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女性起業家・女性経営者の統計データ|起業率・資金調達格差と支援制度【2026年版】

「起業したいと考えているが、女性は不利な状況に置かれているのだろうか」「女性経営者が増えているとは聞くが、実際のデータはどうなっているのか」——そのような疑問を持つ方は多いでしょう。日本では近年、女性の起業・経営参画を後押しする政策が相次いで整備されてきました。女性活躍推進法の制定(2015年)や第5次男女共同参画基本計画における女性起業促進目標の明記など、制度的な枠組みは着実に拡充しています。

しかし、実際の統計データを見ると、日本の女性起業家・女性経営者の比率は依然として男性と大きな差があります。とりわけ、ベンチャーキャピタル(以下VC。新興企業に投資する専門的な投資会社・ファンドの総称)投資における女性創業者へのアクセス格差は、国内外の研究者が繰り返し指摘する構造的な課題です。本記事では、総務省「就業構造基本調査」、中小企業庁「中小企業白書」、日本政策金融公庫「新規開業実態調査」などの公的統計をもとに、2026年時点の現状を多角的に整理します。法制度の変遷、支援制度の全体像、そして残された課題を含めて解説します。企業人事担当者・起業検討者・男女共同参画推進員・政策研究者など、幅広い方に役立てていただける内容です。

女性起業家・女性経営者の統計データ|起業率・資金調達格差と支援制度【2026年版】 - 解説

目次

女性起業家・女性経営者とは|統計上の定義と概観

「経営者」「自営業者」「起業家」の統計上の分類

日本の統計では、「経営者」「自営業者」「起業家」は使われる調査によって定義が異なります。総務省「就業構造基本調査」(2022年実施・2023年公表)では、就業者を大きく「雇用者」と「自営業主・家族従業者」に区分しています。このうち「自営業主(雇人あり)」が一般的に言う「経営者」に近い概念であり、「自営業主(雇人なし)」は個人事業主(フリーランスを含む)を指します。

一方、中小企業庁「中小企業白書」では法人の代表者に占める女性割合を集計しています。2024年版白書では、帝国データバンクの企業データを用いた分析で、法人代表者に占める女性の割合は約14.8%と示されています。

「起業家」については、日本政策金融公庫「新規開業実態調査」(2023年度)が毎年の新規開業者の男女比を調査しています。同調査では新規開業者の約25.3%が女性であり、2000年代初頭の10%台後半から着実に上昇しています。ただし、この「新規開業」の定義は勤務者から独立した個人事業主・法人設立者を中心としており、VCから投資を受けたスタートアップ創業者とは層が異なる点に注意が必要です。

日本の女性起業・経営の現状概観

総務省「就業構造基本調査」(2022年)によると、雇人のある自営業主に占める女性の割合は約16.5%です。業種別では美容・理容、飲食サービス、教育・学習支援、医療・福祉分野で女性経営者比率が相対的に高い傾向があります。反対に、製造業・建設業・情報通信業では女性経営者比率が一桁台にとどまっています。

内閣府「男女共同参画白書」(2025年版)は、第5次男女共同参画基本計画(2020~2025年)の目標として「起業希望者に占める女性割合の向上」「成長分野・新産業分野への女性参画拡大」を掲げてきました。しかし、起業を「希望」している女性と実際に「開業した」女性の間には依然として大きなギャップがあります。日本政策金融公庫の調査では、起業を希望しながら実現できていない理由として、女性は「育児・介護との両立の困難」「資金調達のハードルの高さ」「ロールモデルの不足」を多く挙げています。

女性起業家の統計データ|起業率・経営者比率の実態

新規開業者の男女比推移

日本政策金融公庫「新規開業実態調査」が毎年集計する新規開業者の女性比率は、近年緩やかに上昇しています。主要年度の推移は以下のとおりです。

  • 2015年度:女性比率 約20.1%
  • 2018年度:女性比率 約21.9%
  • 2021年度:女性比率 約24.0%
  • 2023年度:女性比率 約25.3%

この上昇傾向の背景には、コロナ禍で雇用の不安定さを実感した女性が自ら事業を立ち上げる動きが広がったこと、育児・介護を続けながら柔軟に働ける手段として個人事業主・フリーランスを選択するケースが増えたことなどがあります。

ただし、OECD諸国の平均と比較すると、日本の女性起業家比率はまだ低い水準にあります。OECDの2022年報告書によると、日本の女性自営業比率は男性の約3分の1程度であり、OECD加盟国平均(男性比率の約55%水準)を大きく下回っています。

業種別・規模別の女性経営者比率

中小企業庁「2024年版中小企業白書」の業種別分析では、女性が代表者を務める企業は「サービス業(個人向け)」「教育・学習支援業」「医療・福祉」「卸売・小売業」に集中しています。製造業では約5%、情報通信業では約7%、建設業では約4%程度にとどまっています。

企業規模別にみると、従業員1~4人の小規模事業者では女性経営者比率が約18~20%程度あるのに対し、従業員100人以上の中堅企業では約7%前後に低下する傾向があります。この差は、起業後の成長過程で必要となる資金調達・人材確保・ネットワーキングにおいて、女性経営者に対して不均等なバリアが存在することを示しています。

国際比較|日本の女性起業家比率の位置づけ

世界経済フォーラム(WEF)「グローバルジェンダーギャップ報告書2024」では、日本は総合118位と評価されており、経済分野では管理職・専門職に占める女性比率の低さがスコアを押し下げる要因となっています。

米国では新規開業者の約42%が女性であるとの調査があります(Ewing Marion Kauffman Foundation, 2023)。英国では女性起業家比率の向上が政府の成長戦略の柱の一つとして位置づけられています。韓国では2020年代に入り政府主導の「女性起業家育成計画」が実施されています。日本の女性起業家比率はこれらの国々と比較しても依然として低い水準にあり、政策的な底上げが求められる状況です。

資金調達のジェンダーギャップ|投資・融資の実態

スタートアップ投資(VC・エンジェル)における男女格差

VC投資における資金調達の男女格差は、国内外で共通して指摘される構造的課題です。

国内のVC投資については、一般社団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)の調査(2023年)によると、女性が単独で代表者を務めるスタートアップへのVC投資は総額の推計6~8%にとどまるとされています。ただし、日本ではVC投資先の性別データの開示義務がなく、実態把握は民間・研究機関の推計に依拠しています。

国際的なデータでは、Crunchbase(2023年版レポート)によると米国においても女性単独創業スタートアップへのVC投資は全体の約2.1%、男女混合チームへの投資を合わせても約9.7%にとどまっており、資金調達の性別格差は先進国共通の課題です。背景の一つとして、国内主要VC各社の投資担当者に占める女性の割合が平均で約15%と低く(VC業界関係者アンケート調査、2023年推計)、投資判断者の多様性不足がバイアスを生む可能性が指摘されています。

政策金融・銀行融資の動向

政策金融においては、日本政策金融公庫が「女性、若者/シニア起業家支援資金」を設け、女性起業家を対象とした低利融資制度を提供しています。2023年度の同制度の利用実績では、女性の新規融資件数が前年度比約110%と増加傾向にあります。

銀行・信用金庫の取り組みとしては、都市部を中心に「女性起業家向け融資商品」を設ける動きが広がっています。しかし、担保・保証人を重視する従来型の融資審査は、不動産保有率や家族構成の男女差から女性起業家にとって不利になりやすい構造が残っています。事業計画の収益性・市場性を重視した「事業性評価融資(担保・保証に依存せず事業の将来性で判断する融資)」への転換が求められていますが、金融機関全体での普及にはまだ時間を要する状況です。

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現代的論点|2026年時点の到達点

2007年以降の主な法改正・新法

女性起業・女性経営者支援に関連する主な制度変化は以下のとおりです。

  • 2015年:女性活躍推進法成立女性の職業生活における活躍の推進に関する法律・平成27年法律第64号)。企業に女性活躍推進計画の策定・公表を義務づけ(第8条第1項)。経営幹部候補の育成・登用も推進方向として示されています。
  • 2019年:女性活躍推進法改正。義務対象を101人以上の企業に拡大。管理職昇進に関する情報公表の対象項目が強化されました。
  • 2020年:第5次男女共同参画基本計画。「成長分野・新産業分野への女性の参入促進」「女性起業家支援の強化」が重点施策として明記。コロナ禍の影響を踏まえた女性の雇用維持・起業支援も盛り込まれました。
  • 2022年:女性活躍推進法改正(情報公表強化)。301人以上の企業に男女間賃金格差の公表が義務化(2023年3月期報告から)。この情報開示は、女性が管理職・経営者へと昇進する機会の透明性向上につながります。
  • 2022年:スタートアップ育成5か年計画策定。政府が2027年度までのスタートアップ支援強化方針を発表。多様性推進(女性・外国籍・若年層の起業家支援)が施策の一つとして盛り込まれました。
  • 2023年:中小企業基本法に基づく施策の拡充中小企業基本法・昭和38年法律第154号)。女性の経営参画を含む多様な人材活用の観点から、中小企業支援施策が更新されています。

議論の現在地

女性起業家支援政策をめぐっては、推進を支持する立場と制度の実効性を問う立場の両方から議論が展開されています。

推進側の論点としては、「女性の経済参画は経済成長に直結する」という議論があります。内閣府の試算や国際機関の報告(IMF・マッキンゼー・グローバル・インスティテュート等)では、女性の経済参加率の向上がGDP押し上げに寄与するという推計が示されており、女性起業家の増加も同様の効果があると期待されています。多様な経営陣はイノベーションを促進するという研究知見も、支援策の根拠として引用されています。

一方、批判的な立場からは、「支援策が特定の層(高学歴・都市部・ハイテクセクター)に偏っており、地方の中小・零細事業者の女性経営者の実態を反映していない」という指摘があります。また、「家事・育児・介護の無償ケア労働(アンペイドワーク)への根本的な対処なしに起業支援を議論しても、構造的な問題の解決にはならない」という批判も根強く存在します。さらに、「女性起業家をロールモデルとして打ち出すことで、本来は制度設計の問題である資金調達格差・ネットワーク格差を個人の能力や努力の問題にすり替えてしまう」というフェミニスト経済学の視点も提示されています。

賛否の両論を踏まえながら、制度の実効性を継続的に検証していく姿勢が求められます。

残された課題

2026年時点において、以下の課題が依然として未解決・未着手のまま残っています。

第一に、VC投資の性別情報の開示義務の不在です。スタートアップへのVC投資に占める女性創業者比率の公式統計は日本では整備されておらず、実態把握が研究機関・民間調査に頼っています。EUでは2024年以降、一定規模以上のVCファンドにダイバーシティデータの開示を求める規制の議論が進んでおり、日本でも同様の制度設計が課題として浮上しています。

第二に、融資審査基準の中立化です。担保・保証人中心の融資慣行から事業性評価(ビジネスモデルの収益性・成長性に基づく審査)への転換は長年の課題ですが、金融機関全体への普及は道半ばです。

第三に、地域間の支援格差です。女性起業家支援プログラムの多くが都市部(東京・大阪・福岡等)に集中しており、地方の女性経営者・農業自営業者が活用できる資源は限定的です。

第四に、複合的な困難を抱える女性起業家への対応不足です。外国籍の女性経営者、障害のある女性経営者、ひとり親で起業した女性など、複数の属性が交差することで生じる複合的なバリア(インターセクショナリティ)に直面する層への体系的な支援は整っていません。

女性起業家支援制度の比較|主な公的支援一覧

国の主な支援制度

以下の比較表は、2026年現在における主な公的支援制度の概要をまとめたものです。詳細・最新条件は各機関の公式サイトでご確認ください。

制度名 所管機関 対象 主な支援内容 特記事項
女性、若者/シニア起業家支援資金 日本政策金融公庫 女性起業家・35歳未満または55歳以上の男性 基準金利より低い融資 担保・保証人なし枠あり
J-Startup Women 経済産業省・JETRO 女性スタートアップ創業者 VC紹介・メンタリング・海外展開支援 選考によるプログラム参加
スタートアップ創出促進保証 中小企業庁・各信用保証協会 創業前後の事業者 保証料優遇・経営者保証不要 2023年度から開始
各都道府県の女性起業家支援補助金 各都道府県・市区町村 地域内の女性起業家 創業費用の補助・専門家派遣 自治体により内容が大きく異なる
小規模事業者持続化補助金 中小企業庁 小規模事業者全般 販路開拓等の費用補助(上限50~200万円) 女性専用枠はないが活用しやすい

自治体・民間の支援プログラム

自治体レベルでは、東京都「女性起業家大賞」・大阪府「女性ビジネスプランコンテスト」など、プランコンテストと補助金を組み合わせた支援が各地で展開されています。民間では、商工会議所・商工会が運営する「創業スクール」に女性向けコース・託児付きコースを設ける例も増えています。また、インキュベーション施設(コワーキングスペース・インキュベーター)の一部が女性専用フロアや育児スペースを設けて、女性起業家の参入を後押しする動きがあります。

女性起業家を取り巻く構造的課題

育児・介護との両立とロールコンフリクト

日本では家事・育児・介護の無償ケア労働の大部分を女性が担っており、起業・経営に要する時間とエネルギーを制約する大きな要因となっています。総務省「社会生活基本調査」(2021年)では、6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事・育児時間(1日平均)は妻が約7時間28分であるのに対し、夫は約1時間54分であり、この非対称な負担構造は起業後も継続します。

経営者は従業員と異なり、雇用保険の育児休業給付金の対象外となります。そのため、出産・育児を経て事業を継続するためのセーフティネットが脆弱であることが、女性が起業を躊躇う要因の一つとして指摘されています。

ネットワーキングの格差とエコシステムの課題

スタートアップへの投資は、人的ネットワーク(誰を知っているか、誰から紹介されたか)に大きく依存する傾向があります。日本のVC業界や主要経済団体の主要ポストは依然として男性が多数を占めており、女性起業家がVC投資家や大企業の意思決定者に接触する機会は構造的に限られています。

この「見えないネットワーク格差」を補う試みとして、「J-Startup Women」(経済産業省・JETRO支援)などのプログラムが設けられています。参加起業家同士のメンタリングやVC紹介の機会提供が行われていますが、参加枠は限られており、一定規模以上のスタートアップに支援が偏りがちな点は課題として残っています。

公的相談窓口・支援情報

女性起業家・経営者向けの主な相談窓口

  • よろず支援拠点(中小企業庁):全国47都道府県に設置された中小企業・個人事業主向けの無料相談窓口。起業前後の経営相談・専門家派遣に対応しています。
  • 日本政策金融公庫 各支店の創業相談:女性起業家支援資金の申請前相談を無料で実施。全国の支店で予約可能です。
  • 各都道府県の男女共同参画センター:就業・起業に関する相談を実施している施設もあります。内閣府男女共同参画局のサイト(www.gender.go.jp)から各センターの連絡先を確認できます。
  • DV相談ナビ(#8008):起業を検討している女性がDVや経済的支配のもとに置かれている場合は、まず専門の相談窓口への連絡をご検討ください。

まとめ|統計が示す現状と今後の注目点

日本の女性起業家・女性経営者の状況は、過去20年間で着実に改善されてきました。新規開業者に占める女性比率は2000年代の約15%から2023年度には約25%に上昇し、政策金融・支援プログラムも多様化しています。女性活躍推進法の情報公開義務の強化により、大企業における男女の昇進格差が可視化されるようになったことも、経営参画に向けた環境整備の一歩です。

一方で、資金調達のジェンダーギャップ・融資審査の中立性・育児との両立・地方部の支援格差といった構造的課題は2026年時点でも依然として未解決のまま残っています。特に、VC投資における女性創業者へのアクセス格差については、投資データの開示義務制度の検討が今後の政策課題となりえます。

統計データが示すのは「現状の格差」だけではなく、「どこに政策介入の余地があるか」というEBPM(証拠に基づく政策立案)の出発点でもあります。引き続き最新データを参照しながら、女性の経済参画をめぐる政策動向を注視していくことが重要です。具体的な法的課題や経営上の問題については、弁護士・税理士・中小企業診断士など専門家への相談をご検討ください。

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女性起業家・女性経営者の統計データ|起業率・資金調達格差と支援制度【2026年版】 - まとめ

よくある質問(FAQ)

Q. 日本の女性経営者(法人代表者)の比率はどのくらいですか?
A. 帝国データバンクの調査(2024年版中小企業白書引用)によると、法人代表者に占める女性の割合は約14.8%です。業種・規模によって差があり、小規模サービス業では相対的に高く、製造業・建設業では5%前後にとどまっています。
Q. 女性が起業する際に利用できる公的融資制度はありますか?
A. 日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」が代表的な制度です。基準金利より低い金利で融資を受けられる場合があり、担保・保証人が原則不要の枠もあります。詳細は各支店の創業相談窓口へお問い合わせください。
Q. スタートアップ向けVC投資において、女性創業者への資金提供はどの程度ですか?
A. 日本では正式な開示統計が整備されていないため推計値となりますが、女性が単独で代表者を務めるスタートアップへのVC投資はVC全体の6~8%程度との推計があります(VEC, 2023)。米国でも女性単独創業企業への投資比率は約2%(Crunchbase, 2023)と低く、先進国共通の課題となっています。
Q. 女性活躍推進法は女性起業家にも関係しますか?
A. 女性活躍推進法(平成27年法律第64号)は主に従業員101人以上の企業を対象として女性の職業生活における活躍を推進する法律です。起業家・自営業者を直接対象とする条項はありませんが、大企業での女性幹部育成が進むことで起業のロールモデルが生まれること、また就業環境の改善が起業を検討しやすい基盤となることから、間接的に関連する制度です。
Q. 女性起業家に特化した相談窓口はありますか?
A. 「よろず支援拠点」(中小企業庁、全国47拠点)が無料の創業相談を実施しており、女性起業家の相談にも対応しています。また、各都道府県の男女共同参画センターが就業・起業相談を実施している場合があります。内閣府男女共同参画局のウェブサイト(www.gender.go.jp)から各地の相談窓口を検索できます。

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