への情報提供・相談体制の整備を自治体に求めており、男女共同参画施策との連携が自治体政策の現場で生まれています。ただし、外国語で対応できる相談員の確保や通訳費用の公費負担については、自治体間の格差が依然大きい状況です。

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移住女性が直面する主なジェンダー課題

DVと在留資格の構造的矛盾

外国籍女性がDV被害を受けながら相談できない最大の理由として挙げられるのが、「相談・離脱すれば在留資格を失うのではないか」という恐れです。しかし、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法、最終改正令和8年法律第46号・2026年6月24日公布)は外国籍被害者も保護命令申立の対象としており、在留資格の種類にかかわらず第10条第1項に基づく申立てが可能です。

出入国在留管理庁は2021年に「DV等の被害を受けた方に対する在留上の措置について」を公示し、DVを理由に配偶者の元を離れた外国籍女性であっても、在留期間更新・資格変更において一律に不利益を受けないことを明確にしました。2024年のDV防止法改正(精神的暴力・自由の制限への保護命令対象拡大)後も同趣旨の運用方針が継続されています。

しかし実態として、言語バリア・配偶者によるパスポートや在留カードの管理・孤立状態・情報アクセス格差により、外国籍女性が支援機関に接続するまでに時間がかかるケースが依然として多く報告されています。NPO「女性の家HELP」(東京)をはじめとする民間支援団体が外国語・多言語対応でシェルター提供や法的支援を担っている現状があり、公的支援との連携が課題となっています。

技能実習制度から育成就労制度への移行

日本は外国人技能実習法(2017年制定)のもとで多くの外国人労働者を受け入れてきましたが、「転籍の自由のなさ」「監理団体への過度な依存」「妊娠・出産による帰国圧力」といったジェンダー搾取的側面がNGO・研究者・国連機関から長年にわたり批判されてきました。

2024年施行の育成就労制度(外国人の技能育成及び就労に関する法律)は、一定期間(原則1年)後の転籍を認める方向に改善されましたが、最長1年間の転籍制限が残り、DVや職場ハラスメント被害を受けた女性が即座に雇用者から離脱できない課題は残存しています。ただし、育成就労法施行規則は「妊娠・出産等を理由とする育成就労計画の取消しは禁止」を明文化しており、この点では前制度から一歩前進しています。

社会保障・医療アクセスの格差

在留外国人は国民健康保険への加入義務があるものの、雇用主による加入手続きの不備・短期在留による適用除外・保険料負担の困難などで未加入状態が生じるケースがあります。産前産後ケア、性犯罪被害後ワンストップ支援センター、精神保健福祉センターへのアクセスにおいても、言語バリアと費用が実質的な障壁となっています。第6次男女共同参画基本計画(令和8年3月13日閣議決定)では「困難な立場に置かれた女性への支援」分野に外国籍女性が明示され、多言語対応相談体制の整備・拡充が政策課題として位置づけられています。

現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

2007年以降、外国籍女性に直接・間接に影響を与えた主な法改正・新法は以下の通りです。

  • 出入国管理及び難民認定法改正(2009年):在留カード制度導入、外国人登録制度廃止。住基台帳への組み入れにより自治体サービスへのアクセスが改善された。
  • 外国人技能実習法(2017年制定):技能実習生の権利保護規定を整備したものの、転籍制限・監理団体依存など構造的問題の解消には至らなかった。
  • DV防止法改正(2019年):「生活の本拠を共にする交際相手」からの暴力も保護命令対象に拡大。外国籍被害者にも適用される。
  • AV出演被害防止・救済法(2022年成立):外国籍女性の被害事例が立法過程で参照された。契約から1年間の無条件解除権を規定。
  • 育成就労制度創設(2024年施行):旧「技能実習」を廃止し、労働者としての権利を明確化。転籍制限の緩和、妊娠・出産を理由とした計画取消しを禁止。
  • DV防止法改正(2024年施行):精神的暴力・自由の制限なども保護命令対象に拡大(第10条)。外国籍被害者にも適用。

議論の現在地

外国籍女性の権利保護をめぐる議論は主に二つの軸で展開されています。

第一に「在留資格要件とDV支援の矛盾の解消」です。支援団体・研究者からは「DV被害を受けた外国籍女性が在留資格喪失の懸念なく相談・離脱できる法的根拠を、通達ではなく法律本文に明記すべき」という主張があります。一方、出入国管理政策の観点からは「在留目的を偽った申請への悪用リスク」が懸念材料として示されており、制度のさらなる精緻化が求められています。

第二に「育成就労制度とジェンダー保護の実効性」です。労働組合・支援NPOは「1年間の転籍制限が残る以上、雇用主・監理団体による支配関係は完全には解消されない」と指摘します。他方、産業界からは「移行期の安定的な人材確保」を重視する立場もあり、転籍制限期間の短縮をめぐる議論が続いています。女性差別撤廃委員会(CEDAW委員会)は2024年の対日審査で、新制度においても女性労働者の権利保護の実効性を継続的に確認する勧告を行っています。

残された課題

2026年時点で未解決・進行中の課題は以下の通りです。

第一に、多言語DV相談の地域格差です。大都市圏では多言語対応が進む一方、地方では外国語対応できるDV相談員が不足し、外国籍女性が遠方の自治体センターや民間NPOに頼らざるを得ない状況が続いています。

第二に、在留資格変更の法的明確化です。DVを理由に配偶者と別居した外国籍女性が就労・定住等の独立した在留資格に変更しやすい制度整備が求められています。現状は行政通達による運用対応にとどまっており、法律への明文化を求める声が研究者・支援団体から上がっています。

第三に、育成就労移行後の実態検証です。新制度への移行は始まったばかりで、職場でのセクシュアルハラスメント・妊娠差別が改善されているかどうかの実態データが不足しています。第三者機関による定期的なモニタリング体制の整備が課題として残されています。

第四に、支援NPOへの公的資金の継続的確保です。外国籍女性の一時保護・就労支援・法律相談を担うNPOは財政基盤が脆弱で、自治体・国の補助金の安定的な拡充が求められています。

日本と主要国の移住女性支援制度比較

観点 日本(2026年) スウェーデン 韓国 ドイツ
DV被害時の在留資格保護 通達による運用対応(法律への明文規定なし) 国籍に関わらず在留許可更新が原則認められる 「結婚移民者」保護法で在留資格の独立取得を法律に明記 連邦外国人法が独立した在留許可への移行を規定
移住女性向け公的支援機関 配偶者暴力相談支援センター(多言語対応は限定的) 社会サービス局が包括対応(通訳費公費負担) 「多文化家族支援センター」を全国設置 Frauenhäuser(女性シェルター)に通訳費補助制度
外国人労働者のジェンダー保護 育成就労法施行規則で妊娠差別禁止を明記(2024年) 外国人も均等待遇法(2023年改正)で保護 外国人雇用法・育児休業法が外国人にも適用 一般平等待遇法(AGG)により外国人も保護対象
多言語支援の公費負担 一部自治体のみ。NPO補助も限定的 通訳サービスは公費負担が原則 多言語センターへの政府補助が安定的に確保 州によるが通訳費の公費補助制度あり

上表の通り、日本は在留資格保護の法律明文化と多言語支援の公費化において、欧州諸国・韓国と比べて遅れが見られます。育成就労制度への移行を経た2026年以降、実態がどのように変化するかが注目されています。

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支援制度と相談窓口

公的相談機関

DV被害を受けている外国籍女性は、日本語が不自由であっても以下の公的機関に相談できます。

DV相談ナビ(#8008):都道府県の配偶者暴力相談支援センターに接続します。通訳サービスを活用できる窓口もあり、内閣府が10か国語以上で案内ページを公開しています。

よりそいホットライン(0120-279-338):DV・性的暴力・生活困窮全般の相談窓口。英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・タイ語・フィリピノ語等に対応しており、24時間無料で受け付けています。

性犯罪被害相談電話(#8103):都道府県警察の性犯罪被害ホットラインに接続します。外国語対応の有無は各都道府県警に確認してください。

出入国在留管理局(在留相談ダイヤル):0570-013-904。在留資格の変更・更新に関する相談が可能です。

法テラス(0570-078374):弁護士費用立替制度(審査あり)を提供しています。外国語対応窓口もありますので事前確認をお勧めします。

NPO・民間支援機関の役割

外国籍女性のDV・労働被害を専門とする主なNPOとして、女性の家HELP(東京)、RINK(関西・技能実習生および育成就労サポート)、移住連(移住者と連帯する全国ネットワーク)等があります。これらは法的支援・一時保護・就労支援・在留資格相談を母国語サポーターを通じて包括的に提供しており、公的機関へのつなぎ役としても機能しています。言語や在留状況に不安がある場合は、まずこれらのNPOへの相談を検討してください。

まとめ

日本の男女共同参画施策は1999年の基本法制定以来、国内に暮らすすべての人の権利を視野に置いてきましたが、外国籍女性が直面する固有の脆弱性への対応は段階的な改善にとどまってきた側面があります。在留資格とDV支援の構造的矛盾、育成就労制度移行期のジェンダー保護の実効性、多言語支援の地域格差は2026年時点でも残された課題です。

2024年の育成就労制度創設・DV防止法改正・CEDAW委員会の継続的な対日勧告は変化の方向性を示しており、制度の実効性をデータで検証していく段階に入っています。市民・地域支援者・企業人事・行政担当者が「外国籍女性には特有の壁がある」という認識を持ち、多言語情報提供・支援NPOとの連携・アウトリーチに取り組むことが、基本法が掲げる「男女の人権の尊重」(第3条)の実現に近づく道です。

具体的な事案については、弁護士など専門家や上記相談窓口への相談をご検討ください。

よくある質問(FAQ)

外国籍女性でもDV保護命令を申し立てられますか?

はい、DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)の保護命令申立は、被害者の国籍を問わず申立てができます(第10条第1項)。日本語が不得手な場合は、裁判所に対して通訳人の申請が可能です。まずはDV相談ナビ(#8008)や支援NPOに相談されることをお勧めします。

配偶者ビザでDVから逃げると在留資格を失いますか?

自動的に在留資格を失うわけではありません。出入国在留管理庁は、DV被害を理由に別居した外国籍女性については在留期間更新・資格変更において不利益に取り扱わない方針を2021年に公示しています。ただし法律上の明文規定ではなく行政運用によるため、支援NPO・法テラス・弁護士への早期相談をお勧めします。

育成就労(技能実習)の職場でセクハラを受けたら?

育成就労制度においても、雇用主は男女雇用機会均等法第11条に基づきセクシュアルハラスメント防止義務を負います。監理団体・育成就労支援センターへの申告、労働基準監督署への相談、またRINK等の支援NPOへの相談が選択肢となります。一定期間後の転籍も認められるため、法的選択肢を支援機関と一緒に確認することをお勧めします。

妊娠を理由に帰国を強要されたら?

育成就労法施行規則は、妊娠・出産等を理由とする育成就労計画の取消しを禁止しています。実態として帰国圧力が加えられた場合は、育成就労支援センター・労働基準監督署・支援NPO(RINK等)への申告が選択肢となります。不当な処遇は違法とされる可能性があるため、やりとりの記録(メッセージ・音声等)を保存しておくことが重要とされています。

CEDAW(女性差別撤廃条約)は外国籍女性の保護に関係しますか?

はい、女性差別撤廃条約(CEDAW)は締約国である日本に対し、国内に暮らすすべての女性(外国籍を含む)へのあらゆる形態の差別の撤廃を義務づけています。国連CEDAW委員会は技能実習制度廃止後の育成就労制度においても移住女性への搾取・差別の撲滅を日本政府に求める勧告を行っており、次回審査(2028年頃予定)でその進捗が評価される見込みです。

外国籍女性が利用できる公的シェルターはありますか?

配偶者暴力相談支援センターに付設または連携している一時保護所は、外国籍女性も利用できます。言語対応は施設により異なるため、DV相談ナビ(#8008)や女性の家HELP等のNPOに事前確認されることをお勧めします。費用の自己負担は原則不要ですが、施設ごとに確認が必要です。

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