MENU

産前産後休業(産休)とは|取得期間・社会保険料免除・給付金の仕組みと職場復帰支援【2026年版】

産前産後休業(産休)は、妊娠・出産をした労働者が法律によって保障された休業制度です。「産休は正社員しか取れないのでは?」「産休中の給料はどうなる?」「社会保険料の免除はいつから?」——働く人から職場の人事担当者まで、実務的な疑問が絶えないテーマです。

産前産後休業の根拠は労働基準法(最終改正:2024年6月施行)第65条であり、正社員・パートタイム・派遣・有期契約を問わず、雇用関係にあるすべての女性労働者に当然に与えられた権利です。就業規則に明記されていなくても、請求または取得の要件を満たせば利用できます。

産休中の収入については健康保険から「出産手当金」が支給され、2014年からは社会保険料の免除も月単位で適用されるようになりました。一方で、産後8週間のうち最初の6週間は本人の意思に関わらず就業させてはならない「強制休業期間」と定められており、使用者側にも厳格な義務が課されています。

また、産休取得を理由とした解雇・降格・雇い止めはマタニティ・ハラスメント(マタハラ)として禁止されており、企業には防止措置を講じる義務があります。2007年以降、育児・介護休業法の累次改正を経て、2025年には「柔軟な働き方確保措置」が義務化されるなど、法整備は継続的に進んでいます。

この記事では、産休の法的根拠から手続き・給付金・社会保険料免除の仕組み、マタハラの法的禁止事項、育休との接続まで、2026年時点の最新制度を体系的に解説します。妊娠・出産を予定している方、職場で産休のサポートを担当する人事担当者、男女共同参画の観点から労働政策を学びたい方に役立つ内容です。

産前産後休業(産休)とは|取得期間・社会保険料免除・給付金の仕組みと職場復帰支援【2026年版】 - 解説

目次

産前産後休業(産休)とは|労働基準法第65条が保障する母性保護の権利

産前産後休業は「母性保護」を目的に定められた法定休業です。男女雇用機会均等法や育児・介護休業法とは別の法律(労働基準法)が根拠となる点が特徴で、使用者(事業者)が就業規則に明示していなくても当然に発生する権利です。

産前休業と産後休業の定義

労働基準法(最終改正:2024年6月施行)第65条は、産前産後休業を定めた主要条文です。

(産前産後)
第65条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
② 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
③ 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
(出所:e-Gov法令検索)

ここから、産休には「産前休業」と「産後休業」の2種類があります。

産前休業は、出産予定日の6週間前(多胎妊娠では14週間前)から「請求」できる任意の休業です。本人が希望しなければ取得しなくても法的には問題なく、体調や業務の都合に合わせて開始日を決めるケースが多く見られます。

産後休業は、出産の翌日から8週間の休業で、そのうち最初の6週間は「強制休業」として本人の意思に関わらず就業させてはなりません。産後6週間経過後は、本人が請求し医師が支障ないと認めた業務に限って就業することが法律上認められています。

産休の対象者|雇用形態を問わずすべての女性労働者に適用

産前産後休業は、正社員・パートタイム・有期契約・派遣労働者を問わず、雇用関係のある女性労働者すべてに適用されます。「育休は1年以上在籍しなければ取れない」といった要件が育児休業には設けられていますが、産前産後休業には勤続期間の要件はなく、入社直後であっても取得する権利があります。

一方、自営業者・フリーランス・業務委託契約で働く方は雇用契約ではないため、労働基準法の産休制度の対象外です。ただし、国民年金については「産前産後期間の保険料免除制度」(2019年4月創設)があり、出産月の前月から4か月間(多胎の場合は6か月間)の国民年金保険料が免除されます。

産休の申請・手続きの基本的な流れ

産前産後休業に法定の書式はなく、事業主への申出で足ります。ただし後のトラブルを防ぐために書面での申出が推奨されています。一般的な手続きの流れは次のとおりです。

(1)妊娠が判明した段階で、上司や人事担当者に報告する。
(2)産前休業の開始希望日と産後休業の終了予定日を申し出る。
(3)健康保険組合または協会けんぽに出産手当金の申請書類を提出する(産後申請が一般的)。
(4)社会保険料免除の申出を事業主経由で年金事務所または健保組合に届け出る。
(5)産後休業終了後に育児休業を続けて取得する場合は、育休申出を別途行う。

産前・産後の取得期間と強制休業の仕組み

産前6週間(多胎14週間)の請求制

産前休業の「6週間」は出産予定日を起点として計算します。たとえば出産予定日が2026年10月1日であれば、8月20日以降が産前休業の取得可能期間です。実際に出産が予定より早まった場合や遅れた場合は、その実際の出産日を起点として産後休業が始まり、産前休業の残余期間は短縮または延長されます。

多胎妊娠(双子・三つ子等)の場合は、産前14週間前から取得できます。多胎妊娠は身体的負担が大きいため、単胎妊娠より8週間分多く取得できる制度設計となっています。

産後8週間の強制休業と例外規定

産後休業は出産の翌日を起算日として8週間です。このうち最初の6週間は法律上の強制休業期間であり、本人が「働きたい」と希望したとしても、事業主は就業させることができません。この強制休業に違反した場合、使用者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法第119条)の対象となる可能性があります。

産後6週間を経過した後の残りの2週間(6週目の翌日から8週目まで)については、本人からの請求があり、医師が支障ないと認めた業務に限って就業することが認められています。ただし、「復帰を急がなければならない」というプレッシャーを与える行為はマタハラに当たりうるとされており、事業主側の慎重な対応が求められます。

流産・死産・早産の場合の取扱い

妊娠4か月(85日)以降の流産・死産の場合、産後休業に準じた休業を取得できると解釈されています(昭和26年4月2日基収第595号通達)。妊娠4か月未満の流産は法定の産後休業の対象外となりますが、就業規則に基づく有給休暇や傷病手当金(健康保険)の活用が考えられます。

なお、「4か月」の起算は満月数による計算(1か月=30日)が実務上の一般的な取扱いです。

早産(実際の出産が予定日より前に起きた場合)については、実際の出産日の翌日を起算日として8週間の産後休業が始まります。産前休業の残余期間は短縮されますが、産後休業の期間は変わりません。

産休中の経済的支援制度|出産手当金・一時金・社会保険料免除

産前産後休業中は事業主からの賃金支払い義務はありませんが、健康保険から「出産手当金」が支給され、経済的な生活支援が図られています。あわせて社会保険料の免除制度も利用できます。

出産手当金(健康保険)の仕組みと計算方法

出産手当金は、健康保険法(最終改正:2024年施行)第102条に基づき、健康保険の被保険者本人が出産のため仕事を休み、その間に報酬を受けない(または受けても手当金より少ない)場合に支給される給付です。

第102条 被保険者が出産したときは、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日)以前42日(多胎妊娠の場合においては、98日)から出産の日後56日までの間において労務に服さなかった期間、出産手当金を支給する。
(出所:e-Gov法令検索)

支給額は「標準報酬日額の3分の2」が基本です。標準報酬日額は、支給開始前12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30で割った値です。

【計算例】標準報酬月額の平均が30万円の場合:
・標準報酬日額 = 300,000円 ÷ 30 = 10,000円
・出産手当金日額 = 10,000円 × 2/3 ≒ 6,667円
・産前42日+産後56日(合計98日)を全て休業した場合:
 6,667円 × 98日 ≒ 653,000円(概算)

退職後も受給できる場合があります。退職日前日まで継続して1年以上健康保険に加入しており、退職時に出産手当金を受けていた(または受けることができる状態にあった)場合は、退職後も支給期間の残余分が支給されます。

出産育児一時金|2023年改定で1児あたり50万円に

出産育児一時金は、被保険者(または被扶養者)が出産した場合に支給される一時金です。2023年4月から1児あたり50万円(産科医療補償制度の加算分12,000円を含む)に引き上げられました。従来の42万円から8万円の増額となり、出産費用の実質的な自己負担軽減が図られています。

従来は退院時に自己負担で支払った後に健保組合に請求する「償還払い方式」が一般的でしたが、現在は「直接支払制度」が広く普及し、健保組合が直接医療機関に支払う方式で一時的な支出が不要となっています。

産休中の社会保険料免除制度と申請タイミング

産前産後休業中(および育児休業中)は、事業主の申出により、健康保険料および厚生年金保険料が免除されます。2014年4月以降は月単位での免除が適用されており、産前産後休業開始日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月まで免除されます。

免除期間中も、将来の年金受給額の計算においては「保険料を納付したもの」として取り扱われるため、休業による年金の目減りは生じません。この点は育休中の社会保険料免除制度と共通のメリットです。

申請は「産前産後休業取得者申出書」を事業主経由で年金事務所または健保組合に提出することで行われます。原則として休業中に申請しますが、休業終了後の申請も可能です。

種類 根拠法・条文 取得期間 所得保障の種類・支給元 社会保険料
産前休業 労働基準法第65条第1項 出産予定日の6週間前から(多胎は14週間前)。本人の請求が必要 出産手当金(健康保険):標準報酬日額の2/3 申出により免除
産後休業 労働基準法第65条第2項 出産翌日から8週間(うち最初の6週間は強制休業) 出産手当金(健康保険):標準報酬日額の2/3 申出により免除
育児休業 育児・介護休業法第5条 子が原則1歳に達するまで(最長2歳まで延長可)。男女ともに取得可 育児休業給付金(雇用保険):最初の180日は賃金の67%相当、以降は50% 申出により免除
表:産前休業・産後休業・育児休業の主な違い(2026年版)

※本記事はアフィリエイトリンクを含みます(PR)

【PR・関連書籍】育休世代のジレンマ――女性活躍はなぜ失敗するのか?

産休・育休を取得しながらもキャリアとの葛藤に向き合う女性たちの現実を、詳細なインタビューと社会分析で描いた一冊。職場復帰後の課題を理解する上で参考になります。

中野円佳「育休世代のジレンマ――女性活躍はなぜ失敗するのか?」光文社新書(2014年)

現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

産前産後休業を取り巻く法制度は、2007年以降も累次の改正により拡充してきました。主な改正・新制度の概要は以下のとおりです。

(1)育児・介護休業法の累次改正(2009年・2012年・2017年・2021年・2022年・2025年)
産後パパ育休(出生時育児休業)の創設(2022年10月施行、育介法第9条の2)、育休取得率の公表義務付け(2023年4月施行、従業員1,000人超企業対象)、柔軟な働き方確保措置の義務化(2025年4月・10月の2段階施行)と段階的に強化されてきました。産前産後休業そのものは労働基準法の領域ですが、産後休業終了後に連続して取得できる育休制度の拡充が、産休の実質的な価値を高めています。

(2)男女雇用機会均等法改正(2017年施行)
妊娠・出産した女性労働者の職場環境整備・相談対応体制の整備が事業主に義務付けられました。また妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止規定が強化されました。

(3)出産育児一時金の引き上げ(2023年4月)
2023年4月に出産育児一時金が42万円から50万円に引き上げられました。少子化対策の一環として位置づけられ、出産費用の実質負担軽減が図られています。

(4)特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)施行(2024年11月)
業務委託契約で働くフリーランスへのハラスメント防止措置義務が発注者に課されるようになりました。ただし、産前産後休業自体の適用はなく、フリーランスの産後の収入保障については別途の対応が必要です。

(5)こども家庭庁の設置(2023年4月)
妊娠・出産・子育てに関する支援策を一元管理する行政機関として、産前産後に関連する支援策の整合的な推進が図られています。

議論の現在地

産前産後休業制度をめぐる現在の議論は、主に次の3点に集約されます。

第1の論点:産前休業の「任意性」と取得しにくい職場環境
産前6週間の休業は「請求制」であるため、職場の雰囲気やプレッシャーから取得を短縮するケースが依然として報告されています。厚生労働省の調査では、産前休業取得者のうち取得開始が出産直前に集中している実態が示されています。「請求制ではなく申出制への転換(事業主が産前休業を自動的に付与する制度)を検討すべき」との意見がある一方、「本人の意思による柔軟な就業継続も尊重すべき」とする立場もあります。賛否両論が存在する論点です。

第2の論点:フリーランス・自営業者への保護の不在
雇用関係にない働き手(フリーランス・業務委託・個人事業主等)には産前産後休業制度が適用されません。フリーランス人口の増加に伴い、「雇用形態を問わず産後休業相当期間の収入保障を確立すべき」との議論が高まっています。フリーランス保護法(2024年)はハラスメント防止に特化しており、産後の収入保障については依然として自助努力に委ねられているとの指摘があります。

第3の論点:男性の産後参画と制度の補完性
労働基準法上の産前産後休業は「女性」を対象とした制度です。男性の育児参画を推進する観点から、育児・介護休業法第9条の2に基づく「産後パパ育休(出生時育児休業)」(2022年10月施行)が創設されましたが、労働基準法上の「強制休業」概念は男性には適用されず、両者の制度設計の非対称性が議論されています。男性の育休取得率は令和7年度時点で50.9%(厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」)に達したとされますが、取得日数が短い傾向にあるとも指摘されています。

残された課題

(1)有期契約労働者の雇用継続への不安
産前産後休業の取得要件には勤続期間の制限はありませんが、有期契約労働者は休業終了後の契約更新が保障されない場合があります。均等法・育介法上の不利益取扱い禁止規定が適用されるものの、立証の困難さが課題として残ります。

(2)産後の「強制休業」徹底と中小企業への浸透
産後6週間の強制休業について、特に中小企業では「本人が希望すれば就業させてよい」と誤解しているケースも指摘されています。労働基準監督署による指導の実効性向上が課題です。

(3)産後ケア・メンタルヘルス支援との制度連携
産後うつは出産後の女性の10~15%程度に見られるとされており(出典:日本産科婦人科学会)、法定の「産後休業」と医療・心理的サポートのニーズとを接続する仕組みの充実が求められています。産後ケア事業(2021年子ども・子育て支援法改正で市区町村に努力義務)との連携強化が政策課題として残っています。

産休中のマタハラ|法律が禁止する不利益取扱いと企業の義務

産前産後休業を取得したこと、または取得しようとしたことを理由とする不利益取扱いは「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)」として法律上禁止されています。

マタハラの法的根拠と定義

マタハラは法律上の固有名称ではなく、妊娠・出産・育児に関連する不利益取扱いやハラスメントの総称として用いられています。法的根拠は主に次の2法です。

男女雇用機会均等法第9条第3項:事業主は、女性労働者が妊娠・出産・産前産後休業取得等を理由として、解雇・雇い止め・降格・減給・自宅待機・不利益な配置転換その他の不利益な取扱いを行ってはならない。

育児・介護休業法第10条:事業主は、労働者が育児休業の申出・取得等を理由として不利益な取扱いをしてはならない。

最高裁判所は、2014年(平成26年)10月23日の広島中央保健生活協同組合事件判決において、「妊娠中の軽易業務への転換を契機とする降格は、原則として均等法第9条第3項の禁止規定に違反する」と判断しています(最高裁判所ウェブサイト掲載・平成26年(受)第1813号)。この判決は産休をめぐる権利侵害の判断基準として重要な先例とされています。

禁止される不利益取扱いの具体例

産前産後休業の取得を理由として行われた以下の行為は、法律上禁止されており、違法とされる可能性があります。

・解雇・雇い止め(有期契約の更新拒絶を含む)
・降格・役職の剥奪
・減給・賞与の不利益査定(産休を欠勤扱いにした不利益評価を含む)
・不利益な部署異動・職種変更
・退職の強要・勧奨
・「産休を取るなら辞めてもらうしかない」等の発言
・職場における精神的な圧迫・孤立させる行為

事業主に課される防止措置義務

男女雇用機会均等法第11条の3(2026年10月1日以降は第15条)および育児・介護休業法第25条に基づき、事業主には次の義務があります。

(1)方針の明確化・周知:妊娠・出産・育休等に関するハラスメントを許容しない方針を就業規則等に明記し、従業員全員に周知する。
(2)相談体制の整備:相談窓口を設置し、担当者を定める。
(3)被害者への適切な対応:相談があった場合に事実確認・加害者への措置・被害者へのフォローを迅速に行う。
(4)再発防止措置:プライバシーを守りながら再発防止のための研修等を実施する。

これらの義務は全事業規模に適用されます(常時10人未満の小規模事業者も対象)。

産休後の育休・職場復帰支援制度

産休から育休への接続と申出手続き

産後8週間の産後休業終了後、子が原則として1歳に達するまでの期間、育児休業を取得することができます(育児・介護休業法第5条第1項)。保育所に入所できない等の場合は、子が1歳6か月または2歳に達するまで延長が可能です。

産後休業と育休は連続して取得するのが一般的です。手続き上は、産後休業開始前または産後休業中に育休の開始日(産後休業終了日の翌日)を指定して事業主に申し出ることが通常の流れです。育休中の所得保障については、雇用保険の「育児休業給付金」(育休開始から180日間は賃金の67%相当、以降は50%相当)が支給されます。産休中の出産手当金とは別制度である点に注意が必要です。

両立支援等助成金|職場復帰を支援する事業主向け制度

厚生労働省の「両立支援等助成金」は、育休からの職場復帰を支援する取組を行った事業主に支給される助成金制度です。主なコースとして「育休復帰支援プラン策定コース」があり、職場復帰を円滑にするための計画策定・実施を行った中小事業主に対して助成が支給されます(年度・内容により金額は異なるため、厚生労働省ウェブサイトで最新情報を確認のこと)。

都道府県労働局(雇用環境・均等部室)を通じて申請できます。育休復帰支援に取り組む事業主にとって活用を検討する価値がある制度です。

職場復帰後の不当処遇禁止とマミートラック問題

産休・育休から復帰した後も、「休んでいた期間の分を査定から差し引くのは当然」「役職を外すのも仕方ない」等の扱いは、不当な不利益取扱いに当たりうるとされています。厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」でも、復帰後の人事評価において休業期間を不利に扱うことの問題が指摘されています。

また、育休から復帰した後にキャリアアップの機会が限定され、時短勤務・補助的業務に固定化されるいわゆる「マミートラック(Mommy Track)」に置かれるケースも問題視されており、復帰後のキャリア形成支援のあり方が企業に問われています。具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

産休・育休に関する公的相談窓口

妊娠・出産・産休に関して職場でのトラブルが生じた場合や、制度の詳細を確認したい場合は、以下の窓口に相談することが考えられます。

都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
マタハラ・産休取得拒否等の問題について無料で相談できます。必要に応じてあっせん(当事者間の調整)を利用することも可能です。各都道府県の連絡先は厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/)で確認できます。

総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署内)
賃金・解雇・雇い止め・労働条件全般について相談できる無料の窓口です。産休中の賃金未払いや不当解雇についても対応します。

法テラス(日本司法支援センター)電話:0570-078374
弁護士への相談が必要な場合、法テラスを通じて無料または低額で法律相談を受けられます。一定の収入・資産要件を満たす場合は弁護士費用の立替制度(民事法律扶助)も利用できます。

まとめ|産休制度の骨格と2026年の視点

産前産後休業(産休)は、労働基準法第65条に定める母性保護の制度であり、雇用形態を問わずすべての女性労働者が持つ権利です。産前6週間(多胎14週間)は請求によって取得でき、産後8週間のうち最初の6週間は強制休業として事業主が就業させることを禁じられています。

産休中の経済的支援として、健康保険から出産手当金(標準報酬日額の3分の2)が支給され、社会保険料は免除されます。さらに出産育児一時金として1児あたり50万円(2023年改定額)が支給されます。産後は育児休業に連続して接続でき、育児休業給付金による所得保障も利用可能です。

産休取得を理由とした不利益取扱いはマタハラとして男女雇用機会均等法・育児・介護休業法上禁止されており、事業主には防止措置義務が課されています。一方で、フリーランス・自営業者への制度適用の不在、有期契約者の雇用継続の不安定さ、強制休業の実効性確保など、解決を要する課題も残されています。

産前産後休業制度を正しく理解することは、個人の権利保護のみならず、職場全体のジェンダー平等推進の出発点となります。

心身の不調を感じる場合は、医療機関・精神保健福祉センター・専門相談窓口へのご相談をご検討ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 産前産後休業(産休)は、どのような雇用形態でも取得できますか?
A. 産前産後休業は労働基準法第65条に基づく制度で、正社員・パートタイム・派遣・有期契約を問わず、雇用関係にあるすべての女性労働者が対象です。勤続期間の要件もなく、入社直後であっても取得する権利があります。ただし、フリーランス・自営業者など雇用関係のない働き手は対象外となります。
Q. 産休中の収入はどうなりますか?
A. 産前産後休業中は事業主からの賃金支払い義務はありませんが、健康保険の被保険者には「出産手当金」(標準報酬日額の3分の2)が産前42日・産後56日(最大98日分)支給されます。また産休中の健康保険料・厚生年金保険料は申出により免除されます。退職後も一定の要件を満たせば出産手当金を受給できる場合があります。
Q. 産後6週間以内に職場復帰することはできますか?
A. 産後6週間は法律上の「強制休業期間」であり、本人が希望した場合でも事業主は就業させることができません(労働基準法第65条第2項)。産後6週間経過後の残り2週間については、本人からの請求と医師の許可を条件に就業が認められますが、職場からの復帰プレッシャーはマタハラに当たりうるとされています。
Q. 産休の取得を理由に解雇・降格された場合はどうすればよいですか?
A. 妊娠・出産・産休取得を理由とした解雇・降格・雇い止めは、男女雇用機会均等法第9条第3項によって禁止されており、違法とされる可能性があります。都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する、または法テラス(0570-078374)を通じて弁護士に相談することが考えられます。
Q. 多胎妊娠(双子・三つ子)の場合、産前休業の期間はどう変わりますか?
A. 多胎妊娠の場合、産前休業の取得可能期間が出産予定日の14週間前(単胎妊娠は6週間前)に早まります。産後休業の8週間(うち強制6週間)については単胎妊娠と変わりません。多胎妊娠は身体的負担が大きいため、より長い産前休業取得が認められています。
Q. フリーランスや個人事業主でも産後の支援制度はありますか?
A. フリーランス・個人事業主は労働基準法の産前産後休業制度の対象外ですが、国民年金では「産前産後期間の保険料免除制度」(2019年4月創設)が利用できます。出産月の前月から4か月間(多胎の場合は6か月間)の国民年金保険料が免除され、免除期間も年金計算上は保険料納付期間として扱われます。また国民健康保険に関しては市区町村により独自給付が設けられている場合もあります。詳細は各市区町村や年金事務所でご確認ください。

※本記事はアフィリエイトリンクを含みます(PR)

【PR・関連書籍】男性中心企業の終焉

日本企業の「男性中心」構造がなぜ変わらないのかを、産休・育休制度の普及との関係も含めて分析した一冊。人事担当者・管理職が職場のジェンダー構造を見直す際の参考になります。

浜田敬子「男性中心企業の終焉」文春新書(2020年)

産前産後休業(産休)とは|取得期間・社会保険料免除・給付金の仕組みと職場復帰支援【2026年版】 - まとめ

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次