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男女別の貯蓄・資産格差統計|生涯収入の差が積み上げる金融ジェンダーギャップ【2026年版】

賃金格差は広く知られている社会課題ですが、年収の差が数十年にわたって積み重なって形成される「資産格差」については、十分に可視化されていない現状があります。金融広報中央委員会の調査によると、単身女性の金融資産「ゼロ」割合は単身男性を約10ポイント上回っており、その差は雇用形態・キャリア断絶・投資参加率の違いから生じています。2024年に始まった新NISA(少額投資非課税制度)の普及や、第6次男女共同参画基本計画における「経済的自立の促進」が政策課題として掲げられる中、ジェンダーと金融の関係を統計データで読み解くことは、政策評価と個人の生活設計の両面で重要性を増しています。

この記事では、日本の家計金融統計・賃金構造調査・国際比較データをもとに、男女別の貯蓄・金融資産・住宅保有・投資参加率の実態を整理します。生涯を通じて賃金格差がいかに資産格差へと転化するかの構造を解説し、2026年時点の法改正・政策動向・残された課題までを包括的にまとめます。企業の人事・福利厚生担当者、自治体の男女共同参画推進員、そして自身の資産形成を考える現役世代の方に向けた解説記事です。

男女別の貯蓄・資産格差統計|生涯収入の差が積み上げる金融ジェンダーギャップ【2026年版】 - 解説

目次

ジェンダーと金融資産|賃金格差が積み上げる「生涯資産格差」の構造

収入格差と資産格差の違い

「ジェンダーペイギャップ(男女間賃金格差)」とは、ある時点の年収や時給を男女で比較した数値です。これに対して「ジェンダーウェルスギャップ(男女間資産格差)」は、賃金の差が数十年にわたって積み重なった結果として生じる、貯蓄・金融資産・不動産・年金などを含む包括的な格差を指します。

例えば、年収差が年間100万円であっても、それが30年継続すれば累計3,000万円の差になります。さらに、その差額分を投資・運用した場合には複利効果でさらに拡大する可能性があります。加えて、出産・育児に伴うキャリア中断期間中は収入が減少または停止し、退職後の年金受給額にも影響が及びます。資産格差を正確に把握するには、収入だけでなく「雇用形態(正規・非正規)」「生涯キャリアの継続性」「税・社会保険料の控除構造」を複合的に見る必要があります。

日本における男女別の金融資産保有状況

金融広報中央委員会(知るぽると)が毎年実施する「家計の金融行動に関する世論調査」の令和5年版によると、単身世帯の金融資産保有額(預貯金・株式・投資信託・生命保険等を含む)の平均は、男性が約904万円、女性が約858万円でした。平均値では約46万円の差にとどまりますが、分布の中央値では男性71万円・女性40万円と差が拡大しており、少額保有層に女性が多いことを示しています。

また、金融資産を「保有していない」と回答した割合は、単身男性で約33%、単身女性で約43%であり、経済的な余裕がない女性の割合が顕著に高い実態があります。この差の主な背景として、女性に非正規雇用が多いこと(2025年総務省「労働力調査」では女性の非正規雇用比率は約54%)、平均賃金が低いこと、そして育児・介護によるキャリア中断が生じやすいことが挙げられます。

有配偶世帯における「名義」と「実質」の乖離

結婚している世帯では、金融資産が夫の名義で管理されているケースが少なくなく、統計上は「世帯資産」として集計されるため、妻個人の資産保有状況が見えにくくなります。内閣府「男女の意識・行動調査」では、家計管理の主体が「夫婦共同」「妻主導」「夫主導」に分散しており、世帯資産の実質的な所有・管理権が誰にあるかを統計で把握することは困難な状況です。

離婚時に財産分与を受けられる法的権利は民法第768条に定められていますが、実際には財産隠匿や交渉の難航により、女性が経済的に不利な条件で離婚せざるを得ないケースが弁護士相談件数の分析などで報告されています。世帯単位から個人単位の資産把握へと統計手法を転換することが、今後の政策立案に向けた重要な課題となっています。

投資・資産運用参加率のジェンダー統計

株式・投資信託保有率の男女差

日本証券業協会が隔年実施する「証券投資に関する全国調査」によると、株式・投資信託を保有している割合は男性が約42%であるのに対し、女性は約31%にとどまり、約11ポイントの差があります。この差は収入水準の差による可処分所得の差に起因するとの分析が有力ですが、金融知識・リスク許容度・将来への見通しの違いも影響しているとされています。

非正規雇用者が多い女性層では、生活費を賄うことが優先となるため、余剰資金を長期投資に充てる余裕が生まれにくい構造があります。これは個人の意識の問題ではなく、雇用構造と賃金水準の結果として捉える必要があります。特に20代・30代の若年女性では、正規・非正規の雇用形態の差が投資参加率の差に直結している傾向が強いとされています。

新NISAとiDeCoの利用状況データ

2024年に制度が大幅拡充された新NISA(少額投資非課税制度)は、年間投資枠が大幅に増加し、非課税保有期間も恒久化されました。金融庁の公表データによると、新NISA口座数は2025年末時点で3,500万口座超に達したとされています。大手ネット証券各社の開示情報では、女性の新規口座開設比率が従来のNISAと比較して高まっており、40%台に達する証券会社も現れています。

一方、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者は依然として男性が6割以上を占めており、女性の自助努力による老後資産形成の遅れが指摘されています。なお、国民年金第3号被保険者(主に会社員・公務員の被扶養配偶者)もiDeCoへの加入が可能ですが、その活用率は低水準にとどまっています。制度的な加入可能性と実際の利用率の差には、可処分所得の少なさと制度の複雑さが影響していると考えられます。

金融リテラシーの調査データ

金融広報中央委員会「金融リテラシー調査」では、金融・経済知識に関する正答率は男性が女性を平均で約10ポイント上回っています。ただし、30代以下の若年層では男女差が縮小傾向にあり、インターネット・SNSを通じた金融情報の普及が一因とされています。2025年度に本格稼働した「金融経済教育推進機構(J-FLEC)」では、学校・職場・地域での体系的な金融教育プログラムが実施されており、ジェンダー格差の縮小に向けた取り組みが始まっています。金融リテラシーの差は能力の差ではなく、金融教育へのアクセス機会の差を反映している面が大きいとの研究もあります。

住宅・不動産保有のジェンダー統計

住宅取得における男女差

国土交通省「住宅市場動向調査」によると、住宅購入世帯の大多数は夫婦世帯ですが、住宅ローンの名義は夫単独またはペアローン(夫主体)が多数を占めています。単身者の持ち家取得率を見ると、男性単身者が約30%前後であるのに対し、女性単身者は約20%台にとどまる傾向があります。この差には収入格差のほか、将来の家族形成への見通しの違い、また金融機関の審査における年収・雇用形態の評価が影響しています。

離婚後の住宅資産と経済的不安定性

2024年施行の共同親権制度(民法改正)では、財産分与や住宅の扱いに関する協議も離婚手続きの要素となっています。民法第768条に基づく財産分与は法的権利として明確ですが、実務上は財産の評価・隠匿・協議の難航により、女性が経済的に不利な状況で合意せざるを得ないケースが複数の法律扶助データで報告されています。

2018年民法改正で新設された「配偶者居住権」(民法第1028条~第1041条)は、配偶者が死後も居住を継続できる権利を保護するものです。ただし、この権利は相続時(死別後)に限定されており、離婚後の居住安定には直接適用されないため、離婚後の女性の住居保護に関しては法的な間隙が指摘されています。具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

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なぜ男女の賃金格差はなくならないのか(クローディア・ゴールディン著、慶應義塾大学出版会)

2023年ノーベル経済学賞受賞者ゴールディン教授による研究書。賃金格差の構造的原因を歴史的データで解明しており、資産格差を考えるうえでの理論的背景を学べます。

現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

  • 2015年: 女性活躍推進法成立女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)。常時雇用労働者301人以上の企業に数値目標の策定・公表を義務付け
  • 2019年: 女性活躍推進法改正。義務対象を常時雇用労働者101人以上に拡大(第8条第1項)
  • 2022年: 女性活躍推進法再改正。常時雇用労働者101人以上の企業に男女賃金差異の公表を義務化(第20条)
  • 2022年: 育児・介護休業法改正育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)。産後パパ育休の創設・育休取得率の公表義務化
  • 2024年: 新NISA施行。年間投資上限360万円・非課税保有の恒久化。低所得層も含めた投資参加のハードルを引き下げ
  • 2025年: 金融経済教育推進機構(J-FLEC)本格稼働。職場・学校での金融教育の普及を目的とした機関が始動

議論の現在地

資産格差をめぐる主要な政策論点の一つが「配偶者控除・扶養控除の見直し」です。いわゆる「103万円の壁」「130万円の壁」は女性の就労時間を抑制するとして批判される一方、専業主婦・主夫のいる世帯の税負担増加につながるとして見直しに反対する意見も根強くあります。2025年段階の政府税制調査会は、就労収入増加に応じた段階的な控除縮小を検討するとしていますが、具体的な制度変更時期は2026年時点で未定のままです。

また、「貯蓄から投資へ」を促す政策誘導については、低賃金・非正規雇用という構造問題を個人の自助努力で解決するように見せてしまうリスクがあると指摘する立場があります。「同一労働同一賃金の徹底」「非正規雇用の処遇改善」こそが先決であるという議論は、労働経済学の研究者や女性労働団体から継続して提起されており、政策効果の評価として重要な視点を提供しています。

残された課題

第一に、統計の個人単位化の問題があります。家計単位での調査が主流であるため、世帯の中での「個人としての女性の金融資産」が可視化されていません。個人単位の資産把握を進める統計整備が求められています。第二に、金融教育のジェンダー設計の問題です。金融商品の広告やフィンテックアプリは依然として男性をメインターゲットとしたデザインが多く、女性の投資参加を促す設計の充実が課題です。第三に、非正規雇用との連動の問題があります。女性の資産形成能力は雇用形態に強く依存しており、非正規雇用の処遇改善なしに資産格差の縮小は構造的に困難です。第四に、高齢単身女性への集中支援の問題です。65歳以上の単身女性は老後資産が乏しく貧困リスクが相対的に高く、介護費用の増加と相まって政策的な経済支援の充実が急務となっています。

国際比較|ジェンダーと金融資産の各国データ

世界銀行の金融包摂指標(Global Findex)

世界銀行が3年ごとに実施する「Global Findex Database(2021年版)」によると、銀行口座保有率の男女差は世界全体で約6ポイントにとどまる一方、投資商品(株式・年金・保険)の保有率格差は20ポイント以上に達する国も多いとされています。日本は口座保有率の男女差は小さいものの、長期投資参加率での格差が高所得国の中でも相対的に大きいという特徴があります。金融システムへのアクセス障壁は低くても、実質的な資産形成への参加格差が残存している状況です。

OECD加盟国の比較データ

OECDの「Gender at a Glance 2024」では、加盟国における金融資産の男女別実態として、多くの国で女性の金融資産保有額が男性の65%~80%にとどまることが示されています。日本はこの範囲内に収まりますが、非正規雇用比率の高さと年金受給額の格差から、老後の資産格差は先進国の中でも相対的に大きい部類に入るとされています。

北欧諸国(スウェーデン・デンマーク等)では、公的年金制度の充実と企業型確定拠出年金(DC)への実質的な全員加入が実現しており、個人の投資行動に依存しない制度的な格差縮小が達成されています。制度設計による強制的な平準化が、個人の金融リテラシーや可処分所得の差を超えて格差を縮小できることを示しており、日本の政策議論における参照モデルとして研究者から注目されています。

アジア諸国との比較

韓国では2018年以降、職場における性別による賃金差異の公開が強化され、企業のジェンダー格差対策が加速しています。シンガポールでは政府主導の金融リテラシー教育プログラムに「ジェンダー格差縮小」の観点が明示的に組み込まれています。一方、日本は女性活躍推進法による情報公表義務化は進んでいますが、実効的な賃金格差縮小から資産格差縮小へとつながる政策パッケージの整備は途上段階にあります。

比較表|男女別の金融・就労関連指標(2025年時点)

指標 男性 女性 出典・時点
単身世帯の金融資産保有額(平均) 約904万円 約858万円 金融広報中央委員会 令和5年調査
金融資産保有額の中央値(単身世帯) 71万円 40万円 同上
金融資産ゼロの割合(単身世帯) 約33% 約43% 同上
株式・投資信託保有率 約42% 約31% 日本証券業協会 2024年調査
非正規雇用比率 約23% 約54% 総務省 労働力調査 2025年
生涯賃金の目安(正規・大卒) 約3億円 約2.5億円 内閣府推計・厚労省賃金センサスをもとに概算
老齢厚生年金受給額(平均月額) 約16万円 約10万円 厚生労働省 年金財政調査

相談窓口|経済的困窮・離婚・DV後の生活再建

資産問題・生活費の困窮・離婚後の経済的自立については、以下の公的機関で相談できます。

  • DV相談ナビ(#8008): 配偶者暴力に関する相談機関を案内します(24時間対応)。DVが絡む財産問題についても相談の入口として活用できます
  • 配偶者暴力相談支援センター: 各都道府県に設置。法的支援・経済的自立支援まで一貫したサポートを提供します
  • 法テラス(0120-078374): 経済的に余裕がない場合の無料法律相談制度。財産分与・離婚・養育費の相談も対応しています

具体的な個別事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

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まとめ|統計が示す金融ジェンダーギャップの構造と今後

男女の賃金格差は一時点のスナップショットですが、貯蓄・金融資産・住宅・年金を含む「資産格差」は、その差が数十年にわたって積み重なった社会構造の結果です。日本では単身世帯の金融資産保有額の平均値差は約46万円にとどまりますが、中央値では31万円の差があり、「資産ゼロ」割合では女性が約10ポイント高い水準にあります。これは非正規雇用比率・賃金水準・キャリア断絶の差が直接反映された数字です。

2024年以降の新NISAや金融教育推進は、個人の自助努力を支援する政策として評価できます。一方で、非正規雇用構造の改善・同一労働同一賃金の徹底・賃金格差の是正なしには資産格差の根本的な縮小につながらないという構造的な課題は残り続けます。統計データを定点観測し、政策の実効性を客観的に評価し続けることが、ジェンダー公正な社会の実現に向けた基礎となります。

関連記事

男女別の貯蓄・資産格差統計|生涯収入の差が積み上げる金融ジェンダーギャップ【2026年版】 - まとめ

よくある質問(FAQ)

日本における男女の金融資産格差はどのくらいですか?
金融広報中央委員会「令和5年調査」によると、単身世帯の金融資産保有額の平均は男性約904万円・女性約858万円で約46万円の差があります。中央値では男性71万円・女性40万円と差が拡大し、資産ゼロの割合は男性33%に対し女性43%と約10ポイントの格差があります。
女性が資産を積みにくい主な理由は何ですか?
主な要因として、非正規雇用比率が男性約23%に対し女性約54%と高く賃金水準が低いこと、育児・介護によるキャリア中断で収入が減少・停止すること、そして投資参加率が男性より約11ポイント低いことが挙げられます。個人の意識より雇用構造・制度設計の問題が大きいとされています。
新NISAは女性の資産形成に効果がありますか?
2024年から始まった新NISAは、非課税枠の拡大・恒久化により少額からの長期投資を後押しします。大手ネット証券では女性の新規口座開設比率が高まる傾向が報告されています。ただし、可処分所得が低い非正規雇用の女性層には投資資金自体がないケースも多く、制度利用の実質的な恩恵は雇用・賃金の格差によって左右される面があります。
生涯賃金の男女差はどのくらいですか?
内閣府の推計・厚生労働省の賃金センサスをもとにした概算では、大卒正規雇用の場合、男性の生涯賃金は約3億円、女性は約2.5億円で約5,000万円の差があるとされています。この差が数十年かけて資産格差へと転化します。非正規雇用が混在すると差はさらに拡大します。
離婚後に女性が経済的に困難になりやすい理由は何ですか?
主な理由として、住宅ローン・預貯金が夫名義であるケースが多いこと、財産分与交渉が難航すること、婚姻中にキャリアを中断した女性は収入再開が困難なこと、そして養育費の不払い問題などが挙げられます。法テラスや配偶者暴力相談支援センターへの相談が選択肢の一つです。
国際的に見て日本の金融ジェンダーギャップはどのレベルですか?
OECDの「Gender at a Glance 2024」では、加盟国の多くで女性の金融資産は男性の65%~80%にとどまっており、日本もこの範囲内に収まります。ただし非正規雇用比率の高さと年金格差から、老後の資産格差は高所得国の中でも相対的に大きい部類に入るとされています。

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