MENU

職場ハラスメント相談件数の統計推移|厚生労働省データ【2026年版】

職場で「嫌がらせを受けた」「上司の言動がハラスメントではないか」と感じても、どこに相談すればよいかわからず一人で抱え込んでしまう人は少なくありません。一方、企業の人事担当者やハラスメント相談員の立場からは、「実際に職場で何件くらいの相談が発生しているのか」「自社の状況は業界平均と比べてどうなのか」を把握するためのデータが必要とされています。

厚生労働省は毎年、都道府県労働局・労働基準監督署への相談件数を「個別労働紛争解決制度の施行状況」として公表しており、男女雇用機会均等法(均等法)や育児・介護休業法(育介法)に基づくセクシュアルハラスメント(セクハラ)・マタニティハラスメント(マタハラ)・パタニティハラスメント(パタハラ)の相談・申告件数も別途集計されています。これらの統計を時系列で分析することで、ハラスメントをめぐる職場環境の変化と法整備の効果を客観的に把握することができます。

2007年から2026年にかけての約20年間で、職場ハラスメントに関する法制度は大きく整備されてきました。しかし、相談件数の推移は単純な「被害の増減」を示すものではなく、「声を上げやすい環境が整備されたかどうか」という社会変化をも映し出しています。この記事では、公式統計データをもとにセクハラ・パワーハラスメント(パワハラ)・マタハラの相談実態を整理し、数字が示す現状と課題を解説します。人事・労務担当者、ハラスメント相談員、職場環境の改善に取り組む方々に役立てていただける内容となっています。

職場ハラスメント相談件数の統計推移|厚生労働省データ【2026年版】 - 解説

目次

ハラスメント相談件数統計が示すもの|データ源と読み解き方

「個別労働紛争解決制度」による相談件数統計の概要

厚生労働省が毎年度公表する「個別労働紛争解決制度の施行状況」は、全国の総合労働相談コーナーをはじめとする行政窓口への相談件数を集計した公式統計です。相談は大きく「総合労働相談(すべての労働問題の一般相談)」「民事上の個別労働紛争相談(当事者間の権利・義務をめぐるトラブル)」「あっせん申請(行政が仲介する紛争解決手続)」の3層に分類されます。

令和5年度(2023年度)の総合労働相談件数は約120万件に達しており、そのうち民事上の個別労働紛争相談の内訳では「いじめ・嫌がらせ」が最多の分類を占めています。「いじめ・嫌がらせ」は2012年度以降、一貫して全相談分類の中でトップを維持しており、ハラスメント問題が現代の職場課題の中心に位置づけられていることを示しています。2012年度の件数が約5万件台であったことと比較すると、10年余りで大幅な増加傾向を示しています。

均等法・育介法に基づく専門窓口との違い

「個別労働紛争解決制度」とは別に、男女雇用機会均等法(均等法)や育介法に特化した相談・申告の状況は、各都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が受け付ける専用窓口への件数として集計されます。こちらはセクハラ・マタハラ・パタハラに関わる均等法・育介法違反を専門に扱う窓口であり、一般の労働紛争相談とは異なる集計系統です。

厚生労働省は5年ごとに「雇用均等基本調査」を実施し、事業所側のハラスメント対応状況——相談窓口の設置率、防止研修の実施状況、就業規則への規定状況——も把握しています。定期的に公表される都道府県労働局への相談件数と合わせて参照することで、「使用者側の対応」と「被害者側の相談行動」の両面から実態を読み解くことができます。

相談件数の増減が意味すること

統計を読む際に見落としてはならない前提があります。相談件数の「増加」は、必ずしも「ハラスメント被害の増加」を意味しません。法整備の強化・メディアの報道増加・企業内相談窓口の整備が進むにつれて、これまで泣き寝入りしていた被害者が「声を上げやすくなる」効果が生じます。その結果、実態に変化がなくても相談件数が増加するケースが少なくありません。

逆に、2020年~2021年のコロナ禍でテレワークが急拡大した時期には、物理的な接触機会の減少によって一部のハラスメント相談が一時的に減少した可能性も指摘されています。統計の数字は、社会環境や制度変化という文脈の中で解釈することが重要です。また、内閣府「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和2年度)によれば、ハラスメントを経験した被害者のうち行政窓口へ相談したのは数パーセントにとどまっており、相談件数は「氷山の一角」にすぎないとされています。

セクシュアルハラスメント相談件数の推移(2007→2026)

均等法に基づくセクハラ相談件数の変遷

セクシュアルハラスメント(セクハラ)に関する相談は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法。最終改正: 令和7年法律第63号・2025年6月11日施行)第11条に基づく事業主の防止措置義務を根拠として、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)の専用窓口に申し出られます。

2007年当時、均等法は性別を理由とした差別禁止(第5条・第6条)の対象を「男女双方」に広げ、セクハラ防止措置の対象も同性間・男性被害者を含む形に拡充されました。これにより、それまで「女性被害者のみ」と理解されていたセクハラ相談が、より多様な被害者を受け入れられる制度に整備されました。

厚生労働省の公表データによると、セクハラ関連相談件数は2000年代後半から2010年代前半にかけて年間1万件前後の水準にありましたが、2017年ごろから国際的に広まった#MeToo運動の影響を受けて2018年前後に一時的な増加傾向がみられました。令和4年度(2022年度)においても、均等法ベースのセクハラ相談は都道府県労働局への相談件数の主要構成要素の一つとなっています。

相談類型の変化——新形態セクハラへの対応

相談の内容は時代とともに変化しています。かつては「上司からの身体的接触」「性的な言動による就業環境の悪化」が典型例でしたが、近年はオンラインコミュニケーションを通じたハラスメント(SNSでの不適切なメッセージ送信、テレワーク中のオンライン会議での言動)や、採用活動中の学生を標的とした就活セクハラに関する相談が増加傾向にあります。

2024年の厚生労働省指針改正では、テレワーク環境下でのセクハラへの事業主対応が明示されました。また、就活セクハラとは|2026年義務化される防止措置とOB訪問の注意点で詳述しているように、2026年度以降は採用活動における防止措置が企業に義務づけられる見通しとなっています。

申告(是正要求)件数と行政指導の実態

相談に留まらず、是正申告・あっせん申請に至った件数は相談件数より大幅に少なく、「申告の壁」の高さを示しています。申告件数が少ない主な要因として、①証拠収集の困難さ、②報復・不利益取扱いへの恐れ、③手続きの複雑さに対する心理的ハードル——が挙げられています。申告後に行政が是正指導を実施した事業所数は毎年公表されていますが、全相談件数に対する割合は依然として低水準にとどまっています。

※本記事はアフィリエイトリンクを含みます(PR)

職場ハラスメントの法的対応と統計的背景を体系的に学べる参考書として、以下をご紹介します。

【PR】職場のハラスメント 予防・対応の法律実務(日本法令)

パワーハラスメント相談件数の急増(2020年法施行後)

パワハラ防止法の施行が相談件数に与えた変化

パワーハラスメント(パワハラ)は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法。最終改正: 令和7年法律第63号・2026年4月1日施行)第30条の2(2026年10月1日以降は第31条)に基づき、2020年6月(大企業)・2022年4月(中小企業)から防止措置義務が全事業主に適用されました。日本で初めて「パワーハラスメント」を法律上に明示した規定であり、雇用管理上の措置として相談窓口の設置・就業規則への明記・研修実施などが義務づけられています。

法施行以降、「個別労働紛争解決制度の施行状況」における「いじめ・嫌がらせ」相談件数の増加が加速しました。令和5年度(2023年度)には約9万件前後に達していると報告されており、2012年度の水準(約5万件台)と比較すると約1.8倍の増加となっています。この急増の背景には、①法令による認知度向上、②企業内相談窓口の整備、③「パワハラ」という言語化の普及——などが複合的に作用しているとみられています。

「いじめ・嫌がらせ」相談のジェンダー差

「いじめ・嫌がらせ」の相談者に占める女性の割合は、近年増加傾向にあります。2010年代前半には男性相談者が比較的多い傾向がありましたが、2020年代に入り女性相談者の割合が高まり、近年は5割前後に達するケースも報告されています。

背景として、①女性の就業者数・管理職比率の増加に伴い職場内の立場関係が多様化したこと、②パワハラとジェンダー・ハラスメント(ジェハラ)が複合するケースへの認識が広まったこと——が挙げられます。ジェンダー・ハラスメントとは、「女性なのにそんな仕事をするのか」「男のくせに育休を取るのか」といった性別役割期待(社会的・文化的に形成された性別規範)に基づく言動であり、均等法上のセクハラとは区別されつつも密接に関連します。

業種・職種別のパワハラ相談傾向

業種別では、医療・福祉、サービス業、製造業において相談件数が多い傾向があります。医療・介護現場では、明確なヒエラルキー構造と慢性的な人手不足が重なり、パワハラが発生しやすい環境が形成されているとされています。建設業・運輸業でも相談件数は多く、業界に根づいた慣行的な職場文化が影響しているとみられています。

企業規模別では、大企業(2020年)・中小企業(2022年)の段階的施行を経て、2026年時点では全事業所が防止措置の法的義務対象となっています。しかし中小企業での対応格差は依然として課題として残っており、労働局による重点的な啓発・指導が継続されています。

マタニティ・パタニティハラスメントの相談実態データ

妊娠・出産・育休取得に関する相談・申告の推移

マタニティハラスメント(マタハラ)・パタニティハラスメント(パタハラ)に関する相談・申告は、主に均等法第9条(妊娠・出産を理由とした不利益取扱いの禁止)および育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育介法。最終改正: 令和6年法律第42号・2025年10月1日施行)第10条(育休取得を理由とした不利益取扱いの禁止)に基づきます。

2017年の育介法改正では、第25条にハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務が明文化されました。これを受けて厚生労働省が新たにマタハラ・パタハラに関する相談を専用集計に加えたことで、統計上の把握が容易になりました。各都道府県労働局への相談件数は改正以降に緩やかな増加傾向を示しており、「声を上げにくい問題」が徐々に顕在化しつつあることを示唆しています。

男性・パタハラ相談の増加傾向

近年の特徴的な動向は、男性からのパタハラ相談の増加です。2022年10月施行の「産後パパ育休(出生時育児休業)」新設、同年4月の男性育休取得促進に関する法改正(従業員1000人超の企業への取得率公表義務)を契機として、男性の育休取得を試みた際に受けた嫌がらせに関する相談が増加しています。「育休を申し出たら上司に嫌味を言われた」「育休取得後に人事評価を下げられた」といった事例が都道府県労働局に持ち込まれるケースが報告されています。

令和4年度の雇用均等基本調査では、育介法関連の相談件数が前年比で増加していることが確認されており、男性育休の普及を推進する法政策が、同時に潜在的なパタハラ被害を顕在化させる効果をもたらしていることがわかります。法的構造と対応策については、マタハラ・パタハラの法的論点|均等法・育介法での位置づけで詳しく解説しています。

是正指導件数と事業者対応の現状

都道府県労働局が実施する行政指導(是正勧告・改善指導)は、均等法・育介法の違反が認定された事業所に対して行われます。是正指導を受けた事業所の多くは、①防止措置の未整備(相談窓口の不設置・就業規則への規定漏れ)、②不利益取扱いの実施(降格・減給・不当解雇)——のいずれかに分類されます。

申告・指導に至るケースは実際の被害件数に比べて依然として少なく、被害者が「申告しても状況が変わらないかもしれない」「証拠がない」「会社に知られたくない」と考えて申告を回避するケースが多いとされています。申告のハードルを下げるための制度設計——例えば外部第三者機関への申告ルートの整備や、申告後の不利益取扱い禁止の実効性確保——が今後の課題として指摘されています。

比較表|ハラスメント種別の法的根拠・相談実態・行政対応

種別 主な法的根拠 防止措置義務化 主な相談窓口 近年の相談傾向
セクシュアルハラスメント(セクハラ) 均等法第11条 1999年(指針)/ 2007年改正で対象拡大 都道府県労働局雇用環境・均等部(室) 年間1万件前後。オンライン型・就活セクハラが増加傾向
パワーハラスメント(パワハラ) 労働施策総合推進法第30条の2 2020年(大企業)/ 2022年(中小) 総合労働相談コーナー 「いじめ・嫌がらせ」として年間9万件前後(2023年度)。2012年度比約1.8倍
マタニティハラスメント(マタハラ) 均等法第9条・育介法第25条 2017年(育介法改正で明文化) 都道府県労働局雇用環境・均等部(室) 改正後に緩やかな増加傾向。申告件数は相談件数より少ない
パタニティハラスメント(パタハラ) 育介法第25条 2017年(育介法改正) 都道府県労働局雇用環境・均等部(室) 産後パパ育休施行(2022)以降に相談件数が増加傾向
カスタマーハラスメント(カスハラ) 東京都条例(2025年施行)/ 国法は検討中 東京都: 2025年。国: 義務化なし(2026年時点) 総合労働相談コーナー(一般相談として受付) 対人サービス業の女性に多い。国レベルの法整備が課題
SOGIハラスメント(SOGIハラ) 各指針(法律上の独立規定なし) 義務化なし(指針での対応推奨) 都道府県労働局(パワハラ・セクハラとして受付) 独立した集計統計なし。LGBT理解増進法(2023)以降に認知度上昇

現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

ハラスメント統計に影響を与えた主要な法改正・新法の流れは以下のとおりです。

  • 2007年: 均等法改正(セクハラ防止措置の対象を同性間・男性被害者に拡大。職場外でのセクハラも対象とする方針を明確化)
  • 2013年: 均等法改正(セクハラ相談者・被害申告者への不利益取扱いを第11条第2項として明示禁止)
  • 2017年: 育介法改正(第25条新設。マタハラ・パタハラ防止のための雇用管理上の措置義務を明文化)
  • 2019年: 女性活躍推進法改正(公表義務対象を101人以上に拡大。情報公開によりハラスメント対応状況が外部から把握可能に)
  • 2020年: 労働施策総合推進法改正施行(大企業向け)。パワハラを法律上に初めて定義し、防止措置を義務化
  • 2022年: 労対法(中小企業)でパワハラ防止義務が全事業所に拡大。育介法改正で産後パパ育休新設・育休取得率公表義務化
  • 2023年: LGBT理解増進法施行(SOGIハラへの対応推奨を明示。ただし罰則規定なし)
  • 2025年: 東京都カスタマーハラスメント防止条例施行(全国初のカスハラ規制条例)
  • 2026年: カスハラ対策の国レベル法制化に向けた議論が本格化

議論の現在地

ハラスメント相談件数の増加をどう解釈するかについては、複数の立場から議論が続いています。

厚生労働省や内閣府男女共同参画局は、件数増加を「被害の潜在化から顕在化への移行」として肯定的に捉え、相談しやすい環境整備が進んでいる証拠と位置づけています。日本労働弁護団や被害者支援団体からは「相談件数の増加は氷山の一角が大きく見えているにすぎない」とする見解が示されており、実態把握のために定期的な統一被害調査(全国規模のサンプル調査)の実施が求められています。

一方、経営者団体の一部からは「ハラスメントの定義拡大により、正当な業務指示との区別が難しくなり、管理職が委縮する効果が生じている」という指摘もあります。厚生労働省の指針は「業務上の指示・注意・指導はパワハラには該当しない」と明示していますが、現場での線引きに迷うケースが多く残されており、判例の蓄積と運用指針の継続的な更新が必要とされています。

残された課題

①過少申告問題とアクセシビリティ: 内閣府「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和2年度)では、ハラスメントを経験した被害者のうち行政窓口へ相談したのは数パーセントにとどまっています。被害者の多くが「相談しても無駄だと思った」「解決しないと思った」「職場での立場が悪くなると思った」を理由に申告を断念しており、申告後の保護措置の充実と相談窓口の認知度向上が急務です。

②複合型ハラスメントへの対応: セクハラとパワハラが複合するケース、SOGIハラ(性的指向・性自認〔SOGI〕に関わるハラスメント)とパワハラが絡み合う事案では、現行法では相談先が分散してしまい、被害者が適切な窓口にたどり着けない問題があります。ハラスメント防止措置義務とは|セクハラ・パワハラ・マタハラ・カスハラの事業者義務を一覧整理【2026年版】で整理しているように、種別ごとに根拠法・窓口・対応義務が異なる現状は被害者にとっての障壁となっています。

③カスタマーハラスメントの法的整備: 顧客・取引先からのハラスメント(カスハラ)については東京都条例(2025年)が先行していますが、国レベルの法整備は2026年時点でも検討段階にあります。対人サービス業(医療・介護・小売・宿泊業等)に従事する労働者に多い問題であり、これらの業種で働く女性が多数を占めることからもジェンダーと切り離せない課題です。

④統計の縦割り問題とEBPM: セクハラは均等法系窓口、パワハラは労対法系窓口、カスハラは未分類として個別相談で受け付けられており、ハラスメント被害全体の実態をワンストップで把握できる統一統計が存在しません。EBPM(証拠に基づく政策立案)と男女共同参画統計で指摘されているように、政策効果の測定と次の法改正に向けた根拠資料づくりのためにも、横断的なデータ基盤の整備が急務とされています。

公的相談窓口|ハラスメント被害の相談先

職場でのハラスメント被害に直面した場合、または職場のハラスメント対応に困っている場合は、以下の公的窓口に相談することができます。

  • 総合労働相談コーナー(厚生労働省・都道府県労働局): 全国の労働基準監督署内などに設置。パワハラ・不当解雇など労働問題全般の無料相談。☎ 0120-811-610(厚生労働省 総合労働相談コーナー)
  • 都道府県労働局雇用環境・均等部(室): セクハラ・マタハラ・パタハラの専門相談窓口。均等法・育介法違反の申告・あっせん申請を受け付けます。(各都道府県の連絡先は厚生労働省ウェブサイトで確認できます)
  • 法テラス(日本司法支援センター): 法律問題全般の情報提供と弁護士費用立替制度(収入要件あり)。☎ 0570-078374(平日9:00~21:00、土曜9:00~17:00)

具体的な事案については、弁護士など専門家への相談をご検討ください。

まとめ|統計から読む職場ハラスメントの現在と今後

本記事では、厚生労働省の公式統計データをもとに、セクハラ・パワハラ・マタハラ・パタハラの相談件数推移を概観しました。要点をまとめると次のとおりです。

  • 「いじめ・嫌がらせ(パワハラ)」相談件数は2012年度以降一貫してトップを維持し、2020年の法施行以降さらに増加。令和5年度(2023年度)は約9万件前後と推計される
  • セクハラ相談は均等法専用窓口に年間1万件前後が寄せられており、オンライン型・就活セクハラなど新形態への対応が課題となっている
  • マタハラ・パタハラの相談は育介法改正(2017年・2022年)を経て緩やかに増加。特に男性育休普及に伴うパタハラ相談の増加が目立つ
  • 相談件数は「氷山の一角」にすぎず、実際の被害はさらに大きいと推計されている
  • カスハラや複合型ハラスメントへの法的対応は整備途上であり、EBPMの観点から統計の横断的整備が急務

ハラスメント問題の根絶は、法制度の整備だけでなく、職場文化の変革と一人ひとりの意識変化によって実現するものです。統計データは「現状の可視化」のツールとして機能し、政策立案者・企業・市民がそれぞれの立場で問題解決に取り組む基礎資料となります。

関連データについては、男女共同参画白書とは|統計データで見る日本の現状と課題【2026年版】男女間賃金格差とは|統計データで見るジェンダーペイギャップと是正策【2026年版】も合わせてご覧ください。

※本記事はアフィリエイトリンクを含みます(PR)

ハラスメント問題のデータと法制度を体系的に学べる書籍として、以下をご紹介します。

【PR】ジェンダー平等と労働——データで読む職場改革(参考書籍)

よくある質問(FAQ)

Q. パワハラの相談は全国で年間何件ほどですか?

A. 厚生労働省「個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、パワハラに相当する「いじめ・嫌がらせ」の民事上の個別労働紛争相談件数は、令和5年度(2023年度)に約9万件前後と推計されています。2012年度以降一貫して全相談分類の中でトップを維持しており、2020年のパワハラ防止法施行以降さらに増加傾向にあります。

Q. セクハラの相談窓口はどこですか?

A. セクハラに関する相談は、各都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)が専門窓口です。男女雇用機会均等法第11条に基づく防止措置義務違反についての申告・あっせん申請も同窓口で受け付けています。一般的な労働問題相談としては、厚生労働省の総合労働相談コーナー(☎ 0120-811-610)も利用できます。

Q. 相談件数が増えているのはハラスメントが増えているからですか?

A. 必ずしもそうとは言えません。相談件数の増加には、法整備による被害者の認知度向上、企業内相談窓口の整備で声を上げやすくなったこと、「ハラスメント」という言葉の普及といった要因も含まれます。一方、実際の被害はさらに多く、内閣府調査(令和2年度)では行政窓口に相談した被害者は数パーセントにとどまるとされており、相談件数は「氷山の一角」と指摘されています。

Q. マタハラとパタハラはどちらが多いですか?

A. 統計上はマタハラ(妊娠・出産・育休取得に関わる女性被害)の相談が引き続き多数を占めますが、2022年の産後パパ育休(出生時育児休業)新設以降、男性の育休取得に絡むパタハラ相談が増加傾向にあります。両者を比較する統合的な統計は現時点では公表されていませんが、男性育休の普及が潜在的なパタハラ被害を顕在化させていると分析されています。

Q. カスタマーハラスメントは労働局に相談できますか?

A. カスタマーハラスメント(カスハラ)は、2026年時点では国の法律上に独立した規定がなく(東京都条例は2025年施行)、一般的な労働問題として総合労働相談コーナーや労働局に相談することができます。会社が安全配慮義務を果たしているかという観点から事業者への対応を求める手続きも可能です。具体的な事案については弁護士など専門家への相談をご検討ください。

職場ハラスメント相談件数の統計推移|厚生労働省データ【2026年版】 - まとめ

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次