職場における男女格差は、採用段階から管理職比率、賃金水準に至るまで、数多くのデータが示すとおり、2026年現在もなお解消されているとは言いがたい状況です。「差別を禁止するだけでは格差は縮まらない」——そのような認識から生まれたのが、ポジティブアクション(積極的改善措置)という考え方です。過去の慣行や社会的構造から生じた不均衡を縮めるために、女性を対象とした優遇措置や目標設定を積極的に行うことを指し、単に「性別を理由に差別してはならない」という消極的な平等保障とは一線を画します。
ポジティブアクションは男女雇用機会均等法(昭和47年法律第113号)第8条に明文化された概念であり、差別禁止規定とは別の論理で職場の格差是正を後押しします。2015年に成立した女性活躍推進法(平成27年法律第64号)は、この考え方を企業の行動計画義務へと発展させました。2022年7月8日には301人以上の企業に男女賃金差異の情報公表義務が加わり、2026年4月1日にはその義務が101人以上の企業へ広がりました。
本記事では、ポジティブアクションの定義・法的根拠・具体的な取り組み事例・諸外国との比較・2026年時点の論点と残された課題を体系的に解説します。人事担当者・管理職・ハラスメント相談窓口の担当者など、職場の男女平等を実践的に推進したい方、あるいは法制度の全体像を理解したい方を主な対象とした内容です。

ポジティブアクション(積極的改善措置)とは何か
定義と基本的な考え方
ポジティブアクション(英: Positive Action)とは、過去の差別や慣行によって特定の集団が不利な状況に置かれている場合に、その格差を是正するために積極的な優遇措置を講じることを指します。日本では「積極的改善措置」と訳され、特に職場における男女間の不均衡を縮める文脈で用いられています。
単に「性別を理由に差別してはならない」という消極的な平等保障とは根本的に発想が異なります。ポジティブアクションは「現に存在する格差を縮めるために踏み込んだ行動をとる」という積極的な考え方です。たとえば、採用選考において同等の能力を持つ候補者が男女で混在する場合に女性を優先する、あるいは管理職候補者の育成計画に女性比率の目標を設定するといった取り組みがこれにあたります。
ポジティブアクションの対象は女性に限定されるわけではなく、男女どちらの性別が少数となっている職場でも活用できます。ただし、日本の法制度においては、歴史的に女性が不利な立場に置かれてきた雇用分野での活用が主として想定されています。性別に基づく積極的措置に加えて、近年は外国籍労働者・障害のある労働者・性的マイノリティへの配慮をあわせて実施するダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DE&I)の視点とも接続されています。
「不均衡な状態」が前提条件
男女雇用機会均等法は、ポジティブアクションを許容する前提として「女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用の分野における均衡の確保のため」という要件を定めています。つまり、すでに均衡が保たれている職場でのポジティブアクションは法の想定外となります。
厚生労働省は「相当程度少ない」の目安として、おおむね4割未満を一つの判断基準として示しており、女性比率がこの水準を下回る職種・役職区分でのポジティブアクションが推奨されています。具体的には、管理職に占める女性割合が4割未満の場合や、特定の技術職・専門職での女性比率が低い場合などが典型的な適用場面です。内閣府『男女共同参画白書 令和7年版』によれば、課長相当職以上の管理職に占める女性割合は約13~14%台にとどまっており、製造業・建設業・金融機関の特定部門ではさらに低い水準にある職種も少なくありません。
男女雇用機会均等法第8条の規定
条文の内容と許容規定としての性格
ポジティブアクションの法的根拠は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)(最終改正: 令和7年法律第63号・2025年6月11日施行)第8条に置かれています。
前二条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。(第8条)
この条文は「禁止規定の例外」として構成されています。同法第6条・第7条は、事業主が性別を理由とした差別的取り扱いや間接差別(間接差別とは、性別以外の形式的に中立な基準が、一方の性別に不利益をもたらす場合を指します)を行うことを禁止しています。第8条はポジティブアクションをこれらの禁止規定の例外として明示的に「許容」しており、事業主がポジティブアクションを実施しても差別禁止規定に違反しないことを確認する意味を持ちます。
義務ではなく「任意の取り組み」として
均等法第8条がポジティブアクションを義務とせず許容規定にとどめているのは、事業主の経営判断の自由を保ちながら、自発的な取り組みを後押しする立場をとっているためです。法的に課せられた強制措置ではないため、実施するかどうか・どのような形で実施するかは、基本的に各事業主の裁量に委ねられています。
ただし、後述の女性活躍推進法(2015年成立)は、一定規模以上の事業主に対してポジティブアクションに類する行動計画の策定・公表を義務化しており、101人以上を雇用する大企業においては実質的に取り組みが求められる制度となっています。
男性労働者への適用の考え方
均等法第8条の文言は「女性労働者に関して行う措置」とされています。一方、厚生労働省の解釈上は、男性が著しく少数となっている職種(保育士・看護師・介護職など)において、男性の参入を促すための均衡確保措置を行うことも許容されると整理されています。ただし現行の制度設計は、雇用分野において歴史的に不利な状況に置かれてきた女性の活躍推進を主眼としたものです。
女性活躍推進法とポジティブアクションの関係
行動計画策定義務の枠組み
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)(平成27年成立、最終改正:2025年6月公布、2026年4月1日施行)は、ポジティブアクションの考え方を「行動計画」という制度として具体化した法律です。常時雇用する労働者が101人以上の事業主(2026年時点)に対して、以下を義務づけています。
- 自社の女性活躍状況の把握と課題分析(採用・継続就業・労働時間・管理職比率・多様なキャリアコースの5項目)
- 行動計画の策定・届出・公表(計画期間・数値目標・取り組み内容・実施時期を明記)
- 女性活躍に関する情報の公表(女性労働者比率・採用比率・継続就業年数差・管理職比率・男女賃金差異等の指標)
行動計画の数値目標は各企業が自ら設定する仕組みであり、法が特定の管理職比率を一律に定める「クオータ制(議席・役員数の割当)」とは異なります。目標設定の自由度が高い反面、低い目標値を形式的に設定するにとどまる事業主も存在するとの指摘があります。
えるぼし・プラチナえるぼし認定制度
女性活躍推進法に基づき、厚生労働大臣は女性活躍の推進に積極的に取り組む事業主を「えるぼし」認定します。えるぼし認定は取り組み実績に応じて1段階から3段階に分類されており、全5つの評価項目の達成状況によって段階が決まります。さらに、3段階のえるぼし認定を受けた企業のうち、より高い水準を達成した事業主には「プラチナえるぼし」が認定されます。
えるぼし認定を受けた企業は、公共調達における加点評価や女性活躍に積極的な企業としての対外的なアピールができるため、採用ブランディングや取引先への信頼向上に活用するケースが増えています。くるみん認定(次世代育成支援対策推進法に基づく育児支援認定)と並行して取得する企業も多く、両輪で職場環境整備を進める事業主の存在感が高まっています。
男女賃金差異の公表義務化(2022年7月8日〜)
2022年7月8日施行の省令改正により、常時雇用301人以上の企業に対して男女間の賃金差異の情報公表が義務化されました。101人以上300人以下の企業に同じ義務が及んだのは2026年4月1日からです。これは、採用・昇進といった結果指標に加えて「賃金格差」という数値での情報開示を義務づけた点で大きな転換です。ポジティブアクションの取り組みが実際に賃金格差の縮小につながっているかを社会が継続的に確認できる仕組みが整いました。
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職場でのポジティブアクションの具体的な取り組み
採用・配置段階での措置
採用・配置段階でのポジティブアクションとして、企業が実施している代表的な取り組みには以下のものがあります。
- 採用目標の設定: 一定期間内に採用する新卒・中途採用者の女性比率に目標値を設け、採用活動を設計する
- 求人票・採用広告の工夫: 女性が応募しやすい文言・求人経路を意識的に選択する(「女性活躍中」の明記、育児支援制度の明示等)
- 選考過程の見直し: 採用選考委員に女性を加える、面接評価基準に潜む性別バイアスを点検する
- 配置の均等化: これまで女性が少なかった部署や職種への積極配置を検討する
- 転勤要件の見直し: 全国転勤を前提とした採用要件が結果として女性の排除につながっていないかを点検する(なお、合理的理由のない転勤要件は均等法第7条の間接差別に該当する可能性があります)
ただし、採用・配置においてポジティブアクションを実施する際には、能力・適性の評価を前提としつつ均衡確保のために女性を優先するという考え方が基本です。評価基準の透明性を確保することが、組織内外への説明責任という観点からも求められます。
育成・昇進段階での措置
採用後のキャリア形成においても、女性が実質的に不利にならないよう配慮した取り組みが重要です。育児・介護などのライフイベントを経ても昇進機会が閉ざされない仕組みを整えることが、ポジティブアクションの核心となります。
- 女性管理職比率の数値目標: 女性活躍推進法の行動計画に管理職比率の目標を明記し、進捗を公表する
- リーダーシップ研修・メンタリング: 女性を対象とした管理職候補育成プログラムや、先輩女性管理職との対話機会を設ける
- スポンサーシップ制度: 上位管理職が女性社員のキャリア形成を積極的に後押しする仕組みを設ける(メンタリングが「助言」中心であるのに対し、スポンサーシップは推薦・代弁という形での支援を指します)
- 業績評価基準の点検: 長時間労働や単身赴任経験を暗黙の前提とした昇進評価基準を見直す
- 育休・育短後の復帰支援: 育児休業・育児短時間勤務からの職場復帰に際した面談・研修の実施(マミートラックの防止)
マミートラック(育休復帰後にキャリアが事実上停止してしまう状況)の防止は、ポジティブアクションの重要な側面です。育児期の女性が能力を発揮し続けられる環境整備は、単なる福祉施策ではなく、人材活用戦略としても注目されています。
職場環境・意識啓発
採用・昇進の数字を改善するだけでなく、職場文化そのものへの働きかけも不可欠です。組織の上位にいる男性管理職の意識と行動が変わらなければ、ポジティブアクションの効果は限定的になりやすいとされています。
- アンコンシャスバイアス研修: 管理職や採用担当者の無意識の偏見(「育児中の女性には重要な仕事を任せにくい」「技術職は男性向き」等)を可視化し、意識変革を促す研修
- ロールモデルの提示: 社内外の女性管理職・経営者との対話機会を設け、昇進イメージを具体化する
- ハラスメント防止措置との連動: パワーハラスメント防止法・均等法に基づくハラスメント対策を職場のジェンダー平等推進と一体的に進める
- 男性社員の育児参画促進: 男性育休取得の促進・家事・育児参画への理解促進。男性が育児責任を担うことで、女性のみへの負担集中が緩和されます
日本と諸外国のポジティブアクション制度比較
| 国・地域 | 主な法的根拠 | 強制力 | 主な対象 | 2026年の特徴・現状 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 男女雇用機会均等法第8条・女性活躍推進法 | 任意(許容規定)+101人以上に行動計画義務 | 女性(雇用分野) | 数値目標は企業が自主設定。強制クオータ制は採用せず。男女賃金差異の公表義務(2022年改正) |
| アメリカ | 大統領令11246号(連邦契約企業対象)・タイトルVII(1964年公民権法) | 連邦政府契約企業には義務。民間一般は任意 | 人種・女性・障害者等(複数属性) | 2023年最高裁判決で大学入試における人種を考慮した入試制度が違憲と判断され、民間雇用分野への影響を問う議論が続く |
| EU | EU平等指令・各国実施法・役員女性比率指令(2022年) | 加盟国により差異あり。指令は義務 | 性別・人種・障害・年齢等(多属性) | 上場企業取締役の女性比率40%を目標とする指令が2026年施行期限に向け各国で国内法化が進む |
| ノルウェー | 会社法による取締役女性比率40%義務(2006年導入) | 上場企業に法的義務(クオータ制) | 企業取締役会 | 導入後に上場企業取締役の女性比率が急増。管理職全体への波及効果は限定的との研究もあり |
| 韓国 | 男女雇用平等法・積極的雇用改善措置(AA)制度 | 500人以上の企業・公的機関に義務 | 女性労働者・管理職 | 業種別平均より女性比率が低い企業に是正計画の提出を義務化。未提出企業の公表制度あり |
比較からは、日本のポジティブアクション制度が法的強制力の面でノルウェーや韓国と比べると弱く、行動計画義務という点ではEU指令と部分的に類似していることがわかります。ただし、日本では管理職比率等に数値を法定するクオータ制は採用しておらず、目標値は企業が自ら設定する枠組みを維持しています。
現代的論点|2026年時点の到達点
2007年以降の主な法改正・新法
ポジティブアクションをめぐる日本の法制度は、2007年以降に段階的に強化されました。
- 2007年(男女雇用機会均等法改正): 間接差別(第7条)の規定が新設。転勤要件等の形式中立基準による間接的な女性排除が規制対象となり、ポジティブアクションの重要性が法的に整理された
- 2015年(女性活躍推進法成立): 301人以上の事業主に行動計画策定・情報公表を義務化。ポジティブアクションを企業の法的枠組みに位置づける大きな転換点となった
- 2019年(女性活躍推進法改正): 対象を101人以上に拡大し(2022年4月1日施行)、情報公表項目を拡充。中堅企業への普及が加速した
- 2022年(省令改正): 常時雇用301人以上の企業に対し、男女の賃金差異の公表を義務化(7月8日施行)。プロセス指標から結果指標への転換が始まった
- 2023年(育児・介護休業法改正): 1000人超の企業に男性育休取得率の公表義務化。男性の育児参画を職場文化の変容として位置づける動きが強まった
- 2026年(最新動向): 行動計画の「形式的策定」にとどまらない実施状況のモニタリング強化が政策的焦点となっており、厚生労働省による指導・支援が続けられている
議論の現在地
ポジティブアクションの必要性や正当性については、複数の立場から議論が続いています。
推進側の主な論点: 採用・昇進における無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)や組織の慣行が積み重なった結果として現在の格差が生じている以上、意識的な是正なくしてその解消は望めないとされます。内閣府『男女共同参画白書』の統計では、管理職に占める女性割合が依然として低水準にとどまっており、自然な変化に任せるだけでは目標達成が困難との見方があります。企業の競争力向上・多様な視点の確保という経営上のメリットを強調する論点も近年では有力です。
慎重側・反対側の主な論点: 性別を選抜基準の一つとすることは「逆差別」に当たるという批判があります。能力主義・実力主義の原則と相容れず、むしろ当事者の女性に対して「能力より性別で登用された」というスティグマを生みかねないという指摘も根強くあります。また、集団属性(性別)よりも個人の能力や適性を選抜基準とすべきとの意見もあります。
学術・政策的な中間評価: 日本の均等法第8条は、「逆差別」批判に配慮しながら格差是正を促進するため、強制ではなく許容という形でポジティブアクションを法に位置づけました。欧州の一部諸国で採用されているクオータ制(数値割当の強制)とは異なる政策選択です。両論を踏まえた上で効果的な制度設計をどう行うかが、引き続き政策・学術両面の研究対象となっています。
残された課題
2026年時点でも、ポジティブアクションをめぐる以下の課題が指摘されています。
- 中小企業への普及: 女性活躍推進法の行動計画義務は101人以上が対象のため、日本の雇用の大半を占める中小企業(100人以下)でのポジティブアクションは努力義務にとどまり、取り組みが進みにくい構造がある
- 形式的計画の問題: 義務化された行動計画が「数字合わせ」に終わるリスクがあり、職場文化の実質的な変容につながらないケースも指摘されている
- 管理職比率と賃金格差の連動不足: 女性管理職比率が改善しても、評価・給与設定の課題により賃金格差の縮小に直結しない構造が残っているとの分析がある
- ジェンダー多様性の枠組みの拡張: ポジティブアクションの対象が「女性vs男性」という二項対立枠組みを前提としており、性的マイノリティ(LGBTQ+)・外国籍労働者・障害のある労働者といった多様な属性への対応拡張が十分ではないとの指摘がある
- 実効性のモニタリング: 情報公表義務によって数値は見えるようになったものの、公表された情報が実際に企業行動の改善につながっているかを継続的に検証する仕組みが十分でないとされる
企業・個人が活用できる公的相談窓口
事業主・労働者向けの相談窓口
ポジティブアクションの導入を検討する事業主、または職場での均等法上の問題を相談したい労働者は、以下の公的窓口を利用できます。
- 各都道府県労働局雇用環境・均等部(室): 男女雇用機会均等法・女性活躍推進法に関する相談・指導・行政援助を担当します。事業主向けのポジティブアクション導入支援も行っており、無料で利用できます。所在地は厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/)から検索可能です。
- 法テラス(日本司法支援センター)(電話: 0570-078374): 雇用差別・ハラスメントに関する法律相談の案内を行っています。資力が一定水準以下の方は弁護士費用立替制度(審査あり)の利用も可能です。
- よりそいホットライン(電話: 0120-279-338、24時間・無料): 職場での悩みや生活上の困難を抱える方の一次相談を受け付けています。
具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。
事業主向け推進ツール
厚生労働省は、事業主がポジティブアクションを自発的に進めるための支援ツールを複数公開しています。女性活躍推進法に基づく「行動計画策定ナビ」(オンラインツール)を活用すると、自社の状況を入力するだけで行動計画に盛り込むべき数値目標の設定を支援してもらえます。また、厚生労働省が作成したポジティブ・アクション推進パンフレットでは、業種・規模別の取り組み事例が紹介されており、実務の参考になります。
まとめ
ポジティブアクション(積極的改善措置)は、職場における男女の不均衡を縮めるために、差別の禁止にとどまらず積極的な措置を講じるという考え方です。男女雇用機会均等法第8条を根拠に「許容」として法に位置づけられ、2015年成立の女性活躍推進法によって行動計画義務という実効的な枠組みに発展しました。
2022年の改正では男女賃金差異の公表義務が加わり、採用・昇進比率だけでなく賃金という結果指標での「見える化」が進んでいます。一方で、ポジティブアクションに対する「逆差別」論・中小企業への普及の壁・実効性のモニタリング不足など、2026年時点でも解決途上の課題は多くあります。
職場のジェンダー平等を推進するにあたっては、採用・昇進の数値目標だけで完結させず、職場文化・評価制度・ハラスメント防止・育休促進と連動した総合的な取り組みとして捉えることが、実効的な格差是正につながると指摘されています。均等法・女性活躍推進法・育介法・パワハラ防止法を横断的に理解し、一体的な職場環境整備の一環としてポジティブアクションを位置づけることが、2026年以降の実践的な課題です。
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よくある質問(FAQ)
Q1. ポジティブアクションと「逆差別」はどこが違うのですか?
A. ポジティブアクションは、過去の慣行や構造的な不均衡によって実際に不利な立場に置かれている集団の格差を是正することを目的としています。能力が同等の場合に均衡確保のために女性を優先するという限定的な措置として設計されており、能力を度外視した優遇とは発想が異なります。ただし「逆差別」という批判が存在することも事実であり、措置の設計と評価基準の透明性の確保が実務上重要とされています。
Q2. ポジティブアクションは企業の義務ですか?
A. 男女雇用機会均等法第8条はポジティブアクションを「許容」する規定であり、実施を義務づけるものではありません。ただし、常時雇用101人以上の企業は女性活躍推進法に基づき行動計画の策定・届出・情報公表が義務とされており、実質的にポジティブアクションに類する取り組みが求められています。100人以下の中小企業は努力義務です。
Q3. 男性が少数の職種でも「ポジティブアクション」を実施できますか?
A. 厚生労働省の解釈上は、男性が著しく少数となっている職種(例: 保育士・看護師など)で男性を対象とした均衡確保措置を行うことも許容されると整理されています。均等法第8条の文言は「女性労働者に関して」とされていますが、現行の制度設計は主として女性の活躍推進を想定したものです。
Q4. 中小企業(100人以下)でもポジティブアクションに取り組めますか?
A. 取り組むことは可能です。女性活躍推進法の行動計画策定は100人以下の事業主には努力義務とされていますが、厚生労働省の「行動計画策定ナビ」は規模を問わず無料で利用でき、各都道府県労働局でも相談に応じています。えるぼし認定の申請も中小企業が対象外になっているわけではなく、自主的な取り組みの一環として活用できます。
Q5. ポジティブアクションで女性管理職は増えますか?
A. ノルウェーの法定クオータ制導入事例では、上場企業取締役の女性比率が法施行後に急増したことが確認されています。日本でも女性活躍推進法施行後に一部の大企業で管理職比率の改善が見られましたが、全体としては依然として低水準にとどまっている企業が多数を占めます。効果の大きさは、措置の強度・職場文化・育児支援制度の整備などの条件によって異なることが、国内外の研究で指摘されています。
Q6. ポジティブアクションの取り組みが「逆に差別を固定化させる」という批判にどう答えますか?
A. この批判は「属性への配慮が属性への過度な注目を招く」という論点です。推進側からは、現時点で格差が実在する以上、格差を意識せずに「能力のみで判断する」という方針は実際には既存の格差を追認するにすぎないという反論があります。こうした賛否の対立はポジティブアクション研究の中心的な論点であり、どちらかの立場に一方的な正当性があるとは言いがたく、措置の設計・モニタリング・見直しの仕組みをセットで考えることが重要とされています。

